ウタカタノ花   作:薬來ままど

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「こっちこっち!こっちの桃がおいしいから!!」

一面の桃の木が生い茂る場所を、善逸は禰豆子の手を取り楽しそうに駆けてゆく。彼女の口には枷は無く、その目は光り輝いていた。

「白詰草もたくさん咲いてる。白詰草で花の輪っかを作ってあげるよ禰豆子ちゃん。俺本当にうまいのできるんだ」
「うん。たくさん作ってね」

禰豆子の口から歯切れのよい声が零れ、善逸の耳を優しくくすぐっていく。そんな彼女に頬を染めつつ、善逸はひた走った。

「途中に川があるけれど、浅いし大丈夫だよね?」
「川?」

善逸の言葉に、禰豆子は表情を曇らせながら善逸の手を握り返した。

「善逸さんどうしよう、私泳げないの」

「俺がおんぶしてひとっ飛びですよ川なんて!禰豆子ちゃんのつま先も濡らさないよ。お任せ下さいな!」

善逸は顔を茹蛸の如く真っ赤にしながらも、誇らしげに胸を叩いたその時だった。

――ねんねんころり、ねんころり。ころりとおちるはなんのおと――

「ん?」

何処からか歌のようなものが聴こえてきて、善逸は思わず足を止めた。
しかし、もう一度耳を澄ませてみてもそれらしいものは聴こえない。

(今どこからか歌が聞こえたような・・・それもとてもきれいな女の子の声で!)
「善逸さん?どうしたの?」

禰豆子が怪訝そうに善逸の顔を覗き込むと、善逸は顔を赤く染めながら「何でもないよ」とだけ答えた。

*   *   *   *   *


「探検隊!!探検隊!!俺たち洞窟探検隊!!」

薄暗い洞窟の中を、伊之助は大手を振りながら声高らかに歩く。その後ろには彼の仲間と思しき影が、列をなしてついていく。

「親分親分!!」
「どうした子分その一、その二」

伊之助が振り返ると、そこには炭治郎に似た狸の『ポン治郎』と、善逸に似た鼠の『チュウ逸』が駆け寄ってきて告げた。

「あっちから、この洞窟の主の匂いがしますポンポコ」
「寝息も聞こえてきますぜチュー」

その言葉に伊之助の心は燃え上がり、体の奥から闘争本能が沸き上がってくるのを感じた。

「よし行くぞ勝負だ!!ついて来い、子分その三、その四!!」

伊之助が拳を振り上げながら叫ぶように言うと、禰豆子に似た兎はその場に座り込み、汐に似た狸は何故かポン治郎につかみかかりぽかぽかと頭を叩いている。

「オイ子分その一、その四!!喧嘩すんじゃねえよ!子分三もそんなところに座るな!こっち来い、ホラ!!ツヤツヤのドングリやるからホラ!!」

伊之助がドングリを二人に渡すと、兎禰豆子と狸汐はドングリを受け取ると嬉しそうに笑った。
さていざ洞窟の奥に進もうとしたその時だった。

――ねんねんころり、ねんころり。ころりとおちるはなんのおと――

洞窟の奥から、透き通るような歌声が聞こえてくる。それを聴いた伊之助はびくりと体を震わせ警戒心をあらわにした。
しかし伊之助は、その声をどこかで聞いたことがあるような気がした。しかし、その歌はもう聞こえなくなり、伊之助は気のせいだと思い洞窟の奥に足を進めるのだった。

*   *   *   *   *

煉獄が目を開けると、そこは見慣れた天井と見慣れた部屋。自分が生まれ育った家のある部屋だった。

(ん?俺は何をしに来た?そうだ、父上へ報告だ。柱になったことを・・・)

煉獄は一瞬だけ考えるが、すぐさまその目的を思い出し目の前に横たわる父に声をかけた。
しかし

「柱になったから何だ、くだらん」

その背中から発せられた冷たい言葉が、煉獄の耳と心を穿つ。

「どうでもいい。どうせ、大したものにはなれないんだ。お前も、俺も」

思っていた言葉は帰ってこず、煉獄はそのまま静かに部屋を後にする。すると、彼の進む先に自分によく似た顔立ちの少年が一人、ひょっこりと顔を出した。

「あ・・・兄上」
「千寿郎」
「父上は喜んでくれましたか?僕も、柱になったら、父上に認めてもらえるでしょうか?」

弟、千寿郎がおずおずと口を開くと、煉獄は言葉を詰まらせた。
彼等の父親は昔はああではなかった。鬼殺隊の柱にまで上り詰めた剣士だった。情熱のある男だった。
だが、ある日突然剣士をやめた。本当に突然だった。

――あんなにも熱心に俺たちを育ててくれていた人が、なぜ・・・。

(考えても仕方ないことは考えるな。千寿郎はもっと可哀想だろう。物心つく前に病死した母の記憶はほとんど無く、父はあの状態だ)

煉獄は視線を落とすと、千寿郎の肩にゆっくりと手を置いて真剣な表情で口を開いた。

「正直に言う。父上は喜んでくれなかった!どうでもいいとの事だ・・・」
その言葉に千寿郎は肩を落として俯くが、煉獄はそんな彼を励ますかのように声高らかに告げた。

「しかし、そんなことで俺の情熱は無くならない!心の炎が消えることはない!俺は決して挫けない!そして千寿郎。お前は俺とは違う!お前には兄がいる。兄は弟を信じている」

煉獄の言葉に、千寿郎の目にみるみるうちに涙がたまり、その雫がぽろぽろと零れ落ちる。そんな彼を、煉獄は優しく抱きしめた。

「どんな道を歩んでも、お前は立派な人間になる!燃えるような情熱を胸に。頑張ろう!頑張って生きて行こう!寂しくとも!」

泣きじゃくる弟の背中をさすりながら、煉獄は決意を込めた声色でそう言った時だった。

――ねんねんころり、ねんころり。ころりとおちるはなんのおと――

「ん?」

何処からか幼い少女の歌が聞こえ、煉獄は思わず顔を上げた。母親は随分前に亡くなり、自分たちに姉妹はおらず、女中にしては声が幼すぎた。
そしてなぜか、煉獄はその歌声を酷く愛しく感じた。まるで大切な何かを見落としているかのように――

*   *   *   *   *

炭治郎は一人、雪の降る山の中を歩いていた。見覚えのある景色、見覚えのある道。そして、見覚えのある家。
――そして、見間違うはずのない弟、茂と、妹、花子。

「あ、兄ちゃんおかえり!」
「炭売れた?」

二人は炭治郎とよく似た、透き通った眼を彼に向けて笑いながら言った。炭治郎はすぐさま駆け寄り、そのまま茂と花子を強く強く抱きしめた。

「ごめん、ごめん、ごめんな・・・」

二人を抱きしめ嗚咽を漏らしながら、炭治郎は何度も何度も謝罪の言葉を紡ぎ、二人はわけがわからず呆然と泣きじゃくる兄を見つめる。

「に、兄ちゃんどうしたの?お腹でも痛いの?」
「とにかくうちに帰ろう。みんな待ってるよ」

茂と花子の言葉に、炭治郎は小さく肩を震わせると、顔を上げて二人の顔を見つめた。

(そうだ。家にはみんなが待っているんだ)

炭治郎は涙をぬぐうと、二人に驚かせたことを謝り、二人の手を取った。手のぬくもりに沸き上がる幸せを、彼はしみじみと嚙み締める。

そのせいだろうか。彼の耳には、どこからか聞こえてきた歌声が届くことはなかった・・・

*   *   *   *   *
夜空を切り裂く様に走る列車から、小さな歌声が聞こえる。ねっとりとした含みのある歌声が、風に乗って流れてくる。

――ねんねんころり。こんころり。息も忘れてこんころり――
――鬼が来ようとねんころり。腹の中でもねんころり――


「うふふ、楽しそうだね。幸せそうな夢を見始めたな・・・深い眠りだ。もう、目覚めることは出来ないよ・・・」

そう言ってほほ笑みながら、下弦の壱、【魘夢(えんむ)】は、汐達が深い眠りに入ったことを感じた。
だが、

――ねんねんころり。ねんころり。ころりとおちるはなんのおと――

「ん?」

何処からか別の歌声が聞こえたような気がして、彼は振り返った。しかしそこには墨を流したような闇が広がっているだけだ。

「気のせいかな。今、おかしな歌が聞こえた気がしたんだけれど・・・」

魘夢は少し首をかしげたが、さほど気にする様子もなく再び夜の闇に視線を向けた。きっと気のせいだろう。今頃人間たちは皆夢の中なのだから。

しかし、その時車内で起こっていることを彼は知る由もなかった。

小さく開かれた汐の口から、歌が零れだしていることに。

ねんねんころり ねんころり
ころりとおちるはなんのおと

ひとをいじめるわるいこの
くびがころりとおちるおと




「な、なんだお前は!?」

 

いきなり声をかけられた少年は、顔を引き攣らせて慄く。するとその子供は少年を見据えたまま静かな声で言い放った。

 

『私はここの扉の番をしている者だ。そんなことよりも、お前は何故ここにいる?何をしに来た』

 

子供にしては低く落ち着いた声が少年を鋭く穿った。その顔は見えないものの、不快感と怒りが声色から見て取れた。

 

『そもそもここはお前のようなものが入ってこれる場所ではない。この領域の主でさえ、ここに入ることはかなわない。何かの干渉を受けない限りはな』

 

番人はそう言って少年の持つ錐に視線を移し、布越しに目を細めた。

 

『成程。大方、それを与えた者がお前を唆し、ここへ送り込んだということか。お前にとって願ってもみない条件を突き付けられて』

 

違うか?と言いたげに首をかしげる番人を見て、少年は身体を震わせて叫んだ。

 

「ああそうだ!俺はあの人に幸せな夢を見せてもらうためにここに来たんだ。こいつの精神の核をぶっ壊せば夢を見せてもらうと約束してな!」

 

怒りと苛立ちを孕んだ声が、海底内に静かに響く。まくし立てる少年の言葉を、番人は黙って聞いていた。

 

「妾の子として蔑まれ、父親と名乗る男には毎日殴られ俺の居場所なんかどこにもない!あるのは理不尽な暴力と、悪意に満ちた時間だけだ!」

 

少年の目からはいつの間にか涙があふれだし、頬を伝って流れていく。一度堰を切ってしまった言葉は止まらず、少年は自分の生い立ちを感情のまま訴えた。

 

番人は少年の言葉を黙って聞き、彼が全ての感情を吐き出すのを待ってからゆっくりと口を開いた。

 

『それで。もしも目的を達成でき、幸せな夢とやらを見せてもらえたら、お前はどうする?そんなものは、まやかしに過ぎない。お前がどれほど幸せな夢を見ようが、それは決して存在しない、ただの幻だ』

「五月蠅い黙れ!幸せな夢を見て何が悪い!現実に戻ったって理不尽な暴力と悪意しかないんだ!苦痛しかない現実なんかより、幸せな幻の方がいいに決まっている!」

 

少年は番人の言葉を遮って心の奥から叫んだ。爛々と光る目が穿ち、その決意に番人の身体が微かに震えるが、彼は静かに口を開いた。

 

『そのために、お前には何の所縁もない者を手にかけようというのか』

「え・・・?」

 

番人の言葉に今度は少年の身体が跳ね上がった。爛々と光る目が同様に震えている。

 

『まさか、精神の核を壊すという行為がどのようなことか、わかっていなかったわけではあるまいな?あれを壊せば持ち主の心は死ぬ。心というのは身体よりも厄介な代物でな。身体の傷と違い、心が負った傷は死ぬまで治らないことの方がはるかに多い。心を殺すということは、人を殺める以上に罪深く、そして虚しいものだ』

 

そう言う番人の声は、心なしか悲しみを孕んでいるように聞こえた。

 

『それでもお前は、どうしてもこの扉の先に行きたい。そう言うことか?』

 

番人の言葉に少年は即座に答えることはできなかった。理不尽な暴力に傷つけられていた彼は、その苦しみから逃れることができるなら何でもできると思っていた。

しかし、今しがた自分がしようとしていることの意味を改めて聞かされたことで、その心は揺れ動いた。

 

だが、

 

「・・・ああ」

 

番人の問いかけに、少年は淡々と答えた。その目にはもう、既に光はなかった。

 

『・・・そうか、わかった。お前がそこまで言うなら好きにするといい』

 

番人は少し悲しそうに言葉をつなぐと、扉の前に立ちその左手をそっとかざした。すると取っ手にかけられていた小さな鍵が一つはずれ、溶けるように消えていく。

彼の思わぬ行動に少年は面食らい、呆然とその背中を見つめていた。

 

『どうした?お前の望むとおりにしてやったのだ。覚悟があるなら扉に手をかけるといい』

「ふざけるな!それにこれじゃあ少ししか開かないじゃないか!」

『全ての鍵を開けるかは私が決める。お前がこの中を覗き、()()()()()()に耐えられたのなら、全ての鍵を解除しよう。それともお前はこの扉に何故鍵が必要なのか、考えられないのか?鍵とは何のためにかけられるのか、想像することもできない程、お前の覚悟とはその程度の物なのか?』

 

番人は少年を見据えながら、挑発的な言葉を投げつける。それが少年に突き刺さり、やがて怒りへと変わっていく。

 

「うるさい!やるよ!やってやりゃいいんだろう!?」

 

少年は怒りながら番人を押しのけ、鍵が外れた取っ手に手をかけた。硬く冷たい感触が少年の手を伝わり、体を震わせる。

 

(ここまで来て引き下がれるかよ。もう俺には何もない。失うものも。あれ以上の地獄も。俺にはない!!)

 

少年は小さく息をつくと、取っ手を思い切り引っ張った。重厚な音が響き、ゆっくりと開いていく。

だが、扉に巻き付いたままの太い鎖に阻まれ扉は少し開いたままで止まり、そこには中を覗けるほどの隙間が開いた状態になった。

 

少年はその隙間から中を覗き込んだ。その瞬間、彼は目を見開いた。

 

最初に目についたのは、壁や床全てから生えたように立ち並ぶの血の付いた刃。そしてそこに突き刺さっていたのは、いくつもの肉片のようなものだった。

そしてその間からは、何本もの手が何かを掴むように蠢いている。

呪いの言葉がそこら中から響き渡り、時折聴こえてくるのは、幼い少女の泣き声のようなもの。

そして少年の視線の先には、人の形をしたものがこちらを見つめていて、その手には緑と黒の市松模様の切れ端が――

 

うわあああああああああああああああああああああ!!!!

 

少年は扉の前から弾かれるように離れ、番人はすぐさま扉を閉め鍵をかけた。そして荒い息をつき、顔中から汗を拭き出す少年を見据える。

 

『どうやら、お前には耐えられなかったみたいだな』

 

番人は淡々と少年の背中に言葉を投げかけ、冷たい視線を布越しに浴びせる。少年は息を整えようと胸に手を当てながら、ゆっくりを顔を上げた。

 

「な、な、な、なんなんだよあれ・・・地獄なんてもんじゃない・・・。い、いや。人間の世界じゃない・・・あんなところに精神の核があるのか・・・?あんなところに、行かなきゃならないのか・・・?」

 

その表情は絶望と恐れと絶望に染まり切っており、先ほどの覚悟は完全にそぎ落とされたようだ。だが、番人が放った次の言葉に、彼は戦慄した。

 

『精神の核ならあの中にはないぞ』

「・・・な・・・に・・・?お前・・・騙したのか?」

『騙すとは?そもそも私は、お前に扉の先を見せるとは言ったが、あの中に精神の核があるとは一言も言っていない。お前が勝手に勘違いをしたんだろう』

 

その言葉に再び少年の心に怒りが宿り、手にした錐を番人に向かって振り上げた。

しかし、その切っ先が届く前に、少年の足首に海藻が巻き付きそれを阻止する。何とか拘束から逃れようと身をよじる少年に、番人は悲しげな声で語りだした。

 

『何故あの扉が封じられているかわかったか。あそこ封じられているのは、殺意と・・・記憶だ。ここの主が主でいるべき姿でいるための、枷のようなものだ。そうでなければ彼奴は、とっくに壊れていただろう』

 

その声があまりにも悲しく、今にも泣きだしそうなものに聞こえ、少年の怒りはみるみるうちにしぼんでいった。そして一つだけ、少年にはわかったことがあった。

 

――彼女は、自分と同じだ。いや、自分以上に、誰かに傷つけられ、疎まれ、存在自体を否定されてきた経験がある。

 

『だがそれでも、彼奴は生きることを選んだ。自分から地獄を見る道を選んだ。いばらの道を進むことを選んだ。何故か。彼奴にとって自分以上に大切なものを見つけたからだ』

「自分よりも・・・大切なもの・・・」

 

少年は俯き、その手から錐を離した。水面のような床に錐がおち、固い音を立てる。

 

『お前に彼奴の道を阻む資格はあると思うか?あのような地獄を心の中に抱え、それでも前に進もうとする彼奴の意思を、お前の一時の夢で邪魔をする資格があると思うか?』

「・・・・・」

 

少年はもう何も答えない。自分の中に、これから自分が行おうとしていた事への激しい罪悪感と後悔の念が沸き上がっていく。

周りの美しい海底のような心を持つ少女の中に、封じられていた殺意と憎悪の記憶。そんな相反するモノを抱えて、自分と同じくらいの少女が前に進もうとしている。

それなのに。自分は何をやっているんだ。誰かを傷つけてまで、夢を見せてもらうのがいいと思ったのか。

 

自分がしようとしていることは、あの理不尽なことを行う者達と同じではないか――

 

項垂れる少年を見て、番人は静かに拘束を解いた。解放されても尚、少年は動かない。

 

『・・・残念だが私の力ではお前をどうすることはもうできない。外からの干渉が強すぎる。いろいろと手を打っては見たのだが、後は彼奴自身が目覚める必要がある』

 

番人は独り言のように呟くと、少年の傍に落ちていた錐をそっと拾い袂の中に収めた。もう彼に敵意はないだろうが、念のためということと、もう一つの目的の為に必要だと思ったからだ。

 

『私は少し出る。後は好きに過ごしても構わない。最も、お前にできることなど限られているだろうがな』

 

番人はほんの少しだけ意地悪そうに言うと、そのまま泳ぐように上空へと浮き上がっていた。

少年は顔を上げ、あたりの景色を見つめた。色とりどりの魚が、物珍しそうに彼の周りに集まり口を開閉している。

 

それを見て、少年の顔に微かな笑みが浮かんだ。もうその眼には、先ほどの爛々とした光は宿っていなかった。




「あ、しまった!飲み水がそろそろなくなりそう」

汐は瓶の中を覗き込みながら眉をひそめた。村のはずれに飲み水のための井戸があるのだが、夜になると周辺が真っ暗になってしまうため日の出ているうちに水をくまなければならない。
幸いまだ日は高く、水を汲んで戻っても問題はなさそうだ。

「おやっさん。あたしちょっと水を汲んでくるから大人しく待っててよ」
「なんだよ。それじゃあまるで俺が言うことを聞かねえ餓鬼みてえじゃねえかよ」

口をとがらせて不貞腐れる玄海を見て、汐は苦笑しながら家を出た。手には水くみ用の桶をもって。

村の外れに行くと、少し古いがそれなりの大きさの井戸がある。汐は備え付けの釣瓶を井戸に投げ入れ、水を汲もうとした。ところが、いくら縄を引っ張っても桶が上がってこない。

「おかしいわね。どこかで引っ掛かってんのかしら」

汐はいったん縄から手を離すと、顔をしかめながら井戸を覗き込んだ。その瞬間。

『いつまでこんなまやかしに踊らされている!!さっさと起きろ愚図!!』

鋭い声と共に腕を強く引かれ、汐の体は井戸の中に引きずり込まれた。水音と共に、冷たい水の感触を肌に感じる。

目を開けるとそこには、少し古風な着物を身に纏った、顔に布をかぶった小さな子供が自分をじっと見つめていた。

この作品の肝はなんだとおもいますか?

  • オリジナル戦闘
  • 炭治郎との仲(物理含む)
  • 仲間達との絆(物理含む)
  • (下ネタを含む)寒いギャグ
  • 汐のツッコミ(という名の暴言)

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