こんな人もいたかもしれないという話を転生者で表現してみた。

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Dr.STONEに転生した話

俺はある日トラックに跳ねられた。

 

 

 

 

そして、転生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんてことはない。

トラックに跳ねられた瞬間に「あ、死んだ。でも転生出来るなら嬉しいかな」とかバカなことを考えていたが神様なんかには会わなかったし、目が覚めたら異世界にいた、なんてこともなかった。

 

まぁ、それが普通だ。

だが、高校生になっても絶賛厨二病でバカなことしかやっていなかった俺は、目が覚めてから現代のままだと知ったときにはかなり凹んだ。

 

それから数ヵ月後

 

漸くリハビリやらなんやらを終えて普通に生活できるようになった俺は元通りの高校生活に戻った。

 

あの日から俺はバカなことをやるのを止めて真面目にしようと決意した。

だって、今までやっていたことのバカでアホな言動が怪我の功名からか俺に対する周りの見る目がどういったものだったのか自覚できたからだ。

 

変化が起こったのはそれから数日後のことだった。

 

SNSやらネットで石化した鳥の写真が出回っていた。

その写真に変な既視感やデジャヴュを感じたが、気のせいだろうと放置した。

 

それが運命の分岐点だったらしい。

あの時に俺がソレに気付いていれば少しは運命が変わったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、世界が緑色の光に包まれた。

 

俺が気づいたのはその数秒前、突然フラッシュバックするかのようにある一つの物語を思い出した。

 

"Dr.STONE"

 

現代人の高校生達が主人公の物語で、ある日突然石になる光を浴びてから数千年後に復活して科学の力で生き抜くみたいな話だった筈。

 

そんな物語の重要なファクターとして鳥の石が出てくるのだ。

そう、あのSNSで出回っていた写真のような鳥の石が。

 

それを思い出した直後、俺は外が緑色がかっていることに気づいた。

ここは学校で場所は屋内。

咄嗟に近くにあったロッカーに入った。

その数秒後、俺は暗闇に呑まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死ねるものかと意識を持ち直した。

お陰で色々と思い出した。

前世とも言えるような記憶だ。

事故に遭ったせいで混濁していたようだが考えてみれば違和感だらけだった。

友人と俺との間で食い違う矛盾や授業での歴史、親と俺との間で微妙に違っていた思い出。

俺は転生していたらしい。

ならばやることは一つ。

これが創作物の中ならば俺は生き残ってあの主人公達と話がしたい。

だから俺はこんなところで死ねない。

その理由が出来た。

主人公達は意識を持ち続けることで生き延びた。

ならばそれに習って意識を持ち続ければいい。

 

俺は考えた。

とにかく考えた。

動けるようになったらどうするか、主人公の言っていたように時期は重要だしそのあとも重要だ。

時々眠たくなるように意識を持っていかれそうになるが気合いで何とかする。

事故でこの世界に来る前だったら早々に諦めていたかもしれないが今は違う。

とにかく考えた。

主人公みたいに秒数を数えて何年か計算する。

なんてことは出来ないからそれは早々に辞めた。

どうでもいいことでも何でもいいから思考を止めない。

少しバカに戻って異世界転生の物語を頭の中で考えたり、真面目に「動けたらどうするかリスト」を頭の片隅で作ったり、前世であった漫画や小説の話を頭の中で読んだり、好きな曲をなんとなく頭の中で再生したりとにかく考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺は復活した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

復活して、失敗した。

 

目が覚めた時は冬だった。

幸い、洞窟の中で助かったが悠長にはしていられない。

なにか無いかと洞窟の中を探したがあったのは木と石のみ。

もしかしたらと石同士をぶつけて火を起こそうとしたが中々つかない。

少しずつだが体温を奪われていく。

洞窟の奥ということもあってそれなりには気温はあっても素っ裸の状態でだとあまり効果はなかった。

今が何月であとどれくらいで春になるのか全く分からない。

でも諦めない。

折角復活したんだからこの先を生き延びなければ無駄に終わる。

と、もう一つ重要なことを忘れていた。

 

食料がない。

 

これは死活問題だ。

原作と同じなら三千年間何もなくても生きていられたからこの問題に気付かなかった。

いや、原作でも似たようなことを主人公が言っていた気がする。

俺はバカか。

意識を変えてもバカは治らなかったみたいだ。

このまま春になるまで待つしかない。

運良く主人公達に見つかればなんとかなりそうだがそんなご都合主義が起こらないのはわかっている。

だってここは現実なんだから。

 

 

 

 

 

 

 

それから何日、何週間、何ヵ月経っただろうか。

食料なし、水無し、着るもの無しでも何とかここまで生きていけたがもう無理だ。

いや、一応水はあった。

が、マジで死ぬ、ガチで死ぬ。

腹が減りすぎてまともに思考できない。

多少の水で何とか空腹を満たせるときもあったがそれももうない。

最後に外を見ようと這いずって洞窟の入り口に向かった。

 

外は晴れていて、鮮やかな緑色が見えた。

 

 

 

俺は意識を今度こそ手放した。



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