落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです   作:ウィングゼロ

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35話

 

 

「はぁ…昨日は疲れた…」

 

 そう王都の城下町を歩く雫はふらふらと歩く。

すれ違う住民達は雫のことを神の使徒として知れ渡っていて、通りかかる人々に丁寧にお辞儀をされるのも馴れはしていた。

だがいつもそんな感じで讃えられるのは恥ずかしい感じがした雫は顔を少し赤らめながら町中を歩く。

町中は至るところ平穏を成就する冒険者は町の人達の姿。

これを見るだけで平穏だなっとマジマジと思う雫はふとあるお店に目に映る。

特に一般的なアクセサリーなどを取り扱っているお店、しかし雫にはこのお店にはとても印象に残っていた。

 

 

「此処…香織と一緒に来た…」

 

雫達がこの世界に来て間もない頃、初めての休息日で立ち寄ったアクセサリー屋、その時は香織もまた雫と一緒にここを訪れていた。

何処かこの世界に来て不安だった雫を香織は率先して気分転換に城下町を見て回った。

 

「……香織…」

 

 ふと香織のことを思い暗く俯く雫、生存の兆しは見えたと言えども姿を見たわけではない。

周りにはあまり見せない弱いところを見せる雫はそのアクセサリー屋を通り過ぎていくとふと耳にある声が聞こえてくる。

 

「あ、あの少し困ります」

 

そんな女の声だった。

何かしらっと雫は俯いていた顔を聞こえてきた方向に向け、近くの裏路地から聞こえたのだと察すると裏路地に近づき裏路地を覗き込む。

すると、長い金髪の何処かの令嬢に見え、それに見合った服装を着た雫と同年代の少女が柄の悪い2人組の男に絡まれている現場を目撃した。

 

 

フェイト・T・ハラオウン…

時空管理局に所属し、次元世界の股にかけ次元犯罪を解決する若手執務官。

凄腕の魔導士ということから金色の閃光という異名さえも付けられた彼女。仕事面では世話焼きで確りとしているのが印象付けられるがその反面、私生活ではおっとりとした優しい一面をみせ海鳴の小学、中学校では五大女神と称されかなり一際人気を博していた。

そしてそんなフェイトをよく知る人物はそれに加えてもう一つ付け加える。

 

たまに天然なところがあると……

 

 

(どうしようこの状況……)

 

現在フェイトは困っていた。

トータスに降りたって数日、初めは手頃な村などで情報を収集しこの世界の環境を調査しつつどういった文明なのかを細かく分析していた。

そして、勇者達が王都に戻ったという情報を入手し彼らの安否を確認するために遂にハイリヒ王国の王都へと足を運んだ。

しかし王都は広く調査をしているうちに一緒に行動していたシグナムとはぐれ、1人、王都を散策していたが柄の悪い2人組に絡まれ何とか振り切ろうとしていた。

 

「本当に困りますから」

「遠慮するなってちょっとだけ何だからよ」

(どうしよう…その気になれば簡単に振り解けるけど…後々のことを考えると…)

 

シグナムがいればっとはぐれたもう一人のことを思うがこの時普通に念話などで呼び出せば普通に合流できるということを失念していた。

 

「すべこべいわずにこいって」

 

痺れを切らした男の一人が無理矢理連れて行こうとフェイトの腕を摑もうとしてフェイトは流石にこのままではと考え多少力を使おうと考えたその時裏路地に声が響いた。

 

「貴方達、何をやっているの!」

 

咄嗟の声にフェイトや男達は声の方向に振り向くと帯刀する剣の鞘に手を掛けて3人に近づく雫の姿。

 

(え!?確かあの子って…)

 

雫の登場にフェイトは目を丸くして頭の中に記憶している召喚されたクラスメイトの中に雫のことを思い出す。

そして男達2人も雫と姿を見て顔色を一変させ体を震わせながら後退る。

雫は神の使徒の中でも有名だ。非公式のファンクラブが短時間で誕生するぐらいにそのために一般のよく知られているためにこんな場所で雫の機嫌を害すれば王都は勿論、周辺の村にも立ち寄れなくなるだろう。

 

「や、やべえ…使徒様だ…に、逃げろ!」

 

そして男達の取った行動は一目散に逃走、素早い逃げっぷりに絡まれていたフェイトは苦笑いを隠せず逃げていった方向を眺める中、鞘から手を離し、雫はフェイトに声を掛けた。

 

「大丈夫ですか?何かあの2人にされましたか?」

「え、えっと…大丈夫だよ。何もされてないし」

 

雫がフェイトの身を案じて訪ねるとフェイトも危害は加えられていないことを雫に答える。

その内心では勇者の現状を探るどころかその一人と接触してしまったことに慌てていた。

 

(ど、どうしよう…八重樫さん…だったけこの人。これは顔覚えられたかも)

「(すまん、テスタロッサ…)」

「っ!(シグナム!)」

 

顔を覚えられると後々に支障をきたすかもしれない。そんなことを思うフェイトにはぐれていたシグナムからの念話が届く。

勿論、雫に念話を聞き取れるスキルなどありはしないわけで雫は首を傾げて踵を返した。

 

「それじゃあ、私はこれで、こんな裏路地に入ったら危ないですから気をつけてくださいね」

「(少しこの世界の武具に目移りしすぎた。直ぐに合流する今どこにいる?)」

「ま、待って!(シグナム、合流はまた後でいいかな?)」

 

心配の気遣いの言葉を残しこの場から去ろうとする雫を見てフェイトはこの機会を無駄にするわけにはいかないと雫に待ったをかけそれに並行してシグナムに念話で今合流するのを拒む。

 

「えっと…どうされましたか?」

「(何かあったのか?)」

「その、私この街に来たの初めてで出来れば道案内をして欲しいんですが(今、目の前に要救助者の1人がいるの出来れば町の案内にこじつけて色々情報を手に入れようと思う)」

「道案内ですか?それなら冒険者に依頼された方が…」

「(そうか、テスタロッサがそういうなら無理に止めない。だがテスタロッサの母親の件もある十分に気をつけろ)」

「実はあまりお金を持っていなくて……ギルドに道案内をしてもらうほどの報酬も持ち合わせていないんです。それに親切な人に巡り会えるかも分かりませんし…お願いします!(うん、分かってる。ちゃんと注意を払うから)」

 

必死にお願いをするフェイトに雫は後ずさりどうすべきか悩む雫。そんな中、並行してシグナムと念話をして話を付ける。

 

雫もフェイトの熱意にやられ、その上別に予定もなく町を散策していただけのためにフェイトのお願いを断れなかった。

 

「分かりました。そのお願い引き受けます。」

「ありがとう、私、フェイト・ハラオウン…あなたは?」

「八重樫雫です」

何とかこぎ着けたフェイトは微笑みながらテスタロッサの姓を伏せて名前を名乗り、雫の名前を聞くと雫も名前を名乗った。

 

 

もう少し、トータスに戦力を投下した方が良い?

  • 投下
  • 投下しない
  • どっちでもいい

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