ウタカタノ花   作:薬來ままど

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序章:嵐の前の静けさ


むかしむかし、あるところに。

美しい海の女神がおりました。

名を『ワダツミヒメ』と言い、彼女が治める海には命があふれ、人々は日々その恩寵に感謝しておりました。

 

ある日のこと。ワダツミヒメは、浜辺で一人の若者を見かけました。その人ははるか遠い天上の世界を治める神でした。

その立派な出で立ちに、彼女はすっかり心を奪われてしまいました。

 

それからというものの、ワダツミヒメは来る日も来る日も、彼のことばかり考えていました。

名はなんというのだろう。どこに住んでいるのだろう。好きなものはなんだろう。

 

しかし、募るばかりの思いとは裏腹に、彼女は彼に声をかけることができませんでした。

 

それから長い年月が経ちましたが、ワダツミヒメは彼を忘れることができませんでした。

それならばせめて、彼のために何か贈り物でもしたいと思いました。

 

ワダツミヒメは、それから彼に何を贈るか三日三晩悩みました。そしてついに、贈り物を決めました。

 

それは、海の底に咲いているという『泡沫の花』という幻の花でした。

しかし、それは幻というだけありなかなか見つけることができません。

それでも、ワダツミヒメは彼に会いたい一心で必死に探し続けました。

 

それからさらに年月がたち。ワダツミヒメはついに花を見つけることができました。

彼女はすぐさま花を摘むと、彼の元へと急ぎました。

 

もうすぐ会える。彼に会える。ワダツミヒメの心は喜びでいっぱいになりました。

 

しかし、その願いはかなうことはありませんでした。

なぜなら、彼にはすでに心に決めた相手がいたのです。

その瞬間、彼女の心は深い深い闇に包まれ、それに呼応するように、穏やかだった海は荒れ狂い、村や人々を次々に飲み込んでいきました。

 

それを見かねた神々は、ある人間に海を鎮める歌を教えました。

それを行うと、海は元の穏やかを取り戻しました。

その後、ワダツミヒメが治めていた海のそばの村では、想いを伝えることができなかったワダツミヒメを想い鎮める祭りがおこなわれました。

そしてワダツミヒメを鎮める歌を披露する者を『ワダツミの子』と呼ぶようになりました。

 

 


 

 

飛び込んだ瞬間に生じる泡の壁が晴れると、そこには地上とは全く違う世界があった。

色とりどりの魚や様々な形の海藻が入り乱れ、白と橙が交じり合う光が帯となり降り注いでいる。

 

そんな海中を影が横切る。それは魚ではなく、一人の人間だった。

海の底を髣髴させるような深い青色の髪を靡かせて、優雅に揺蕩うその姿はは、まるでおとぎ話に出てくる人魚のようであった。

 

名は大海原汐(わだのはら うしお)。近くの漁村に、養父と共に暮らしている。

体つきがよく、見た目は男子のようだが、れっきとした女子である。

彼女の朝は早く、日が昇り切る前に起きて日課の海中散歩を楽しむ。そしてそのついでに、朝餉のおかずになるものを取ってくる。

こんな生活を始めて、もう何年になるだろう。それほど長い間、汐は海と共に暮らしてきた。

 

幼い頃浜辺に打ち捨てられていた彼女は、たまたま通りかかった彼に拾われた。しかし体が非常に弱く、医者の話では数年生きられるかわからないほどであった。

そんな中、養父は彼女に『特別な呼吸法』を教えた。それは病弱だった体を強くし、日常生活は勿論、海を縦横無尽に泳ぎ回れるほどになった。

 

だが、その呼吸法がもたらしたのはそれだけではなかった。

 

それは、非常に高い身体能力と、常人をはるかに超える肺機能の強さであった。そのため、一度潜れば数十分は息継ぎをしなくても活動できるのだ。

その特技のおかげで、村人たちの生活は以前よりもはるかに豊かになったといっても過言ではない。

 

その日は、運が良かったのか朝餉十分すぎるほどの獲物が取れた。それからほかの漁師の罠がきちんとされているか確認をした後、汐は村へと戻った。

裾を縛って余分な海水を落としていると、漁の準備をしていた漁師たちが汐の姿を見つけて寄ってくる。

 

「汐じゃないか!またいつもの海中散歩か?おお、今日はずいぶんたくさんとれたな。」

「うん。今日は特に海が穏やかだったから、濁りも少ないし大漁だったよ。あ、そうだ。よかったら少し持っていかない?」

「いいのかい?助かるよ。これで母ちゃんにどやされずに済むってもんだ」

「お前さんはもう少し汐を見習うべきだと思うぜ?」

 

漁師たちの他愛ない会話を聞きながら、汐はにっこりとほほ笑んだ。

 

「ところでおじさん。絹がいないけど、祭の歌の練習?」

「ああ。もうすぐ祭りが近いからな。今年はワダツミの子に選ばれたから、えらく張り切ってるよ」

 

そういう彼の顔は、うれしさを隠しきれないのか綻んでいた。

 

この村には昔から海の女神ワダツミヒメを鎮める祭りがある。その際に行われる歌を披露する巫女をワダツミの子という。

今年は庄吉の娘絹が、その役に選ばれたのだ。

 

「しかし俺は今年は汐が選ばれると思ったんだがなあ。何せ、青い髪の娘は珍しいから」

「無理に決まってるよ!だって絹姉ちゃんのほうが美人だもん!汐姉ちゃんは男っぽいし!」

「そうだね。って、今男って言ったやつ誰だ!?出てこいコラ!!」

 

村の子供たちがはやし立て、それを真に受けた汐は真っ赤になって子供を追い回す。それを巧みに避ける子供たち。

騒がしくも楽しげな鬼ごっこを人々はほほえましく眺めている。

 

だが、それは突然発せられた大声によって終わりを迎えた。

 

「た、たた、大変だ!誰か来てくれ!」

声のした方に皆が振り返ると、そこには頭から血を流した男が、おぼつかない足取りでこちらへやってきているところだった。

すぐさま汐は男に駆け寄り、倒れこむ男を受け止める。それから村人たちが集まり、男の介抱を始めた。

 

「どうした!?何があった!?」

庄吉が声を上げると、男は震える声で「入り江に、海賊が・・・」と答えた。

 

「なんだって!?」

 

ただならぬ言葉に、村人たちの間にたちまち動揺が広がる。

騒ぎ出す村人を制止し、汐は口を開いた。

 

「入り江って、あの鯨岩の?」

「そ、そうだ。あそこの、し、仕掛けを回収しようと、したら、と、突然襲われて・・・」

それだけを言うと、男はそのまま気を失ってしまった。

 

「おい、この村から近い場所だぞ。まずいんじゃないか?」

「まずいなんてもんじゃない。奴らの狙いは、この村の略奪だよ。近況を見越して寄ってきたってことだね」

 

祭りが近いこの状況で、それは絶対にあってはならない。そのようなことになれば祭りの準備をしてきた者たちや、ワダツミの子に選ばれた絹の努力がすべて水泡に帰してしまう。

 

汐はしばらく考えた後、立ち上がって静かに口を開いた。

 

「・・・話をつけてくる」

 

この言葉に、一部の村人の顔色は一瞬で変わった。

 

「無茶だ!相手は海賊だぞ!?話し合いに応じるはずがない!」

「心配しなくても大丈夫。腕には多少自信はあるし、それに、あたし一人で行くわけじゃない。みんなにも手伝ってもらうから」

 

そういって汐は、後ろにいた屈強な漁師たちを一瞥する。彼女の視線を受けると、みな力強く笑った。

 

汐は女子供たちに家から出ないように言いつけると、自分は単身で海賊たちの元へ向かった。

力のありそうな大人たちは、海賊を拘束できるような物を持ち、汐の指示に従う。

 

「いい?もしもの時はあたしが連中をおとなしくさせるから、みんなはその隙をついて捕まえて。絶対に殺しちゃだめだよ」

 

それだけを告げると、汐は意を決して海賊たちの元へ足を進めた。

 

入り江には布と木で作られた簡素な小屋があった。おそらく、海賊たちが作った根城だろう。

汐は臆することなく根城へ向かう。

 

「ん?なんだぁおめえは?」

見張りの男が汐に気づき、目つきを鋭くさせながら近づいてきた。だが、相手が子供だと、嘲るような視線に変わる。

「ここはお前みたい餓鬼が来るようなところじゃねえ。怪我したくなきゃさっさと・・・」

「ぐだぐだ言うのは性に合わないから単刀直入に言うけど、あんたら今すぐここから出て行って」

 

言葉を遮り、汐は男へと言い放つ。その声と瞳に、迷いや恐れは一切なかった。

男の顔がみるみる歪み、こめかみがぴくぴくと脈打つ。

 

――ああ、なんて醜い、汚い目なんだろう・・・

 

「てめえ、今なんて言った?餓鬼が大人になめた口きいてんじゃねえぞ?」

「おとなしく出て行ってくれれば警察には言わない。でもそうじゃない場合は・・・わかるよね?」

男の顔が更にひどくゆがみ、皮膚はみるみる赤くなる。全身が震え、今にも沸騰しそうだ。

 

「て、てめぇ・・・。一度ならぬ二度まで・・・それ以上言ったらこっちも只じゃ・・・」

「いいからさっさとここから出て行けって言ってんだよ。言っている意味わかんないの愚図」

「こ、この餓鬼ィィィイイ!!!」

 

男が言い終わる前に、汐の低い声が小さく響く。その言葉についに切れた男が、奇声を上げながら殴りかかってきた。

 

だが、それよりも速く、汐の拳が男の鳩尾に食い込んでいた。

唾を吐き出しながら吹き飛ぶ男。すると、異変を察知したのか仲間の男たちが、ぞろぞろと汐の前に姿を表した。

 

皆武器を持ち下卑た表情を浮かべている。その目は、ギラギラと欲を孕んでいて、汐の胸を悪くさせた。

 

――駄目だ。汚すぎて吐き気がする

 

汐は小さく舌打ちをすると、まず短刀で切りかかってきた男の手を思い切り蹴りあげた。

怯んだ男にそのまま再び鳩尾に入れた後、今度は背後から掴み掛ってきた男の手をつかみ、捻りながら放り投げる。

その斜線上にいた仲間ごと、男は無様に倒れこんだ。

 

「こ、この餓鬼強ぇぞ!くそっ、あれを使え!」

 

主犯格と思われる男が仲間に指示を出す。すると仲間の一人が岩陰に隠してあった何かを持ち出してきた。

 

そこには、血走った目で唸り声を上げる4匹の野犬が入った檻があった。

 

汐は目を見開き、距離を取る。その間に仲間は檻を開けると、野犬たちは唸り声をあげて汐に狙いを定めた。

 

(あの様子じゃ何日も食べ物にありつけていないみたい・・・なんてことをするんだ・・・!)

 

汐はこみ上げる怒りを抑えるように、唇をかんで野犬たちを見据えた。野犬たちはもう我慢が出来ないといわんばかりに、汐に襲いかかってきた。

 

人間とは異なり、動物は動きが読みづらい。攻撃を当てようにも、重心も姿勢も人間とは全く違う。

そうこうしているうちに、野犬の一匹の爪が汐の服をかすめた。

 

「っ・・!」

服が裂けただけで怪我はしなかったものの、このままではらちが明かない。かといって加勢に来た村人たちが乱入すれば、混乱に生じて海賊たちを逃がしてしまうかもしれない。

 

――仕方ない。

 

汐は背後で待機している村人たちに合図を送り、自分は野犬たちから距離を取る。そして大きく息を吸うと――

 

そのまま、大声と共に野犬に向かって()()()()た。

 

凄まじい衝撃波が起こり、海賊たちは顔をしかめて耳をふさぐ。その攻撃をまともに受けた野犬たちは、成す術もなくその場から一目散に逃げ出した。

呆然とする海賊たちの前に、汐は静かに歩み出る。

 

「さて、あたしの頼み、おとなしく聞いてくれる気になったかな?」

汐が一歩近づく度に、海賊たちは肩をびくりと震わせる。

すると、

「こ、こんな奴に・・・」

「ん?」

声のした方に視線を向けると、主犯格らしき男が肩を戦慄かせてこちらを睨んでいた。

 

「こんな、こんな・・・!小僧なんかにいぃーーー!!!」

 

その刹那、男は隠し持っていた短刀を汐に向かって突き出してきた。が、

 

「お前、今なんて言った?」

 

汐の小さく、低い声が口から洩れる。そして、男の攻撃を紙一重でかわすと、その胸ぐらをつかんだ。

 

「あたしの名前は大海原汐!正真正銘、だァーーーッ!!!」

 

彼女の高らかな叫び声と、男の断末魔。そして、骨が砕けるような音が海と空に響いた。

 

切り札がなくなった海賊たちは、そのままおとなしく投降した。そのまま村人たちに拘束され、別の村人が通報した警察によって彼らの身柄は引き渡された。

ついでに、逃げた野犬は村一番の強面の奥方が連れて帰り、厳しいしつけの末売られたとかそうでないとか。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *   *   *

 

 

 

 

ひと仕事を終えた汐は、軽い疲労感を覚えながらも家路についていた。

みんなを守ることができてよかった。身体を鍛えておいて本当に良かったと、心から思う。

 

「汐ちゃん!!」

 

そんな汐を声が呼び止めた。足を止めると、一人の少女が転がるように走ってくる。

色白で真っ黒な髪を一つに結わえた、とてもかわいらしい少女だ。

 

「絹!」少女、絹の姿を見て、汐の表情が瞬時に和らぐ。

 

「あれ?練習は終わったから家に帰ったって聞いたんだけど・・・」

「さっきお父さんから汐ちゃんが海賊と戦ったって聞いて、いてもたってもいられなかったの!怪我なんかしてたらと思うと、私心配で・・・」

「そんなの全然平気だって。本当に絹は心配性だなぁ」

「もうっ、本当に心配したんだから。汐ちゃんはいつもいつも無茶ばかりするから、心臓がいくつあっても足りないわよ」

 

そういって膨れる絹を、汐はやさしく頭をなでる。

 

「ごめんね、心配させて。だけど、あたしはうれしいんだ。絹や村のみんなを守ることができて、こうして笑ってくれるのが、何よりもね」

「それなら私たちだって同じよ。私も、汐ちゃんが笑ってくれるのが何よりもうれしいもの」

「絹・・・」

 

涙でぬれた瞳を、汐はじっと見つめる。黒曜石のような美しい瞳が、汐の心を落ち着かせた。

 

「じゃあ、あたしが笑顔になれるように絹には頑張ってもらわないとね。今度の祭りの歌、楽しみにしてる」

「うん!私頑張るわ。村のみんなのためにも、大好きな汐ちゃんのためにもね!」

 

そう言って見合わせた二人の顔には、心からの笑顔が浮かんでいた。

 

「そろそろ帰るよ。絹も早く帰って休んだ方がいいよ。祭りが近いのに風邪なんかひいたら洒落にならないからさ」

「そうね、そうする。汐ちゃんも早く帰って玄海おじさんに顔を見せてあげないと。きっと待ってるわ」

 

2人は互いに手を振ると、それぞれの帰り路につく。日は、もう高く昇っていた。

 

汐の家は、海岸から離れた岩陰に隠れたところにある。窓には板が打ち付けられており、出入り口は玄関のみである。

汐はそのまま外にある水だめで獲物を洗うと、細心の注意を払いながら扉を開けた。

 

「ただいまー。おやっさん、今帰ったよ」

 

それからさっと家の中に入り、扉を閉める。それから棚にあるろうそくに灯をともすと、薄明かりに照らされて部屋の中が見える。

台所と食卓と棚、それから寝床があるだけの殺風景な部屋だ。その寝床の一つに寝そべっていた影が、ゆっくりと体を起こした。

 

白髪交じりの髪の毛に、厳つい顔。見た目だけで言ってしまえば、目があった子供か確実に泣き出すような風貌をしている。

 

彼の名は大海原玄海(わだのはら げんかい)。幼い汐を拾い育ててくれた恩師で、汐の名付け親でもある。

昔は名のある剣士だったらしいが、今は『奇病』に侵されその任を退いている。

 

「おー、帰ったか。ずいぶん遅かったなァ。俺ァ待ちくたびれたぜ」

「ごめんごめん、村の外に海賊がいたっていうからちょっとばかし『話し合って』たの。今朝ごはん作るから、ちょっと待ってて」

 

汐はそう言うと、今日とってきた獲物と蓄えで朝餉を作る。採りたての新鮮な魚介類の磯の香りが家じゅうに漂った。

2人で食事に舌鼓を打っていると、玄海はじっと見つめてから深くため息をついた。

 

「汐、おめぇよ。俺ァ喧嘩するために『呼吸法』を教えたわけじゃねえんだぞ。元気なのは悪いことじゃねェが、村の連中を心配させるような真似だけはするな」

 

「それは、わかってる」汐は箸を置くと、玄海を見つめた。

 

「でもあたし、みんなが悲しい目をするのが嫌なの。誰かが傷つくと、皆すごく悲しい目をする。それが苦しくて苦しくて溜まらない。だから、守りたい。あたしの呼吸法は、そのためにあるんだと思いたいんだよ」

 

汐はしっかりと彼を見据えて言った。玄海はしばらく彼女の顔を見つめていたが、やがて満足するように息を吐いた。

 

「ったく、子供ってのはいつの間にか成長してやがるなァ。この間まではこーんなちいこいガキだったのに、一丁前な口きくようになりやがってよ・・・」

「あたしだっていつまでも子供じゃないんだよ。バカにしないでよね」

 

言いたいことを言いながらも、二人には笑顔が浮かんでいる。二人の和気あいあいとした食事はしばらく続いた。

 

「さて、と」食事を終えた玄海は、片づけをする汐の背中を見ながら口を開いた。

 

「夜になったら呼吸法と型の復習だ。それまでの間、いつもの課題をこなすこと。いいな?飽きたからって海に潜って怠けるんじゃねえぞ。お前は昔から、溜まるとすぐに海に潜るからな」

「わかってるよ!まったく、昼間は動けないのに口だけはよく動くんだから・・・」

「全部聞こえてんぞ。それとも、課題を2倍に増やすかァ?」

「・・・すみませんでした」

 

この男は冗談に聞こえない冗談を言うから質が悪い。もっとも、課題を増やすというのは、冗談ではないかもしれない。いや、きっとそうではないだろう。

冷や汗をかきつつ、汐はうなずくしかなかった。

 

――大海原玄海が侵されている奇病。それは『日の光にあたる事ができなくなる』という物である。少しでも日の光にあたってしまうと、皮膚が焼けるように痛むのだ。

彼がいつ、この病にかかったのかは定かではない。だが、どんな名医に見せても治療法はおろか、原因すらわからなかったのだ。

そしてその病が進行したせいなのかは定かではないが、彼は生もの以外を口にできなくなっていた。

 

しかし彼は全く悲観することはなかった。昼間は家で過ごし、夜になれば外に出て村人たちと交流したり汐に稽古をつけたりもする。曇りや雨の日など、日の光が差さないときは昼間でも動けるため、外出したりもできる。

村人たちも少し変わっているが、悪い人間ではないと認識していた。

 

「ああ、そうだ。汐。お前に一つ話しておきたいことがある」

 

そう言って玄海は、棚にしまっていた封書を一枚取り出した。

 

「実は俺の病の進行を抑える薬を作っているやつが見つかった」

「え!?それ、本当なの!?」

 

突然のことに、汐は驚きのあまり目を見開いた。玄海は続ける。

 

「ああ。この村の先に港町があるのはわかってるな?そこで待ち合わせをしたんだが、急用で来られなくなったとぬかしやがった」」

「じゃああたしがその薬をもらってくればいいんだね?」

 

汐の言葉に、玄海は深くうなずく。

 

「じゃあ、今から行った方がいいんじゃ・・・」

「いや、それは駄目だ。今から行ったんじゃあ、帰りが夜になっちまう。夜には鬼が出るんだ。だから絶対に夜は村から出るんじゃねえ」

 

そう言う玄海の顔つきは、冗談など言えるようなものではない真剣そのものであった。

 

――夜には鬼が出る。だから夜に村の外には絶対に出るな。

汐が小さい頃からずっと聞かされていた言葉だった。

彼女はその言葉を半信半疑で聞いていた。

だから、気づくことができなかった。

――大丈夫だよ、おやっさん。鬼なんていないんだから・・・

 

そう思っていたことを後悔する日がこようとは・・・




オリジナルキャラクター補足
大海原汐(わだのはら うしお)
主人公。海に長い間潜れるほどの肺機能の持ち主。大声を上げて相手をひるませることができる。
水の呼吸の派生、海の呼吸の使い手だが、いまだにどういう呼吸なのか本人もよくわかっていない。

大海原玄海(わだのはら げんかい)
汐の育ての親。若い頃は名のある剣士だったらしい。女と酒が好きだが、最近はいい女との出会いがないのでへこんでいる。
見た目だけなら子供が瞬時に泣き出すレベル。

庄吉&絹
村に住む漁師の親子。娘は村一番の美少女で、彼女を目当てに他の村から人がやってくることもある。
大海原親子とは仲が良く、特に汐と絹は姉妹といっても過言ではないほど仲が良い。


これを生かせるように頑張りたいと思います

この作品の肝はなんだとおもいますか?

  • オリジナル戦闘
  • 炭治郎との仲(物理含む)
  • 仲間達との絆(物理含む)
  • (下ネタを含む)寒いギャグ
  • 汐のツッコミ(という名の暴言)
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