A lot of world~全て遠き理想郷~ 作:紅 幽鹿
クロノ・ハラオウンとの模擬戦を承諾した私は、アースラ内の訓練所に来ていた。
他の皆は訓練所の内部を見ることが出来る、モニタールームにいる。
[二人とも準備は良いかしら?]
「ああ」
「はい」
モニタールームのマイクから話しているのだろう、リンディ・ハラオウンの声が聞こえ、私達は返事をする。
[それで幸夜君、本当に良いのかしら?]
「良いと言っている。さっきの条件でクロノ・ハラオウンと模擬戦をする。言っておくが、貴様を舐めているつもりはないぞ……」
「ああ」
私は、この模擬戦が始まる前にある条件をリンディ・ハラオウンに言った。……その条件とは、私は武器、デバイスを使用せず、自身の肉体とスペルカード一枚だけを使用して模擬戦を行うという条件だ。
なのは達には反対されたが、此処までしないとクロノ・ハラオウンとの勝負が一方的な勝負になってしまう……。まあ、今の条件でも一方的になるかもしれんが……。
[では、始め!]
リンディ・ハラオウンから開始の合図と共にクロノ・ハラオウンはデバイスを構え、私は片足を上げその側の手を腿につけ、反対の手を顔の前に持っていく構え方……『古式ムエタイ』の『ムエ・マーヤン』の構えを取る。
「来ないのか?」
「では、遠慮なく行かしてもらおうか?」
「ッ?!ラウンドシールド!」
言葉と同時に私は片足で地面を蹴り、クロノ・ハラオウンに向かって飛び膝蹴りを放ち、クロノ・ハラオウンはシールドで防ぐが、威力を相殺できなかったのか、後ずさる……。
私はそのままクロノ・ハラオウンとの距離を詰め、前蹴り、回し蹴り、顔と腹に向かって両突きを放つが、全てを防がれる……。ふむ、近接戦闘をこなし、この程度のスピードの攻撃はある程度は防げるのか……。
「今度はこっちからだ!」
クロノ・ハラオウンは多数の魔力弾を放ち、私は全ての魔力弾を脚による連打(ラッシュ)で破壊する。
「スティンガーレイ!」
先程の魔力弾とは違い、高速の魔力弾が此方に向かってくるが、私は壁を蹴り、上に跳ぶことで魔力弾を避ける。
「空中じゃあ、避けられないだろう?」
クロノ・ハラオウンは、空中で身動きが取れない私に対して魔力弾を放つ。
「甘いぞ、フンッ!」
「なっ?!」
私は近くに迫っていた天井に向かって、ある程度の力で蹴り放ち、天井に脚をめり込ませることで、ある程度動けるようにし、魔力弾を右腕で掻き消す。
さて、『動』を全面的に出すか……。
「クロノ・ハラオウン……少し荒れるが、頑張ってくれ」
「何を言っt「ガァッ!!」グッ?!」
私は唯のパンチをクロノ・ハラオウンに放ち、私の拳を喰らったクロノ・ハラオウンは数メートル吹き飛ぶが、すぐに体勢を立て直す。
「グルルル……」
私は先程の構えとは違い、獣の様に四肢を地に付ける構えを取り、クロノ・ハラオウン目掛けて獣のように走る。
「スティンガースナイプ!」
先程と同じ魔力弾が私に向かって放たれ、私は『本能』的に避けるが、避けた魔力弾は追尾型だったのか、魔力弾は私に迫っていた。
「スナイプショット!」
クロノ・ハラオウンの言葉が合図だったのか、追尾型の魔力弾はさらに速度を上げ、私に迫ってきた。
「グルァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
私も走る速度を上げ、クロノ・ハラオウンに向かって行くが、目の前に追尾型とは違う魔力弾が放たれ、私は二つの魔力弾に挟まれた状態になるが……。
「グルガァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
「なっ?!」
目の前に来る魔力弾を避けず、魔力弾が私に直撃するが、そのままクロノ・ハラオウンに跳びかかり、私の『牙』をクロノ・ハラオウンの首筋に立てる。
「で、貴様はどうする?」
「……僕の負けで良い」
クロノ・ハラオウンは手を上げ、降参のポーズをした。
[二人とも、戻って来て下さい]
私達はリンディ・ハラオウンに言われたとおり、訓練所から出て、皆がいる場所に移動する。ああ、クロノ・ハラオウンにこれは言っておくか……。
「クロノ・ハラオウン」
「何だ?」
「私は『組織の正義』は嫌いだが、『個人の正義』は好きだし尊敬できる。だから、キミのような人間は好きだし尊敬も出来る」
「きゅ、急に何を言うんだ……」
私の言葉にクロノ・ハラオウンは混乱しているのか、あたふたとし始める……。クク、こいつは座薬と同じでイジりがいがあるな……。
「これからよろしく……クロノ」
「こちらこそよろしく……幸夜」
私達は互いの名前を呼んでから、握手をした。
~~~~~~
クロノとの模擬戦を終えた後、私達は皆がいる場所に戻ってきたが……。
「クゥ~ン、クゥ~ン♪」
「アハハ、くすぐったいよプライミッツ」
何故、ユーノはプライミッツに顔を舐められているのだろうか?
すると、私が戻ってきた事に気が付いたプライミッツはユーノから離れ、私の服の中に入り……。
「(幸夜、幸夜、ユーノにユーノに可愛いって、可愛いって言われたよ////)」
「(そうか、よかったな)」
念話で私に嬉しそう伝えてきたプライミッツの頭を撫で、私はリンディ・ハラオウンの方を向く。
「リンディ・ハラオウン、約束の件だが……」
「……分かりました。私達は貴方達が所持しているロストロギアには関与しません」
「感謝する。……だが、流石に勝負に勝っただけで見逃してもらうと言うのは私としては、申し訳ないのでね……。等価交換として、私が彼女達と合流するまでの間は協力してやろう」
私の言葉にリンディ・ハラオウンは訝しげな表情で私を見てくるが……。
「……分かりました。ご協力お願いします」
私はリンディ・ハラオウンと握手を交わすと、姉さんが念話で話しかけてきた。
「(幸夜、一体どういう風の吹きまわしですか?あなたが、こんな組織の協力をするなんて……)」
「(なに、彼らを利用しようとしているだけだよ)」
「(利用ですか?)」
「(彼らは『管理局』と名乗ってるんだ、それなりの情報を持っているはずだよ)」
「(情報ですか?……それで、幸夜は何が欲しいんですか?)」
「(……今回の黒幕の情報)」
「(今回の黒幕ですか?)」
「(姉さんにだけ言うけど、今回の騒動はフェイトの母親が関与している。だけど……)」
「(そのフェイトさんの母親を裏で操る本当の黒幕がいると、幸夜は言いたいのですね?)」
「(……良くわかったね)」
そう念話で伝えると、姉さんは頬笑みながら……
「(お姉ちゃんの『勘』ですよ)」
「(……本当によく当たる『勘』だね)」
姉さんの言葉に私は苦笑いを浮かべる。そして、姉さんがなのは達の方を向き、しばらく無言で見つめ合っていたが、リンディ・ハラオウンの方にいつの間にか近づいており、一度なのは達の方を向いて頬笑み、リンディ・ハラオウンの方を向き……。
「リンディさん、私達もあなた達に協力しましょう。これは私となのはさん達の総意です」
「あ、ありがt「ですが、条件があります」じょ、条件ですか?」
姉さんは指を二本立てた状態をリンディさんに見せる
「条件は二つです。一つ目は、私達の行動に対して拘束はせず、私達の行動は私達の意思を尊重すること。これは、私達は協力するとは言いましたが、貴方達に所属するわけではないからです。二つ目ですが、この協力関係の間、この事件に関係する貴方達の組織がもつ情報を公開することです。これは、私達の安全を確保するためです。これを守っていただけるなら、協力します」
「はい、ご協力お願いします」
姉さんの条件にリンディ・ハラオウンは暫く考えこむが、彼女達にとってなのは達の能力や現地人がいた方が良いと判断したのだろう、リンディ・ハラオウンは姉さんと握手を交わした。
「あ、一つ言い忘れてました」
「何でしょうか?」
姉さんはリンディ・ハラオウンと握手を交わしながら、ふと思い出したかのように言い……。
「もしも、もしもですよ?約束を破りましたら……」
「ッ!」
此方からも分るほど、姉さんは握っている手の力を強めており、リンディ・ハラオウンは苦痛に表情を歪める。
そして……。
「塵一つ残しませんので」
姉さんは某吸血鬼や某神父の様な笑みを浮かべながら言う……とりあえず姉さん、その笑顔を止めてくれ、なのは達の表情が引き攣ってるし、恐怖で身体が震えてる。あと、姉さんは私と同じで握力が強いんだから、もう少し力を抑えて……さすがに、リンディ・ハラオウンの手が潰れて、血飛沫が噴くシーンなんて誰も望んでないからね?