ウタカタノ花   作:薬來ままど

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戦いは遂に決着!しかしその代償は大きく・・・

※一部、原作とは異なる部分があります。




嵐が収まり、静けさが戻ってきた頃。

炭治郎が妓夫太郎と戦っていた時に箱から落ちてしまった禰豆子は、瓦礫の山と化した町の中を家族を捜して彷徨っていた。

辺りを見回しても何の音も聞こえず、禰豆子の胸に不安が沸き上がる。

 

すると、前方でかすかな物音が聞こえ、禰豆子は小さな足を一生懸命に動かしながら駆け寄った。そして、そこで見たものに彼女は目を見開いた。

 

そこには倒れ伏す炭治郎と、生えたように立ったまま動かない汐の姿があった。

だが、突如汐の口と鼻から血が勢いよく吹き出し、そのまま全身が痙攣しだした。

 

「!!」

 

禰豆子は慌てて二人に駆け寄った。見てみれば、二人の身体は紫色に爛れ、あちこちから血を吹き出していた。

このままでは二人の命が危ないということは、火を見るよりも明らかだった。

 

すぐに禰豆子は、二人の身体に両手を押し当て強く念じた。すると二人の身体が真っ赤な炎に包まれ、ごうごうと音を立てて燃えていく。

だが、その時二人の身体に変化が起こった。

毒で爛れた皮膚がみるみるうちに治っていき、炎が収まった時には二人の毒は完全に消えていた。

 

「うーーー」

 

禰豆子は炭治郎の頭を自分の膝に乗せ、ぺちぺちと顔を軽くたたいた。不安げな表情をする禰豆子だが、炭治郎の瞼がゆっくりと開いたことを認識すると、その目は嬉しそうなものへと変わった。

 

「禰豆子・・・」

 

炭治郎はかすれた声で禰豆子の名を呼ぶと、すぐに目を大きく見開いた。

周りは瓦礫に覆われ、町の面影はほとんどなく、その景色に炭治郎は愕然として口を閉じた。

 

「酷い、滅茶苦茶だ。確かあの時、鎌の鬼が大きな血鬼術を放ってその後・・・」

 

(そうだ、汐が・・・、汐が新しいウタカタを放って、鬼の術を相殺して――)

 

「そうだ、汐!汐は何処だ!?」

 

炭治郎は身体を起こすと汐の姿を捜して顔を動かした。するとすぐそばで膝をついている汐の姿を見つけ、重い体を引きずりながら駆け寄った。

 

「汐、汐!!しっかりしろ!!頼む、目を開けてくれ・・・!!」

 

固く目を閉じたままの汐を揺さぶり、炭治郎はすがる思いで何度も名を呼んだ。湧き上がってくる嫌な思いを振り払うように、あふれ出そうな涙をこらえるように、炭治郎は顔を歪ませながら必死で声を張り上げた。

 

すると

 

「う・・・ん・・・」

 

汐の口から小さな声が漏れ、瞼が細かく震えたかと思うと彼女はゆっくりと目を開いた。

髪と同じ色の瞳が炭治郎の姿を映した時、汐はゆっくりと口を動かした。

 

「たん・・・じろ・・・う?」

 

汐が掠れたか細い声で炭治郎の名を呼ぶと、炭治郎の目にみるみる涙がたまり、そして。

 

――汐の身体を強く抱きしめた。

 

「!?」

 

汐が驚き硬直すると、炭治郎は汐の存在を確かめるかのように、強く強く抱きしめた。

 

「よかった・・・っ・・・!お前・・・っ、生きて・・・っ」

 

炭治郎はいろいろな思いや感情が混ざり合い、言葉すらうまく出てこなかった。そんな彼の熱を身体に感じながら、汐は自分が生きていることと炭治郎が生きていることを感じ、両手を背中に回して同じように抱きしめた。

 

(炭治郎・・・生きてた・・・!炭治郎が、生きていた!!)

 

二人は互いの存在を確かめるように深く、深く抱きしめあっていた。すると、

 

「むーーー」

 

いつの間にか禰豆子が二人の間に入り、蚊帳の外にされたことを怒っているのか頬を膨らませていた。

 

「禰豆子・・・、あんたも無事だったのね。よかった・・・!」

 

汐はそう言って禰豆子を抱きしめると、あの時酷い目に遭わせてごめんと謝った。

すると禰豆子は、気にしないでというかのように汐の頭を優しくなでた。

 

「って、そうだ!他の連中は!?」

 

汐の言葉に炭治郎は慌てて周りを見渡し、立ち上がろうとした。だが、炭治郎の身体は重力に従い、膝をついてしまう。

汐も立ち上がろうとしたが、足に力が入らず座り込んでしまった。

 

(あれ?そう言えばあたし達、なんで生きてるの?あの昆布野郎の毒を喰らったはずなのに・・・)

 

汐が困惑していると、瓦礫の中から何かが聞こえ、汐は思わず身を固くした。

 

「たんじろ~~、うしおちゃあ~ん・・・」

「この情けない声は、善逸!?」

 

耳を澄ませてみれば、その間抜けな声は間違いなく善逸の物で、彼が生きていることが見て取れた。

炭治郎もその声が聞こえたのか、汐と同じように顔を向けていたものの、二人とも疲労と傷の痛みで動くことができなかった。

 

そんな二人を見かねて、禰豆子は身体を少し大きくすると右側に炭治郎の腕を、左側に汐の腕を回して担ぐと、善逸がいるであろう方向に走り出した。

鬼であるせいか、二人の人間を担いでも速度を落とさない禰豆子に、汐と炭治郎は目を見張った。

 

「たんじろぉおお~、うしおちゃああん。痛いよぉ~!!」

 

瓦礫の中を見てみれば、全身に血を滲ませながら倒れ伏す善逸の姿があった。

しかし

 

「起きたら身体中痛いよお!俺の両足これ折れてんの何なの!?誰にやられたのコレ、痛いよおお!怖くて見れないぃ!!」

 

その凄惨な見た目とは裏腹に、善逸は涙と鼻水を垂れ流しながらぎゃあぎゃあと喚いていた。

炭治郎は善逸を引っ張り出しながら無事を喜び、善逸は無事じゃないと怒りを込めた声で叫んだ。

 

(とりあえず大丈夫なようね。はぁ、やれやれだわ)

 

呆れる汐に善逸は、泣き叫びながら瓦礫の山を指さした。

 

「俺も可哀想だけど、伊之助がやばいよぉ!心臓の音がどんどん弱くなってるよ~~~っ。あそこにいるよ、あそこ~~っ!!」

 

善逸の指さした方向には、足だけ見えた伊之助の姿があった。汐と炭治郎は禰豆子に抱えられながら、伊之助の元へ駆けつけた。

 

「伊之助――っ!!」

「伊之助、伊之助!!しっかりしなさいよ、この馬鹿!!」

 

炭治郎と汐は伊之助に駆け寄り、大声で名を呼んだ。炭治郎がふれると、かろうじて生きてはいるものの、心音が段々と弱くなっていた。

 

「テメーッ、伊之助この野郎!!こんなところで死ぬんじゃねぇ―ッ!!死んだらぶっ殺すぞゴラア!!」

 

汐は涙を溢れさせながら、伊之助を怒鳴りつけた。炭治郎も目に涙をため、何故自分と汐は毒を受けたのに生きていて、伊之助だけが苦しんでいるのか。どうしたら伊之助を救えるのか必死で考えていた。

 

その時だった。

 

禰豆子は徐に手を伸ばし、伊之助の体に触れた。その瞬間、伊之助の身体が真っ赤な炎に包まれた。

 

「え、えええええ!?ちょっと禰豆子、あんた何してんのーーッ!?こんな時に焼き猪なんて作っている場合じゃないわよ!?」

 

汐が顔面を崩壊させながら突っ込んでいると、伊之助の身体に変化が起こった。毒で酷く爛れていた皮膚が、みるみるうちに治っていったのだ。そして炎が収まると、伊之助は口から血を吐き出しながら

 

「腹減った、なんか食わせろ!!」と、濁った声で言った。

 

「伊之助!!」

「伊之助―ッ!!」

 

汐と炭治郎は伊之助に抱き着き、伊之助は何が起こっているのか分からず混乱し、頭を振った。

 

「な、なんだよお前等。いてっ、くっつくんじゃねぇ!!」

「この馬鹿!!阿呆!!唐変木!!すっとこどっこい!!心配させてんじゃねーわよ!!」

 

汐はそう叫ぶと、伊之助の顔面に拳を一発叩き込んだ。すると伊之助は小さく悲鳴を上げると、びくびくと身体を震わせ動かなくなった。

 

「え、えええ!?ちょっと伊之助!!伊之助ったら!!何また寝てんのよ!!」

「いや、今のは完全に汐ちゃんのせいだよね!?止め刺したの君だよね!?」

 

会話が聞こえていたのか、仰向けになったままの善逸の鋭い突っ込みが飛んできた。

再び気を失った伊之助にあたふたしていると、

 

「いやあああああ!!!!」

 

何処からか女性の金切り声が飛んできて、汐達の耳を激しく穿った。

 

「今度は何!?」

「あっちの方からだ。行ってみよう!」

 

顔をしかめる汐に、炭治郎は禰豆子に運ぶように頼むと、禰豆子は頷き二人を抱えて再び歩き出した。

 

「死なないでぇ!死なないでくださぁぁい、天元様あ~~~~!!!」

 

汐達から少し離れた所で、ぐったりと背中を瓦礫に預けた宇髄の前で、須磨は涙と鼻水を垂れ流しながら泣き叫んだ。

 

「せっかく生き残ったのに!!せっかく勝ったのに!!やだあ、やだあ!!」

 

須磨は宇髄に縋りつきながら泣きわめき、まきをは青ざめ、雛鶴は目に涙をためて俯いていた。

 

「鬼の毒なんてどうしたらいいんですか!解毒剤が効かないよォ!!ひどいです神様、ひどい!!」

 

頭を振り、涙と鼻水を飛ばしながら泣きわめく須磨に、宇髄は自分の死期を悟ったのかゆっくりと口を開いた。

 

「最期に、言い残すことがある・・・。俺は今までの人生「天元様死なせたら、あたしもう神様に手を合わせません!!」

 

宇髄の言葉を遮り、須磨の甲高い声が響き渡った。

 

「絶対に許さないですから!」

「ちょっと黙んなさいよ!天元様が喋ってるでしょうが!!」

 

尚も泣き喚く須磨にしびれを切らしたまきをが、髪を引っ張りながら怒鳴りつけた。

そんな二人に雛鶴は、どちらも静かにするように諫めるが効果がなかった。

 

「口に石詰めてやる、このバカ女!!」

「うわあああ!!まきをさんがいじめるうううう!!!」

 

大口を開けて泣きわめく須磨の口に、まきをは瓦礫を手に一杯握りしめて突っ込んだ。

 

「オ゛エ゛ッ、ホントに石入れたァ!!」

「バカ!!だまれ!!」

「止めなさい!!」

「ギャアアア!!!」

 

妻たちが騒ぎ立てる中、宇髄はひとり、この状況に絶望しながら天を仰いだ。

 

(嘘だろ?何も言い残せず死ぬのか俺。毒で舌も回らなくなってきたんだが、どうしてくれんだ。言い残せる余裕あったのに、マジかよ)

 

いよいよ本当にまずいと思ったその時、宇髄と妻たちの間に滑り込む小さな影があった。視線を移せばそこには小さな姿に戻った禰豆子がおり、挨拶をするかのように右手を上げていた。

 

面識のある宇髄はともかく、面識のない妻たちはいきなり現れた見知らぬ少女に困惑するが、そんなことを構うことなく禰豆子は宇髄の腕にそっと手を乗せた。

 

その瞬間、宇髄の身体が真っ赤な炎に包まれた。

 

「ギャアアアッ!!何するんですか、誰ですかあなた!!」

 

突然のことに須磨は悲鳴を上げ、火だるまと化した夫を見て再び喚きだした。

 

「いくらなんでも早いです火葬が!!まだ死んでないのにもう焼くなんて!!お尻を叩きます、お姉さんは怒りました!!」

 

須磨は禰豆子を引きはがすと、鬼のような形相で禰豆子を叱りつけた。しかし、宇髄はそんな須磨を制止させると、自分の腕を眺めながら、驚いたように言葉を紡いだ。

 

「こりゃ一体、どういうことだ?毒が、消えた・・・」

 

妻達が視線を向けると、毒で爛れていた宇髄の肌はすっかり癒えていた。そんな彼を見て、彼女たちはいっせいに夫に抱き着き涙を流した。

 

「禰豆子の血鬼術が、毒を燃やして飛ばしたんだと思います。俺にもよく分からないのですが・・・」

 

追いついた炭治郎は、宇髄の身体を見ながら安心と心配を宿した目で彼を見つめながら言った。

 

「傷は治らないので、もう動かないでください。御無事で良かったです」

「こんなことあり得るのかよ、混乱するぜ。って、お前も動くなよ。死ぬぞ」

「俺は鬼の頸を探します。確認するまで安心はできない。汐はここで待っててくれ、すぐに戻るから」

 

炭治郎はそう言うと、禰豆子に背負われながら瓦礫の中へ消えていった。

残された汐は小さくため息を吐くと、身体を引きずりながら宇髄の元へ歩いていった。

 

「・・・よぉ。お前も生きていたんだな」

「何とかね。禰豆子のお陰であたしの毒も消えたし、とりあえずは、終わったみたい」

 

そう言って汐は改めて宇髄の身体を見て、顔をしかめた。毒は消えたとはいえ傷は治らず、彼の左腕は手のひらからざっくりと縦に裂かれるように斬られており、腕の形をしていなかった。

 

「あんた、その腕・・・」

「ああ。辛うじて残っちゃいるが、これじゃあもう刀を握んのは無理だな」

「それって、まさか・・・」

「・・・ああ、俺は柱を引退する」

 

宇髄の力ない声に、汐は身体を震わせた。命があるとはいえ、煉獄に続き柱が二人も鬼殺隊からいなくなる。

それは大きな戦力を失うことを意味していた。

 

「・・・そう」

「ほお、意外な反応だな。もっと怒ったり、悲しんだりするかと思ったぜ」

「今更そんなことしたって、あんたが引退を撤回する訳ないでしょ?見栄っ張りで自意識過剰なあんたがそう決めたってことは、よっぽどのことだと思うし」

「オメーの変な物分かりの良さが時々怖ぇよ」

 

宇髄は小さくため息を吐くと、雲が晴れた空を見上げた。腹立たしい程の綺麗な満月が、更地と化した吉原を淡く照らしていく。

 

「・・・戦線からは退くが、ワダツミの子と大海原家の事は、これからも調べていくつもりだ。もしも何か気になることがあったなら、いつでも俺の所へ来い」

「え?」

「柱を引退したからって、この宇髄天元が何もせず隠居なんかするわけねえだろ。そんな地味な事、まっぴらごめんだからな」

 

そう言ってにっかりと笑う宇髄に、汐は困ったように笑うと、彼と向き合い頭を下げた。

 

「音柱・宇髄天元。貴方がいなければ、私たちは今こうして立っていることはなかっただろう。貴方へ私は、感謝と敬意を表する」

「へ?あ、ああ」

 

汐の突然の変わり様に宇髄は面食らうが、汐はそんな彼に構わず、にっこりと笑った。

 

「その代わり、これからは嫁さんをもっともっと大事にしてやんなさいよ。刀は握れなくとも、嫁さんを抱きしめたりすることくらいはできるでしょ?あんたがこれからするべきことはそれよ」

「・・・オメー、実は年齢サバ読んでんじゃねえのか?」

「・・・柱としてだけでなく、男としても再起不能になりたいようね」

 

汐が目を剥いてすごむと、三人の妻たちは髪の毛が逆立つほど驚き、宇髄を守るように抱きしめた。

 

「・・・冗談よ。さて、あたしは炭治郎の様子が気になるから、行ってくるわね」

 

そう言って汐は無理やり足を引きずるようにしてその場を後にした。

 

少し歩くと、どこからか言い争う声が聞こえ、汐はその方向に顔を向けた。

そこには座り込む炭治郎と、騒ぎ立てる二つの鬼の頸があった。




おまけCS
須「え?なんですかこれ。あの青い髪の女の子と天元様って、どういう関係ですか?」
雛「あの子は確か、恋柱様の継子だったはずだけれど・・・」
須「いやいやいや、あれどう見ても上官と部下の会話じゃなかったですよね!?堂々としすぎていませんでした!?」
ま「相変わらずうるさいねあんたは!いちいちそんなことでわめきたてるんじゃないよ!」
須「だって、だってぇ!あの子あたしよりずっと落ち着いているんですよ!?何でですか!?あたしより年下のはずなのに!?」
ま「あんたが頼りないからいけないんでしょうが!あんたなんかより落ち着いた年下の子なんか、この世にごまんといるよ!」
須「うわあああ!!またまきをさんがいじめるぅううう!!」
雛「いい加減にしなさい!今はまず、天元様やみんなが無事だったことを、喜びましょう」
須「そうはいっても・・・。もしもあの子が天元様の新しい妻になったら、どうするんですか?」
宇「いや、それはねえ。あんなちんちくりん女は趣味じゃねえよ」
雛「ちょっと、天元様・・・」
宇「それに、あいつはもう大事なもんを見つけてるさ。なんせ、あんな大声で堂々と惚気やがったんだからな!」
雛(天元様ったら相変わらずね。でも、だからこそ、私達はこの方についていこうって決めたのよね・・・)

汐はどちらに値すると思いますか?

  • 漆黒の意思
  • 黄金の精神
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