A lot of world~全て遠き理想郷~ 作:紅 幽鹿
私が出掛けの支度を終え、玄関で編み込みブーツを履いていると……
「幸夜、何処か出掛けるのですか?」
「おはようございます、藍(らん)さん。少し散歩に行ってきます」
私は我が家のお手伝いさんで、家族の一人『八雲(やくも)藍(らん)』さんに挨拶をする。
「分かりました。それと幸夜様」
「はい。何ですか?」
「ソウルが、『今日は、散歩は早めに終わって帰ってこい』と申しておりました」
「分かりました。ありがとうございます」
私は藍さんにお礼を言ってから、玄関から出て行く。
~~~~~~
私が玄関から出ると、庭の手入れをしている人物を見つけ、その人物は私に気が付いたのか庭の手入れを止め、私の方を見る。
「おはようございます、幸夜さん。お出掛けですか?」
「おはよう、美鈴(メーリン)。少し散歩に行ってくる」
私は我が家の門番である『紅(ホン)美鈴(メーリン)』に挨拶をする。……彼女は本来なら、別の所の門番をしているはずなのだが、彼女の本来の主人が何処にいるのか分からないらしい。
ちなみに、我が家は大豪邸だ。理由は母さんが創った会社――『八雲グループ』だったか?――と父さんの『仕事』でお金がけっこうあるからだ。
「じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
私は美鈴に挨拶をしてから庭を横切り、門を通り外に出た。
~~~~~~
家から出た私は近所にある『多摩川』に着き、土手に寝そべり、暫く目を瞑っていると……。
「かかっ、お前さんや儂と少し喋らんか?」
チッ、聞こえてきた声に内心苛立ちを覚えるが、とりあえず目を開け後ろを振り向くと、そこには、鍵穴の付いた首輪を付け私と同じくらいの年齢の褐色肌の少女が立っていた……。
「……くだらない。貴様と喋るより此処で寝ていた方が有意義だ。」
「何気に酷いこと言うの~。それと、ちゃんと名前で呼んでくれんか?儂はお前さんに名付けられた名が好きなのじゃよ」
「……くだらん」
私と喋っている少女の名は『ムルムル』……私の眷族で「 」の搾りかす。私の全てを奪い、私が最も憎悪する存在。
そして……
本来あそこで消滅するはずだった私を転生させた『張本人』の一人だ……。
私はムルムルの存在を無視し、眠りについこうとすると……。
「マシュマロ……食べる?」
今度はムルムルとは違う声が聞こえ、もう一度眼を開けると、ニコニコと笑いながら白い雪のような少女が私にマシュマロを差し出して来ていた。
「……貰おう」
私は少女からマシュマロを受け取り、狐のお面を少し外してから食べる
「おいしい?」
「ああ、おいしい」
私の言葉に少女のニコニコ度が増す。
「私は榊原(さかきばら)小雪(こゆき)だよ」
「私は八雲幸夜だ」
「じゃあね~」
少女はバイバイと手を振りながら去っていた……一体、何だったんだ?
~~~~~~
「……ただいま」
多摩川での謎の少女……榊原小雪との出会いから数時間後、私は帰宅した。
「お帰り、幸夜」
スーツに着替えた父さんが私に着替えてくる。
「父さん、『仕事』?」
「ああ、『弘輝(こうき)』と一緒に食人鬼(グール)狩りにね」
父さんの友人の『榊原(さかきばら)弘輝(こうき)』さん。父さんと同じ『請負人』で、『請負人』の中じゃあ、結構強い部類に入る人らしい。……って、『榊原』?まさかあの少女の血縁者か?……まあ、私には関係ないことだが……とりあえずこれだけは言っておこう……
「父さん、顔とか体のシルエットとか完全に美少女だからといって、その人と甘い雰囲気になっちゃいけないよ」
私の言葉に父さんがズコッとこける。
「あのね!俺は男だよ!お・と・こ!どうして男の弘輝と甘い雰囲気になるんだよ?!」
「……父さんの伝説その一、幼稚園、小学校、中学校、高校で学年問わず一年間で、ほぼ全ての男子生徒に告白され、男子にはモテたが、女子にはごく一部にしか好意を持たれず、ほぼ全ての女子が敵だった」
「ゴフッ!」
ショックのせいか、父さんの膝が震え始めるが……そこら辺は無視だ、続けよう。
「父さん伝説その二、父さんと同期の男性の初恋の相手はほとんどが父さんで、その中には士郎さんと弘輝さんも含まれる」
「や、止めて!お父さんのライフはもうゼロなんだよ!お父さん、泣いちゃうぞ?こうやって、頬を擦り合わせ続けるぞ」
父さんが、涙目で私に抱きつき、プニプニと柔らかい頬を私の頬に擦り合わせてくる……。おい、父さん、何か鼻息が荒くなってきてないか?
「フフフ、幸夜♪幸夜♪コウヤァ♪」
何故か恐怖を感じるぞ?
「父さん、仕事は良いの?」
「ハッ、そうだった。それじゃ、行ってくる!」
「いってらっしゃい」
私は父さんを見送ってから、部屋に戻ろうとすると……。
「幸夜お兄ちゃん、帰ってたの?」
「ああ、今帰った所だよ……橙(チェン)は何をしてたんだ?」
私は家族の一人『八雲(やくも)橙(チェン)』の方に視線を向ける。
「私?私も散歩に行ってたんだ。あと、幸夜お兄ちゃん、藍しゃまが食事の時間だって、それと、後で遊ぼうね♪」
私は橙に引っ張られるようにリビングの方に向かった。
~sideout~
~side小雪~
「えへへ~♪」
「あら、どうしたの小雪?」
今日出会った子を思い出して僕が笑っていると、お母さんが話しかけてきた。
「あのね、今日多摩川に遊びに行ったらね、キツネさんのお面を付けてたね子を見つけてね、マシュマロあげたら食べてくれたんだ~♪」
「そう、よかったわね」
「うん!」
お母さんが僕の頭を撫でてくれる。
えへへ、あのキツネのお面の子にまた会えるかな?
~sideout~
~side幸夜~
食事を終え、母さん、姉さん、藍さん、橙で食後のお茶を飲んでいると……やはり来たか……人数は……七人程度か?……そのうちの二人は美鈴と闘ってる……
私達は『裏』の方面にも活動している為、こう言う侵入者は多い……さてと
「母さん、少し客が来たようだ。お相手してくるよ」
「そう……気を付けるのよ」
私は『スキマ』を開き、その中に体を沈めて行く……
【幸夜、今回は私を使いますか?】
「(ああ、だが『創造』は使わない。『活動』と『形成』だけ使う)」
【わかりました】
さてエターナルとの会話も終わったことだ……『喰い』に行くか……
~sideout~
~side三人称~
八雲家の敷地内、その敷地内には武装した五人の成人男性達がいた。
「今から、屋敷に侵入してこの一家を攫う」
「「「「了解」」」」
侵入者の中でリーダー格であろう人物が仲間たちに呼びかけ、残りの四人が頷く。
しかし、彼らは後悔するだろう。この家に侵入するのでは無かったと……。
「初めまして、侵入者諸君」
「だ、誰だ?!」
侵入者たちは突然聞こえてきた声に驚き、武器を構えて声が聞こえた方を向くと、そこにいたのが子供……しかも、攫う対象だった八雲幸夜だった事に武器を構えるのを止める。
「おいおい、対象が一人で来たよ」
侵入者の一人がニヤニヤしながら近づくが……
「近づくなよ、人間……」
「なっ……」
幸夜に近づいて行った侵入者は幸夜に睨まれた瞬間、動けなくなり、次の瞬間、侵入者の体は氷漬けにされる。
「な、なんだ?!」
「なに、ただ『聖遺物』の『活動』で氷漬けにしただけだが……まあ、貴様らに言っても理解はできないか……」
仲間の一人が氷漬けにされたことに他の侵入者たちは驚き、幸夜の冷たい声に恐怖し、幸夜は侵入者たちに銃を握る様な形にした手を向ける。
「形成(イェツラー)―― 冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)」
Yetzirah―― Mary Gewehr
幸夜の手に冷気が集まり、禍々しい一つの装飾銃が出現する。
「世界の全てよ凍れ、 美しいまま永遠に」
Seien Sie gefrorene Welt alles, und ist schön; in Ewigkeit
彼は詠う、彼だけの祝詞を……
「祈れ、祈れ、祈れ、祈れ」
辺りに女性の歌声が響き渡る。
「その祈りを砕いてやろう」
幸夜が続くように歌う。
「罪人の血は処刑道具に捧げよう」
侵入者たちは恐怖し、思う。
「罪人の肉は処刑場に捧げよう」
ここは処刑場なのだと……自分達は今から処刑されるのだと……
「渇きを癒せ、空腹を満たせ」
自分たちの血肉は処刑場の渇きを癒す為の物になるのだと……
「祈れ、祈れ、祈れ、祈り続けろ永遠に」
次の瞬間、幸夜が『冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)』の引き金を引き、侵入者の一人の頭が弾け、血の雨が降る。
「撃て!撃てぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
幸夜に恐怖した侵入者たちは当初の目的を忘れ幸夜を殺そうと引き金を引き、弾幕を張るが……
「何なんだよ!何なんだよこの子供は?!」
「何で空中を走りながら向かって来てるんだ?!」
幸夜は侵入者たちが発砲した銃弾を『足場』にして、侵入者たちとの距離を詰める。
「バイバイ」
侵入者たちに近づいた幸夜は、侵入者の一人の頭に銃口を突き付け発砲し、侵入者の頭は『凍りながら』粉々になり、辺りに血と氷漬けにされた脳と眼球が飛び散る。
残り二人の侵入者のうち、一人はナイフを取り出し、幸夜の心臓を刺そうとするが、幸夜は『冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)』でナイフを弾き、そのまま引き金を引き、足に銃弾を喰らった侵入者は脚が凍り、砕け散り、倒れ、幸夜は自分の足で倒れた侵入者の頭を踏む潰す。
「クククッ……ヒヒヒッ……アハハハハハハ!!!!!!」
「ヒッ!」
幸夜の笑い声に最後に残った侵入者は腰を抜かし、そんな侵入者に幸夜はゆっくりと歩み寄る……
「た、助けて!!」
侵入者は命乞いをするが……
「助けてほしいのか?……だが、駄目だ」
幸夜は引き金を引き、最後の侵入者を殺した……。
~sideout~
~side幸夜~
最後の侵入者を殺した後、私は聖遺物に意識を向ける。
「(『魂』は『喰ったか』?)」
【ええ……しかし、マズいですね……こんなマズい魂は久々ですよ】
「(そうか……まあ、『魂の質』が小さいからな……)」
【そうですね……それより、胸の辺りは大丈夫ですか?】
「(大丈夫だ、ちょっとした熱と痛みを感じるだけだ)」
私は服を捲り、胸の辺りにある彼女との契約の証でもある『銃痕』を見ながら言う。
【そうですか……。それで、美鈴さんの方はどうですか?】
「(先程まで感じていた『魂』は、もう無くなってる。つまり、美鈴の所は終わってるようだ)」
【では、美鈴さんの方に向かいましょう】
「(そうだな)」
私は美鈴の方に向かい、死体を『スキマ』の中に入れそのまま家に戻って行った。
幽「はい、どうも二回目です♪」
幸「後書きだ。とりあえず、今回の変更点をまとめろ」
幽「了解!」
・幸夜とソウルの絡み
・お父さん伝説
・銃痕
幽「です」
幸「ちなみに、父さん伝説はまだまだあるから楽しみにしておいてくれ」
幽「では、皆様また次回にお会いしましょう」
幸「みなさん、さようなら」