ウタカタノ花   作:薬來ままど

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邂逅まで

灰色の雲が空を覆い、僅かながら雨の匂いがする。

空を見上げながら天狗の面をかぶった男、鱗滝は小さく息をついた。

 

山の方を見れば、時折鳥が山肌から飛び立っていくのが見える。おそらく、最近迎えた弟子が修行をこなしているのだろう。

自分と同じく鼻が利く彼ならば、もうすぐ雨がやってくることに気づき戻ってくるかもしれない。

 

彼を迎える準備をするために小屋に戻ろうとすると、自分に向かって一羽の鳥が、ふらつきながら飛んでくるのが見えた。

その鳥を見て、鱗滝の目が面の下で見開かれる。それは足に手紙をつけた【鎹鴉】である。だが、彼が驚いたのはそこではない。

 

(何故・・・何故奴の鎹鴉がここにいる・・・?)

彼が驚いたことは、その鎹鴉の存在だった。

 

鱗滝はあわてた様子で鎹鴉から手紙を受け取る。すると、鎹鴉はそのままぐったりと彼の膝に頭を垂れ、そのまま動かなくなってしまった。

 

彼にあてられた手紙には、このようなことが書いてあった。

 

拝啓:鱗滝左近次へ

よう、生きているか?相も変わらず珍妙な面を被って偏屈かましてるのか?それとも、俺がくたばったと思って悲しんで・・・は、いねぇだろうな。

だが、お前がこの手紙を読んでいるころには、俺は本当にくたばっていると思う。人間としてくたばるか、鬼としてくたばるかはわからなんがな。

手紙なんざ柄じゃねえから簡潔に告げる。もし、もしも俺がくたばったらお前の所に俺のガキを送る。どうか面倒を見てやってくれ。

バカで単純で要領が悪いが、俺ができることのすべてを叩き込んである。もしかしたら、鬼殺の剣士になるなんてほざくかもしれねえ。

けれど、俺にとってあいつは全てだった。柱の名を棄てても、あいつだけはきちんと育ててやりたかった。

身勝手な頼みで悪いが、俺の最期のわがままをどうか聞いてやってくれ。今まで本当にすまなかった。

敬具:大海原玄海

 

追伸:もしお前の所にもガキがいたのなら、ぜひとも仲良くさせてやってくれ。

 

手紙の書き方からして破たんしたものだったが、それには彼の不器用な思いが豪快な字で刻まれていた。

それに目を滑らせていた鱗滝の手が細かく震える。面の下の表情は伺えないが、何とも言えない気持ちが彼のすべてを包んでいた。

 

「鱗滝さん!ただ今戻りました」

その時、玄関先で少年の声が響いた。赤みがかった髪と瞳。耳には日輪を模したような耳飾り。そして額に傷のある少年は、鱗滝の姿を見てはっと息をのむ。

 

「鱗滝さん、どうしたんですか!?なんだか、すごく悲しい匂いがします・・・」

鱗滝は少年を一瞥すると、手紙を丁寧に畳んで懐にしまった。そして、動かなくなった鎹烏をそっと優しく抱えた。

 

「炭治郎。此奴を埋葬してやれ。それから――、近いうちもう一人を迎えることになりそうだ」

「え?迎えるって、誰をですか?それに、この鴉は・・・」

「儂の、古い知り合いの鴉だ。そしてそいつの弟子が、ここに来るやもしれん」

そういう鱗滝の声は、微かだが震えていた。炭治郎と呼ばれた少年は、これ以上何も聞くことができずに彼を見上げていた。

 

 

――二人が出会いを果たすまで、あと幾日・・・

 




こそこそ噂話
玄海は手紙を書くのが苦手です。文字は殆ど暗号のようになって読めません。
そして時折拝啓と敬具を間違えて、鱗滝さんによくあきれられていました

この作品の肝はなんだとおもいますか?

  • オリジナル戦闘
  • 炭治郎との仲(物理含む)
  • 仲間達との絆(物理含む)
  • (下ネタを含む)寒いギャグ
  • 汐のツッコミ(という名の暴言)

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