喩え、この身が業火に焼かれても   作:行方不明者X

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少女の日記 No.3

『×※月■日

 

何故、何でこのタイミングで生まれてきてしまったのか。やっと前を向こうとした所だったのに。漸く死ぬ覚悟が決まった所だったのに。漸く、Friskも世界も憎まずに生きていこうとした所だったのに。

これからずっと一つの屋根の下で生活していくのに、このままではFriskに手を上げて殺してしまいそうだ。本当に、弱い自分が嫌になる。』

 

 

 

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『×※月〒日

 

母さんが帰って来た。Friskを、連れて。

この一週間、何とかFriskを嫌いにならないように、憎まないように、殺さないようにと自分の気持ちとFriskへの想いを割り切ろうとしてきた。でも、まだ駄目だ。ベビーベッドの上で何も知らずに無邪気に笑うFriskを可愛いと思う半面、今ここであの柔かい首を絞め殺してしまえば私の未来は、という考えが頭を過ってしまう。本当に私は弱い人間だ。どうしたらいいのだろう。』

 

 

 

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『∀月○日

 

今日はFriskが生まれて、一ヶ月程になる。父さんや母さんはFriskに掛かりきりだ。生活もFrisk中心になってきた。まぁ、別にそこに不満はない。Friskはまだ首も座っていないし、仕方ない。それより私が怖いのは、これから先有り得るかもしれないシチュエーションだ。父さんも母さんも出掛けてしまって、Friskと二人きりにされることだ。母さんの手伝いでおむつの替え方やミルクの作り方なんかは覚えたけど(お風呂は除く)、その時にFriskに手を上げたりしてしまいそうだからだ。

今までは母さんと父さんの目があったから何とか手を出さずにいられたようなものだ。だから、二人きりになりでもしたら……私は、人として最低な事をしてしまうかもしれない。

どうしたらいいのだろう。いっそFriskが主人公とは同名の別人であると考えれば少しは楽になるだろうか。』

 

 

 

『∀月☆日

 

Friskに人差し指を握られた。私の指よりも小さい手に、驚いた。髪の毛も少し増えてきた気がする。少しずつ、着実に大きくなってきている。』

 

 

 

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『∀月#日

 

Friskが私に良く笑いかけてくれるような気がする。赤子のこの時期の笑顔は意図的に出るものじゃないはず。きっと、私の気の所為だろう。』

 

 

 

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『@月≦日

 

今日でFriskが生まれて二ヶ月程になるだろうか。学校から帰って来てFriskを構っていてふと思った。いつかは、今は言葉ですらない音を吐く口で、私の名前を呼ぶのだろうかと。何だか想像ができない。今目の前に居る赤子が、いつか同じ言葉を話すようになるなんて。

そしていつか、世界を滅ぼす選択をするかもしれないなんて。

何て事を考えてるんだ。駄目だ、考えるな。

 

 

Friskを、恨むな。』

 

 

 

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『α月♪日

 

Friskが生まれて三ヶ月半ぐらいだろう。標準より遅かったから不安だったがちゃんと首も座り、安定してきた。

最近は時間があればFriskの傍にいるようにしている。今のうちに二人きりになっても大丈夫なように慣れておこうと考えた結果だ。今は絵本の読み聞かせをしてみたりしている。たまに笑ってくれるのが、反応を返してくれているみたいでつい嬉しくなる。』

 

 

 

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『&月∀日

 

Friskが生まれて四ヶ月は経っただろうか。未だにFriskはベッドでの生活をしている。

最近気付いたが、いつの間にか思考の中心にFriskが居ることが多い。その殆どがマイナス方面の考えだったりするのだが。でも、二割ぐらいの割合で、「お腹空いてたりしないかな」などの心配したりする感情があるのも確かみたいだ。

もしかしたら、私はFriskに愛情が湧き始めているのかもしれない。だとしたら、傍にいるようにした甲斐があったというものだ。』

 

 

 

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『∞月$日

 

今日、帰ったらFriskがベッドの上で俯せになってた。ぎょっとして走って近寄ったら、直ぐに寝返りを打ってこっち向いた。滅茶苦茶吃驚した。そう言えば、今日は生まれて五ヶ月ぐらいになるのか。前に、母さんが五ヶ月ぐらいから寝返りし出すと言っていた気がする。そう考えると、Friskが着実に成長しているようで安心した。』

 

 

 

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『∧月∨日

 

宿題を終わらせてFriskに構ってたら、Friskが突然起き上がって、その場に座った。即母さんに報告しに行ったのは言うまでもない。母さん曰く、この頃になるとお座りすることが出来るようになるんだとか。つまりは、Friskの体の成長の証らしい。着実に大きくなっているようだ。』

 

 

 

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『≧月○日

 

Friskが生まれて、今日で七ヶ月ぐらいだ。離乳食にも大分慣れてきたみたい。そう言えば、前にFriskの口の中で歯らしきものを発見したのは書いたと思うが、本当に歯だったらしい。段々増えて生え揃ってきた。卒乳の日も近いかもしれない。』

 

 

 

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『=月>日

 

Friskが気が付いたら匍匐前進みたいな動きをしていた。ずりばい、というらしい。母さん曰く、此処まで来たらハイハイし出すのは秒読みなんだとか。行動範囲が広がってくるから注意しないと。

早く大きくならないかな。』

 

 

 

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『Щ月∞日

 

Friskがハイハイしている所に遭遇した。まだ一、二歩ぐらいしか進めて無かったけど、これならもう直ぐハイハイし出すだろう。

そろそろ秋が近いし、肌寒くなってくる。Friskも私も風邪引かないように気を付けなきゃな。』

 

 

 

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『Щ月○日

 

Friskは段々ハイハイも上手になってきて、思ってた通り行動範囲が広がってきた。最近じゃ良くティッシュをばら蒔いてたりする事が多くなった。もしかしたらFriskはいたずらっ子になるんじゃないかな……。

そう言えば、最近Friskの傍を離れようとすると追いかけられるようになった。懐かれている証拠だろうか。だとしたら嬉しいのだが。』

 

 

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『Щ月¶日

 

Friskが立った。つかまり立ちだったけど。母さんがちょっと台所におやつを取りに行った時に、母さんを追いかけようとしたのか、テーブルに掴まって立った。吃驚した。思わず写真撮った。』

 

 

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『≒月≠日

 

今日でFriskが産まれて十ヶ月程になる。つかまり立ちも上手くなって、テーブルなんかに掴まりながらだけど歩くようになった。骨盤が安定したんだろうか。』

 

 

 

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『≒月Ρ日

 

最近Friskが言葉らしい言葉を話そうとしている所を見かける。練習してるって言った方がいいんだろうか。まだ喃語とか音みたいな言葉しか話せないけど、いつか私の名前を呼んでくれる日が来るんだろうか。

……いや、私の名前より、お姉ちゃんと呼んでくれる方が嬉しい。

Friskと本当に家族になれたみたいで、そっちの方がいいな。』

 

 

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『≒月Ε日

 

ふとここ最近の日記を読み返してみたら、Friskの事ばかり書いている事に気がついた。恐れる対象ではなく、純粋に家族としてFriskの成長を喜んでいた。

何時からか、私はFriskに情が湧いていたらしい。

 

もしかしたら、私はFriskを、妹として愛しているのだろうか。そうだとしたら……とても、嬉しい。』

 

 

 

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『≒月>日

 

今日、Friskと遊んでいたら、突然Friskに、ママ、と呼ばれた。私が驚いている内にも何回も私に向かってそう言っているから、どうやら私を呼んでいるらしい。

本当は違うし、出来ればお姉ちゃんと呼ばれたかったけど………私は案外単純なのかもしれない。これだけで少し救われたような気がした。』


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