ヤンデ"レン"(完結済み)   作:狩宮 深紅

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また見て頂けている様で嬉しいです。
復帰したてなので少し早めにもう1話作って見ました。



暗躍する彼女

 

僕にはミステリアス(素敵な)彼女がいる。

彼女の影響で色んなVRゲームをするようになった、そんな日の僕が知らなかった出来事。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

アルヴヘイム・オンライン(ALO)。

妖精たちの世界で、僕は友人の七海透と、もう一人の友人である奏と空を飛んでいた。

 

「いやー、今日は絶好の飛行日和だな! 邪魔なモンスターも全然湧かないし!」

 

透が能天気に、しかし少しつまらなさも混じった声色で言う。

 

──本当だね。さっきから空がすごく静かだ。

 

僕たちは良くも悪くも快適な空の旅を楽しんでいた。

この広大な空を悠々自適に飛べるというのはとても楽しいことではあるのだが、ゲームの中でハプニングが起きないというのも少し寂しいものである。

もしかしたら僕たちが来る前に別のプレイヤーが狩り尽くしたのかな?

そんな僕たちの認識とは裏腹に、後方では音もなく「処理」が行われていた。

 

 

 

 

数メートル後方。

 

「あ、あの! すみません、そこのお兄さんた──」

 

僕らに道を尋ねようと近づいてきた女性プレイヤーの三人組。

彼女たちが声をかけようとした瞬間、虚空から現れた「見えない風の刃」が、彼女たちの翼を正確無比に切り裂いていた。

 

哀れな女性PL達「「「えっ?」」」

 

悲鳴を上げる間もなく、彼女たちは物理法則に従って垂直落下していった。

 

ヒュゥゥゥゥ……。

 

 

「ん? 何か今声が聞こえなかったか?」

 

透が振り返るが、そこには青い空と白い雲があるだけだ。

 

──僕も何か聞こえた気がするけど、誰も居ないね…。 まあ、気のせいかもしれないしあっちの浮島に行ってみようよ。

 

「そうだな!」

 

僕たちが進路を変えると、その先の浮島の門番的な役割をしていたガーゴイルの群れが、次の瞬間には一斉にポリゴンとなって爆散した。

描画距離的に僕たちが視認するギリギリではあったが他にプレイヤーが居ないはずなのに倒されたガーゴイル達には、流石に僕たちも気のせいで片付ける事はできなかった。

 

──……今のラグ、じゃないよね。他にプレイヤーがいるのかな?

 

「おいおい、全然そんなやつ見当たらないぞ…。」

 

周りを注意深く見渡す奏は持っている大剣を構えるが、誰かが襲ってくる様子も姿も見えない。

 

「もしいるとするならインビジブル系の魔法か、スプリガン族か魔法が得意なシルフかウンディーネ族…。PKがメインで遊んでるビルドであんなに早くエネミー倒せるとしたら結構な古参かコンバート勢か?」

 

 

姿の見えないプレイヤーを警戒している僕たちの遥か上空。

 

限界高度ギリギリの場所に、腕を組み、仁王立ちで浮遊するシルフの姿があった。

 

(……ふぅ。秒速で処理完了。近づく女は排除。エネミーも排除。

……よし、これで視界はクリア、〇〇の姿もよく見える。別で作り直したALOのアカウントだから〇〇も知らないし見せても良いけど、やっぱりスタイルが長身なの少し、恥ずかしいし…。)

 

 

光学迷彩魔法(インビジブル)を発動し、背景と同化していた香蓮。

その姿は、守護霊というよりは、もはや祟り神に近いのかもしれない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

数日後、香蓮のマンションにて。

 

──香蓮、GGOを紹介してくれてありがとう。最近は透たちとパーティを組んで遊んでるんだけど、すごく楽しいよ。

 

「……へぇ。透くんたちと、毎日?」

 

香蓮は紅茶のカップを口に運びながら、にっこりと微笑む。

その笑顔は完璧で、美しい。

だが、カップを持つ手の小指が、ピクピクと痙攣しているのを僕は見逃さなかった。

 

──毎日では無いけどそれなりにね。香蓮が心配してるようなこと無いから安心して。本当に男だけのパーティだし華はないけどね。連携も取れてきたし、この前なんかレアモンスターを倒したんだ。

 

「そっかぁ。男だけ、ね。……うん、男なら安心だね。……安心、なんだけどなぁ」

 

香蓮はカップをソーサーに置くと、虚空を見つめてボソリと呟いた。

 

「……でも、うーん、何かもやもや、する、かも。」

 

──香蓮?

 

「ううん! なんでもないよ♡ 楽しそうでよかったって言ったの。」

 

──そうか、ありがとう。香蓮も今度一緒に遊ぼうね。

 

「うん、もちろん。……でもその前に、ピトさんと遊ぶ約束してるからちょっとGGOに行くね!」

 

彼女は立ち上がると、鼻歌交じりにアミュスフィアを手に取った。

 

––––あぁ、ピトフーイさんだね。楽しんでおいで。

 

「イタズラしてもいいよ?」

 

––––ははは、あまりに帰ってこなかったらするかもね。

 

冗談交じりに返すと香蓮はいつもの妖しい笑みを浮かべながらGGOにログインしてしまった。

 

その時何故か感じたことの無い寒気がしたような気もするが、ほんの一瞬であった為気のせいだと思考を放棄してしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

あの日からそう日にちも経っていないGGO、砂漠フィールド。

僕と透たちは、廃墟の陰に隠れて索敵を行っていた。

 

「よし、レーダーに反応なし。今のうちに移動するぞ!」

 

透の合図で、僕たちが走り出した瞬間だった。

 

 

ダァンッ!!

 

 

 

空を切る弾丸の音がしたかと思うと、先頭を走っていた透のアバターが、不自然な角度で空中に静止した。

 

「え?」

 

次の瞬間、透の身体が地面に叩きつけられた時には、すでに【DEAD】のマーカーが浮かんでいた。

 

「なっ、何が起きた!? 狙撃か!?この威力ならAMR!!クソッ!」

 

もう一人の奏が遮蔽物に隠れようとスライディングをする。

だが、その一瞬を見逃さず射撃予測線が奏の胴体に向けられる。

 

––––奏!!

 

 

スライディングの最中である奏に対し装備していた装甲と狙撃銃を盾にするように射撃予測線の前に飛び出る。

 

「馬鹿!今のお前はタn–––」

 

タンクじゃない、自分がそうではないことに忘れていた程にALOの経験によって身体が動いていた。

 

ダァンッ!!!

 

──……っ!

 

死んだ、かと身構えたがHPバーは減っていない、弾丸は自分の身体では無く地面に着弾し、巨大な砂埃を発生させる

 

──外した!?いや、それよりも奏!!

 

「砂煙で視界がやられた!!〇〇!死んでないんだな!?」

 

お互いに状況を把握しようとするが巻き上げられた砂煙に視界は塞がれている。

だがこの状況はスナイパーから狙われている状態であればこちらとしても好都合、今のうちに物陰に潜む。定石であるが一番マシな行動。

 

––––今のうちに!!

 

「わかってる!」

 

隠れられる位置は覚えている、数メートルもないその場所であればAMRとは言えど位置が分からなければ狙撃は防げる確率は大きく上がる。

 

「なっ!誰だ!?ぐぁぁぁ!!?」

 

大量の射撃予測線が土煙の中を貫いたと認識した瞬間、高速の発射レートの銃声が聞こえたかと思うと。奏の悲鳴が上がる。

 

──もう近づかれたのか!?

 

状況的には恐らく相手は自分たちと同じパーティプレイヤー、だがそれにしても早すぎる、先程までレーダーにも映っていなかったはず。

 

このままでは同じようにやられてしまう。

 

やむを得ず腰に装備していたフラッシュバンを地面に叩きつける。

 

「きゃっ!?」

 

激しい音と閃光が放たれ、襲って来ていただろうプレイヤーの悲鳴が聞こえ、その一瞬で何とか遮蔽物に身を隠す。

サブウェポンの拳銃を装備して迫り来るであろうPKプレイヤーを待ち構える。

 

1秒

…2秒

……3秒

 

警戒をしていたが姿も見えぬPKプレイヤーは姿を表さない。それどころか別のプレイヤーの狙撃銃による弾道予測線も無くなっていた。

 

砂煙も晴れ周囲を見渡すと、遥か彼方の砂丘の上に先程の襲撃していたと思われるプレイヤーが走り去っていた。スコープ越しでは無いため良く見えなかったが、以前見た香蓮のアバターに良く似ていたような気がした。

 

––––助かった、のか?

 

それからも警戒をしていたが追撃が来る様子も無く。砂漠にポツンと僕だけが残されてるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––––––––––

––––––

–––

 

「いや〜、危なかった危なかった。もう少しで彼氏君キルしちゃうところだったよ〜。まさか自分から狙撃の射線に入ってくるやつがいるなんて。」

 

「してたら私Uターンしてピトさん殺してましたよ。」

 

「ひぇ〜、相変わらずレンちゃんも彼氏君のことになると十分イカれてるねぇ。」

 

SBCグロッケンのどこかにあるバーで今回の襲撃の首謀者達は談笑?をしていた。

ピトフーイの言葉にムッとした表情を見せるが、ピトもそれを気にせずに酒を煽る。

 

「最初に彼氏君のパーティを襲撃しようと聞かされた時は、流石の私でも驚いたよ。」

 

「男友達とはいえ、〇〇を最近占有しすぎるてるし。現実で襲ってない分私っていい彼女でしょ?」

 

当然と言わんばかりに語る彼女に対してピトフーイは若干引いているが、身近に似たような男がいる(レンとは別ベクトルではあるが)のを思い出し無理やり納得する。

 

「あー、そうだねー。まぁ、私も楽しかったし。まぁいっか。」

 

「それじゃあ次の襲撃なんだけど––––––。」

 

「マジか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

––––……でね、結局僕だけ生き残ったんだけど、最後なんで襲われなかったんだろ。物資狙いなら僕をキルして全滅させた後に奪った方が良いのに。

 

「へぇ、怖いねぇ。GGOだしそういうプレイヤーの方が多いのは分かってるけど不思議な人もいるんだね。」

 

僕は香蓮の部屋で、昨日の襲撃事件について話していた。

香蓮は僕の隣に座り、僕の腕を抱きしめながら、満足そうに頷いている。

 

「ふふっ、でもその襲撃してきたプレイヤー、私とビルド似てるかもしれないから私が対処方法と戦い方、二人っきりで教えてあげるね。」

 

──そうだね、それなら香蓮とも一緒に遊べるから今度は一緒にプレイしよう。

 

「やった。」

 

香蓮は小さな声で呟くと、僕の首筋に顔を埋めた。

 

「ねぇ、〇〇。ゲームで怖い思いした分、ここで充電していって?」

 

──うん、そうさせてもらうよ。香蓮も最近はピトフーイさんと良く遊んでいて2人の時間もなかなか取れなかったからね。

 

僕は彼女の頭を撫でる。

彼女の髪からは、微かに硝煙の匂い……いや、甘いシャンプーの香りがした。

 

「……もっと撫でて。もっと触って。」

 

香蓮の甘える声が、部屋の空気を熱くしていく。

あの時一瞬だけ聞こえた声と見えた姿。

結びつけようと思えば結び付けられる"考え"。だけどそれは僕にとって最終的にはどちらでも構わない。

今はただ、この腕の中にいる愛おしい彼女のことだけを考えることにしよう。

 




また皆さんにヤンデレなレンちゃんを楽しんで頂けてるようで嬉しいです。
今回かなりハイペースで書いたので、次回は1週間後くらいになると思います。
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