大洗女子学園艦は、悪天候などに見舞われることもなく、予定通り母港・大洗に寄港した。
来るエキシビションマッチに向けて大洗の面々は一層練習に励み、試合に向けてできる限りのことをしてきた。ただ、今回大洗とタッグを組む知波単学園は、航行している場所が離れすぎていて、合同練習は結局叶わなかったが。
それでも大洗は大洗で練習を進め、試合には万全の状態で臨めるようにしている。
「村主~、Ⅲ突はどんな感じ?」
「ああ、エンジンは大丈夫。足回りも・・・問題ないな」
「それじゃあ、次はルノーをお願いね」
「分かった」
その万全な状態にするためには、綿密な作戦や選手のコンディションもさることながら、レオポンチームと村主の整備も重要だ。
村主は一度戦車に乗り、実際に戦車で戦うことがどれだけ大変かを知っているから、整備により心を込めることができている。これまでも真面目にやってきたつもりだが、戦うことの大変さを知って、そんな彼女たちが安心して戦えるように戦車を整備しようと思うようになったのだ。
(・・・・・・明日か・・・)
整備の手を止めて、村主はふと思う。
明後日はいよいよエキシビションマッチだが、明日は束の間の休息とも言える休日。そしてこれが肝心、ナカジマと一緒に出掛ける日だった。
約束をした日から、頭にそのことが根付いている。それだけ明日を楽しみにしていることに他ならないが、同時に不安なこともある。
ナカジマが明日のことをどう思っているかだ。
(・・・OKしてる時点で、悪いと思ってはいないんだよな・・・?)
一緒に出掛けることにナカジマが頷いてくれた時点で、まず今回のことを悪く思っていないと信じたい。
だが、ナカジマはそれ以来別に変わった様子もなく皆と接している。別に動揺してほしいわけではないが、ああして何も意識していないように見えると少しばかり寂しい。村主のことを特別意識しているというわけではない、ということだから。
しかし、村主は首を横に振る。
(いやいや、自惚れんなって)
意識してくれていたら、と期待していたが、それに振り回されて悶々とするなど馬鹿馬鹿しい。
というか、今は戦車の整備中で余計なことなど考えている暇はないのだ。
自分を律するためにスパナで自分の頭を軽く叩いたが、地味に痛かった。
お互い整備で疲れているだろう、ということで当日の待ち合わせは朝の10時に決まった。
場所は学園艦の中層にある公園で、村主とナカジマが一番最初に出会った場所でもある。航行中はここから広大な海を見られるが、入港中の今は海の代わりに大洗の町が見えた。
寮を出る前に再三自分で確かめた村主の服は、実習の際に持ってきた服の中でも一番良いものだ。まさか実習先でこんなことになるとは思わなかったので、こんなシチュエーションに合う服を持ち合わせていなかったのは失策だ。
そこで村主は、『実習』という言葉から、担任の『粗相すんな』という忠告を突然に思い出してしまう。
(もしかして、これって『粗相』になるんじゃないか・・・?)
実習先で女子をデートに誘う、場合によってはそれに抵触するかもしれない。今更それに気付いてしまい、不安が心の中で渦巻き始める。
「おはよ、村主」
そんな中で差し込んできた声に振り返ると、そこには確かにナカジマが立っていた。
薄い青と緑のツートンカラーのフリル半袖シャツに、七分丈のジーンズという装いの彼女は、色もあって涼し気な雰囲気を見せている。
その瞬間、村主は一瞬だけ息が止まったように錯覚し、不安が霧散する。普段は自動車部のつなぎを着ているところしかほとんど見てないから、一層新鮮な感じがしたのだ。以前一度だけ休日に会った時も私服だったが、その時とはまた違う雰囲気がする。
「・・・ああ、おはよう」
「随分早いね」
「少し早く起きてな・・・」
まさかそれは今日のことが楽しみだったからとは言えないし、ここに30分前から来たことも明かせない。
「さて、それじゃ早速行こうか」
「今日はよろしくな」
「いやいや」
ナカジマはすぐに歩き出し、村主も後に続く。今日のことをナカジマはどう思っているんだろう、という疑問は置いておくことにした。
下船して大洗の地に足を着けると、村主は大きく息を吐く。実習が始まって以来の陸なので、1か月と少しぶりの上陸だ。元居た学校では、それ以上に長い間下船しなかったこともあるが、何分ここでは色々ありすぎたので余計に久しく感じる。
さて、村主は土地勘がないので、今日歩くルートは全てナカジマに一任していた。聞けば、商店街を回りつつ水族館に向かうらしい。
「大洗って高い建物とかないんだな」
「うん。高い建物と言ったらマリンタワーだけだね。その分、ごちゃごちゃした街並みじゃなくていい感じなんだ」
「あ、それは分かる」
高層ビル群も嫌いではないが、どこか狭苦しく感じることがある。反面、大洗はそう言った場所もないから結構広々とした印象があるのだ。
「連絡船に乗る時、町を見たりはしなかったんだよね?」
「ああ、接続が悪くてな。ゆっくり見る時間もなかった」
「そっか。それじゃ今日はゆっくり見て回ろう」
ナカジマが先導する形で歩くが、村主は歩調を少し早めて横に並ぶ。
「悪いな・・・大事な試合前なのに」
「気にしなくて平気だよ。私も試合前にリフレッシュしたいなって思ってたし」
ナカジマは気にしてなさそうに笑う。
そんなナカジマを疑うわけではないが、無理していないかどうか、それが村主が心配だったが。
「・・・むしろ、嬉しいし」
「え?」
ポロっとこぼしたその言葉は、思わず訊き直さずにはいられなかった。
見ればナカジマの顔は、ほんのりと赤く染まっていて、視線も下に向いている。
「こうして村主と、出かけられるのが。そして、誘ってくれたことが」
それは果たして、村主が奥手な奴と思われていたからだろうか。
それとも、何か別の『特別な』気持ちを村主に抱いているからだろうか。
そこから先を追及すると『男が廃る』と村主の本能が発したので、『そうか』とだけ答えて前を見る。
最初の目的地が見えてきたが、それでもナカジマのことが気にならずにはいられなかった。
やってきたのは、港にほど近いアウトレットモールだった。早速買い物を楽しむのではなく、あくまでも名所の1つとして楽しむだけである。
「結構色んな店があるな」
「そうだね~。ここに来れば基本色々揃ってると思うよ」
洋服やインテリア、雑貨などの品揃えは多岐に渡り、お洒落な雰囲気のカフェや海鮮料理を扱うレストランなども充実している。敷地の中央を貫くように花壇が設えてあるが、元は水路だったらしい。有効活用していると言える。
そんなモールをしばしの間適当に回る。村主もナカジマも、特に今欲しいものは無かったので、お店に入って『これとかイイ感じじゃない?』とか、『あれとか面白そうだな』と、商品を眺めながら取り留めのない言葉を交わす。
そうして歩いていると、あるショップが目に入った。
「ウォーターレジャー専門店?」
主に水着や浮き輪、ビーチサンダルやパラソルなどの海のレジャー用の商品を揃えている専門店だ。ナカジマはそこを見て『ああ』と思い出すように。
「大洗はビーチも有名だからね。すぐに遊べるように、こういうところにもあるんだよ」
「へー」
「大洗のみんなも水着はここで買ったんだよ。私もだけどね」
「水着・・・・・・」
それを聞いて思い出してしまうのは、以前スズキの謀略に嵌り、うっかり水着姿のナカジマと鉢合わせをしてしまったこと。あの時のことは、自分の発言含めて全てを鮮明に覚えてしまっている。
その時の気まずさと、自分の発言を思い出して、村主は『くっ』と呻きながら腹を押さえる。
「・・・・・・」
ナカジマもどうやら同じことを考えてしまったのか、顔が赤い。確かにあの時も、ナカジマは(当たり前だろうが)恥ずかしそうで、また気まずそうに見えた。
とりあえず、この空気はどうにかしたかったので、村主は『そろそろ出ようか』と持ち掛けてその場を離れることにする。
モールを後にすると、ナカジマは商店街へと村主を連れてきた。
まず目を引くのは、『大洗女子学園優勝おめでとう!』と書かれた横断幕。さらに、店先には同じように大洗を祝う幟が立っている。商店街全体がお祝いムードだった。
「すごいな・・・」
「いやー、優勝した身としては嬉しいよ」
横断幕を見上げるナカジマは照れ臭いらしい。こうも大々的に祝われると、嬉しいのと同時に恥ずかしいのかもしれない。その気持ちは、なんとなくだが村主も分かった。
さて、商店街は都市部のアーケード街のように華やかな感じはなく、ほぼ全て個人経営の商店で、まさに昔ながらの商店街と言った感じだ。だが、それでも人は結構多くて賑わいを見せている。
「ちょっと前まではこんなに人もいなかったんだけどね」
「そうなのか?」
「うん。あのとんかつ屋のおじさんも言ってたけど、私たちが優勝してから観光客が増えたんだって」
もともと大洗はビーチや水族館など観光資源を売りにしていたが、今一つ客足が伸びなかった。だが、大洗女子学園が優勝し、話題を呼んだことで大洗を訪れる者も増えてきている
「それに少しでも力を貸すことができたんだとしたら、私も嬉しいよ」
ナカジマが笑う。自分たちの故郷が廃れているのは流石に見ていて気持ち良くないだろう。自分たちの努力の甲斐あって町に活気を取り戻せたのなら、それは十分喜ばしいことのはずだ。
「まあ、私らは決勝戦からの参戦だったからちゃんと貢献できたかなって言うと、それは微妙だけど」
言って肩を竦めるが、その肩に村主はポンと手を置く。
「前にも言ったと思うけど、大洗が優勝できたのは、ナカジマが戦車を整備して、ちゃんと戦えるようにしたからだ。多分だけど、ナカジマがいなかったら戦車道を復活させることもできなかっただろうな」
正確に言えば、ナカジマ『たち』だ。
けれど、今この場にいるナカジマにだけはハッキリとそれを伝えたかった。そして自分の気持ちを強く伝えたくて、村主はそう言った。
「もっとナカジマも喜んでいい。胸を張っていいんだ」
その言葉に、背中を押されたような感じがした。
だから、ナカジマは。
「・・・ナカジマ?」
そっと、村主の手を握った。これには、言った本人の村主も困惑する。
「ん?いや、嬉しいのを表現しようかなって」
言いつつ、ナカジマは村主の手を放そうとはしない。前に雨の降る中一緒に帰った時も、こうしてナカジマは自然と村主の手を取ってきた。こうする理由が村主には分からないが、嫌ではないので拒絶もしない。
ナカジマが嬉しく思っているのであれば、振りほどくわけにもいかない。
だからその手を優しく握り返すと、ナカジマは笑ってくれた。
商店街を歩いているうちにお昼時となったが、ナカジマ曰く『1つのお店で食べるのもいいけど、食べ歩きも面白い』ということで、食べ歩きにした。
夏休みシーズンということで外に簡単な屋台を出しているお店も多く、まずはお好み焼き屋の提供する『たらし焼き』という粉ものを食べてみた。
「お好み焼きみたいだな」
「材料はちょっと違うけどね。おやつ感覚で食べれるよ」
確かにお好み焼きと違って軽くつまめる感じで、美味しかった。
その次はパン屋に寄って、それぞれ気に入ったパンを買い店先で2人で食べた。村主はコロッケパン、ナカジマはまた好物の挟まった焼きそばパンで、焼きたてらしく美味しかった。
さらに商店街を進んでいくと、カーブの近くに焼き鳥・唐揚げ屋があったので、そこで唐揚げを買って食べつつ先へ進もうとすると。
「ナカジマさん、村主さん」
私服のみほと沙織、華とばったり出会った。先に気付いたのはみほで、つられて沙織と華も気付く。沙織とみほは、近くにあった団子屋の串団子を1本持っていたが、華は意外と食べる方なのか何本も団子が載った皿を持っている。
「西住さん。下調べ?」
「はい。明日のエキシビションで、この辺りを作戦に使えないかなって考えてたんです」
言われて村主は、今自分たちが立っている場所を改めて見直す。
ずっと真っ直ぐだった商店街が、ここだけ急なS字カーブになっている。いきなり複雑な地形になっているので、初めて来る人にとっては難所だろう。しかも、カーブの傍には宿が建っていて、下手をすればここに突っ込んでしまうかもしれない。
「作戦って・・・フェイントとか?」
「そうですね。前に聖グロと練習試合をした時もマチルダが対処できなくてここに突っ込んだので・・・」
聖グロリアーナの練習試合云々については良く知らないのだが、村主の心配はすでに現実のものになってしまっていた。戦車道の試合による建築物の破損は、戦車道連盟から補償が下りるので心配も不要だが、そんなことには極力ならない方がいいだろう。
しかしみほは、明日の試合でもまたここを作戦で使おうと考えているらしい。意外と容赦ない性格をしているのかもしれなかった。
「大変ですね・・・休みの日なのに」
ナカジマとの話が一区切りついたところで、村主は3人を見て話しかける。せっかくの休日なのだし、試合のことや戦車のことを考えずにリラックスした方がいいだろう。尤も、みほは大洗を率いる隊長だから、それも難しいのかもしれないが。
「ああ、いえ・・・休みなのでお出かけがてら。私、大洗の町ってまだそんなによく知らなくて・・・」
「そうですか・・・」
そういえば、みほは熊本から転校してきたという話を思い出す。その話は『深入りするな』とナカジマからすでに忠告を受けていたので、無難な返事をしておく。
「あ、ところで村主さんとナカジマさんは・・・?」
話の流れを変えようとしたのか、みほは村主たちに水を向ける。
しかし、村主たちが何かを答える前に、2人の雰囲気を敏く感じ取った沙織が割と強引に間に入った。
「あ、み、みぽりん!次は向こうの通りの方を見て回ろ?結構路地とかもあって作戦に使えるかもしれないし」
「え?うん・・・」
「それではお2人とも、ごゆっくり」
3人はそそくさと村主たちが来た道を引き返すように歩き出す。みほだけは未だ状況が掴めず、沙織に背中を押される形だったが。
「隊長も大変だ」
「そうだね・・・。休みの日でも考えなくちゃいけないし」
そんな彼女たちを見送ってから、2人はまた歩き出す。
「あの3人、結構仲が良いんだな。同じチームだからなんだろうけど、よく一緒にいる」
「同じクラスだしね。それと、最初に大洗でできた親友だって西住さんが言ってた」
「へえ・・・・・・」
そういう間柄ならば合点がいく。同じ隊長車に乗っていて、親友だからこそ、こうした休日に一緒に出掛けたり作戦を考えている。
みほにどんな事情があったのかは知らないが、ああして信頼できる友達ができてよかったと思う。
「あ、そうそう」
そこでナカジマが思い出すように話し始める。
「武部さんって、まあ『恋に恋する』子なんだよね」
「何だそりゃ」
「要するに、恋愛することに強く憧れてるんだよ」
ああ、と村主は腑に落ちた気がした。まだ大洗に来たばかりのころ、徹夜整備の際に弁当を作ってくれた時、質問がやたらと『そういう感じ』のが多かったのはそれが理由だと、今頃気付いた。
「だからさっき、ちょっと無理矢理気味に西住さんの気を逸らしたんだろうね。邪魔しないようにって」
「・・・邪魔って」
そして沙織の性格がそういうものだと分かれば、ナカジマの言っていることも自然と伝わってきそうになる。
「私と村主が・・・デートしてるんだって思ったんだろうね」
そしてその真意を、あっけなく明かした。
ナカジマの口から『デート』という言葉を聞いて、村主はたまらず顔を押さえる。自分の顔に熱が集まってきて、赤くなっているのが自分でも分かっていたから。ナカジマに見られたら何と言われるか。
「・・・元々は俺が誘ったからなんだけど、ナカジマは嫌じゃなかったか」
それはさっき訊いたが、デートと勘違いされた今もその気持ちは同じかと、それだけは不安だった。
「全然、嫌じゃないよ」
これもまた、ナカジマは躊躇なく答えた。それには村主もすぐ反応できなくて、思わず顔から手を下ろして、足を止める。
「“そう”捉えられることも、悪い気はしないからね」
屈託のない笑みでそう言われてしまって、村主は瞬きさえも忘れてしまう。
悪い気はしない、とはどういうことか。
そんな村主の夢うつつな気持ちを現実に引き戻したのは、携帯の着信音だった。
「もしもし!?」
『おー、村主。どうした、そんな慌てて?』
相手の名前も確認せず反射的に電話に出たら、担任だった。相手が相手なので、冷静になろうと努める。
「・・・いえ、大丈夫です。問題ありません」
『そう。実習はどんな感じ?』
「ええ、まあ概ね順調です」
『今は何してるの?』
「大洗の町をちょっと。今日は休日で」
どうやら担任は近況を訊いてきただけらしく、質問は別に変ではない。
それに対して村主は、当たり障りのない返事をしておく。大洗の女子と出掛けている、と言えば面倒なことになるのは目に見えていた。
『あと1週間で実習も終わりだな』
「・・・そうですね、何かあっという間な感じでした」
担任に言われて、村主もハッとする。
実習が終わるのは8月31日。もう1週間とそこらぐらいしかない。もう大洗にいる時間は残りわずかと言うことになるし、それは今のようにナカジマと顔を合わせ言葉を交わす時間も少ないことと同義だ。
「残りの時間も、精一杯努力します」
『その意気よ。頑張って』
だが、残りわずかだからと言って実習を疎かにする気はない。口先だけではなくて、本当にそのつもりでいる。
そして電話を切ると、様子を伺っていたナカジマに声をかける。
「悪い。行こう」
「誰から?」
「ウチの学校の担任。実習が後1週間ちょっとで終わりだから、まあ近況を聞いてきた感じだ」
電話の内容自体はありふれたことだったので隠さなかったが、ナカジマの表情が途端に暗くなったのは分かった。
「・・・そっか。もうあと1週間しかないんだね」
「ああ・・・大分世話になったな」
ナカジマが寂しがってくれているのは、(自分で言うのも何だが)仲良くなれた村主と離れ離れになってしまうからだろうと思っている。
しかしその根底にあるのは、村主と同じ『気持ち』であることに、村主自身は気付くことができなかった。
「ところでさ」
2人の間の空気が少し沈みかけていたので、少し違う話題を出すことにした。
「その担任から、『粗相はしないように』ってくぎを刺されてたんだよな」
「粗相?」
「まあ、何が粗相かってのは微妙なところだけど」
担任との電話つながりで思い出したことだ。
その言葉は、実習が始まる前の電話でも言われた。以来、事あるごとにその言葉を思い出していたのだが。それを聞いた時、村主は『大洗の女子に手出したり間違いを犯したりするな』と言うことだろうと思っていた。
だが。
「今日のこれって・・・粗相に当たるのかなって」
今朝も思ったことが再び頭をもたげて、不安になってきている。
「大丈夫だよ」
そんな村主の不安も、ナカジマは一蹴した。
「その担任が言う『粗相』がどういうことかは分からないけど、少なくとも私はそうは思ってないし、むしろ村主と一緒に出掛けられるのは嬉しいから」
言われて、村主も『あっ』と思う。
相手に失礼を働いてはならないと自分を縛っていたが、こうしてナカジマが『そう思っていない』と知って、肩の荷が下りた感じだ。
「・・・良かった・・・」
安心して、村主は息を吐く。
「それずっと気にしてたの?真面目だね~」
「そりゃ気にするさ。だって俺は、大洗にお世話になってる身だから」
ナカジマが笑うが、村主にとっては笑い事ではない。
ともあれ、先ほどの少し沈んだ空気を換えられたのには安堵する。
商店街を抜けて、海沿いの街道を2人で歩く。この先に目的地の水族館があるのだが、その途中にあった神社で、せっかくだからと参拝することにした。
「何だこの階段・・・キツ・・・」
「だよねー・・・私もまだちょっと慣れないや・・・」
その神社の本殿に向かうまでの間に、すごく急で長い階段があった。整備をしているうちにちょっとだけ体が鍛えられた村主でも、なかなかこれは厳しい。ナカジマも肩で息をしながら上っている。
だが、上りきったところで後ろを振り返ると、鳥居の向こうに海が広がっているのが見えた。
「おー・・・綺麗だな~・・・」
「この景色が見られるんなら、この階段も多少楽に思えてくるよ」
そこから見る景色は綺麗で、ナカジマの言う通りこの景色が見られるなら階段も苦とは思えない。ただ惜しむらくは、雲が少し広がっていて天気があまり良くないことか。
「もうちょっと晴れてれば、もっと綺麗な感じだったんだけどね~・・・」
「ま、それはまたの機会だな・・・」
境内に入ると、そこそこ参拝客はいたが静かだった。本殿がまた荘厳かつ神秘的な雰囲気を醸し出しているので、自然と静かにしなければという意識が芽生えるのかもしれない。
村主とナカジマも順番に並んで、作法に則り参拝をする。手を合わせてお参りをした後で、参道を戻ろうと振り返ると。
「うお、すごいな・・・」
目に入ったのは大きな戦車を模した絵馬だった。人の背丈よりも高いそれは、境内に入った時は目に入らなかったが、メインである本殿よりも目立たないようにするためだろう。ちなみに描かれているのは、大洗のランドマークのような扱いなのか、あんこうチームのⅣ号戦車だった。
「町の商工会の人たちが作ったみたいだよ」
「力の入れようがすごいな・・・」
「本当にね。戻ってきた時町の人みんなで出迎えてくれたし」
この絵馬もそうだが、やはりこの大洗町は戦車、大洗女子学園とのつながりが強く感じられる。若干寂れてきていた大洗に新しい魅力を作ってくれたのだから、感謝の気持ちがあるのかもしれなかった。
だが、こうして町全体が活気を取り戻してきたのをナカジマは嬉しく思っているようだし、ここが故郷ではない村主もまた気持ちが良かった。
長い階段を下りて海沿いの街道に戻り、今日のメインともいえる水族館までの道を並んで歩く。
しかし、途中でぽつぽつと雨が降ってきてしまった。
「ありゃ、ツイてないな・・・」
空を見上げながら、ナカジマは肩に提げていたバッグから折り畳み傘を取り出して広げる。村主も同じく、常備していた折り畳み傘を広げようとしたが。
「・・・あ」
ぽきっ、と心地よい音と共に傘の柄が折れた。
ナカジマも『あらら』と声を洩らす。だが、村主は露骨に悔しがりはせず、小さく息を吐くだけだ。
「・・・まあ、随分長いこと使ってたし寿命か」
「とりあえず入りなよ。にわか雨だろうけどさ」
ナカジマが傘を差しだしたので、仕方なく便乗させてもらう。傘は背が高い村主が持つこちにして、ナカジマの負担を減らすことにする。
だが、同じ傘に入っていて、濡れないように体を寄せると、どうしても2人の間の距離は近くなってしまう。そしてそれを意識しているせいで、自然と口数も減ってくる。
こうして近くにいるだけで、胸の鼓動は高まってきているし、特別なことは何もしていないのに顔が熱くなってきている。それは村主もナカジマも同じだった。
たまりかねて、ナカジマが海の方を見ながらぽつりと呟く。
「せっかくのお出かけなのに、雨になっちゃって・・・」
「いや、正直もう慣れたからな・・・」
やっぱり、自分はどうにも雨に見舞われてしまう性質らしいと苦笑する。
「最初に大洗に来た時も雨だったし、もうこの雨男体質はずっとこのままなんだろうな」
乾いた笑いを洩らす村主だが、ナカジマはそんな村主に笑いかける。
「でも私は雨が好きだから、雨男の村主は羨ましいな」
「まあ、俺も雨は好きだけどな」
ナカジマも雨が好きと言うのは、既に知っている。その好きな雨が降っているのは、雨男な自分のおかげなのかなと思うと、村主も少し心が晴れてくる。
「だからさ、ずっと一緒だったらいいな、とさえ思うよ」
その言葉に、思わず傘を落としてしまいそうになる。
ナカジマは海の方を見ていて、村主と視線を合わせてくれない。どんな顔をしているのかなど、分かるはずもない。
そのナカジマがどんな顔をしているのかを想像すると、胸がざわつく。
最後の目的地の水族館は、すぐそこに近づいてきていた。
水族館に着くと、雨も止んでしまった。2人で歩いている時を狙って降るとは何ともタイミングが悪い。
さて、訪れた水族館はサメの飼育数が国内一なのが有名らしく、水族館のマークもサメをモチーフにしていた。
券売機で入場券を買う際に、村主はナカジマの分のチケットも一緒に買った。無論、費用は村主持ちである。
「今日付き合ってくれたお礼ってことで」
村主が笑ってチケットを差し出したので、ナカジマも追及は諦めて受け取ってゲートをくぐる。
その時。
「?」
どこかから、聞き覚えのある声がした。それに気づいたのはナカジマだけで、後ろを振り返ってみるが、見知った人物はいないように見える。その声も、他の来場客の声に揉み消されていく。
「どうかしたか?」
「え?ううん、何でもないよー」
「そうか」
村主はやはり気付いておらず、ナカジマを待ってから水族館を回りだす。
水族館は何と言っても自由に泳ぐ魚を売りにしているので、それが見えるように色々と工夫が為されている。代表的なのは館内の照明を暗くして、水槽の中がより鮮明に見えるようにしていることだ。完全なブラックアウトと言うわけではなく、かろうじて見える程度に。
村主とナカジマも、お互いにはぐれないように近くに並んで見物をする。
「でっかい水槽だな~・・・」
「ね~。こういうのって何かロマンを感じるよね」
この水族館で一番大きいという水槽を見上げながら、2人して呑気に呟く。
水槽の向こう側には大小様々な魚が悠々自適に泳いでいて、その動きの優雅さはどこか惹きつけられるところがある。規則正しい動きではなく不規則なところが魅力の1つだろう。
その水槽も見るのはほどほどに、クラゲやカニなどを見て回る。その中でアンコウを見つけると、ナカジマが『リアルあんこうチーム?』とジョークを噛ましたのでお互いに吹き出した。
エスカレーターで2階に上がると、この水族館の名物ともいえるサメとご対面だ。
「おっかないな・・・」
大きなサメを見て、村主が自己防衛の表れなのか腕を組む。そんな仕草を見て、ナカジマは少し意外な気持ちになった。
「男の子ってサメとか好きなイメージあるけど、違うんだ?」
「好き嫌いは人それぞれだしな・・・俺は昔観たサメ映画の影響でちょっと苦手で」
「へー?」
サメの水槽は種類ごとにいくつかあって、それを歩きながら眺める。
ナカジマは、『サメが苦手』と言った村主の言葉にちょっと興味が湧いた。
「サメ映画嫌いなんだ」
「と言うか、ホラー系は大の苦手だ。もうパッケージとか映画館のポスターも見れない。レンタルショップのホラーコーナーも極力避けてる」
「あはは、それは極端だね~・・・」
そこでナカジマは、お化けなどが苦手なあんこうチームの麻子を思い出す。彼女も確かその手のものが苦手だという。
とはいえ、ナカジマもホラーはそんなに進んで観たくはないので、気持ちは分かった。
「じゃあ逆に、好きな映画は?」
「アクション系。派手に爆発が起きたり、カーチェイスしたりするやつ」
「ああ、それは私も好き。特にカーチェイスがさ」
「やっぱりクルマ好きだからか」
「そうそう!」
自動車部所属でクルマ好きと自分で言っていたから、なんとなく想像はできた。試しに世界的に有名なカーチェイス映画のシリーズの名前を出すと、ナカジマは大きく頷く。
「そっか、やっぱりあれ見てたのか」
「やっぱり外せないからね~。クルマ好きとして」
亜熱帯地域のコーナーにやってくる。この辺りに展示されている魚は、色鮮やかでまた変わったものが多い。
そこで村主が回りを見てみると、ほとんど人がいなかった。どうしてかと思ったが、どうやら丁度イルカのショーが始まる時間らしく、大体の客はそちらへ流れていったらしい。
「・・・村主のことがもっと知れてよかった」
「?」
その声に視線を戻すと、ナカジマは熱帯魚の水槽を見て足を止めていた。
「もうすぐ村主ともお別れになるし、それまでにもっと、色々話したいなって思ってたんだ」
「・・・・・・」
「でも私たちは、ほら・・・戦車の整備でなかなか時間が取れなかったし」
村主に視線を移す。
ナカジマは、寂しそうに笑っていた。
「だからさ、今日こうして村主と一緒に歩くことができて、話もできてよかったよ」
そんな顔で、そんなことを言われてしまって。
村主は自分の気持ちを押さえられそうにない。泣きそうになる気持ちを押さえようと、俯いて目を閉じる。
「・・・村主?」
急に様子が変わった村主を気遣おうと、ナカジマが顔を覗き込もうとする。
だが、そこで村主は顔を上げてナカジマの肩を掴んだ。
「え?」
「ナカジマ・・・」
その村主の真剣な表情・・・さながら戦車を整備する時のような顔で見つめられて、ナカジマも思わず動きを止める。
村主は、ずっと言いたかった気持ちを告げようと、口を開く。
「言えなかったんだけど、さ。もう今ぐらいしか言えないから、言わせてほしい」
「・・・うん・・・・・・」
その前置きに、ナカジマも村主が何を言おうとしているのか、『もしかして』と淡い期待が浮かんでくる。
「俺、ナカジマのことが―――」
「あっ、ナカジマ先輩!村主先輩!」
天真爛漫という表現が似合う声が滑り込んできて、思わず村主はナカジマの肩から手を放し、言葉が喉の奥に引っ込む。
その声がした方を見れば、ウサギチームの阪口桂利奈が駆け寄ってきた。その後ろからは『ああもう・・・』と言いたげな澤梓と、相も変わらず虚空を見ている丸山紗希がいる。
「・・・阪口さん、こんにちは」
「あい!こんにちは!」
村主は努めて平静を装って、何事もなかったかのように桂利奈に挨拶をする。一方で桂利奈は本当に状況が分かっていないのか、悪気ゼロな笑みを向けてきた。余計心が痛い。
「こんにちは・・・。えっと、お邪魔でしたか?」
「いえ、全然・・・」
「うん、問題ないよー・・・」
梓もまた挨拶をするが、桂利奈よりも幾分か状況を理解できていたらしい。しかし、面と向かって『タイミングが悪い』とは、桂利奈の天然なところを見ると口が裂けても言えない。なので2人して、残念な気持ちを抱きつつも否定した。
「2人とも何してるんですかー?」
「ええと、自分が大洗の町を知らなかったので、ナカジマに案内してもらったんですよ」
「そうだったんですかー!」
2人が話す様子を見て、ナカジマは心の中で『ああ』と納得した。
水族館に入った時、聞き覚えのあるような声がしたのだが、その正体はこの3人だったのだ。
そしてそれが分かったところで、ナカジマは不完全燃焼感が込み上げてくる。
「で、阪口さんたちは?」
「今、夏休み限定でウルトラメンとコラボイベントやってるんです!スタンプを集めると、特製の缶バッチがもらえるんですよ~!」
「桂利奈、特撮ものとか好きですから・・・」
「なるほど・・・」
そういえばそんなことを前に聞いたような聞かなかったような。
「イルカショーは?」
「ほかの人がそっちに流れてるところを狙った方がいいって、紗希が」
イルカショーも楽しそうだが、それもまた通っぽいなと村主は思った。そう提案した当の紗希は、彼女はチンアナゴの水槽をまじまじと見つめている。この子も大概自由だ。
そして桂利奈たちは、どうやらこの先のスタンプと、海鳥のエサやりが目当てらしく先を行こうとする。
その直前、梓が気まずそうに村主に話しかけてきた。
「あの、村主先輩」
「はい?」
「なんか・・・・・・ごめんなさい」
やはり梓は、雰囲気を、村主が何をしようとしていたのかを遠巻きに見て気付いていたようだ。しかし、村主は『気にしないでください』と柔らかく伝える。
そして梓を見送ると、ナカジマが話しかけてくる。
「・・・・・・ねぇ、村主」
「ん?」
「さっきさ・・・・・・なんて言おうとしたの?」
無論、ナカジマもあれだけされてすべて忘れることなんでできはしないだろう。恐らく、その言葉の続きをすぐに聞きたいのだろうと思う。
しかしながら。
「・・・・・・悪い、今は言えない。また今度話すよ」
「・・・・・・そっか」
彼女たちに悪気がないとはいえ、一度雰囲気が流されてしまった以上、改めて言うのは最早興醒めだろう。だからもう、今日は言うことができないと悟って、また今度改めて言うことにした。
ナカジマはそれを聞いて、少し残念そうではあったがすぐに表情を持ち直して『それじゃあ私たちも行こうか』と歩き出す。村主も、ナカジマと並んで水槽を眺める。
しかし、2人の間には微妙な空気が漂うことになった。
全ての展示を見終えて、最後に売店に寄る。
オーソドックスなイルカのぬいぐるみや、魚を模した文房具、お菓子などが売られていたが、いまいち村主の琴線に触れる物は無く結局は何も買わないことにした。
しかしナカジマは、何か良いものを見つけたのか早速レジに並んでいる。
会計を済ませている間も村主は商品をふらっと眺め、会計が終わったのを見計らってナカジマと合流した。
「お待たせ。はい、どうぞ」
そしてすぐ、その買ったものを渡してきた。
村主は困惑しながらもそれを受け取り、中を見てみる。
「・・・折り畳み傘か」
「うん、さっき壊れちゃったでしょ?」
中には、薄い水色の折り畳み傘が入っていた。柄の部分にはサメを模したマークが刻まれていて、大きさも村主が持っていたものとほとんど変わらない。
「実習お疲れさまってことで、ちょっと早いけどお祝いのプレゼント」
実習自体祝われるようなものではないのだが、それを指摘するのは無粋極まりないだろう。
「それに、ここに私と一緒に来たことを忘れないようにね」
その言葉だけで、もう受け取る価値は十二分にあった。
それ以前に、ナカジマからもらえる物なんて、嬉しいに決まってる。
「・・・ありがとうな。大切に使わせてもらうよ」
「うん」
学園艦が停泊している大洗港までは、路線バスで帰ることにした。
雨は既に止んでいたが、反対に晴れてきたせいで日差しもまた強くなってきている。この中で割と長かった来た道を戻るのもつらかったので、バスと言う手段をとらせてもらった。
『お客様にお知らせいたします』
水族館を出てほどなくすると、アナウンスが流れる。
『8月24日は、大洗町にて戦車道全国大会エキシビションマッチが開催されます。このため、大洗町では朝9時から昼の15時まで大規模な交通規制が実施される予定です。また、鹿島臨海鉄道は同時間帯、常澄~涸沼間で運休となります。予めご了承ください』
それを聞いて、村主は隣に座るナカジマに話しかける。
「いよいよ明日だな・・・」
「うん。ちょっと緊張してるかな」
当然ナカジマもレオポンチームとして参加する。
村主は参戦できないが、彼女たちが乗って戦う戦車の整備を担当し、皆を応援させてもらう。
「・・・自分の整備した戦車が試合をするってのも、何か不思議な感じだな」
「それは私も思ってるよ」
自動車部として活動していた時は、自分がレースをするために自分のマシンを整備していた。だが、戦車道の整備を担当するようになってからは、自分たちが整備した戦車にほかの誰かが乗るというのだ。それは自動車部の時とは少し違う。
「でも私たちにできるのは、皆が心置きなく戦えるように、戦車の整備に尽力することだよ」
「・・・ああ、その通りだ」
戦車に乗って戦う皆は、レオポンチームのナカジマたちを信頼して戦車に乗っている。そして今は、村主もその信頼を預かる側だ。
「整備も試合も、全力で頑張ろう」
「・・・そうだな」
ナカジマが力強く言うと、村主も頷く。
そこで、先ほどの水族館での一幕を思い出す。
(あれでよかったのかもな・・・)
ナカジマに自分の思いの丈を伝えようとしたところで、遮られた。
だが、あの時もし自分の思いを全てナカジマに伝えていたら、どうなっていただろう。
もしかしたら動揺してしまって、戦車の整備に、そして明日の試合に悪い影響を及ぼしていたかもしれない。
だとすれば、それは最悪の結末でしかないだろう。
だから、自分の想いを伝えられなくて正解だったのかも、と思った。桂利奈の登場と言うアクシデントは、むしろファインプレーだったのかもしれない。
(まだだ。まだダメなんだ・・・)
先走って多くを言おうとしてしまったが、言うべき時は今ではなかったのだ。
妙に残念だった自分の気持ちは切り替えて、明日のために引き締め直す。
想いを伝えるのは、明日の試合の後でも遅くないはずだ。
窓の外を見る村主だが、ナカジマはその横顔を肩を落としながら眺めていた。
そこで、先ほどの水族館での一幕を思い出す。
(もしかして、村主も・・・・・・)
あの時、村主は何かを言おうとしていたが、あの勢いと、真剣そうな表情で、どんなことを言おうとしているのかには薄っすらと気付いていた。
確証はないけれど、あの場で言うであろう言葉は相当限られている。
だからもしかしたら、とナカジマは淡い希望を抱いていた。
しかし、ちょっとしたアクシデントが起きてお流れになってしまい、何か妙にモヤっとした気持ちがナカジマの中には渦巻いている。
(・・・・・・でも、もうしょうがないんだよね)
あの時、村主に代わってナカジマの方から自分の想いを伝えるという選択肢もあった。
だが、あの場での村主はもう『その気』が無くなってしまっていたし、そんな村主に伝えるのも何か違うだろうとナカジマは思った。
その言葉を伝えるためには、ムードと言うものが大切なのだ。
(・・・・・・こうなったら、エキシビションの後ででも・・・)
この想いを伝えないままお別れと言うのは無しだ。
既にナカジマだって、言うべき時はいつか来る、いや絶対に言わなければという覚悟はできている。
窓の外に、大洗女子学園艦が見えてきた。夕日を背にする学園艦のシルエットは巨大で、だけど自分が暮らしていた場所だから安心感もある。
その学園艦を見上げながら、バスは大洗港に到着した。
桂利奈ちゃんは色恋にちょっぴり疎そう・・・
次回から劇場版パートに移りますので、よろしくお願いいたします。
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