『仮面ライダービルド』最終話より

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 『ビルド』観て書きたくなりました。ただそれだけです。




ビルドが創る明日

 パンドラボックスから伸びる光の帯は成層圏を抜け、冷えた真空の宇宙空間にまで及びもうひとつの地球へと繋がっている。まるで軌道エレベーターみたいだ、と思った。シャトルではなく、地球の直径よりも長い超長距離エレベーターによる宇宙進出。カーボンナノチューブの確率によって実現化も囁かれた新時代のプロジェクトはエボルトの襲来で歪められ、培われてきた科学技術は戦争に使われた。そのために俺たち人類は、未だに地球の重力に縛り付けられている。

 奴のいない世界なら、軌道エレベーターは日の目を見るだろうか。まだ実現には至っていなくても、少なくとも今の世界よりは進んでいるはずだ。科学によってもたらされる未来。希望に満ち溢れ、技術が明るい未来のために使われる世界。

 お前もそこへ行く資格があるんだ。エボルトの遺伝子を持つお前は消えるべき、と俺の中の葛城は言った。でも、本当に消えるべきは俺だ。葛城巧(かつらぎたくみ)として産まれながら、エボルトというイレギュラーによって仕立て上げられた桐生戦兎(きりゅうせんと)という、本来なら存在しないはずの俺こそが。

 新世界を作るために犠牲になるだなんて、そんな格好良いのはお前の柄じゃないんだよ。お前はプロテイン飲んでいるのが1番似合ってる。だからさ――

「待ってろ万丈!」

 俺たちの世界――世界線A――から光の帯で引っ張り出された世界線B。並行(パラレル)する次元の地球同士を繋ぐ光の中腹にある、パンドラボックスというイレギュラー因子を放逐させるための裂け目が空いている。開いたさっきよりも裂け目が狭まっているのが目視でも分かる。

 跳び込むと、その先には砂漠が広がっていた。見渡す限り無限の砂地。何もない虚無ばかりが拡張を続ける様はまるでひとつの惑星が生まれようとしているようにも見えるが、自らの重力に耐え切れずそこかしこで空間そのものが重力崩壊を起こしている。

 何も産まれることなく滅びようとしている砂漠の1点で、万丈は呑気に寝ていた。砂地に降り立った俺は何も無い辺りを見渡す。さっき万丈と一緒にここへ放逐されたはずのエボルトがいない。そのことに不気味さを感じながらも、俺は万丈へ駆け寄る。

「万丈!」

 俺の呼びかけに応じるように、万丈の目蓋がか、と持ち上げられる。その瞳が赤く輝いたことに俺はまさか、と咄嗟に脚を止めた。立ち上がった万丈は俺に拳を振り上げる。いくらエボルトの遺伝子を持つといっても、基本的な身体が人間の攻撃はライダーシステムの動作補正で簡単に避けられる。そのはずが、受け止めた万丈の拳は重く俺の体を覆うライダーシステムの鎧に軋みをあげさせる。

 ラビットの成分で強化された脚力でジャンプし、間合いを取る。瞳を赤くした万丈の口の端がにやり、と不気味に笑う。その体がネビュラガスに似た赤い霧に覆われ、恐るべき地球外生命体、その究極態を形作る。

「エボルト……!」

「残念だったな。万丈は俺が吸収した」

「何だと」

「後はお前の力さえ吸収できれば、エボルトリガーは復活する。そうすれば、俺は再び宇宙を超越した力を手に入れられる」

 迫ってくるエボルトの太く隆起した腕を受け止める。奴の腰にあるエボルドライバー。俺のビルドドライバーのプロトタイプに装填された制御装置(エボルトリガー)には亀裂が走っていて、間違いなく故障している。それなのに奴の攻撃はとても重い。たった1撃で俺の体は突き飛ばされた。

「俺を倒さなきゃ、エネルギーは放出されない。ふたつの世界は消滅して、お前の計画は水の泡だ」

 葛城忍(父さん)が提唱した新世界創造。ふたつの世界を融合・再編するためには、この空間の裂け目に放り込んだエボルトのエネルギーが必要不可欠だ。新世界へと至るには、奴をこの裂け目の空間と一緒に消滅するまで閉じ込めるか、この場で倒すかの2択しかない。だが奴はまだ余力を残し、俺を吸収することで力を取り戻すことができる。なら、選択は後者しかない。

「新世界は、必ず創る!」

 俺のせいで引き起こされた悲劇を帳消しにするために。父さんが俺に託してくれた新世界(明日の地球)を掴み取るために。

 渾身の拳をエボルトの胴に叩き込む。が、奴は防御すらしていないのに微動だにせず俺の拳を受け止めている。反撃に繰り出された奴の拳が、俺の体を大きく突き飛ばした。

「ジーニアスがないお前に何ができる?」

 嗤いながらエボルトは立ち上がろうとした俺に蹴りを入れてくる。手加減されている、と分かった。立ち上がった俺を拳で再びねじ伏せ、襟首を掴んで無理矢理立たされた俺は更に拳を受けて地面を転がる。

 立て続けに加えられたダメージで、スーツが形状を維持できなくなり霧散していく。エボルトの体が赤いガスに覆われた。晴れると人の姿になる。万丈じゃない。奴がずっと俺たちを欺き続けてきた、石動惣一(いするぎそういち)の姿へと。

「いい加減気付いたらどうだ? 桐生戦兎は地球にとって存在すべき人間ではなかったということに」

「黙れ!」

 口の中に広がる血の鉄臭さを飲み込み、俺は立ち上がって生身の拳を突き出す。人間どころか宇宙全てを超越せしめた奴にとってはのろまだろう。当然、俺の拳は奴の掌に阻まれる。

「お前が全ての元凶なんだよ」

 俺の腕を捻り上げながら、マスターの姿をしたエボルトは言う。

「お前がライダーシステムを作らなければ、仮面ライダーにならなければ、こんな悲劇は生まれなかったんだ」

 奴の言う通りかもしれない。俺が戦争を止めようとライダーシステムの強化を行わなければ、その意志すらもエボルトの進化を促すための布石と気付いていれば、ここまで事態は悪化しなかったのかもしれない。何が天才だよ、何が仮面ライダーだよ。俺は、ただ科学のもたらす負の面に目を向けられなかった悲劇の加担者じゃないか。

「お前は、俺に作られた偽りのヒーローだったんだよ!」

 エボルトの掌から放たれた波動が俺を押しやる。また砂の上を転がされた体は致命傷までは負っていない。物理的に俺の体はまだ戦える。だけど、精神的な要因で俺は腕に体重を支えるほどの力を込められずにいた。

 ――我は死神なり。世界の破壊者なり――

 不意に、原爆の父と謳われたロバート・オッペンハイマーの言葉を思い出す。日本がまだ3の国に別れる前の時代。まだヒロシマと呼ばれていた都市を一撃で吹き飛ばすほどの、人類史上最悪の大量破壊兵器を生み出した、科学の罪を世界に知らしめた人間の言葉。

 科学の発展は留まるところを知らない。最初こそ平和という善意のために生み出された技術でも、それ自体に善悪なんてものは存在しない。平和を掲げない者に渡ればその技術や力は欲望の坩堝へと放り込まれ、やがて生み出した人類自身をも破滅へと誘ってしまう。

 エボルトという存在が地球にやってこなくても、人類はいずれ自分たちの作った技術で滅びる運命だったのか。ネビュラガスなんかが無くても、いずれ人は沸き出す欲望を抑えられず戦争を起こし、他者を傷付け、踏み躙り混沌へと気付かないうちに突き進んでいたのか。

 いつか必ずもたらされる終末がただ早まっただけ。俺は終末を早めるために作られた、愛と平和(ラブ&ピース)なんて虚言に踊らされていたヒーロー――いや、とんだピエロだな。

「これで終わりだ、桐生戦兎」

 本来の姿に戻ったエボルトの手元にプラズマが迸る。もう駄目だ。立ち向かう気力なんてない。戦えたとしても、手元にあるボトルじゃエボルトに太刀打ちできない。もう一海も幻さんもいない。万丈だってエボルトの中。

 俺ひとりじゃ――

 エボルトの動きが止まった。絶望から寸でのところで引き揚げられた俺は、狼狽する奴を凝視する。

「体が……、動かない………。どうなっている⁉」

 

 ――何やってんだよ戦兎!――

 

 その声に、俺は目を剥いた。

「………万丈?」

 ――エボルトは俺が何とかする。お前は逃げろ!――

 あいつ、まさかエボルトに抵抗してるのか。

 ――なあ戦兎。今どんな顔してるか分かるか? くしゃ、としてんだよ、俺の顔――

 それは以前俺が万丈に語った、俺の戦う理由。俺の作ったライダーシステムが誰かの力になれた。自分が誰かを救う存在になれる。そう思うと心の底から喜びが込み上げて、俺は顔面に(しわ)ができるほど笑顔になれる。見返りなんて求めたら正義じゃない。俺が誰かを助けられたという事実が最大の報酬。葛城巧殺害容疑の冤罪を晴らすという自分のために戦っていた万丈はいつの間にか俺と同じ、いや、自分の犠牲すらも笑い飛ばせるほど、俺よりも遥かに崇高な境地へと辿り着いていたんだ。

 ――1度しか言わねえぞ。誰が何と言おうと、お前は俺たちのヒーローだ。だから、生きてくれ――

 走馬灯のように、これまでの戦いの日々が脳裏を駆け巡っていく。その戦いの中で出会ってきた人々のことも。

 自分に課せられた宿命から逃げずに立ち向かい続けた美空(みそら)

 古巣の難波重工を裏切ってまで俺を信じてくれた紗羽(さわ)さん。

 仲間を殺した俺を赦し、心火(しんか)を燃やし尽くした一海(グリス)

 自分の犯した罪と真正面に向き合い、国の未来という大義のための犠牲になった幻徳(ローグ)

 そして万丈(クローズ)

「ふざけるなあっ!」

 万丈をねじ伏せるように、エボルトが体から未知のエネルギー(ダークマター)を放出する。その肉体から何か固形物が飛び出して、俺の目の前でからん、と軽い音を立てて転がった。

 それはドラゴンフルボトルだった。元は青かったそれは、持ち主のハザードレベルの上昇に伴って成分が更に活性化された銀色へと変色している。

 エネルギーの放出を止めたエボルトが、粗い息で言う。

「万丈は完全に封じ込めた。もう2度と現れない」

 何故か不思議と、笑みが零れてきた。

「…………最悪だ」

 目の前のドラゴンボトルを掴み、俺は重い体を持ち上げる。

「お前のその顔、見たくなっちまったじゃねえか」

 誰が何と言おうとヒーローだって。そのヒーローに尻尾巻いて逃げろ、て言うのかよお前は。くしゃ、としてるお前の顔はきっとバカ面なんだろうな。見たら爆笑できそうだ。

「ヒーローが逃げるわけにはいかねえからな」

 俺はビルドドライバーに挿さったハザードトリガーのスイッチを押す。

《マックス・ハザードオン!》

 掲げたフルフルラビットタンクボトルを振り、フォームにラビットを選択する。ボトルを折ってボトル内部の成分を凝縮させてドライバーのスロットへ挿し込む。

《ラビット&ラビット》

「変身」

《ビルドアップ!》

 ドライバーのレバーを回し、内部でボトル成分を抽出させ小型ファクトリーを展開させる。

《Are You Ready?》

 前後から挟まれ、俺は黒染めのラビットタンクハザードフォームのスーツを纏った。

《オーバーフロー!

 紅のスピーディージャンパー

 ラビットラビット

 ヤベーイ!

 ハエーイ!》

 周辺に分解されたラビットラビットアーマーを回収・装着しながら、俺はエボルトへと疾走していく。アーマーが装着されたことでラビット成分の敏捷性を獲得し、爆発的なスピードで一気に肉迫した。

「今助けてやるぞ万丈!」

 単純なパワー勝負で敵わないことは承知だ。ラビットラビットフォームの利点は速さ。手数と急所への攻撃で、エボルトに追随してやる。

 エボルトの拳をいなし、俺の拳もいなされる。互いに腹の読み合いと回避・攻撃を繰り返しながら、俺は告げる。俺がこれまで培ってきた戦いの日々。決して幸福とは言えなかったが、そこで得られた何物にも替え難いものを。

「エボルト、確かにお前が俺を仮面ライダーにしたのかもしれない。でも、俺がこの力を正しいことに使ってこれたのは、かけがえのない仲間がいたからだ!」

 美空は嫌々ボトルの浄化をしていたし、万丈だって最初は助けてやったことを後悔していた。紗羽さんはスパイだったし、一海と幻さんも最初は敵同士だった。

 でも、そんな奇妙な縁で出会った俺たちを繋いだのは愛と平和(ラブ&ピース)という理想。夢物語と笑われても仕方ない脆い理想だが、俺たちはそれを本気で望んだ。夢物語だからこそ実現させたい。脆いものでも、誰もが心の奥底ではそれを求めている、と。それこそが、俺が俺でいられた根拠。

「皆が桐生戦兎を、仮面ライダービルドを創ってくれたんだ!」

 渾身の拳が、エボルトの腹に突き刺さる。

「愛と平和を胸に生きていける世界を創る。そのためにこの力を使う!」

「破壊こそ力だ! お前の正義など、俺が壊してやる!」

 エボルトの掲げる「破壊」のための力。

 俺「たち」の掲げる「創る」ための力。

「どちらの力が本物か、俺が証明してみせる!」

 迫ってくるエボルトの拳を回避し、俺はその腹に蹴りを見舞う。だが跳躍したことが仇となり、自由の利かない宙で俺の体は蹴り伏せられ横たわったところでエボルトは好機とばかりに拳を打ち付けてくる。

 ボトルから光の粒子が散っていく。ボトルがダメージを負ったせいで成分が漏出した。ほどなくしてラビットの成分が抜け切って、アーマーが消滅していく。すぐさまレバーを回し、残ったタンク成分を抽出、アーマーを展開し装着する。

《オーバーフロー!

 鋼鉄のブルーウォーリア

 タンクタンク

 ヤベーイ!

 ツエーイ!》

 パワー重視のフォームで繰り出すパンチは、エボルトにたたらを踏ませるほどの手応えを覚えた。更に追撃の拳、腕のガントレットに装備したキャタピラを高速回転させ、エボルトの体を削り取っていく。

「どちらが先に消滅するか、勝負だ!」

 削られた肉体組織が光の粒子として舞っていくなか、エボルトはどこかスリルを楽しむようにそう告げ、俺に蹴りを入れて引き剥がす。ああ、とことん付き合ってやるさ。お前を消滅させて万丈を引っ張り出してやる。

 エボルトの鉤爪が、タンクアーマーに創傷を付けた。なけなしのタンク成分もボトルから抜けていく。抜け殻になったボトルを引き抜くと、俺は後退しながら次の手を打った。

《シュワっと弾ける!

 ラビットタンクスパークリング

 イエイイエーイ!》

 増強剤のベストマッチリキッドが泡を散らしながら、ラビットタンクスパークリングへと形態を変える。左足に装備したラビット由来のバネを縮ませ、その反発力で繰り出されたジャンプの勢いのまま跳び蹴りを見舞う。ラビットラビットやタンクタンクに比べたら脆弱だが、パワーとスピードの均整が取れたこのフォームでもエボルトにダメージは与えられた。奴の両肩が大きく抉られ霧散していく。すかさず俺は武装にホークガトリンガーを選択、液状化ボトル成分に分解・収納させたドライバーから排出し化学結合させ銃身を形成させる。

 回転する銃身からフルオートで発射された弾丸はエボルトを捉えるが、所詮牽制にしかならない。弾丸で目くらましをしながら接近していくが、奴はそのタイミングを見計らっていたのか間合いに入ると俺に蹴りを入れてくる。バランスを崩され倒れる俺にエボルトは向かってくるが、ガトリングを発砲し阻む。でもダメージなんて望めず、鬱陶しいとばかりに奴の鉤爪は俺の手から銃を弾き落とす。

 回収する隙なんてない。丸腰になった俺にエボルトは哄笑しながら鉤爪を振り降ろすが、俺は次に選択した武器が形成されると同時、奴の胸に一閃する。不意打ちに慄いたのか、エボルトの胴ががら空きになった。ドリルクラッシャーの剣身を高速で回転させながら、奴の体を削っていく。胸に突き立てたまま一気に貫こうと試みるが、そんな余裕なんて与えてくれずエボルトの拳に離される。

 その腕から、鉤爪を装備した手甲が消えた。華奢になっていく自分の姿に激昂の雄叫びをあげながら、エボルトは俺に向かってくる。咄嗟に向けたドリルクラッシャーを弾かれ、1撃目の拳は回避するも2撃目は避け切れずドライバーのボトルをやられてしまう。

 宙に跳ね上げられながら、俺は成分の抜けたスパークリングボトルを抜き捨て残るボトルの形態に姿を変える。

《鋼のムーンサルト!

 ラビットタンク!

 イエーイ!》

 最も使い勝手の良い馴染みのある形態。いくら俺のハザードレベルが上昇して性能が底上げされているとしても、惑星を滅ぼすほどの相手をするには心もとない。

「ついに初期フォームか」

 気付けば、俺とエボルトは揃って体から光の粒子を散らしている。辺りをちらり、と見渡せば既に空間の崩壊が来た時よりもかなり進んでいた。もう見渡す限りの砂漠は俺たちが対峙している場以外は重力の渦に呑まれていて、ここにいる俺たちにも重力崩壊の影響が及んでいるらしい。

「答えは出たようだな………」

 息を荒げながらエボルトは笑っている。対する俺もまた、マスクの奥で笑っていた。

「どうかな?」

 父さんの研究データにあった、ハザードレベル7に達した仮面ライダーの力。それは使用するボトルに変化を促し、自ら新しい力を創造(ビルド)する。

 ドライバーに収まったラビットフルボトルが黄金の輝きを放つ。俺は展開させたフルボトルバスターのスロットに金のラビットと銀のドラゴンボトルを装填する。

《ラビット

 ドラゴン

 ジャストマッチでーす!》

 大剣モードの武器を構える俺をエボルトはせせら笑う。

「そんな攻撃が通用すると思ってるのか?」

「思ってるさ」

 できるよな万丈。

 負ける気、しねえよな。

 右足に装備したタンクのキャタピラを回転させ、猛スピードでエボルトへ接近していく。迎え撃とうと奴が拳を振り上げた瞬間、俺は左足で地面を蹴りラビットの脚力で高く跳躍する。

《ジャストマッチブレイク!》

 落下衝撃を上乗せしつつ、俺は上段からボトルエネルギーを纏った刀身を振り降ろした。まだ終わらせない。すれ違いざまに胴を一閃する。エボルト、教えてやる。何でこの攻撃でお前に一泡吹かせることができたのか。

「俺と万丈は、最っ高のコンビなんだよ!」

 駄目押しで更にもう1撃、奴に刀身を叩き込む。それでも消滅させるには至っていない。それどころかまだ反撃しようとする意志すらある。

「何⁉」

 エボルトの動きが止まった。

「何故また体が………!」

 ――戦兎、バッキバキに目え覚めたぞ!――

「万丈……、貴様あ!」

 ったく、寝坊してんじゃねえか。丁度いい。お前にも立ち会ってもらうか。

「さあ、実験を始めようか」

 俺は金と銀のボトル振り、内包成分を活性化させる。俺の頭の中で組み立てられた数式が実体化して辺りを漂う。各計算式にミスはなし。理論上、実行可能だ。

《ラビット

 ドラゴン》

 有機物同士という、システム上は不適切な組み合わせ。それでも俺は構わずレバーを回し、ドライバー内部で成分を混ぜ合わせる。

《Are You Ready?》

「ビルドアップ!」

 俺の周囲に展開されたスナップライドビルダーがボディを形成し、俺を挟み込むようにしてスーツを身に纏わせる。ドライバーが発するのは、トライアルフォームの音声。でも後付けされた音声が、続けて鳴り響いた。

《ベストマッチ!》

「勝利の法則は決まった!」

 再度レバーを回し、エネルギーを最大出力で抽出する。

《Ready Go!

 ボルテックアタック!》

 俺が極限まで強化されたラビットの脚力で高く跳躍すると、エボルトも自分のドライバーを操作しエネルギー最大出力で応じようとする。

《Ready Go!

 フィーバーフロー!》

 高度と落下角度、そしてこのラビットドラゴンの性能。それら全てから導き出された、奴へ最もダメージを与えられるグラフが実体化し目標地点、即ちエボルトへ伸びていく。そのグラフ線上に乗り、エボルトへ俺と万丈の創造(ビルド)したキックを叩き込んだ。

 高出力のエネルギー同士がぶつかり合い、拡散したプラズマが稲妻になって周囲へと散っていく。この空間の崩壊を助長し、重力が渦巻いて全てを光の届かない深淵へと飲み込んでいく。

「これで最後だ‼」

 出力を臨界突破させ、俺の右足が更に奴の体を削り取っていく。視界が散っていく奴の粒子に覆われていき、辺りがどれほど崩壊し、もはや脱出口も分からなくなる。

「この俺が滅びるだと⁉ そんなことがあってたまるか! 人間どもがああああああっ‼」

 エボルトの断末魔が、爆音に掻き消されていく。舞い上がった炎が嵐に吹き飛ばされ、暴風さえも重力の渦へと引き込まれていく。大気同士の摩擦が絶え間なく起こり静電気が発生して、まるで積乱雲の中へ放り込まれたような錯覚を覚える。

 その中、俺はまともに動けない嵐の中で、されるがまま身を晒された相棒へと手を伸ばした。

「万丈おおおおおおっ‼」

 

 


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