A lot of world~全て遠き理想郷~   作:紅 幽鹿

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今回は幸夜君の『異常』の一部が現れます


第16話~会話~

 リンディさんと約束を交わした後、のび太とクロノ以外の私達は高町家に向かっていた。

 うん?自分でも気づかない内にリンディ・ハラオウンの呼び方が変わっていたが……まあ、くだらないな……気にする必要はないか……。

 ちなみに、高町家に向かうのは、なのはが今後動きやすいようにする為だ。

 さて、そんなこんなで高町家に着いたんだが……。

「……グスッ、幸夜ぁ、大丈夫だった?」

「怪我はないかい?誰かに傷つけられてないかい?」

「幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜……」

「ご飯は食べてたの?しっかりと寝てた?おトイレはちゃんと行けた?」

 ……ドウシテココニイヤガルンデスカ?あと、いい大人達が泣きながら子供に抱きついてるんですか?抱きつかれて苦しいどすが?それと父さん、人の名前を連呼しないで何故か知らないけど怖いんですが?

【幸夜、言語が色々と混乱してますよ】

【かかかっ、最高じゃな】

 メアリー、人の思考をあまり読まないでくれ。ムルムル……後で、オボエテイロヨ……。

【お、お前さん、何故か嫌な予感がするんじゃが……】

 ムルムルの発言は無視をするとして、とりあえず私に抱きついている父さん達を剥がす。

「おじいちゃん、私は大丈夫。おばあちゃん、私には傷一つ付いてないだろ?父さん、怖い。母さん、ちゃんとご飯は食べたし、睡眠もしてたし、排泄もしてたさ」

 私の言葉を聞いて一人だけ……まあ、父さんの事なんだけど……を除いて安堵の表情を浮かべて、父さんは父さんで「幸夜に怖いって言われた……」と、絶望したような表情でブツブツ言ってる。

 ふと、横を見ているとなのはが士郎さん達に叱られていて、アリサは父親であるデビットさんと母親であるヘスティアさんに抱きしめられてた。

 こう言う光景を見てると微笑ましく感じるが、ここでリンディさん達にとっての爆弾発言をするか……。

「父さん達……私達は魔法にかかわることになった」

「「幸夜君?!」」

「幸夜?!」

 なのは、リンディさん、アリサが私の想像していた通りの反応を示すが、私の魔法と言う単語を聞いた士郎さん達はどこか遠い目をして……。

「「「「「「魔法か~」」」」」」

「え、あの、魔法をご存じで?」

 同じようなタイミングで士郎さん達が言葉を発し、それを聞いたなのはとアリサが面白い表情で反応している中、リンディさんが士郎さん達に尋ねると……。

「「ソウルに巻き込まれて」」

「「紫に巻き込まれて」」

「「美鈴に巻き込まれて」」

 ……おい、この返答は流石の私でも予想してなかったぞ。あれか?私達は高町家とバニングス家を魔法関係に巻き込む呪いでもあるのか?

「とりあえずリンディさん、魔法の事を包み隠さずに高町家に説明して下さい。私はアリサの事をバニングス家に説明しておきます」

 リンディさんに伝えた後、私はバニングス家の方に向かった。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 私はアリサに説明するかどうかを聞きアリサが承諾したので、デビットさんとヘスティアさんにアリサの中にある聖遺物を説明すると……。

「やはりか……」

 デビットさんとヘスティアさんの反応はまるで、こうなる事が『分かっていた』かのような反応だった。

「やっぱりって、どういうこと?」

 アリサの表情は困惑していた……。当然だ、自分に起こっている事を両親は予測していたような口ぶりだからな。

「……アリサの中にある聖遺物は元々、私が契約していた聖遺物なの」

 ヘスティアさんはしゃがみ込んで、アリサを抱きしめながら言う。

 ……待て、今ヘスティアさんは何と言った?『元々は私が契約していた聖遺物』だと?……ちょっと、待ってくれ。確かに一つの聖遺物に複数の人間が契約していた事例はあるが、ヘスティアさんは『元々は』と言った。と、言う事は、彼女はもう聖遺物と契約していないと言う事だ。

「少し待って下さい。ヘスティアさんが言っている事はほぼ不可能では?」

 聖遺物と契約したら、基本的には聖遺物と同化し、霊的に強い繋がりを持つことになる。だから、聖遺物を元の持ち主から強奪するのは極めて困難であり、奪い方としては、一度相手に殺され魂を吸収された後、相手の内側から体と聖遺物を乗っ取るという荒業のみぐらいだ……。

 だが、この荒技には相手の支配を振り切る強靭な魂が必要で、いくら魂が強くても、奪う相手と聖遺物との結びつきが強い場合は奪う事が出来ず、成功する確率は極めて低い。

「ええ、幸夜君が言う通り不可能に近いわ。だけど、それを出来る可能性がある人物が一人はいるでしょ?」

 ヘスティアさんの言葉に私はある人物に……てか、身内に思い当たる……。

「まさか、母さんが?」

「そうよ。紫の『境界を操る程度の能力』で私と聖遺物の契約を弄くってもらったのよ」

 ……こういう話を聞くと、母さんがどれだけチートなのか分かるよな。流石『全ての事象を根底から覆す能力』って比喩されるほどはあるな……。

「ヘスティアさんがどうやって聖遺物との契約を破棄したのかが分かりました。ですが、どうしてヘスティアさんはアリサに聖遺物との契約をさせたのですか?」

 それは、私とアリサの疑問だった。

 元、聖遺物の使徒だったヘスティアさんだったら知っていた筈だ、聖遺物の燃料が『殺した人の魂』だと言う事を……。

「……私がアリサに契約させたのは、アリサを……自分の娘を『また』失いたくなかったのよ」

「ま、ママ、『また』ってどういう事?それに、失いたくなかったって……」

「……アリサ、私がこれから話す事は全部真実よ。嘘偽りはないわ……アリサにとっては辛い話かもしれないわ……だけど、聞いてくれる?」

「……うん」

 混乱するアリサをヘスティアさんは強く抱きしめ、その瞳で真っ直ぐアリサを見つめながら言う。私はその場から離れようとするが、デビットさんに止められ、私もヘスティアさんの話を聞く。

「アリサ、あなたにはお姉ちゃんがいたの……」

 ヘスティアさんの言葉は衝撃的な言葉だった。私がデビットさんの方を向くと、デビットさんは無言で頷いた。

「貴女のお姉ちゃんの名前はアリス、アリス・バニングス。生きていたら美鈴ちゃんと美由希ちゃんと同じ年齢だったわ」

 生きていたら……この言葉で考えられる事は……。

「アリスは10歳の頃に……」

 ヘスティアさんはそれ以上言わなかった。いや、思い出すこと自体が辛くて喋れないのかもしれない。だが、この話ではアリサと聖遺物と契約させた理由が解らない。

「ママ、急な話だったけど、私にお姉ちゃんがいた事は解ったわ。で、でも、私と聖遺物の契約をさせた理由が解らないわ……どうして、契約させたの?」

「アリサ、あなたは、あなたは……」

 ヘスティアさんは、アリサから目を逸らし、口を閉ざしたが、決心したのか視線をアリサに戻し、先程の事実よりももっと衝撃的な事を口にする。

「アリサ、あなたは5歳の頃に瀕死の状態になったの」

「……え?」

「わ、私は、アリサをアリスの時のように失いたくなかったの……自分の、自分勝手な理由かもしれない……だけど、だけど!私は失いたくなかった!もう二度と、自分の愛おしい我が子を失いたくなかった!だから、アリサと聖遺物の契約をさせたの……あなたを失いたくなかったから……。アリサ、ごめんなさい。ごめんなさい……。」

 ヘスティアさんは泣き崩れ、デビットさんは唇を噛み、悔しそうな表情をしている。二人は自分のしてしまったことに、自分達の弱さに、自分の娘を人から人外に変えてしまった事が悔しいのだろう。

 そんな中、アリサは泣き崩れたヘスティアさんを抱きしめ……。

「ママ、パパ、ありがとう!」

 笑顔で、一言で、彼女の気持ちをデビットさんとスティアさんへと伝えた。

「ア、アリサ、私達を怨まない?」

 ヘスティアさんとデビットさんは驚いていた。アリサに怨まれると、アリサを人外へと変えた自分達を憎むと思っていた二人にとって、アリサの言葉は衝撃的だったのだろう。

「怨む?だって、ママ達は私のことを思ってやってくれたんでしょ?なら、怨まないわよ。まあ、最初は聖遺物だとか、自分の身体能力の変化とかで混乱してたけど……。だけど、もう一度言わせてね。私を愛してくれてありがとう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ、ママ、大好き!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 デビットさんとヘスティアさんはアリサを抱きしめ、泣いていた。泣いて泣いて泣いていた。普段なら、いい大人が思っているが……この考えがくだらない。それ位、二人が流している涙は美しかった。アリサを想う心が美しかった。アリサの想いが美しかった。

 偶にはこんな結末も……。

「悪くない」

 私はこの状況を見て、久々に嬉しくなった。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「グスッ、ご、ごめんなさい幸夜君」

「すまないね、こんな所を見せてしまって」

 暫くして、二人は泣き止んでいた。

「いえいえ。それで、お二人に言いたい事があります」

「何かな?」

 私は、デビットさんとヘスティアさんの前で正座し……

「アリサのことは、娘さんのことは私に任せて下さい」

 私が言葉を発した瞬間、辺りの空気が凍った。うん?何かおかしなこと言ったか、私?

「こ、幸夜。そ、それって//////」

「あ、アリサはやらんぞ!!」

 アリサが頬を染め、デビットさんが叫ぶ……。急にどうしたんだ?

「あの、何を勘違いしているのか分かりませんが、私はアリサの聖遺物の操作について任せて下さいというつもりで言ったのですが?」

「あ、そっちね。ハァ~、良かった~」

 ヘスティアさんも安心したかのように、息を吐く。それ以外に何があると言うんだ?

「でも、私の聖遺物はママと同じように紫さんになんとかして貰えば……」

「それは危険だ」

「どうして?」

「聖遺物には四つの位階……まあ、ゲームとかで言うレベルだと思ってくれればいい。四つのレベルがあるんだが、アリサの場合、まだレベル1にすら達していない。最低、レベル2までは達してないと聖遺物が暴走して、最悪の結末を引き起こす」

 私の言葉にアリサは頷く。

「だから、アリサよりレベルが上の私がアリサに聖遺物の制御方法を教え、最低でもレベル2に上げるつもりだ」

「分かったわ。でも、幸夜は私より上って言ったけど、どれ位なの?」

「……それは内緒だ」

 流石に、『流出位階』に達してるとは言えないな……。

「だから、デビットさん、ヘスティアさん、アリサの事を私に任せてくれませんか?」

「それは、私達のセリフよ。幸夜君、あなたには迷惑を掛けるかもしれないけれど、アリサの事をよろしく頼むわ」

「幸夜、私からもお願い。私に聖遺物の制御の仕方を教えて」

 私は二人の言葉に頷いた。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 バニングス家との話し合いが終わり、なのは達の所に戻ると、あっちも話し合いが終わったらしい。

 なのはの喜んでいる様子から、話し合いは成功したようだな。

 私はリンディさんの所に向かい、バニングス家との話し合いを終えたことを伝えた。

「では、なのはさん達の事は任せて下さい」

「はい、お願いします」

 リンディさんと桃子さんが言葉を交わしている中、士郎さんが私に近づいてきていた。

「幸夜君、勝手かもしれないけど、なのはのこと頼むよ」

「はい、命に変えても守りますよ」

 すると、士郎さんは顔を顰めていた。何故だ?

「幸夜君、気持ちは嬉しいけど『命に変えても』なんて言っちゃ駄目だ。命は大切なんだから」

「何を言ってるんですか、士郎さん?」

 アハハ、士郎さんは面白い事言うんですね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の『命の価値』なんて、これ位しかないでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 直後、士郎さん達の眼は見開かれていた……。そんなにも驚く事はないと思うんだが?

「じゃあ、母さん。先に帰ってるね」

 私はその場で『スキマ』を開き、久々の我が家に向かった。

 

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