そのテストケースとして選ばれた彼らの戦いを描く。
設定その他、色々現在のガンダムUC世界とは違ってます。
ギャグです。
それでも良いと云う人だけ読んでください。
じをん体育大学
『健全な魂は健全な肉体に宿る、と良いのになぁ』
これは古代ローマで軍人が汚職をしまくっていたのを嘆いたユウェナリスと云う詩人が書いた詩集に書かれているそうだ。
確かにそうだと私も思う。
古代ローマから二千年以上経った現代、宇宙世紀0079に於いて私もそれを実感している。
ただ、方向性は異なるのだ。
私の同期達はジオン公国でスポーツや体育で活躍した面々が多く、身体能力に優れた肉体優良児達ばかりである。
『じをん体育大学』健全なスポーツ教育を目的にフィジカルに優れた男女を集めて、体育教師やスポーツ指導者の育成やスポーツ工学や人間工学の開発を目的とした私立大学である。
設立メンバーにはザビ家や人間開発の第一人者であるフラナガン博士などのジオン公国でも有名な面々が名を連ねている。
ぶっちゃけジオニズムに則って宇宙世紀の優れた新時代の人類の育成を目的とした教育機関である。
こう言っちゃ何だが非常に男臭い。
そしてぶっちゃけコイツらは『お前ら本当に宇宙世紀に生きる人間なのか』と問い詰めたくなるほど機械音痴で考え知らずで、ぶっちゃけバカである。
健全すぎる肉体には健全な魂と頭脳は宿らんのかと。ふぅ。
私は現在サイド3のジオン公国に設立されたじをん体育大学にてスポーツ工学を学び、宇宙世紀に於けるスポーツ方面でのジオンの優秀さを地球圏に広めようと勉学に勤しんでいたのだが、残念ながらコロニー落としに始まる今次大戦は激化の一途を辿っている。
前線での将兵の消耗は大きく、近々学徒動員もあり得るのでは無いかと噂があったのだが、まさか真っ先に我々『じをん体育大学』がテストケースとして学徒動員されてしまうとは。
まぁ我がじおん体育大学は脳筋で有名だったし、兵学校に準ずる存在として設立された訳だが、う~む。
他の優秀な頭脳を持つ大学から徴兵されてしまうのはジオンの未来の損失だからってのはわかるんだが。
しかし、個人的には残念だ。
我らがジオンの栄光を健全なるスポーツの分野でアピールするのでは無く、軍事力で誇示する事になろうとは。
残念極まりない。
そして他の大学からの学徒動員では士官、若しくは下士官教育を受けた上で戦場に送られる事になる予定なのだそうだが、じをん体育大学の同期の連中が大学に入学出来たのはスポーツ推薦があったからで、幼少時から身体を鍛え続けて頭の方はおざなりな連中ばかりだった。
そんなのがまともに士官教育を受けられようか、上の方も相当頭を抱えた様だが、ちょっと待て何で私まで纏められているのですか?
え? 学生代表としてお前が奴らを纏めろですか?
はぁ、下士官教育を受けさせるから実地でコイツらに軍事教練を受けさせろと。
まあ、フィジカルは折り紙付きですからどうとでもなりますが、モビルスーツの操縦とか無理ですよ? オートバイだって怪しいレベルですし。
そんな訳で私は学徒動員試行第一期の体育大学出身者50名を纏めるハメになってしまった。
いや、コイツら本当にフィジカルは有能なんだわ。
歩兵用のフル装備を全身に纏いながらコロニーの回転数を上げた特訓用のスペースコロニー『じをんの穴』で2Gを掛けたままフルマラソンを完走して脱落者がいないし、障害物もボルダリングや組体操で乗り越えちまうし、フィジカルは凄いんだ、フィジカルは。
でも無線機が使えない、と言うか受話器を握りつぶすな、電源スイッチを押し潰すな、チャンネルをネジ切るんじゃない!
これなら肉弾戦ならいけるかも(皮肉)、重力戦線に投入されれば粉砕バットでヒョロな連邦軍人なんぞイチコロだぜ。
爺ちゃん婆ちゃんの憧れの地球か、悪くない。
そんな事を夢想しながら私は行進訓練(これは得意)や火器訓練(安全装置を外すな、筒先を覗くな! 落ち着け、子供か!?)の訓練をさせていた。もちろん一緒に走ったが?
何分好奇心が旺盛で前向きなのは良いんだが、気疲れする。
最近上から新しい指示が出たんだが訓練項目に低酸素環境下での運動だの、無重量状態での格闘戦訓練だの、重力戦線とは相容れない訓練項目が追加されたんですけど。
アースノイドなら四苦八苦する無重量状態の自由遊泳も生まれながらのスペースノイドにはお茶の子さいさいだから、ほとんど自由時間みたいなもんだ。
「わっはっは、赤い彗星じゃ、シャアザクキーック」
「なんの、かえりうちじゃい、ジェットストリームアターック あ」
ガスッと後ろ頭に蹴りが入った。お~ま~え~ら~、そこのエアロックから放り出すぞ、コンチクショーが。
「スイマセン、タイチョー」
「タイチョー、切れると怖いんじゃが」
コイツらは本当に自由だ、こんなんで中学や高校の体育教師とか勤まるのか?
今は兵隊だけど。
一週間戦争の後、地球侵攻作戦が進み、地球の重力の底での戦争、重力戦線は混乱した地球連邦軍をミノフスキー粒子でレーダーを無効化した上でモビルスーツで攻撃して戦線を拡大中との大々的な宣伝活動を展開中。
昨日テレビで正義のヒーロー、キャプテン・ジオンの番組の後にNEWSで派手に宣伝していたんだが、これだけ大戦力を展開すると人的資源の消費が激しいらしく、私たちの初陣を早めようかと云う話が出ているらしい。
だけどイマイチどう言う戦いをするのか戦闘スタイルが分からない。
今のままだと海兵隊だろうか、強襲揚陸艦か武装ランチで敵地に突入して白兵戦とか。
何しろ最近、対人戦闘の他に対MS戦闘の訓練も入っているのだ、と云うか連邦のMSって、あの戦車みたいな奴だろうか。
最初の話では頭の良い大学生ならMS操縦適性が高いだろうから、パイロットが枯渇している前線への補充として学徒動員を掛ける、みたいな話だったんだが、残念ながらウチの学生は脳筋だらけ、とてもじゃないがMSパイロットとか無理むり。
なのでどこに配属されるか待っていたのだけど、なんと宇宙攻撃軍の特殊モビルスーツ部隊に配属ですよ。
特殊モビルスーツってのがよく分からないが、コイツらを引率してサイド3にある密閉型コロニーのひとつ、ザンスに到着。
ここでは装備の説明や訓練を受けられるそうだ。
まず全員の身体測定と体力測定が行われた。
私を含めてコイツらの体格はメチャクチャよろしいから、普通の軍人さんの制服ではサイズが合わないのだろう。
一番身長の低い奴で180センチで高い奴は220センチを超えている、宇宙に出た人類の覚醒だ~とかコロニーの人工重力の弊害だ~とか色々言われている。
もちろんスペースノイドの中でもごく一部だが、人口が多いのでそう云うのがここに集められたってのが真相だ。
こんな風に皆の体格は良いので、一時期だが地球連邦アメリカ州のバスケットチームがスペースノイドで占められて特別ルールで排除されるなんて事件もあったし。
これでヒョロッとしてる訳ではなくて、全員ムキムキのマッチョマンである。
ああ、ここに居るのは全員男子だ。
流石にね、体格は引けを取らない姐御もゴロゴロいたけど、怖いからお引き取りを~じゃなくて、ほら、アレだよ。
全員の身体測定と体力測定が終わって上司であり、モビルスーツの開発者から説明を受けた。
皆(みんな)を広場に並ばせた後、白衣を着た博士が拡声器で話し始めた。
「いやぁ、皆(みんな)体格が良いねぇ。これなら僕が開発したDDモビルスーツも充分に使えそうだ」
「DD?」
「説明は後で、更衣室で各人の体格に合わせたモビルスーツを配るからね、それを着てからここに再集結してくれたまえ」
配るってモビルスーツをか?
着る? パイロットスーツをだろうか。
とにかく、命令は下された。
引率として号令を掛ける。
「おら、お前達、命令が出たぞ、更衣室まで駆け足っ!」
「ハイタイチョー、いやぁこれでワシもモビルスーツパイロットか、自転車しか運転した事がないから緊張するのぉ」
「おう、俺もじゃ。ザクとか1日ザクとかええのぅ」
お前達に操縦とか無理だろう。
痛む頭痛に顔を顰めながら更衣室に駆け込むと、ロッカーに自分の名前が書かれていたので扉を開けた。
そこに角付きのMS-06Rが居た。
色は赤である。
え?
着ぐるみ?
え? マジで?
マジでした。
モビルスーツを着込み、最後にザクヘッドを被ると、外観は真っ赤なザクⅡRである、ジョニーライデンみたいで格好いい!
って言ってる場合か。
緑のザク2やザク1、体格の良い奴はドムとか云う横に広いモビルスーツを着込んでいた。
「えーと、お前は・・・」
「相撲部のエド・ジェダイっス」
着ぐるみ着てるから誰が誰だか分からない。名前を聞いてようやくアンコ体型のスモー取りを思い浮かべられた。
「あぁあぁ、で、それは何?」
「見た事無いんで分かねっス」
「私も知らないなぁ。モビルスーツにあんまり詳しくないけど」
更衣室を見回って、全員着ぐるみに着替え終わったのを確認して、私は最後に更衣室を出た。
広場に出ると総勢50名のモビルスーツの着ぐるみを着込んだ連中が見えた。
これなんか知ってるぞ、確かコスプレとか云う奴だ。
ほとんどが緑のザクだが、数人は別のモビルスーツの着ぐるみを着ている。
おっと、報告しなければ。
「全員指定の着ぐるみを着て集合しました」
「着ぐるみではなーいっ! これは私が開発したDDモビルスーツである」
「DDモビルスーツ・・・って何でしょうか?」
「最初のDはダイレクト、次のDはドライブ。ダイレクト・ドライブ・モビルスーツの事である」
「はぁ」
「正直に言って、君たちじをん体育大学の面々はぁ・・・機械音痴が多い、しかし、我がジオン軍はモビルスーツの数が必要なのだ。そこでバk・・・機械音痴でも操縦出来るモビルスーツを開発しろと命令されたのだ私は。なのでマスタースレイブ方式のコクピットを開発し、モビルスーツに積載する事に成功した」
「おぉ、でも」
「仕方ないだろう、コイツらを乗せてみたらマスタースレイブの操作腕が引きちぎられるわフレームは曲がるわ。これだから脳筋はっ!」
「はぁ」
「仕方が無いので少し簡略化してコストも大幅に削減に成功したのだ文句があるかぁっ!? キサマっ!!」
あ、目が逝ってるなぁ、誰だか知らないが実験につきあった奴に振り回されたんだろうなぁ。わはは。
「ああ、納得しました」
「と云う訳で、キサマらにはこのDDモビルスーツにて作戦に参加してもらう事になった」
「え、訓練は」
「先程ドズル中将から直々に援軍に出せと言われたのだ。援護要請があったのはサイド7だから地球を挟んで反対側だが、目標は軌道速度を減速しつつ低位軌道へと遷移しサイド1を迂回してルナ・ツーへと移動中だ。我々はムサイ級軽巡洋艦エンプラに乗り込み月のスイングバイで減速しつつタイミングを合わせて追跡するムサイ級ファルメルに合流する予定だ」
スペースノイドには基本だが、軌道の変更には加速と減速が付きまとい、それプラス角度とか進路とか楕円率とか正直コンピューターで計算しなければ訳が分からない、が、大体は理解した。
「何か質問は?」
「ハイ、完熟訓練は」
「ムサイの格納庫内で行うしかないな。他には」
「ハイ、彼、エドの~乗り込んだ機体は何というモビルスーツでしょうか」
「ああ、ちょうど良い体型の物が無かったので、重力戦線で実験中の水陸両用モビルスーツをモデルにした。名をゴッグ、宇宙用だからリック・ゴッグだな」
あの体型では仕方あるまい、渾名は相撲部だからスモーで決まりだな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
このムサイ級エンプラに乗り込んで2日が経った。
正直このDDモビルスーツは船外活動ユニットEMUに装甲と倍力機構が組み込まれただけの物だが、手足の追従性が高く、まるで普段着を着ている様に自由に動けるから凄い物だ。
コロニーに常備されていて、年に一回の非常訓練で着た事のある船外活動服なんか堅くて私でも動くのに不自由だというのに。
デザインが既存のモビルスーツと一緒なのは何か理由があるのか、上司に聞いてみたがはぐらかされた。
まあジオンの誇りを体現したかの様な形の代表がモビルスーツなのだから仕方ないのだ。
ちなみにこのムサイの格納庫には本物のザクが4機格納出来る広さなのだが、ガタイのデカい野郎共が50人も詰め込まれていると息が詰まってしょうがない。
そこに無重力用の拘束ベッドとDDモビルスーツが並べられている訳だから物理的にも狭いのだ。
そんな中、上司から呼び出されて艦橋へと急いだ。清々するな、気分的に。
艦橋には艦長のハマン・トラッム大尉と艦橋員、それに上司が大型スクリーンを見上げて会話していた、作戦の相談だろうか。
「む、来たか。現在この艦は援軍の要請があったファルメルと相対速度を合わせつつ近距離まで接近中だ。良かったな、赤い彗星のシャアだぞ」
「ああ! ファルメルってあの赤い彗星でしたか」
「うむ。現在シャア少佐はサイド7で連邦が行っていたV作戦で開発されたモビルスーツを搭載した強襲揚陸艦の木馬を追跡中だ。先程レーザー通信で連絡を取った所、1時間後に木馬に対し襲撃を掛けるとの事、奇襲となるか強襲となるかは相手次第だが、ミノフスキー濃度は戦闘レベルとなっている。木馬も追跡されている事は承知しているから油断はするな」
油断も何も、これが初陣です。しかも全員が、一体どうしろと。
「取りあえず合流後に小官と貴様でシャア少佐へ挨拶にファルメルへと移乗する」
「ハイ、了解しました」
で、DDザクRを着てファルメルに乗艦して上司と一緒に艦橋へと上がった。
上司も有名人に会える事に興奮しているのか、顔を上気させて(顔の温度が上昇した事がサーマルセンサーに検知されたのだ)艦橋の扉の前で内部へと艦橋入場許可を求めて声を出した。
「援軍のエンプラ所属の者です、艦橋入場許可を求めます」
「入りたまえ」
「ハッ」
開閉釦を押すと扉が開く。
内部には艦橋クルーと副官らしき人達が・・・おうおう、こちらを見て絶句してます。
さもありなん。肝心のシャア少佐は後ろを向いているな、まだこちらに気づいていない。
「良く来てくれた、私が赤い彗星のファッ?!」
シャア少佐がしゃべりながら振り向き、私の格好を見た途端に変な声を出して固まった。
さもありなん、さもありなん。
「ほ、ほほう、深紅の稲妻かな? と云う事はジョニーライデン少佐って違うわ。援軍、援軍とはもしかして」
「ハハ、こちらは私の開発したDDモビルスーツでありますシャア少佐」
「む、ロボット、無人機なのか?」
「いえ、君、ヘルメットを取って敬礼したまえ」
頭に被っていたザクヘッドを外して、右手で敬礼する。
肉眼で直視すると、意外とちっちゃいな、身長は180センチ位だろうか。
「君はデカいな、身長は?」
「ハッ、2メートル5センチであります。じをん体育大学出身、学徒出陣であります」
「ああ、あの脳筋の」
失礼な、私を他のメンツと一緒にして欲しくない、けど反論出来ない、佐官だよ? 有名人だよ? こちとら伍長相当だよ?
「まあ良い、使えるのかね?」
「自信作であります。存分にお使い下さい」
「ふむ、最悪囮、いや、陽動には使えそうだな。ドレン」
「ハ、シャア少佐」
「これより木馬に仕掛ける。タイミングを見て彼らを突入させてくれたまえ」
「了解です、シャア少佐」
こうして顔見せの後、問題も無く戦場に投入される事になった。
あれ? こういう場合、学生上がりの訓練の足りない軍人もどきなど足を引っ張るだけで邪魔だ。とか言って後方へ待機させるんじゃ無いの?
ガーンとショックを受けた私はいつの間にかエンプラへと戻っており、格納庫で武器を構えて出撃準備で待機していた。
正直言ってこの船外活動服の能力向上版モビルスーツもどきでは推進力が足りず、艦から発進して目標に到達出来ても減速で推進剤を使い切って帰還が難しい。
なので慣性で目標へ到達して、減速と戦闘に推進剤を利用して回収は先回りしたエンプラで行う必要がある。
DDモビルスーツの化学燃料推進器じゃどうしたって初期加速の範囲から逃れられないから、敵艦や敵機に対して戦闘機動を掛けて相対的にはバックしているようでも、全体の運動方向のままに動くしか無いのだ。
高性能イオン推進機関なら一週間掛ければ~、餓死するわ。
で、現在ムサイ級エンプラは最終加速を終了して姿勢を後ろ向きに変えてバックの状態で、格納庫を進路方向へ向けている。
「お前ら、そろそろ減速するから手摺りから手を放せよ、床から足を放せよ、磁石はスイッチ切って置けよ!? 変に掴んでるとどこに飛んでいくか分かんないからな。後チーム毎に命綱は付けたろうな、忘れるとバラバラになっちまうぞ。分かったのか!?」
「「「うぃーっす」」」
本当に分かってんだろうか。いや絶対に何人か変な方に飛んで行くはずだ。
予備の燃料カートリッジは余計に貰ったからコレで。
「カウントダウン10秒前、9、8、7、6、5、オンユアマーク」
お、流石に聞き慣れた陸上用語には反応するな、全員宙に浮いた状態で待機出来てるぞ。
「ゼロ!! フリーフォール」
「よっしゃあ!!」
「ヒャッハァー!!」
ムサイの両舷のエンジンを全力で噴かすと急速に減速する、するとエンプラ自体は減速するのだが、宙に浮いた私たちの身体はそのまま等速で進むのでみるみるエンプラから離れて行く。
相対的には私たちが加速度的に発進したみたいに見える。
じゃあ各小隊毎に隊形を整えて、ってお前ら暴れてんじゃねえ、遊びじゃないんだぞ、燃料を無駄に使うな。
「大丈夫だってタイチョー、ホラ、命綱を使ってベクトルをやり取りしてるだけだから、アクロバット遊泳の基本動作じゃないスか」
「そうそう、作用反作用ですって」
うーむ、アメリカンクラッカーみたいにバチコーンバチコーンと移動してるだけかぁ。
こいつら本当にフィジカルは凄いんだよなぁ。
「ホラホラ、アンバックだって自由自在っスよ、右ひねり左ひねりライダー反転キーック!!」
ちょっと待て、今の動作どうやってやりやがったんだ?!
まあいいや、コイツらに言葉で説明させても理解出来ねぇし。
「接敵する前に隊形を整えとけよ。安全装置の解除を忘れるな。まず最初にジャイアントバズ(小)とザクバズーカ(小)を撃って、敵が近づいてきたらザクマシンガン(小)で迎撃だからな」
「「「ういーっス」」」
そのままの姿勢で数十分、白い点が大きくなってきた。
アレが連邦の木馬か、あれにモビルスーツが数機配備されているらしい。
シャア少佐達の本物のザクは反対側から攻撃を仕掛けるから、私たちは右斜め後ろ下部から秒速数百メートルで接近中である。
ミノフスキー粒子がガンガンに撒かれているから、戦闘に紛れれば気付かれずに接近出来るけど、囮とか言ってたし、ほら、こっちに気付いた。
木馬の機銃がこっち向いてガンガン飛んでくるんですが、超怖い。
向こうからすると突然50機のザクの大部隊が現れたみたいな、いやいやルウムの頃ならまだしも、でも敵には関係ないか。
宇宙で目視じゃ大きさも分からないし、身長が十分の一って事は面積は百分の一に過ぎない。
と云う事は百倍離れた所を狙って撃ってくる訳なので、弾も大分離れた所を飛んで行くんで助かる。
むむ、太めの赤いモビルスーツ、両肩に大砲が付いている奴がこっち見てる、ぅおわっ! ビームがっ! メガ粒子砲が飛んできた。
モモ モビルスーツがメガ粒子砲とか、連邦のモビルスーツは化け物か、あんなに沢山大砲が付いてるし、あの赤いモビルスーツが敵の最強戦力に違いない、マッチョ体型だし間違いねーって。
ってビビってる間に木馬が近づいてきた、対空砲火は疎らだけどアイスキャンデーみたいなのがビュンビュン飛んできてるし、ううっビビってるんじゃねー、そうだ、ザクバズーカだ、狙いを付けて、鬱っ。違う。
固体ロケット推進のバズーカを撃つと発射の反動はあんまり無く、発射の際の煙と炎が顔面に当たるがザクヘッドがあるんで熱くない。
真空の宇宙だけど、煙が当たった瞬間にブシュッと云う音が聞こえた。
ヒューンと飛んでくバズーカを見送っていたら、うおっマグレで当たったよ、赤いモビルスーツに、でも全然効いてないし、まあ歩兵が持つ武器がモビルスーツに効く訳無いよな。
敵との相対速度は秒速数百メートル位だからあっという間にすれ違ったんだが、木馬の艦橋横を通り過ぎた時に、艦橋の中に居たピンクの巨乳さんがこっちをガン見していたのが見えた。
動体視力は良い方だからな、間違いなくD以上は堅いと見た。
それはともかくこんなサイズのザクが通り過ぎたらそりゃビビるわ。
見る見る離れて行く木馬を眺めながら、点呼を取る。
反転して攻撃? 無理無理、そんな機能は搭載されていません。
ザクとかは推進剤が多くてエンジン推力が大きくて、何よりミノフスキー・イヨネスコ型核融合炉の高出力があるからそんな器用な真似が出来るんだっての。
「全員無事かぁ? 小隊長報告しろ」
「一班大丈夫ッス」
「二班もオッケーっス」
「三班も大丈夫でーっす」
・
・
・
「十二班ですけど、デュークの奴が細くて白いモビルスーツにぶつかって行方不明です」
「なんだと。チッ、戦死者が出るとか、悲しいけど、これが戦争か。他のメンバーは無事か?」
「他は大丈夫です」
「了解、このままエンプラに回収されるのを待つぞ」
「「「了解ですタイチョー」」」
こうして俺たちの初陣は終了した。
やっぱりDDモビルスーツは機動兵器としては使えない事が分かったので、別の使い方が分かるまでサイド3に戻る事になった。
ああ、あとデュークの奴だが、生きていた。
何でも青白くて細いモビルスーツにぶつかって(そこで生きている時点で驚きだが)、ヒートホークで殴っている内にカバーが開いたんで中にあったスイッチを捻ったらモビルスーツの上半身がすっ飛んでいったそうだ。
やっぱり男はマッチョじゃ無ければ駄目だな、その点私が戦ったあの太めの赤いモビルスーツはやっぱり最強だった訳だ。
デュークはその時点でそのモビルスーツに捕まってしまい死を覚悟していたそうだが、モビルスーツの上半身と一緒に飛んでいってしまい、漂流している所をシャア少佐に拾って貰ったそうだ。
連邦のV作戦の鹵獲に成功した功績でデュークには勲章が出るらしい、通信でドズル中将が上機嫌で言っていた。
う、うらやましくなんてないんだからね。
いや本当、生きていただけで御の字だっての。
なんだかんだ言って大学で一緒にバカやってた連中だからな。
続きは次回。
なんだ次回って?
次回予告
サイド3に戻ったジオン宇宙攻撃軍特殊MS実験部隊は一般人の多く住むコロニーの警備任務に就いた。
今次大戦で連邦がMSの大量生産に成功し宇宙に配備した事でサイド3の安全も確かな物では無くなったのだ。
そこに現れた連邦軍の特殊MS部隊がドリルでコロニーに穴を開けて侵入してきた。
魔法の少尉ブラスター・マリの駆る1日ザクが走り、いびつなザクが雄叫びを上げる。
次回、機動戦士ガンダム・サイバー、DDザクの誇り。君は生き延びる事が出来るか。
勿論続きません。
突発的に書きたくなったんです。
笑って許してください。
ではでは。