ウタカタノ花   作:薬來ままど

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汐は刀を構えながら朱紗丸と対峙する。彼女は相も変わらず笑い声をあげながら、六本の腕に毬を装填させる。

「キャハハハ!さあ、人間ごときの体でいつまでもつかのう!」

 

朱紗丸は笑いながら大きく振りかぶると、汐に向かって毬を投げつけた。矢印の力がないせいか、軌道は単調だ。

だが、その筋力から繰り出される投げは、大砲のごとき破壊力を持つ。現によけた汐の背後の木が、毬が当たっただけで真っ二つに折れたくらいだ。

 

あれが人間の肉体だったら、折れる何処ではない。ひき肉になってしまう。その事実に、汐の顔から汗が流れる。

 

「キャハハハ!どうしたどうした!?お前の威勢とやらはそんなものかえ?」

 

朱紗丸は嘲笑うかのように次々と毬を投げてくる。隙をつこうにも、毬は後から後から生み出され、近づくことすらできない。

(さっさとこいつを仕留めて、炭治郎たちを助けなくちゃいけないのに!)

 

攻めきれないもどかしさと朱紗丸の挑発的な態度に、汐の苛立ちは増すばかりであった。しかも常に動いている自分とは違い、朱紗丸はほとんど動かないまま毬を投げ続けているため体力の消費量も全く違う。

だが、そんな彼女の努力(?)の甲斐もあってか、朱紗丸は背後から迫る愈史郎に気づくことができなかった。

 

彼女が気づいたときには、愈史郎は姿を消したまま近づき、その体に数発の体術を叩き込んだ。思わぬ援軍に、流石の朱紗丸の顔が強張る。

 

「珠世様を傷つけたこと、絶対に許さん!!」

 

愈史郎が朱紗丸を止めてくれたおかげで、汐に攻撃の隙ができた。

 

――全集中・海の呼吸――

――伍ノ型 水泡包(すいほうづつみ)!!

 

相手の盲点へ入る技を使い、汐はすぐさま距離を詰め頸を狙う。しかしその刃は届かなかった。

汐の攻撃に気づいた矢琶羽が、汐に矢印を打ち込んだのだ。

 

汐の体は瞬時に横に飛び、石の壁に叩きつけられる。だが、汐は当たる寸前に呼吸で受け身をとったため大事に至らずに済んだ。

 

(い・・・痛い!これはまるで、おやっさんにぶっ飛ばされて水面に叩きつけられた時と似たような感覚!!)

 

などと微妙な回想をしている汐をしり目に、矢琶羽は朱紗丸に顔を向けていった。

 

「朱紗丸よ。そちらにいるのは【逃れ者】の珠世ではないか。これはいい手土産じゃ」

「そうかえ!!」

 

朱紗丸は倒れている汐に向かって渾身の力で毬を投げつける。痛みで反応が遅れた汐に、逃げるすべはない。

 

(殺られる!)と思った瞬間、誰かが割って入り汐の体を抱えて転がった。

直ぐ脇で毬があたり、石壁が崩れる。瓦礫が降り注ぐ中、汐が目を開けるとそこにいたのは。

 

「禰豆子!?」

 

禰豆子が汐を庇うように前に立ち、朱紗丸を鋭い目で睨みつけている。禰豆子がいなければ、今頃汐はひき肉になっていたことだろう。

「あ、ありがとう禰豆子。助かったわ」

汐が礼を言うと、禰豆子は優しい眼を彼女に向ける。だが、すぐに戦闘態勢に入ると、朱紗丸に向かって走り出した。

 

「面白いのう!面白いのう!」

朱紗丸は笑いながら、今度は地面に毬を当てて軌道を変えながら禰豆子を狙う。禰豆子はその毬を蹴り返そうと足を上げた。が。

 

「蹴ってはだめよ!」

珠世の鋭い声が響く。だが、足を上げた禰豆子は止めることができず、蹴ろうとした足が毬の威力に耐え切れず千切れ飛ぶ。

倒れた隙を狙って朱紗丸が禰豆子を蹴り飛ばすと、禰豆子の体は壊れた建物の中へ吹き飛んでしまった。

 

「禰豆子!!」

 

汐が悲痛な叫び声をあげる。珠世はすぐさま禰豆子を追って建物の中へ戻っていった。

 

「キャハハハ!楽しいのう。楽しいのう。蹴鞠もよい。矢琶羽、頸を五つ持ち帰ればよいかの?」

「違う、三つじゃ。鬼狩りと青髪と逃れ者。残りの二人はいらぬ」

 

矢琶羽の言葉に、対峙していた炭治郎は唇をかむ。一方汐は、そんな言葉などどうでもいいというように低くつぶやいた。

 

「あんた・・・あたしの友達に何してくれてんのよ」

うつむいていた汐が顔を上げる。人間とは思えぬほどの殺意の宿ったその表情に、朱紗丸の表情が強張った。

だが、いくら殺意を宿しても肉体が変化するわけでもない。朱紗丸は再び6本の腕に毬を出現させると、汐に向かって投げつけた。

だが、

 

「しゃらくせえ!!!!」

 

汐の口から恐ろしい程の怒号が飛ぶと同時に、彼女に向かっていたはずの毬が弾かれる。そのあり得ない現象に朱紗丸は勿論愈史郎ですら驚愕した。

そしてその勢いで汐は刀を構えて躍りかかる。

 

「矢琶羽!」

 

朱紗丸が叫ぶと同時に、再び汐に向かって矢印が撃ち込まれようとしていた。だが、汐は寸前でそれをかわし、睨みつける。

 

(くそっ、くそっ!!あいつに近づこうとすると矢印の奴が邪魔をする。あいつ、炭治郎と戦っているくせにこっちまで気を回せるの!?)

その苛立ちが呼吸を乱し、体勢が崩れた瞬間。汐の真横を毬がかすった。かろうじてかわしたものの、汐の右肩から鮮血が噴き出した。

 

「ぐっ!!」

 

鋭い痛みを感じ、肩を抑えて蹲る汐。そんな彼女を朱紗丸は毬をつきながら睨みつける。

 

「喧しい声を出しおって。だが、これで終わりじゃ。その頸、貰い受けるぞ!!」

 

朱紗丸は腕をこれ以上ないくらい盛り上がらせ、体を思い切り引く。そして最大の力を込めて、その毬を汐にはなった。

耳をふさぎたくなるような轟音が、風を切って汐に迫る。何とか身をかわそうとするが、痛みが走り体が強張る。

 

だが、汐の体が砕け散ることはなかった。毬が汐に当たる寸前に禰豆子が割って入り、毬を蹴飛ばしたのだ。

 

「禰豆子!?」

思わぬ闖入者に、汐の声が上ずる。怪我は大丈夫なのかと、聞く前に禰豆子は汐を庇うように前に立った。

そして振り向くと、汐に視線を送る。その眼は、(ここは自分にまかせて)と言っているようだった。

 

その眼を見て汐は自嘲気味に笑う。要するに自分は足手纏いだから、この場を離れろということだろうか。

 

「・・・情けないわね。女に二言はないとか大口叩いておいてこの様だなんて」

汐がそういうと、禰豆子は少し顔をしかめると、別な方向へ視線を向けた。そちらは、炭治郎と矢琶羽が戦っている方角だ。

 

「炭治郎を助けてほしいってこと?」

汐が聞き返すと、禰豆子は表情を緩めてうなずいた。

汐はうなずき返すと、禰豆子の肩に手を当てる。

 

「わかった。あんたを信じるわ、禰豆子。そして必ず、あんたの兄さんを守って見せるわ」

 

汐がそういうと、禰豆子はそのまま朱紗丸へと向き合った。

 

「汐さん!傷の手当てをしますからこちらへ」

 

建物の中で珠世の声がする。汐は後ろ髪をひかれるような思いで、戦場から離脱した。

 

*   *   *   *   *

 

一方。炭治郎は矢琶羽に苦戦を強いられていた。一太刀を浴びせようとすれば矢印の力で太刀筋を変えられてしまい、攻撃することができない。

そして何よりも、手の目玉が気持ち悪い。申し訳ないけれど、気持ち悪い。

 

矢琶羽は笑いながら再び矢印を炭治郎に向けて放つ。放たれた無数の矢は、時間差で炭治郎ととらえようと飛んでくる。

矢印は彼の体に当たるまで消えないし、斬ることもできない。刃がふれた瞬間、矢印の方向へ飛ばされてしまう。

 

どうする?どうする?炭治郎が焦りを見せた、その時だった。

 

「矢琶羽!!」

 

朱紗丸の声が響き、矢琶羽が目玉を呼ばれた方向に向けたその時だった。

呼ばれた方向には彼女はおらず、そこにいたのは死角から刀を構えた汐の姿。

 

「炭治郎!」

汐が叫ぶと同時に炭治郎が走り出し、汐も刃を突き立てようとする。だが、

 

「その程度の小細工が、儂に通用するとでも思ったか」

 

矢琶羽は両手を汐と炭治郎の方向へ向け、目玉を閉じた。

それと同時に、二人の体が別方向へ飛んでいく。汐の体は空中に打ち上げられた後、急速に落ちていく。

 

――肆ノ型・改 勇魚(いさな)下り!!

 

技を出して衝撃を緩和した汐は、すぐに炭治郎の下に駆け寄る。炭治郎も壁に叩きつけられる寸前に打ち潮で衝撃を緩和したのだ。

 

汐の姿を見て炭治郎は驚いた顔をしたが、汐はそのまま彼の隣に立ち刀を構えた。

この作品の肝はなんだとおもいますか?

  • オリジナル戦闘
  • 炭治郎との仲(物理含む)
  • 仲間達との絆(物理含む)
  • (下ネタを含む)寒いギャグ
  • 汐のツッコミ(という名の暴言)
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