本小説はドールズフロントラインの二次創作であり、作者による独自解釈/設定が含まれています。また、本作品には日鯖未実装要素やストーリーのネタバレが存在します。
以上の点にご注意ください。

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サンダーと花火を見る話。
あと、花火の名前は想像です。不自然な所があっても気にしないでください。

本文中に書く余裕がなかったので
第1部隊
M950A(部隊長) Gr G36C サンダー IWS2000 9A-91


何故我々は花火を楽しむのか、その答えは誰も知らない。しかし、ある者は美しさを。儚さを。壮大さを解とした。そしてここにいる一人の人間と人形も光と音の共演を楽しんでいる。

先日、鉄血とグリフィンの間で一週間の休戦協定が結ばれ、合同で夏祭りが開催されることになった。当然だが民間人も参加する訳であり、祭り中の警備やE.L.I.D対策も考えなくてはならない。故に人形の仕事は減ったが指揮官や後方幕僚の仕事は増える一方であった。
多くの人間が悲鳴をあげて働く中、とある基地の指揮官は鉄血のハイエンドモデル『代理人』と会っていた。


Present for you

 

「当日はこの予定に沿って動く、不測の事態が発生した場合は人間を優先的に避難させる。これで十分ですか」

「問題なし、と言いたい所だが1つだけ。人間や人形を襲わない。一番大事なとこが抜けてるぞ。まあ今は停戦期間中だからあまり問題にはならないと思うが」

指揮官が代理人に答える。確かに重要だけどそこまで神経質にならなくてもいいのに。

 

今回の夏祭りの目玉である花火大会のスケジュールや当日の周辺警戒といった重要項目を確認して今日の会議は終わり。指揮官や代理人とともに会場に向かう。会場は鉄血と人類が争う最前線から遠く離れた過疎地域の河川敷だ。

「会場準備は良好、当日には十分間に合うな」

「ええ、勿論。我々鉄血工造の技術力を甘く見ない方がよろしいかと。しかし、なぜこの様な辺境を提案されたのでしょうか?」

「ご存知の通り、ここは鉄血ですら見向きもしない土地だ。故に停戦期間後に占領されてもこっちへの被害はたいして無いし、攻略も容易。そんな所かな」

指揮官は鉄血も知っている様な単純な事実のみ並べる。こちらの事情を話す義務もないのだから。

その後は私達もまじっての雑談が続いたがそれはまた別のお話し。

 

 

視察が完了し帰還した。指揮官は指令室で上に出す報告書を書いている。副官の私に任せれば良いのにと思うこともあるけど、指揮官は(そういった所だけ)頑固なので諦めている。

「サンダー、そこの書類取ってくれないか」

「指揮官、この山のどの書類ですか」

「あー 会場周辺の地形図と当日の予定表、あと基地に所属してる人形のリスt...「多いので指揮官も手伝ってください」 わかったよ」

この人はいつもそうだ。副官に仕事を投げておきながら自分も手伝うと言う。本当に面倒な人間。でも私はそんな人間に救われた。だから傍に居てほしいと頼んだ。そしてあの人は律儀に守ってくれている。それが嬉しくてたまらない。

「書類はこれで全部ですか?いい加減片付ける事を覚えてください。人間だからこそ効率よく仕事をこなす技術は必要ですから」

「ああ、ありがとう。善処するよ」

そのセリフはしないと同義だ、そう思ったが口にはしなかった。これ以上は今の関係を崩してしまう。私の直感が私を押し止める。彼を、この場所を失えば私には何も残らない。

指揮官に書類を渡す、感謝される。たったそれだけでも存在意義を認めてもらえたような気になる。いつからこうなったのだろう。最初に会ったときから?違う。"指輪"を貰ったとき?いや、その時には既にこうなっていたような気がする。判らない。でも私は指揮官を愛しているし、指揮官も私を愛している。それだけで充分。

 

 

私達が書類の山脈を踏破した頃には既に月が大地を照らす時間だった。

指揮官はシャワールームへ、私は寮舎に戻ろうとしたとき声をかけられた。

「サンダー、一緒に夏祭りに行かないか?」

「私と、ですか?指揮官も物好きですね。私の境遇は知っているでしょう?」

「もちろん理解している。でもそんな事は関係ない。君と一緒に花火を見たい。それじゃだめかな?」

「わかりました。約束ですよ」

指揮官に誘われた、勿論断る訳が無い。でももっと私の事を見てほしい。憶えていてほしい。私の運命を変えてくれた人だから。だから試すような言い方をしてしまった。だけど彼は受け入れてくれた。それが嬉しくてたまらない。

「ありがとう。じゃあそのためにも仕事を早く終わらせないといけないな」

「だからと言って日付が変わるまで仕事しないでください、私の為にも」

そう言って部屋を出る。きっと明日は良い日になる、そんな予感。

 

 

 

 

今日は夏祭り。今日だけは多くの人形に休暇が与えられている。しかし、指揮官や私達精鋭の第1部隊を含むいくらかの人形に休みという概念は存在しない。たとえ休戦期間であろうとも通常業務はあるし、仕事は大量に降ってくる。

朝食を食べ終えると指揮官に声をかけられた。

「第1部隊、今日中に片付けないといけない案件があるから手伝ってほしい」

「どれくらいかかるの?できれば日没前には終わらせてほしいけど」

第1部隊長のM950が聞く。彼女の辞書に敬語は無いがそれを差し引いても言動に優しさが含まれている事くらい私にもよくわかる。

「午前には終わるかな、だからお祭りには充分間に合うよ。それでいいかい?」

「「了解」」

第1部隊の面々が答える。上下関係の維持は組織にとって必要不可欠である。とは指揮官の言葉であるが指揮官はそういったものから一番遠い性格なのではと皆がおもっている。

「0900 司令室に来るように」

そう言い残して指揮官は食堂を離れた。

私達も食器を片付けて一旦寮舎に戻る。

「誘ってくれたんだし、行かないとね」

M950が呟く。誘ったのはあなたでしょうに、そう感じた。

 

部屋に戻って仕事の準備をする。準備と言ったが実際は軽く身だしなみを整え、銃の点検をする程度だ。

 

司令室に入ると既に第1部隊が揃っていた。出遅れた。しかし指揮官は私を待ってくれていた。良かった、私の居場所はまだ失われていない。ここを失えば私には何も残らない。これ以上何かを失いたくない。私には指揮官が必要だ。もっと指揮官の傍に居たい。そして指揮官はそんな欲深い私を受け入れてくれた。認めてくれた。居場所を与えてくれた。でも足りない、もっと欲しい。今は言えないけども。

 

指揮官の指示に従って手伝う。今日は特に書類の山が高く、多い。とは言え今は優秀な第1部隊が手伝っている。このペースなら約束の時間には充分に間に合う。

「指揮官、これは後で目を通しておいて」「ああ分かったよ」

「部屋の整理くらいしてください」「あとで」

「この山は確認終わりました」「そこのテーブルに置いて、こっちの山お願い」

「これは指揮官の確認が必要な分です、あとこっちは新規人形のリストです」「読んどく、それとこのファイルに挟んでおいて」

騒がしい。何時もの司令室とは大違いだ。だが不思議と不快さを感じない。むしろある種の心地よさすら覚える。

「サンダー、ここら辺の山を整理しといてくれ」「了解しました」

頼まれたのは書類の仕分け。長く副官を務めた私の得意分野もとい特権。最近は軽く眺めるだけで分類できるようになった。

 

 

時計の針が昇りきる頃には書類の山は解体され、司令室が秩序を取り戻す。

仕事が一段落したからだろうか、それとも緊張からの解放か、空腹感を覚える。

それは皆も同じ様で、お昼ご飯は何が良いだの指揮官と一緒に食べたいだの姦しい会話が繰り広げられている。私?当然一緒に食べるつもりだ。できれば二人きりで。でも今は無理そうなので諦める。

指揮官もそれを察したのか作業の手を止め、食堂に向かう事を提案した。

 

食堂はいつもより静かだった。指揮官と私達しか居なかった。

今日の昼食は手軽なサンドイッチ。具はスクランブルエッグのものとハムとレタスを挟んだもの。この基地では基本的にメニューが日替わりで固定のため皆同じだ。

いち早く食べ終えたのは9A-91 基地の設立時からのメンバーで特に指揮官への愛が重い。私も重いなんて言われるけど彼女よりは軽い…はず。

IWS2000とGr G36Cも食べ終えたらしく、食器を片付けに行った。彼女達は承認欲求が強いのか、指揮官に褒められることを特に望んでいる面がある。

M950は食べるペースを合わせているのか、減り具合が同じだ。

その事を指摘するといつも誤魔化すけどその優しさまでは誤魔化せない。

私達もサンドイッチを食べ終え、食器を片付ける。結局M950は最後までペースを合わせていた。

私達と入れ替わるようにして防衛部隊の面々が入ってきた。SG,MG,RFを中心としており、火力と耐久力を重視した編成だ。そして彼女達はよく食べる。在庫管理を怠った日には食糧品の倉庫が空になりかける。おかげで基地のエンゲル係数は高止まりだ。

 

 

司令室で待機していると祭りの警備をしているAR小隊から通信が入った。

『【ノイズ音】…指揮官、聞こえますか?こちらAR小隊長M4A1です』

「こちらL08地区07基地の指揮官。今日の夏祭りは楽しんでいるかい?」

『はい、皆楽しんでいます。ただ、16姉さんは酒を飲みたいと不満をこぼしていましたが』

「明日基地(ここ)で飲めるよう手配しておくからそう伝えてくれ」

『了解しました、こちらは現在大きな問題は発生していません。では巡回を続けます。オーバー』

「気を付けて」

AR小隊との通信が切れる。M4と話している時の指揮官はどこか楽しそうで少しだけ嫉妬してしまう。

「指揮官、私との約束は当然覚えてますよね?」

「勿論忘れる訳ないさ、そろそろ出かけるか?」

まだ日は高い。二人きりの時間は十分に取れるだろう。

「ええ、行きましょう」

 

 

 

 

基地から車で1時間、夏祭りの会場に着いた。

沢山のテントが軒を連ね、大勢の人形と少しの人間で混雑している。正直、私は人混みが嫌いだ。不特定多数の人間、そして人形。いつ襲われるか判らない恐怖、襲われても誰も助けようとしないことへの絶望感。皆自分自身が一番大事で他はどうでもいい。そこでの私は虐げられる対象、弱者だった。私はそんな環境で育った、育ってしまった。私は最期を迎える場所を求め、そこで終わろうと思った。だからここ(G&K)に逃げて来た。でも指揮官の所に配属されてから全てを変えられた。指揮官は私を一人の人間のように扱った。正直理解出来なかった。今は少し解るけど。

「サンダー、私と手を繋いでくれるか?これだけの人混みは久しぶりでね、君を見失いそうで不安なんだ」

「よろこんで」

指揮官から誘われた、"手を繋いでくれるか?"だって。嬉しい。貴方はいつもこうして私のことを気にかけてくれる。婚約者だから?私の境遇を知ってるから?違う。私を愛しているから。こんな私を。だから離さない、ずっと。

 

指揮官と手を繋ぎ、屋台を冷やかしながら巡る。指揮官はなんでも奢ると言ってくれたが私としては指揮官と一緒にいられるだけで満足してる。でも指揮官がどうしても奢りたいと我儘を言ってくるのでリンゴ飴を買ってもらった。時期外れのものだったようで甘みはなく、もそもそしていた。周りの飴も添加物塗れで味覚が狂いそうな味だ。さすがに指揮官もこれは耐えられなかったようで口直しと称して焼きそばを買いに行こうとした。私は咄嗟に指揮官の手を掴む。指揮官は一瞬驚きの表情を示したけど約束を思い出してくれたみたいで、少し申し訳なさそうな顔をする。それを誤魔化すように腕を絡ませてきた、いわゆる恋人繋ぎだ。指揮官も少し恥ずかしいのか頬が赤くなっている。普段は見せない表情、私しか知らない彼との秘密がまた一つ増えた。もっと彼の事を知りたい、私だけを見て欲しい、少しだけ(くら)い感情が零れそうになる。私はそれを悟られない様に隠し、笑顔で答える。

「指揮官は私との約束を守ってくれる優しい人です。ですから私の手を離さないでください。私の傍に居てください、ずっと…」

「すまない、少々周りが見えていなかったようだな。私は君の傍にいるよ、君がそれを望んでいるし、私がそうしたいからな」

「じゃあ少しだけ我儘を聞いてくれますか?」

「何でも聞こう、さっきは私の我儘を聞いてくれたからな。ただ、私にできる範囲で頼む」

「それなら、今日はずっと私と二人きりでいてください。他の子のことは考えないで、私だけを見てください」

すこしだけ意地悪だったかな?でも指揮官は優しいから認めてくれるんだろうな。そして私と彼、二人だけの素晴らしい時間を過ごせるんだろうな。そう思うと気分が高揚する。私達だけの時間、私達だけの世界、そんな錯覚さえ起こしてしまいそうだ。

「そうか、なら今日も君に時間を捧げよう」

思わず笑ってしまう。この人は時々こうして気障ったらしいことを言う。そして照れるんだ。自分が言ったことに耐えられなくなって。でも私はそんな指揮官も好きだ。たまにしか見れないけれども。

 

 

日が沈み、屋台の灯りが輝き出す。空には煌めく星々の絨毯が敷かれ、大きな月が我が物顔で寝そべっていた。

この夏祭りでは"花火大会"があるらしい。火薬と様々な薬品を混ぜて詰めた玉を打ち上げ、それを見て楽しむ。基地で配られたパンフレットには夜空に浮かぶ大きな花のような写真が載っていた。百式曰く、今は亡き日本の風習が元になっていて、それはとても美しく、雅であったとのこと。私はあまり興味は無かったけど指揮官に誘われたから一緒に見ることにした。

誰かが喋っている。きっとこの夏祭りの経緯を話しているのだろう。所詮一時的なものに過ぎない休戦協定をありがたいなんて馬鹿々々しい。私達と奴等は殺り合う関係だ、手を取り合って仲良くなんてあり得ない。巫山戯るな、現実を見てからいいやがれ。決して口にはしないし手もださないが、前の私なら確実に"私"をあの偉そうにしている奴に向けていただろう。

私の憎悪が溢れていたのか、指揮官が抱きしめてきた。それに応えるように、指揮官の胸に頭を預ける。暖かい、指揮官の香りに包まれる。そして私の暗いものをゆっくりと溶かしていく。

 

 

私と指揮官は会場の外れの河川敷にやってきた。一面にシートが敷かれており、座って花火を見ることが出来るようになっている。スケジュール通りなら花火の打ち上げが始まるまであと1時間はある。

私は指揮官との他愛ない雑談に興じていた。今日は私だけを見てくれる、そう約束してくれたからかいつもより饒舌になっている自覚があった。

 

ヒューと何かが飛んでくる音がした。咄嗟に銃を構え、セーフティを解除する。直後、爆発音と共に夜空に大きな華が咲いた。花火の打ち上げが始まったのだ。

「始まったな、あとそれは仕舞っておいてくれ」

指揮官にお願いされたので私の半身にセーフティをかける。私の出番はまだ先らしい。

菊、牡丹、芯入りや八重芯のもの。紅、緑、黄、青、銀、金。6色の光が汚染された星空を支配する。次々と打ち上げられる玉が空中で割れる、燃えながら広がる。未練などないかのように、尾を引きながら消える。

綺麗で儚い、確かな現実。そして隣には私の愛する人がいる。私の記憶ストレージに永久に保存される大事な大切な思い出。

 

 

幸せな、楽しい時間ほど早く過ぎてしまうもので、そろそろ打ち上げも終わりに近づいているようだった。確か、最後は尺玉と呼ばれる大きなものを上げる予定だっけか。

打ち上げが止まり、数秒ほどの空白が生まれる。空を揺るがす轟音も通り過ぎて、夜の静寂を取り戻す。何かあったのだろうか、指揮官の方を向く。指揮官は困ったような、悲しそうな顔をしていた。嫌な予感がする。指揮官の端末にメッセージが届く。指揮官は急いで確認、返信した。そして少しだけ不機嫌そうに、

「ちょっとした問題が起きた、これから始末しなきゃいけない。でも君との約束も守らなきゃいけない。だからついてきてくれるかい?」

やっぱり、予想通りだ。もし神様がいるのなら、こいつ(.50BMG)をお見舞いしてやろう。そんなことすら考えてしまう。

「あとで、あの小さな花火を買ってください。それで許してあげます」

「ありがとう、いくつほしい?」

「全部」「せめて持てるぶんで頼む」

「わかりました」

今日は私にとって特別な日、そのことは彼も忘れてない。きっと。

 

打ち上げ場所でもめ事が起き、対処しきれないから助けを求めたと言われた。どうやら、鉄血のデストロイヤーと第2部隊のスコーピオンが原因のようで、野次馬…もとい第2部隊長のスプリングフィールドと鉄血のハイエンドモデル、ゲーガーが二人を抑えていた。鉄血の中でも特に精神が幼いデストロイヤーと煽り能力が高いくせして耐性の低いスコーピオン。この二人が出会うとどうなるか?答は火を見るよりも明らかだ。二人の壮絶な罵倒合戦を聞きつけた保護者と保護者代理が抑え込み、指揮官に連絡した。そして今に至る、とのことらしい。

「二人とも、始末書を書くこと。期日は明日の1700。いいね?」

久しぶりに指揮官の怒り顔を見た。代理人すら裸足で逃げ出しそうな顔の修羅がそこには居た。

二人ともさすがに堪えたようで、大人しく従っている。これならもう邪魔が入ることもない。

 

 

河川敷に戻ってから数分後、打ち上げを再開した。再び光の雨が星を覆う。そして、光の花畑に一輪の見事な牡丹が咲いた。今回の目玉、10号昇曲付八重芯変化牡丹降雪。

牡丹が散る。花畑は幻想のものとなり、月が再び輝き出す。

左手を握られた。驚いてそちらを向くと、指揮官がかすかに微笑んでいる。そこで私はやっと約束を思い出す。

「何ですか、花火を買いに行きますよ」

忘れていたことを誤魔化すように、憶えていてくれた嬉しさを覚られないように指揮官の大きな手を握り返す。指揮官の笑顔が輝いた気がする。

 

 

 

 

指揮官は手持ち花火と防衛部隊へのお土産を、私は"プレゼント"を買って基地に帰ってきた。祭りが終了したこともあってか、所属している人形の大半はすでに戻ってきていた。

指揮官はお土産を届けに行った。手持ち無沙汰になったので私は寮舎に向かう。

 

寮舎で戦利品の整理をし、"プレゼント"を持って司令室に行く。この時間なら指揮官はそこで明日の仕事の準備もとい残業をしているはず。

司令室のドアをノックする。ノックは4回、彼奴等に嫌というほど叩き込まれたルールだ。

程なくして、中から声がかかる。誰が来たか判っているのだろう。ドアを開け、執務机の前で立ち止まる。大丈夫、ここまで練習通りにできている。あとはこれを渡すだけ。

私は上着のポケットからペンダントを取り出す。

「これ、指揮官に似合うと思って。受け取ってください」

「私に?」「あなた以外に誰がいるのですか」

「ありがとう、これを私に着けてくれるかい?いや、着けてほしい」

「よろこんで」

指揮官の後ろに回り、ペンダントのチェーンを首にかけて留める。

黒い体に紅い目の三本足の鳥、銀色の縁取り。本来の私の様に決して派手ではないけれど地味すぎないデザイン。指揮官の傍を離れてもこのペンダントが私の替わりに彼を見守っている。これでもう離れない。

「実は私からも渡したいものがあるんだ」

「そうなんですか?なら早く渡してください」

指揮官はそう言って、小さな包みを取り出す。中に入っていたのは小さなペリドットを埋め込んだブローチだった。私はそれを手に取り、上着の内側に留めた。指揮官が不思議そうな顔をした。

「外に着けると目立って危険ですし、シャツに着けると穴が目立ちますから」

「そうか、なら仕方ないか」

指揮官が笑顔になる。私もつられて笑みがこぼれる。心からの笑顔を出せるようになるなんて昔の私には想像もできなかっただろう。

 

 

 

The story is over,but her happiness never ends!




あとがき

8,000字の冗長な文を態々読んでくださりありがとうございます。
まずは、今回の企画主Hawk taka 氏に感謝を。
未実装キャラで書くのは性格を把握できているのか、不自然な部分が無いか、など若干怯えながらの執筆でしたがそれなりの形に仕上がったと思います。というかそういうことにしました。

サンダーちゃんの性格面の話
好感度高い状態を想定(誓約済だからね!)
DJMAXコラボは起きてません(そもそもこの世界がパラレルワールドの類です)



最後に、サンダーちゃんはいいぞ


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