ある鬼の終わり   作:氷陰

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童磨の考察しすぎで書いた文が自分の解釈通りかもわからなくなってきました




ある人の終わり・下

 

 

 

「ガァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!!!!???」

 

「よく吠えるなあ。よしよし」

 

 

 土方君と言ったか、彼の頭に鬼の血が流れ込んでゆく。俺も鬼になる時にされたけど、叫ばなきゃいけないことなんてあったかなあ? すぐ終わるから大丈夫だよ、とあやすように声をかけた。でも聞こえてないねこれ。

 

 彼を知ったのは極楽教にいる同じ村の信者の話から。人にしては考え方自体鋭いものを持っていた。天国も地獄もないと言い切れる人はあまりいないから興味が湧いた。手元で観察しようと思ったのだ。

 

 しかし俺と話している間、いや話始める前から俺を畏れていた。血の匂いを感じ取ったんだろう。

 

 

「…………」

 

「体はぐちゃぐちゃにならなかったね、えらいえらい。あれ? 君、起きてる────?」

 

 

 刹那、俺の腕から彼が逃れる。俺や無惨様から距離をとったから、ついでとばかりに彼の全身を確認した。

 うん、角に牙はきちんと生えてるね。間違いなく鬼になってるし、折れた骨もすっかり治っている。元気なのはいいことだ。

 

 彼は俺の腕を飛ばすことで拘束から逃れたようだ。鬼に成り立てで、警戒していなかったとはいえ上弦の弐(おれ)の腕を捥ぐとは。将来が楽しみだ。腕はもう再生したけれど。

 

 切断された俺の腕を齧る彼。お腹が空いているようだ。鬼になってすぐはお腹が空くから、ひもじい彼が可哀想に思えた。

 

 

「………グアア、ガアァァッ……」

 

「ああ、ごめんね! 無限城(ここ)にはご飯がないものね。鳴女さん、彼を村に送ってあげておくれよ」

 

「………」

 

「鳴女」

 

 

 べべん、と音がなって彼の姿が消えた。

 

 きっと今ごろお腹いっぱいになるまで喰べ続けるだろう。落ち着いたら見に行ってあげようかな。無惨様ももう退室されてしまったし、俺も戻ろう。

 

 ああ、でも。あの方が最初から多めに血をお与えになるなんて、珍しい事もあるもんだなあ。いつもは見込みのありそうな鬼に少しずつお与えになっていたのに。

 

 

 

 7日経って会いに行った時には、思っていたより強くなっていた。やたら道がでこぼこしてて歩きにくい中見に行ったらすごく睨んできた。何か嫌なことでもあったのかな? 

 

 でも少し気になるところがあったからいくつか指摘してあげた。

 

 

「へえ! 少しずつ食べるために捕獲しておくなんて考えたねえ。でもちゃあんと喰べないと大きく(つよく)なれないよ?」

 

 

 そう言ったら何も言わずに爪で引き裂きに来るんだからひどいよねえ。怒って俺を殺そうと? 俺に勝てないのがわからないなんて、可哀想に。

 

 あっ、もしかしてじゃれついてきてたのかな。あちゃあ……つい腕を切り飛ばしちゃったよ。

 

 

「遊びたいのかな? うんいいよ、相手してあげる」

 

「ど、うまっ!!!! ぶっ殺してやる、このサイコ野郎!」

 

「おやおや、ずいぶん遅いねえ。動きも、体の再生も! ここまで遅い鬼はそうそういないだろう!」

 

 

 村にはまだ人がいるとはいえ、そこそこ彼は人を食べたはず。なのに肉体の再生速度が著しく遅い。ひとりふたりしか喰べていない鬼でも腕くらいすぐ元に戻るのにこの哀れな鬼は、切断面をくっつけてもまだ修復しきらない。

 

 鉄扇をひとつだけ構えて軽ーく横に薙ぐ。流石に避けられるようなので()()力を入れてもう一度空を撫でれば、彼の体は簡単にバラバラになった。

 

 

「ぐあぁっ! ちくしょっ………」

 

「うーん……弱いなあ。俺は気が長いけれど、あの方はそんなに待ってはくれないぜ」

 

「………鬼に殺されるなんて無意味だ、嫌だっ!」

 

「………じゃあもっと強くならないとねえ。ああそうだ、もうひとつ指摘するけど、骨までちゃんと喰べないともったいないよ」

 

「てめえ、も頭は、残してるだろ!!!」

 

 

 足元に違和感を感じ後ろに飛び退くと、尖った土が盛り上がって俺を刺そうとしていた。避けても避けても追いかけるように飛び出るのはちょっと興味深い(おもしろい)

 

 土で攻撃する……いや、土を操る血鬼術か。単純だけど使い方によっては強くなるかもねえ。

 

 

「わあ、もう血鬼術を使えるんだ! すごいねえ。でも最初から多めに血を与えられたのだから当然かな」

 

「いちいち煽ってんじゃねえ殺すぞ! 分析は心の中でやってろ! ……クソ、当たれよっ!!」

 

「そんな単調な攻撃、下弦にも当たらないぜ」

 

 

 たった7日で血鬼術。与えられた血の多さと喰った人の数を考えれば当然とも言えるが、将来が楽しみな成長だ。そもそもあの方の血に耐えられることが珍しいことなのだ。強くなる素養がなくては困るのだが。

 

 ただそれ以上に残念なのは異常に再生が遅いこと。強くなれば勝手に再生力は上がるはずなのだ。それに人を一気に食べないのも良くない。まだ食べざかりなのだから一気に村全てを喰らい尽くしても良かったはず。

 

 

 まるで自分は人だとでも言いたげだ。無意識なのか、自覚があるのかはわからない。前者のように思えるが…。

 

 

 鬼になったらそういう感覚は()()()()()()()()()のだが、もしかするとまだ人の記憶が残っているのかもしれない。聞いてみたが、

 

 

「もうわかんねえよ! 憶えるのは懐かしさだけ、俺の()()()この村の生まれとわかるのに、他人の顔なんて誰が誰だかわかんねえんだよっ!! アア゛、気持ち悪い。腹がたつ腹がたつ!! 

 誰だった、昨日喰った娘は。何かを語り合ったような気がする、あの男は。あの家に住む人間は、どんな性格をしていた………!」

 

 

 と俺に八つ当たりをしてきたので四肢を捥いで転がしておいた。記憶は薄れている途中らしい。無惨様に抵抗しても無駄だろうに。可哀想な子だ。

 

 それにしても、人の記憶が無くなるのは気持ち悪くて腹立たしいことなのか、あの兄妹はそんなこと言ってなかったけれど。一応覚えておこう。

 

 

 

 またさらに7日後。

 気の長い俺にしては珍しく、長い期間を開けずに彼の様子を見に行った。

 

 空き家は前より増え、血鬼術であけたと見られる穴も増え。元気でやっているようだ。

 

 どこかへ出かけているのか、彼の気配は近くにない。月明かりも雲に隠れてしまっているが、鬼である俺たちには関係ないので戻ってきたらわかるはずだ。

 

 一応この村を縄張りにしているのは、俺よりはるかに弱くても『彼』だから、俺はむやみに手を出さない。ここへ来るのも彼がやや妙な動きをする鬼だからで、その彼がいないとなれば手持ち無沙汰になる。

 

 

 

 ふと、管理する人がいないはずの畑が目に入った。大根の範囲が妙に広いが旬のものだからか? それにしては旬ではない作物も実っている。変な畑だ。

 

 しばらく眺めていると、少しの違和感もなく足元から土の針が生えてきた。ズガガガガッ! とたくさん。おっ、一本右足を貫いた。攻撃速度が上がっている。

 

 

「君の血鬼術で土に何かしてるのかな? この畑」

 

「おいクソ野郎」

 

「やあ。また様子を見に来たよ。それにさっきのはなあに? この程度の力じゃ全然足りないねえ。あれ? 俺を殺す殺すと言っていたのは夢物語だったのかな。そうだよね、できるわけないもんね。いいんだよ。夢は大きいほうがいいって言うしね」

 

「当たったくせに…………」

 

「わざとだよ。遊んでるんだから」

 

 

 それからはただただ土の雨が降ってきた。土というより尖った石って感じだったけれど。これほど広範囲かつ高密度ならば弱い鬼狩り程度は避けられず致命傷を負うだろう。十二鬼月が対応できないはずはないが。

 

 避けたと思えば次に腕を落とされた。何が、と思えば小さな土塊(つちくれ)がヒトガタをとり土で固めた剣を持っていた。2体。

 

 なるほど、なるほどなるほど! この人形が土の雨を避けきった瞬間に俺の腕を斬り裂いたと。しかも俺は彼に見えない速度を出していたはずだ。避けたあとどこに行くかなんて……ああ、誘導していたのか。頭の回る子だ。

 

 

「わあ、他人にされるとこんな感じなんだね! ああ、小さい俺なら、俺も出せるんだ。ほら」

 

 

 シャリン。

 ────結晶ノ御子。涼やかな音とともに俺の姿の氷人形を生み出した。

 

 

「……………!」

 

「俺の分身だ。俺と同じくらいの強さの技が出せるんだ」

 

 

 もっと出せるけれど、1つで十分。彼は2つが限界で、しかも分身を動かす間はそちらに思考を割かれ本体の動きが疎かになっている。ほうら、長い間使えないのに思考を自身に戻さないから簡単にバラバラになる。

 

 冬ざれ氷柱で地面に縛り付ける。土の雨ほど広い範囲ではないが攻撃力は当然こちらが上。血鬼術ももう出せない、何もできない無力な子供へ、言い聞かせるように言葉をかけた。

 

 

「すこしは抵抗したみたいだけどまだまだ足りない。それにね、十二鬼月ならまだしも()()()()の君は保存するより早く喰べたほうがいいよ? 弱いんだから。今だってお腹いっぱいじゃあないんだろう、喰べたくて仕方ないんだろう」

 

「……だ、いやだ……鬼なんて………」

 

「なんだか生きにくそうだねえ、君。妓夫太郎と堕姫はこんなことなかったのに……。今からでも極楽教に入る?」

 

「死んでもお断りだ…………」

 

「そう。まあまた君が強くなったら来るから、ちゃんとご飯食べるんだよ」

 

 

 彼が何かに囚われようと、人さえ喰らえば確実に強くなる。今年中には下弦にも届く素質がある。無理にでも土台を整えれば勝手に強くなるのだ、彼は。

 

 今はそれがないだけ。とはいえ自発的に強くなろうとしないのは問題だけれど。次会う時は入れ替わりの血戦の話でもふっかけさせようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………と思ってたんだけど、その前に死んじゃったかあ」

 

 

 最後に会ったのが16日前、鬼になったのがさらに14日前。ひと月で鬼狩りに頸を斬られ死んだそうだ。短かったなあ。

 

 彼、きっと斬られた時点じゃ下弦に入れるかどうかくらいは強くなってたと思うんだ。なんで易々と頸を斬らせたんだろう。鬼には何が何でも殺されようとしなかったはずなのに。

 

 わからない、俺にはわからない。やはり俺に感情がないからかなあ。だから理解できない……彼に関しては、そうじゃなくても不明な部分はあったようだけど。

 

 俺と相対した時は()()()()()()()()()()()()、俺が頭蓋骨を部屋に飾っていることを示唆したりといったことだ。バラバラにした後2回にわたって尋ねたのだが一切口を割らなかったから気長に見ていたらこれだ。

 

 

 

 俺は、彼が俺と()()だと思っていた。ほんの少しだけね。死んだら裁きも安心もなくてただ土に還ることを受け入れていたから、理解していたから。俺にも何か変化をくれるかなあと思っていたんだ。

 

 でも彼自身には怒りも、彼にしかわからない信条もあった。執着するものがあった、記憶が薄れていく中譲れないものがあった。強い感情を見せていた。

 

 俺はそれに────やはり何も感じなかった。悲しくないし失望もしていない。この件であの方に頸を刎ねられはしたが怒りも喜びもない。

 

 俺よりも猗窩座殿に近かったかもしれないなあ。まあもういない者のことを考えても仕方ないか。いい暇つぶしにはなったし、けして無駄ではなかった。

 

 

「教祖様、お時間です」

 

「ああそうだね、はい、入ってどうぞ」

 

 

 俺はいつも通り、信者の皆の話を聞いて極楽へ導くんだ。彼は死んでどこに行ったのだろうか。なにもない場所へ行くのかな。

 

 ふとそんな考えが頭によぎったが、やはりどうでもよいことだと思い直し、信者のあくびが出るような話に意識を向けた。

 

 

 






●あとがき

これにて終わりです。見ていただき本当にありがとうございました。

鬼滅読み始めて「炭治郎に殺される鬼になるとか最高だな」という思考から戦闘描写を頑張って書ききった短編でした。
何度か記述しましたが、本当にサイコパス的なキャラクターの考察をしたことがなかったのでかなり精神が汚染された自覚があります。怖いね。

重ねて、感想、評価、お気に入り、閲覧全てありがとうございます。とても励みになりました。嬉しいです。また鬼滅原作で何か書くかわかりませんが、いつかお会いしましょう。


キャラ説明
●オリ主・土鬼(土方)くん

書くところがなかったのでこの場になりますが、鬼になった後は
①転生後の他人の記憶 ②転生後の自分の記憶 ③前世の記憶の順で消えています。

好きなものはたくあん。畑いじり。血鬼術で土をビニールハウスのように覆ったりして旬以外の野菜も育ててました。村人のためとかは一切考えず自分が耕したいからやってただけの行動。

童磨と近い性質というのは、「どこまでも自己中心的な考え」だけで、彼自身は感情も人であることの執着も強いです。きちんと鬼らしく人を食べていれば無限城にて上弦の抜けた後釜を務められるくらいにはなっていた、かもしれません。

しかしどうしても鬼であること、人でないこと、人を食べる事などを受け入れられなかったのがこのお話の土鬼です。そんな未来は前世の記憶がなければ可能性はあったのかな。
まだ鬼への嫌悪感が強かったので、炭治郎に救いを求めていました。会えたのはラッキーですね。

●童磨

このお話の童磨にとって彼は、強い鬼になるであろうとスカウトした人材であり、自身の感情を芽生えさせるための観察対象といったところです。
文の中で感情がありそうな表現をしてたら指摘してください。もし感情あったら私が解釈違いで発狂するかもしれないので。


それではほんとうに終わりです。ここまでありがとうございました。
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