一人デストロンガーとして活動していたゲルシャークは、エネルギー資源の暴走に巻き込まれ、異次元へと飛ばされる。

 一方、レジェンズ世界。テラクラッ社の新卒社員パズソーは、外回り中次元振動の被害に見舞われる。  

異なる時空の二人が出会い、新たな物語が生まれる。多分!

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Sharks in Disguise

時は西暦2000年、東京。其処では、正義の心を持つサイバトロンと破壊と支配を尊ぶデストロンの精鋭部隊、デストロンガーによる戦いが繰り広げられていた。

 

片や、赤い身体に正義に燃える心を秘めた、優しきサイバトロンの司令官 ファイヤーコンボイ。

 

片や、荒々しき悪魔のごとき風貌ながら、神々しき純白の衣に身を包むデストロンガーの首領、闇の破壊神 デビルキガトロン。

 

彼らは、地球に住む人間、とりわけ子供達の持つ自分達に比べればほんの一幕、限られた短い命を生きるからこそ得られる無限大の可能性の力を巡り戦いを繰り広げた。

 

永遠を生きる故に永遠に成長出来ない自分達を変えるために、子供たちの可能性の力を獲ようとするギガトロン。そして、子供たちの尊い未来を守るために立ちはだかるファイヤーコンボイ。

 

二人と二つの陣営の戦いは熾烈を極め、他ならぬ子供たちの持つ可能性の力を子供たちの声援と共に受け取ったファイヤーコンボイの一撃によって、サイバトロンが勝利を納めた。

 

戦いを終えたサイバトロン達は地球に留まり地球の人々と共に生きることを選び、ギガドロン達デストロンガーは全員捕らえられセイバートロン星へと連行された。ただ1人を除いて……

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

2004年、地球・サイバトロンのエネルギー研究基地。

 

「ソリタリュウム鉱石の実験を始めるよ、アールブレイド君。」

 

「はい!スカイファイヤー先輩!」

 

 エネルギー基地の所長を任されているサイバトロンの科学者スカイファイヤーと、その助手アールブレイド。

 

その時、突如太い光線が壁を貫き床を粉砕する。二人は慌てて光線の源へ視線を向けると、そこから巨大なホオジロサメのロボットが飛び込んで来た。

 

「ワーハハハハハ!!1人デストロンガーのゲルシャーク参上!」

 

群青のボディに鋭い眼光を光らすそのサメは瞬く間に変形し、蒼と金のコントラストの光る人形ロボットへと変形した。尾の変形した巨大なクロー状の左腕は、その荒々しいフォルムをより印象強くする。

彼こそが、かつてギガトロンの腹心としてサイバトロンと戦った、牙提督ゲルシャークである。

 

デストロンガーの中で(何故か)地球に残され、自身の忠誠を誓った主、ギガトロンの意思を継いだつもりになった彼は、自身のボディをアップグレードし、こうしてたまにサイバトロン基地へと襲撃を仕掛けていた。

 

「不味いっデストロンの襲撃だ!?」

「みんな構えろ!」

 

スカイファイヤー達は慌てて銃を構える。それを見たゲルシャークは不適な笑みを浮かべる。

 

「ワーハハハハハ!!バカめっ!そんなチャチな銃で、俺様に勝てるものか!」

 

するとゲルシャークの胸の水晶体が光り始める。

 

「なっ!?ば、バカ!その方向は……!」

 

「見るがいい!アップグレードした俺の必殺技!”メーザーストーム”!!!」

 

そうして収縮した光が解放され、極太のビームが放たれる。これこそが、彼の代名詞とも言えると、思っている必殺技、メーザーストームである。ゲルシャークの放った光線は、エネルギー貯蔵庫の扉をいともたやすく貫通し、中に貯蔵されていたソリタリュウム鉱石のキューブを打ち抜いた。

 

 「な、なんてことを……」

 

 「逃げろアールブレイド!!」

 

 「なっ!こ、こら、お前ら!せっかくこれからカッコよくキメようっていうのに!!」

 

 スカイファイヤーたちはこれから起こることを察すると、すぐさまビークルモードへ変形し、その場を脱する。状況を飲み込めないゲルシャークだけが残された。

 

 「まずいぞ、あの鉱石は非常に不安定で、下手に刺激すれば……!!」

 

 キィィィイイイイイイイイイイイン!!!

 

 

「え?何?何なの?」

 

「異次元に飛ばされてしまう!!」

 

ドカアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

 

「あれえええええええええええええええ!!???」

 

 この日、サイバトロンのエネルギー研究基地は、職員数名とともに地球上から姿を消した。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

レジェンズ世界。かつてザモジンと呼ばれる宇宙人が、自分達のテレパシーパワーによって造り出したそこでは、トランスフォーマーがフィクションとして楽しまれていた。

 

テラクラッ社、オフィス。そこへ、オレンジ色の蜂を擬人化したという表現の当てはまるであろう機械生命体が、ネクタイを締めて片手カバンを持ち、タイムカードを切って現れた。

 

「おはようございまーっす」

 

彼の名はパズソー。今年テラクラッ社に入社した新入社員であり、テラクラッ社期待の新人である。

 

「社長、おはようございまっす」

 

「はーいはい、おはようさーん。」

 

気さくな返事を返すのは、テラクラッ社社長のメガトロン(本名は"ビースト"メガトロンなのだが、長くてまどろっこしいので、皆メガトロンと呼んでいる)。彼はとある理由からパズソーを特に気にかけていた(新卒が彼しか入らなかったこともあるが)。

 

「いんや~!パズソーちゃんはほんっっとよく働いてくれるよー!この前営業に行ったハッスブロ社のしゃっちょサン!パズソーちゃんのことす~んごい誉めてたよ~ん!」

 

「ホントですか!?ありがとうございまっす!」

「ホントにねぇ、アイツもパッズちゃんのほんの少しでも働いてくれたらねぇ……」

 

「(パッズちゃん?)いや、あはは……」

 

メガトロンはため息をついて目線を向ける。その先には、 パズソーの同型の蜂のロボットが、パソコンに向けて軽快な指捌きでプログラムを打ち込んでいた。

 

 

「ブーン。今月のトランスフォーマーのオモチャの新作情報をチェックするブーン。」

違った。ネットサーフィンをしていた。彼の名はワスピーター。テラクラッ社の古参社員であり、パズソーの叔父に当たる。すると、彼のデスクの電話が鳴る。

 

ガチャッ「はーい、もしもしブーン?………はい、はい………

 

 

トランスフォーマーのこと以外はわかりませーんブーン。」

 

そう言って電話を切るのと、メガトロン社長の飛び蹴りが炸裂するのはほぼ同時であった。

 

「てんめぇええワスピーターこの野郎!!!何が"わかりませーん"じゃボケコルァア!!わかんねーなら誰かに代われよ!!もしくは電話を取るなよ!!何十回言わせりゃ気が済むんじゃてめえはコラァーッッ!!!?」

 

 「ブーン!?暴力ハンタイだブーン!」

 

(ああ、多分今までもずっとこんな感じだったんすね。叔父がご迷惑かけます社長……しかし社長、なぜそんな叔父を未だクビにしないっすか?)

 

 ティラノサウルスの腕で首を締め上げられる叔父の様を見て、その流れるような動きから、パズソーはそれが一連の流れなのだということを察する。現に他の社員たちは我関せずといった様子で黙々と仕事を進めている。パズソーもそれに習い、自分も仕事に順ずることにした。

 

 「それじゃ社長、外回りに行ってきますっす」

 

 「は~いいてれーい。オレ様はこのブワァカッ!をシめとくから!!」

 

「はーい」

 

「あ~んちょっと待ったすけてブ~ン!!?」

 

「行ってきま~っす」

 

『アッチョ~~~ウ!!!!』

 

『ブ~~~ン!?バラバラバラ~~~!!??』

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「さって、ダイアクロン社との営業は無事終わったことで、次はシンカリオン社に営業っすねぇ」

 

「お、パズソー君じゃん!!」

 

 パズソーに声をかけたのは、デフォルメされたネズミの姿をしたアクサロン商事のサラリーマン、ラットル。テラクラッ社とアクサロン商事はライバル社だが、叔父を経由して知り合った彼は面倒見がよく話も通じるので、時たま二人で飲みに行くこともある程度には仲が良かった。

 

「あ、ラットル先輩。お疲れっす」

 

 「まだはえーっての。営業回り?偉いねぇ新卒なのに」

 

「先輩こそ、営業お疲れ様っす」

 

 そうして二人で漫談しながら歩いていると、突如辺りの空間が揺らぎ出す。 

 

「ん?何事?」

 

 「これは……」

 

そして遂に揺れが激しい激しくなったと思うと、爆発が起こり二人は吹き飛ばされた。

 

「ゲホッゲホ……ダイジョブ?パズソー君……」

 

「はい、なんとか……」

 

 二人は起き上がると、爆発の起こった現場へと向かう。辺りには土煙が立ち込めていた。

 

 「また漂流者っすかね?」

 

「多分ね」

 

このレジェンズ時空はちょうど各次元の間に位置しており、時折時空の狭間を漂っていた者が流れつくことがたまによくあるのである。

 

「今回は誰っすかねぇ……自分ストロングアームちゃん押しっす」

 

「オイラはプライムのアーシィおば様が……」

 

そんなことを言っていると、ついに煙が晴れてその全貌が明らかになる。

 

「う、ううん……ここは…東京か?また日本に来ちまったのか?」

 

「うわぁ!ゲルシャークだあやったあ!!」

 

 「マジっすかモノホンっすか!?」

 

 「ってなにぃ!!?動物くんたちが住民の世界!?どーなってんのぉ!?」

 

こうして、サメとハチは出会った。




 
牙提督ゲルシャーク;カーロボット
ご存じ知る人ぞ知っているクラゲさんなデストロンガーの副官。メカホホジロザメに変形。サイバトロンとの決戦後、何故か一人だけ取り残され、一人自身をアップグレードしながらサイバトロンにちょっかいをかけていた。頭が切れて戦闘力も高く侮れない適役だが、底抜けな性格で詰めが甘く、妙に素直なのがたまに傷。

航空防衛戦士スカイファイヤー:G1
サイバトロン結成前から存在する心優しき科学者(その割にやたら大型で重装備)。宇宙戦艦に変形。あのあのスタースクリームと友人だった。

迎撃騎士アールブレイド;ロボットマスターズ
スカイファイヤーの同型。顔はスーパーリンクのジェットファイヤー。本っっ当に知る人ぞ知る。  
 
・レジェンズ勢

パズソー:ワスピーターの同型で姪。スズメバチに変形。テラクラッ社の新卒社員。「~っす」が口癖。基本的に仕事は真面目にするが、一言多くサラっと毒付く。アニメイテッド世代。

ワスピーター;スズメバチに変形。パズソーの叔父。TFバカ一号。基本的にトランスフォーマーのことしか考えておらず、会社でもTF関連情報を漁ってばかりいる。社内ニートまっしぐら。でもなぜかクビにならない。こんなんで子持ち。ビースト世代。

メガトロン;テラクラッ社社長。キャバクラでお気に入りの嬢と話を合わせるためにTFについて勉強中。唯一マトモに働くパズソーを可愛がっており、ワスピーターには容赦ない折檻を与える。

ラットル;アクサロン商事サラリーマン。ネズミに変形。TFバカ二号。画版では主演だが今回出番は少なめ。パズソーとは歳の離れた友達のような関係。ビースト世代。


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