理由としては部署が変わり、今までやっていた仕事内容全て覚え直し、家族の緊急の入院。祖父の介護とリアルが忙しかった為です。
ホント、正月ぐらいゆっくりしたかった。
少し肌寒い朝、道着に着替えた私はドラえもんに頼んで作ってもらった地下室で正座していた。
意識するのは全身。
指先から臍の下、丹田へと意識を流す。
どこか調子が悪ければ痛んだり上手く力が入らなかったりするが今日も大丈夫そうだ。
のび太が卵の化石をタイムふろしきでホントの卵にして孵してしまった。
恐らくあいつらもこの事は目にしているだろう。
心配だ。
胃が痛い。
たまにやらかす自分の行動で頭が痛いのに。
自業自得ではあるのだが気持ちが舞い上がってしまうとその時の勢いに任せてその言動と行動がおかしくなってしまう。
自覚はあるのだ。
ただ、やってしまう。
若気の至り、酒の勢い。
そんなノリでやってしまう。
被害は自分だけだ。だけなのだが、精神的にとてもつらい。
はぁ。
★
少し日が経った夜。
「・・・・・・なんだ?」
奇妙な感覚に襲われ目が覚めた。
カーテンを見ると少しだが揺れている。
そんなことを考えているうちに揺れは一定の間隔でどんどん近づいてくることが分かった。
何が来るかはわからない。
ただ、大きい何かが家に近づいてくる。
やばい、本能が警報を鳴らしている。
近づく何かを敵として、認識する。
確認できるのは影、形は分らず。
使える武器は、電光丸だけ。
やるしかない。
行動はシンプルだ。窓から出て相手の急所らしき部分を切る。
それだけだ。
呼吸を落ち着ける、こわばっているから。だから無駄な力を抜く。
勝負は一瞬だ。
「ふー」
視野を広く、もっと相手が近づく。
無駄な力を抜き、相手の何かが伸びた。
いまだ。
―ピー
「ピー助!」
・・………?
カーテンを開くと大きくそだっていたフタバスズキリュウがのび太に甘えているところだった。
…私はピー助に危機を感じたのか。
いくらなんでも間違いすぎだろう私。
なんでそこまで気を張ってるんだ、あの無邪気な恐竜に危機を感じるなん……。
「そこだ!」
私の真後ろ、そこを電光丸で居合いを放つ。
そこにあったものは、黒い目玉にアンテナが着いたようなもの。
…………違う、私の危機感はこいつらからだ。
「いやぁ、お見事」
部屋の隅、暗闇で何も見えないところから一人の男が現れた。
「私が部屋に入った瞬間に飛び起き、カメラを出した瞬間に一刀両断とは、まさに侍だな」
その男は全身黒い服装で身を固め顔がわからないように覆面のマスクをしていた。
やはり来たか。
……こいつをここで斬ってしまえばそれでこの話は終わるかもしれない。
「人を恐れないフタバスズキリュウ。それに、人に恋するかぐやロボ。まるで宝箱だなここは」
っこいつ!
「なぜ知っている?と言う感じだな。物事を進めるにおいて下調べは当たり前だろう。君のような勘のいい子供がいるなら尚更ね」
ねっとりと煽るように私に話しかけてくる。
かぐやの近くにはこいつらの仲間がいると考えた方がいいか。
「何が目的だ」
私に取れる行動はひとつしか無かった。
「やはり君は勘がいいね、その分話も通じやすそうだ」
男は一呼吸置いた。
「私は君の弟の持っているフタバスズキリュウ、ピー助くんが欲しいんだよ。だけど君の弟くんは取引に応じてくれなくてね。だから君にも説得をして欲しいわけさ。もちろんタダでとは言わないよ」
脳内の奥がドロリと溶けたような感覚がある。
「君は年齢の割に大人びているね。もちろんそっちの方向にも。だから君には天国を見させてあげよう。なぁに奴隷と言うのは割と多いからね」
「ふぅ」
賢い君ならどちらを選んだ方が得かはわかるはずだよ。
そう男は私に言葉をなげつけた。
ダメだこいつは。
こいつは本当に。
「私を怒らせたな?」
「あん?」
その瞬間に私は自身の部屋の壁をぶち抜きかぐやの部屋に入った。
部屋にいるのは同じように黒ずくめの3人。
そいつらは、持っているものをかぐやに向けていた。
「貴様らぁ」
私は怒っていたのだろう。
弱いのに正義感は強い自分の性格を自覚はあるのに客観的に見ておらず、やはりどこか強者でいた自分に酔っていたのだ。
だから。
だから私は本来使うことの無いものを使っていた。
★
「素晴らしい」
目の前にいた少年はその一言に尽きる。
目的の恐竜を調べるうちにでてきた家族関係、その中で飼い主であるのび太君の兄、その子はひみつ道具である変身ドリンクをいつの間にが摂取したのだろう。
自分の腕を蔓に変化させ私の仲間全員を壁に縛り付けていた。
本来ならかなりの集中力とイメージがないと変身できない道具のはずだが彼はそれを一瞬でやり遂げていた。
「立場が逆転してしまったな」
決して小さくない音が響いた。
下の子たちは直ぐにここに来てしまうだろう。
「貴様らは私の逆鱗に触れたぞ!」
仲間たちを縛り上げる蔓に力を入れ動きを完全に取れなくしている。
「見事だよ。だが、大人とはずるいものでね。こんなものも使うんだ」
緊急用タイムベルトのスイッチを押す。
スイッチを押せばアジトに転送される代わりに、半径500メートル以内で同じベルトをしているものを一緒に転送してしまうという欠点があるが、今はそれが強く出た。
「君を気に入ったよ、のび郎くん」
説得にも失敗し完全に彼に敵対されたというのに私の、笑みが止むことは無かった。
いつも誤字報告ありがとうございます