ウタカタノ花   作:薬來ままど

7 / 171
一方その頃・・・


幕間
青髪


そこは、一部の者しか知らないどこかの場所のある屋敷。淡く内部を照らすのは、雲に隠れたおぼろ月。

「報告は以上で御座います」

月明かりと影を両肩にまといながら、青年冨岡義勇は落ち着いた口調でそう告げた。

 

「・・・そうか」

漆黒の髪を風に揺らし、鬼殺隊当主産屋敷耀哉は短く答えた。

義勇が報告した内容とは、つい先日の事。とある漁村で起こった鬼による襲撃事件。そしてその村に住む元・海柱、大海原玄海の鬼化、その弟子による討伐の事である。

 

「悲しいことだ。元とはいえ、柱から鬼が出てしまった・・・」

耀哉は悲しげな表情を浮かべた。表情が見えずとも、義勇もその感情を感じ取り目を伏せる。その脳裏に浮かんだのは、汐ともう一人のある少年だった。

2人とも鬼に大切なものを奪われている。そして、自分も・・・

 

「ところで義勇。彼を討ち倒した弟子『大海原汐』は、どんな子だったかな?」

不意に話を振られ、義勇は大きく肩を震わせる。このような厳かな場所で物思いにふけるなど、あってはならないことなのに。

だが義勇はすぐに冷静さを取り戻し、淡々と答えた。

 

「齢は14~5ほどの少年で御座います。大海原玄海と同じく、海の呼吸を用いておりました」

義勇の脳裏に、つい先日会ったばかりの汐の姿がよみがえる。

 

まだ刀を握ったばかりだというのに、粗削りながらも独自の呼吸を使いこなしていたこと。そして、年相応にはとても思えない、あの鋭い目と声。

柱である自分をああも圧倒できるものなのか。それとも、年相応に見えるだけで、実はかなりの手練れであったのか。だが、今の義勇に、それを確かめるすべはない。

 

「そしてとても珍しい、青い髪をしておりました」

そう告げると、今度は耀哉の肩が小さく跳ねた。

 

「青い髪・・・?青い髪と言ったのか」

「お館様?」

「そうか、青髪の者が・・・。ありがとう。もう下がっても良いよ」

それだけを呟くと、彼は義勇に穏やかな声で下がるように告げた。義勇は怪訝そうな表情をしたものの、その理由を尋ねることもせずに腰を上げた。

 

「ああ、そうだ。一つだけ言わせてほしい」

「なんでしょうか?」

「義勇。君が真直ぐで忠実な性格をしているのは心得ている。だが、流石に性別を間違えるのはどうかと思うよ」

彼のその声色には、優しさと困惑が入り時交じっていた。

義勇は再び怪訝な顔をしたものの、これ以上は何も尋ねずに部屋を後にする。

 

 

義勇が彼の言葉の意味を理解するのは、この少し後の事だった・・・




コソコソ噂話
富岡義勇はマジで汐を男だと思ってました。というよりも、この物語では、男性陣の9割はなぜか汐を男だと勘違いしています。
それに反して、女性陣は殆どが所見で女と見抜いていますが、この差はなんなんでしょうね

この作品の肝はなんだとおもいますか?

  • オリジナル戦闘
  • 炭治郎との仲(物理含む)
  • 仲間達との絆(物理含む)
  • (下ネタを含む)寒いギャグ
  • 汐のツッコミ(という名の暴言)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。