ONE PIECE -Stand By Me -   作:己道丸

31 / 34
大変大変ご無沙汰しております。
pixivの方でイラスト制作にかかりきりになっており、かなり間を開けてしまいました。加えてブランクのせいで思うように書き上げられず、難義しました……。

これからまた小説の方も書き進めていきたいと思うので、気を長くしてお付き合いいただけると幸いです。



(おまけ)これまでのあらすじ
スリラーバーク海賊団を結成したゲッコー・モリアとギーアは、百獣海賊団に逆襲するため、カイドウお気に入りの冬島を襲撃していた。アブサロム一味や追加のゾンビ軍団を部下に加え、現大看板“音害のジャック”と兵力戦を展開する。


“船長モリアvs海賊スコッチ”

「お頭ァ、後ろから敵だァ!!」

 

 正面のゾンビどもを潰せ。

 スコッチが下そうとした命令は、自軍を掻き分けて来た伝令により遮られることとなった。

 

「何ィ!?」

 

 冷気に勝る悪寒が走り、風を裂く勢いで振り返る。

 するとどうだ、雪原を埋め尽くす軍勢の先、地平線の向こうに幾筋もの煙が昇り、遠雷じみた轟音が続け様に響いてくるではないか。

 

「お、おいあれ」

 

 部下たちからも声が上がる。

 やつらもまた、スコッチと同じことを考えたのだ。

 

「あの方向、武器工場の方じゃねェか!?」

 

 音のする方にあるもの、それは自分たちも経由してきた百獣海賊団の補給基地に他ならない。

 山間を埋めつくほどの巨大な施設は、多種多様な武器と兵器を潤沢に揃え、数千に及ぶ自軍を余すことなく武装させた。

 だが同時に、この前線と本隊を繋ぐ要所でもある。そんな武器工場が攻撃を受けているということは、

 

「まさか、おれたちは分断されたのか!?」

 

 伝令の報告を聞き、恐れからの声が叫ばれた。

 

「バカ言え、そんなワケねェ!」

「じゃああの煙と音は何だってんだよ!?」

「おれが知るか! そんなことより、あれが見えねェのか、てめェは!!」

 言い合う者どもの一人が、遠くを指差した。

 そこにはある。地平線の上、煙を背にして突き進んでくる人影の群れが。道々の友軍を蹴散らして迫る集団が。

 

「敵が来る!! ――挟撃だ!!!」

 

 進軍する集団というものは、正面以外からの攻撃にはもろいものである。ましてそれが背後からとなればなおさらだ。

 その事実は士気を暴落させかねない。

 

「何が起きてるかなんて知るか! そんなことより、このままじゃおれたちは挟み撃ちになって……」

「黙れ」

 

 だからスコッチは撃ち殺した。

 

「ぎゃあっ!!?」

 

 義手にしたガトリング砲が火を吹き、悲鳴の主を薙ぎ倒す。その時、周囲の何人かを巻き添えにしてしまったが、気に留める理由はなかった。

 同じく臆病風に吹かれた雑魚だ。むしろ、汚染された患部を切り捨てられるので都合が良い。

 叫ぶより楽で、早く伝わるもの。たった数人で周囲の者どもを従えることができるもの。

 見せしめだ。

 

「てめェら海賊だろうが。ビビってんじゃねェ」

「ひ……っ」

 

 恐れを塗り潰す恐れで士気を立て直す。

 青い顔で息を呑む部下たちは、迫る敵よりも恐ろしいものがここにいると理解できたらしい。

 敵によって電伝虫による通信が封じられた今、自分が指揮できる範囲は広くない。手綱をゆるめる訳にはいかなかった。

 部下たちに恐怖が浸透するのを待ってから、スコッチは命令を下した。

 

「全軍前進! 数は勝ってんだ、とっとと潰せェ!!」

「お、おうっ!!!」

「進め……進めェ!!!」

 

 怒号に突き動かされ、進攻が再開される。

 撃ち殺された仲間を踏み潰す様は、スコッチへの恐怖に裏打ちされた士気の表れである。

 後ろの敵に、目の前の男に殺されないために、殺される前に殺しに行け。それだけが生き延びるたった一つの方法だと思い込むかのように、集団は進む。

 だが、危機が迫っているのは事実だった。

 

「おい、てめェ」

「へ、へいっ」

 

 伝令は一瞥するだけで震え上がった。

 

「あいつらを向かわせろ。こういう時のための連中だ」

「わ、分かりやしたっ!」

 

 一目散に走り去る姿は臆病者そのものだ。だが、命令さえ果たすならばどうでもいいことだ。

 まずは眼前の敵である。

 それを始末できなければ、百獣海賊団に消されるのは自分の方なのだから。

 青ざめる顔を鉄下面で隠し、スコッチは再度の号令を下した。

 

「行くぞてめェら! クソ生意気なゲッコー・モリアを叩き潰せェ!!!」

「オオオオオオオオオオオオオオ――――!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先行しなさい、“影法師”」

 

 ギーアが指示すると、並走する黒い巨体は頷き、その姿を大きく変容させた。

 まるで粘土を練り上げるように細く伸びる体。それはバネか、あるいはとぐろを巻く蛇のような格好となり、そのまま宙へと踊り出す。

 

「なんだ、あの黒いのは!」

「敵だろ!? 撃ち落とせ!」

 

 またたく間に頭上を越えていく“影法師”に、百獣海賊団の手勢が銃口をそちらに向ける。

 だがそれはこちらへの注意を失ったということだ。

 

「リューマ、援護」

「かしこまりました、ご主人様」

 

 その瞬間、人影が飛び出した。

 抜き放たれた白刃の光で尾を引く姿は、ワノ国の戦士、サムライのそれに他ならない。ただ一つの違いは、その顔に色濃い死相を浮かべていることだった。

 

「な、なんだこいつは!」

「人間じゃねェ! ゾンビだ、化け物だっ」

 

 リューマの顔に悲鳴を上げ、敵は銃を向け直す。だが、剣豪の肉体を前にしては最早遅すぎる。

 刃が走った。

 

「“野伏魔《のぶすま》”!!!」

「!!?」

 

 舞い上がる血肉の雨。

 長大な斬撃は、そこにいた十数人のならず者を一度に斬り倒したのだった。

 

「ひ……っ」

 

 赤く染まる雪原におののく敵。

 そうなってしまえば、後は突き崩すだけだ。

 

「進めェ――――――!!!」

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――!!!!」

 

 敵陣に躍りかかるギーアに負けじと、ブギーマンズは燃え滾るような勢いでもって攻め入った。

 その雄叫びはすさまじく、竦んだ敵は悲鳴を上げる間もなく踏み潰される。

 

「ち、畜生、なんだこいつらァ!」

「どいつもこいつも同じ顔しやがって……!」

 

 ブギーマンズは、ヌギヌギの実によってギーアが脱ぎ捨てた“皮”をまとう戦闘員たちだ。

 ギーアの戦闘力を借り受け強化されたのはもちろん、同じ顔の集団と戦うということは、敵に狙いをつけづらくさせる効果があった。

 

「くそっ、指揮官はどれだ、どこに行った!」

「……私のこと?」

「えっ」

 

 それでもギーアを追いかけようとする敵は、それこそギーアにとって格好の獲物であった。

 

「“閃光火拳(フラッシュヴァルキリー)”!!!」

「ぎゃあああああああっ!?」

 

 光熱の拳が敵の背を焼く。殴り飛ばされた体は砲弾そのものであり、直線上にいた何人もの敵兵を弾き飛ばしていく。

 

「くそっ、そこかっ」

 

 こちらに気付いた何人かが武器を向ける。

 だがその時には既に、他のブギーマンズに紛れて戦塵の中へと姿を隠していた。

 同じ顔、同じ姿で乱戦を仕掛け、隙を見せた敵に一撃離脱を繰り返す。それが自分とブギーマンズの戦法だった。

 そうやって敵を翻弄しつつ、ギーアは敵勢の奥へと進んでいく。その先にいる、船長が率いる友軍と合流するために。

 

「こちらギーア。モリア、来たわよ」

『おう、事は上手く運んだみたいだな』

 

 ふところから出したのは電伝虫だ。

 ステラが通話を許したその個体は、彼女によって通信を封鎖された百獣海賊団の事情をよそに、何一つ問題なく仲間との連絡を可能とする。

 

「手筈通り、武器工場にはアブサロムたちが行ったわ。私たちは貴方と合流するために進んでる」

 

 ギーアの脳内には、この百獣海賊団との戦いにおける戦場の様子が思い浮かべられていた。

 

「これで戦場は三つに分けられた」

『この雪原と、武器工場と、敵がいる山間部だな』

「雪原は挟撃が、武器工場は奇襲が成功した。……問題は山間部ね」

『ああ、敵の首魁が異変に気付き、対処するまでにどこまで有利に運べるかが勝負だ』

 

 モリアもまた、戦況を理解していた。

 ちょくちょく馬鹿をやらかす男であるが、地頭は悪くないのだ。むしろ時々でしでかす考え無しを、悪だくみによって後から補填する才覚を持っている。

 それは行動力の強さだ。

 人を率いる素養であるとギーアは思っていた。

 

「アブサロムたちには奪取より破壊を優先するように指示したわ。時間との戦いだもの、施設を障害物に変えて時間稼ぎに使う方が有用だわ」

『ぶっ壊した工場で足止めする間に、雪原に分断した敵軍を始末する、か』

「半分だけよ。ゾンビには影が要るんでしょう?」

「ああ、ここにいる敵で兵士ゾンビを増員し、山間部の本隊に備える」

 

 見回すと、ブギーマンズは自分たちの特性を利用して敵を混乱させ、戦果を挙げていた。

 かつては奴隷に貶められた彼らだが、だからこそ、そこから脱却して生きようという意思は強い。この島に着くまでの間に鍛えた甲斐があるというものだ。

 

「敵は多いけど練度はそこまでじゃない。きっと百獣海賊団は本隊の方で、ここにいるのは島に常駐する傘下の海賊団が主体なのね」

『いけそうか』

「ええ、混乱で陣形も崩れてるし、このまま……」

 

 いける。

 そう言おうとした。

 だがそれは、飛来するサムライによって中断せざるをえなかった。

 

「リューマ!?」

「ぬ……!」

 

 辛くも着地し、しかし勢いを殺しきれず、サムライは地面に刀を突き立ててようやく制止した。

 しわだらけの顔をしかめ、目玉のない双眸が眼前を睨む。ギーアはそれを追い、

 

「モリア、通信を切るわ。あと……合流は遅れそう」

 

 結果として、新たな判断を下さざるをえなかった。

 

『難敵か』

「ええ」

 

 そこにいたのは、異様な集団だった。

 敵意がある。敵であるのは間違いない。しかしその出で立ちは、ボロ布のような服をまとい、顔をズタ袋で包み隠すという悲惨なものであった。

 そしてズタ袋の正面には文字がある。

 奴隷、その二文字が。

 

「やっと来たか、――奴隷部隊!!!」

 

 周囲の敵勢から声があがった。

 

「とっととそいつらをぶち殺せ!」

「一人一殺だ! 捨て身でかかれよ、クズども!」

 

 囃し立てるような声の中、ズタ袋の集団の中から一際大きな体躯が進み出た。

 みすぼらしい身なりでありながら、それでもなお誇示される屈強な肉体。むしろその立ち姿には、餓狼じみた凶暴な野獣の気配が感じられた。

 奴隷部隊と周囲の連中は言った。

 ならばこの巨漢はその隊長であり、また、リューマを正面から押し返す戦闘力を持っているのは間違いなかった。

 

「ごごは……! 通ざねェ!!!」

 

 ひどくしわがれた声には、追い詰められた者特有の激情が込められていた。

 周囲のブギーマンズがそうであり、ギーア自身もまたそうであったように、日常的に痛めつけられ、隷属させられていることの証明だ。

 

「……くそっ」

 

 同じ境遇の者同士が戦う。その怒りと苛立ちは、ギーアに強く硬い拳を作らせた。

 だが、立ちふさがる彼らは退くことはないだろう。心を折られた彼らは自分自身を貶め、捨て駒となることを受け入れてしまっている。

 

「ウオオオオオオオオオォォォォ――――!!!」

 

 叫ぶ巨漢とともに、奴隷部隊が迫る。

 奴隷の身から抜け出た者たちと、今なお奴隷であることを強いられる者たち。その戦いが始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぉ!?」

 

 モリアは苦悶をこぼす。

 飛来する銃弾の群れを長刀で防ぎ、しかし抑えきれない衝撃に連打されたからだ。

 およそ人の操作でかなう以上の連射速度。ガトリング砲の類で撃たれたのは明らかである。

 射線の先を睨み、その先に一人の巨漢を見た。

 

「……そのナリ、“アイアンボーイ・スコッチ”か」

 

 小ぶりのガトリング砲を義手にした鉄下面の男だ。その容姿を見て、相手が誰かも分からないモリアではない。

 それは相手にしても同じであるらしかった。

 

「そう言うてめェがゲッコー・モリアだな。手配書通りの、クソ生意気なツラだ」

 

 “偉大なる航路”後半の海、“新世界”で名を立てた海賊同士なのだ、その姿や名前程度は知りえている。

 問題は、今それと戦っているかどうかだ。

 硝煙を吹く義手は今も下ろされない。それが意味するところは、長刀を構え直すモリアの行動と同じものである。

 

「てめェ、こんなマネしてどうなるか分かってんのか」

 

 戦意を解かない姿にいらだったのか、鉄下面から覗くスコッチの目が細められた。

 

「おれたちは、あの百獣海賊団の傘下だぞ。いや、それどころか今この島にはその最高幹部が来ている。生きて帰れねぇぞ」

「そういうのは、おれが最初にカイドウへ挑んだ時に言うんだったな」

 

 相手の言葉には、雪を解かすような怒気があった。

 しかし海賊ゲッコー・モリアの精神と経験は、それに臆して折れるほど軽薄ではない。

 

「おれはヤツに挑み、生き延びた。ヤツの部下や傘下ごときに今更ビビるとでも思ってんのか」

 

 そう返した瞬間、雄弁に勝る怒気が噴き出した。

 無言である。しかしそこには、言葉に勝る感情の発露がある。焼けつくような威圧感がモリアの肌をひりつかせた。

 確固とした激情は、まさに鉄のようだった。

 

「……自分の海賊団を壊滅させられたクセに、デケェ口を叩きやがる」

 

 まるで歯まで鉄になったかのような、強烈な歯ぎしり。そして、

 

「雑魚海賊の分際で……てめェみてェのを見ると、はらわたが煮えくり返るぜ!!!」

 

 怒号は、発砲音を隠すほどであった。

 

「うぉ……!」

 

 激昂が火ぶたを切って落とす。

 飛び退くモリア、一瞬前までいた場所が銃弾の嵐を受け、血肉の代わりとばかりに雪と土を散らす。土煙はさながら血しぶきのようだ。

 

「てめェが生き延びたのは、カイドウさんをキレさせるところまで及ばなかっただけだ! それを自分の実力と勘違いするとは、笑わせやがる!!」

 

 ただの銃弾ではない。

 間違いなく、弾の一発一発に覇気が込められている。ガトリング砲の連射速度に追いつく覇気の量と操作は、生半な練度によって成せるものではない。

 “新世界”の海賊は伊達ではないということだ。

 しかし、

 

「いきり立つなよ。お前と違って、心が折られなかったからってよ」

 

 モリアの嘲りは止まらなかった。

 

「何ィ!?」

「カイドウにビビって尻尾を振り、この海で上を目指すことを諦めたヤツが、見苦しいっつってんだよ」

「貴様ァアアアア――――――――――!!!」

 

 今度は回避を許されなかった。

 巨体の背後に隠された剣が引き抜かれ、袈裟斬りの勢いで斬撃が飛来したからである。

 片腕で放ったとは思えない威力に、迎え撃つモリアの足が止まる。そうなってしまえば敵の銃撃をかわすことなどかなわない。

 

「くたばれェ!!!」

 

 弾丸の嵐が迫る。

 覇気を帯びた鉄つぶての数は先ほどの比ではない。動きを止められた体で受ければ、モリアにしてもただでは済まないだろう。

 受け止めたとすれば、であったが。

 

「――戻ったな、“影法師”」

「何だと!?」

 

 飛来する黒い影。

 それが射線上に割って入り、その身を挺して銃弾からモリアの身を守ったのである。

 巨体でもって弾丸を受け止めるそれは、しかしあます事無くそれらを受け止め、血しぶきを上げることもない。

 何故ならそれは、文字通り影の塊だったからだ。

 

「き、貴様ァ!」

「おれは折れねェ。敗けても、必ず勝ちに戻る。――海賊王になるためにな!!!」

 

 “影法師”が形を変える。

 モリアの戦意そのままに、立ちはだかる敵を打ち破り、前へとただ進み続けるために。

 

 

 

「“角刀影(つのトカゲ)”!!!」

「!!!?」

 




そんな感じで、戦況は進んでいきます。図らずも再開後の初回に丁度いい、中間地点的な内容になったように思います。
次回あたり、戦況が動きます。今度は間を開け過ぎずにお出ししたいですね。



感想や評価をいただけると、今後の励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。