おまけに鬼狩りが数人入り込んでいる。これ以上ない程、【彼】は焦っていた。
ただでさえ人を食らえず、【あの方】から数字をはく奪され捨てられてしまった彼。血の力で以前よりも格段に強くなり、十二鬼月として認められた。
そしてこれからも人を食らい、強くなれると信じていた。
――そう、信じていた・・・
だからこそ、彼は捜していた。珍しい血の持ち主、【稀血】の人間を。
それを食らい、また十二鬼月に戻るために・・・
自分を、認めてもらうために・・・
襖の向こうにいたのは、柿色の着物を着た一人の少年だった。その手にはわずかに血の付いた鼓を持っている。
汐と彼の視線がぶつかると、その表情は一瞬で怯えたものとなり鼓に手を伸ばす。
その刹那汐は思い出した。あの二人に聞いた着物の色が目の前の少年と一致することに。
「正一、てる子!!」
汐はとっさに二人の名を叫んだ。すると少年はびくりと体を震わせ鼓を叩こうとした手を止め汐を驚いた眼で見つめた。
「ど、どうして弟と妹の名前を・・・?」
その言葉に汐は心底ほっとして息をついた。先ほど見た死体を思い出し、彼が生きていることに心底安心した。
それから怖がらせないようにゆっくり近づく。
「あたしは大海原汐。あんたの弟と妹に頼まれてあんたを助けに来たのよ。鬼――、化け物にさらわれたって聞いてね」
化け物という言葉に少年の顔が青ざめる。それをみた汐は慌てて訂正した。
「大丈夫。近くに化け物はいないわ。信じられないかもしれないけれど、あたしは化け物の気配を感じることができるのよ」
汐は少年のそばに近づくと彼の視線に合わせて腰を下ろした。にっこりとほほ笑んで見せると、彼の表情が少しずつ和らいでいく。
「あんたの名前、教えてもらってもいい?」
汐が訪ねると少年は小さな声で「清」と名乗った。
「清ね。本当に無事でよかった。一人でこんなところに閉じ込められて怖かったでしょう?でももう大丈夫。あたしのほかにも仲間が来ているから、必ず化け物をやっつけて外へ出してあげるからね」
汐の力強い言葉が清の耳から心へ染みこんでいく。その瞬間、彼の両目から涙があふれ出しそのまま汐に縋りついた。
激しく上下する清の背中を優しくさする。それと同時に早く正一とてる子に会わせてあげたいという気持ちが膨れ上がった。
やがて少し時間がたち清が落ち着いてきた頃、汐はそっと彼に尋ねた。
「そういえば清。あんたがさっき叩こうとしたその鼓は?」
汐がそばにある鼓を指さすと、清は目を伏せながら徐に話し始めた。
「これは、ば、化け物が持っていた鼓なんだ。これを叩くと部屋が変わるから・・・逃げてこれたんだ」
「化け物・・・。つまりこれは鬼の血気術でできた鼓ね。それを奪うなんて、あんたなかなか肝が据わってるじゃない」
汐が笑いながら褒めたその時。清がわずかに顔をしかめた。汐が視線を移動させると、彼の足には血が付いている。
汐はここに来る前に正一が血の跡をたどってきたと言っていたことを思い出し、すぐさま傷の手当てを始めた。
傷は深くはないものの小さくはない。残念ながら痛み止めの薬は持ち合わせていなかったため、まずは止血を試みる。
その時、汐の背後で微かに物音が聞こえた。
清は小さく悲鳴を上げ身を固くする。
「大丈夫。あたしの後ろに隠れてて」
汐は刀に手をかけながら、清を庇うように立った。
だが、鬼の気配はしない。となれば、もしかしたら・・・
「この匂いは・・・、汐の匂いだ!!」
汐の耳に聞きなれた声が届いた。それを聞いた彼女はすぐさま刀を下ろし安心させるように清に言う。
「大丈夫よ!あの声は、あたしの仲間の――」
汐が言い終わる前に襖の扉が開かれる。そこに現れた見知った顔に、汐は思わず声を張り上げた。
「炭治郎!!」
「汐!!無事だったか!!」
二人はそのまま駆け寄り再会を喜ぶ。そして炭治郎と一緒にいたてる子は、兄の清の姿を見つけると泣きながら飛びついた。
「清、紹介するわ。この人はあたしの仲間で兄弟子の・・・」
「竈門炭治郎だ。彼女と一緒に悪い鬼を退治しに来た」
炭治郎は安心させるように言うと、清に傷の具合を見せるように言った。
鱗滝からもらった薬を刷り込み、汐が持っていた包帯を丁寧に巻いていく。手当てが終わった後、炭治郎と汐は清に何があったのか尋ねた。
清の話を要約すると、鬼に連れ去られた後食われそうになったところを他の鬼が現れ、彼を狙って殺し合いを始めた。
その際に身体から鼓の生えた鬼がほかの鬼にやられた際に鼓を落とし、清がそれを拾って叩いたら部屋が変わったという。
その鬼に炭治郎は心当たりがあった。この屋敷の主で、清をさらった張本人だ。
「そういえば、あの鬼は【稀血】。そんなことを言っていたな」
炭治郎の言葉に清が反応する。彼もその鬼が自分のことをずっとそう呼んでいたことが気になっていたのだ。
すると
「カァーァ!!稀血トハ、珍シキ血ノ持チ主デアル!!」
何処からか現れた炭治郎の鎹鴉、天王寺松右衛門が声を上げる。いきなりの事に兄妹は勿論汐も小さく悲鳴を上げた。
「あ、あんた、どっから湧いて出たのよ」
「失礼ナ小娘!私ヲ虫扱イスルナ。ガキドモハツツキマワスゾ!!」
「よさないか」
汐と子供たちに絡みだす彼を炭治郎は静かに諫める。そして珍しき血とは何かと尋ねると、松右衛門は得意げに胸部の羽を震わせながら答えた。
「生キ物ノ血ニハ種類系統ガアルノダ馬鹿メ。稀血ノ中デモ、サラニ数少ナイモノ、珍シキ血デアレバアル程鬼ニはソノ稀血一人デ五十人、百人人をヲ喰ッタト同ジクライノ栄養ガアル!!稀血ハ鬼ノ大好物ダ!御馳走ダ!!」
彼の説明に清とてる子は抱き合って震え上がる。汐と炭治郎は顔を見合わせると、小さくうなずいた。
「炭治郎。そいつの話が確かなら、清をさらった奴はまた必ず狙ってくるわね」
「ああ。だが、この家にはまだ複数の鬼の匂いがする。もしも清が稀血であることを悟られたら、清だけじゃなくてる子も危ない」
炭治郎と汐がそう言ったとたん。
汐と炭治郎は、同時に感じた。強力な鬼の気配を――。
この作品の肝はなんだとおもいますか?
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オリジナル戦闘
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炭治郎との仲(物理含む)
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仲間達との絆(物理含む)
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(下ネタを含む)寒いギャグ
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汐のツッコミ(という名の暴言)