j月U日
さぁ、今日も商売だ。何? 村の奴しか人間居ないだろって?
ああ、確かに人間は村の奴しか殆ど居ない。居ても、魔王であるユーリアを討ち取って名を上げようと言う勇ましい戦士達か、訳ありでここまで来るしかなかった奴くらいだ。でも、人間が居ないからって他に客が居ない訳じゃない。そう、魔物の客だ。
人間との交流がほぼ断絶したのは痛いと言えば痛いが、魔物との交流はそれはそれでありがたい。
村に来る魔物も基本的に穏やかな気性の種族が多いし、何よりユーリアが居るから余程の事がない限り面倒ごとも起きやしない。
……ここだけの話だが、魔物交流を持つようになってからの方が村に活気が出てきた。
とりあえず、新しい製法とかが入ってきてテンション上がるのは分かったからあんま無茶すんなよ。鍛冶師の爺さん。
「ね、お兄さん……ゴメンナサイ……」
なんかサキュバスの女の子がやって来たが、そのまま去って行った。何がしたかったんだろうか。
「店主。これの買取を頼む」
「あいよー」
ミノタウロスとはまた違う人と獣が混ざったような姿の魔物であるオークが何かの牙を大量に持ってやって来た。ちなみにオークは良く人間の創作に出て来るような節操無しのケダモノではないらしい。まぁ、繁殖力が強いのは確からしいが、なんにせよ悪い奴では無い。
魔物と人間が共に生きる。ユーリアの夢だが、今のリーツ村を見ていると出来るんじゃないかと本気で思えるようになって来た。
j月p日
今日は店は閉店だ。なぜなら今日は親父の命日だからだ。
お袋は元々そこまで体の強い人じゃなかったらしく、俺を産んですぐに死んでしまった。だから、親父は店を切り盛りしながら俺を育ててくれた。だからこそ、俺も商人になろうと思った。
商人としての修行は近くの街でやって来たが、商人としてのあり方やいろはを叩き込んでくれたのは親父だ。
俺の知る知識やものは全てが親父に教わったものだかりだ。
ちなみに墓に行ったのは俺だけだ。ユゥナはもちろん、ユーリアやアリスも連れて来ていない。俺が女の子を連れて行くとしたら、それは……うん、結婚の報告の時だけだろう。それだけあの場所は俺にとって特別な場所だ。ある意味で、この店よりもな。
j月q日
今日は畑の収穫を祝っての祭をした。ユーリアの魔王としてのコネやらを使いまくって、この日の為にあちこちからかき集めた酒やら何やらを一気にばら撒いた。
収支? そんなものは後でどうとでもなる。て言うか、どうにかするのが商人だ。
まぁ、正直ちょっとキツいが口には出さない。出す必要もない。
酒の勢いに任せて大工の親方んとこの若いのが宿屋の娘に告白して、そのまま結婚の運びになったりもしたな。まぁ、めでたい日にめでたい事が重なるのは良いことだ……が、
とりあえず、次期村長としてそいつらの式を執り行えってのは勘弁して欲しかった。いや、やるけどな?
j月b日
冬支度の時期が近付いて来た。それに合わせて、面白いものを仕入れた。
温暖石と言う魔法の力が込められたオレンジ色の石みたいな道具で、ユーリアや店にやって来る魔物の客達の話では、これ無しに冬は過ごせないと言う代物だそうで、試しに使った上で売ることにした。
温暖石の効果は読んで字の如く、一定範囲の空間を自動で暖め続けてくれると言うものだ。
実践の仕方だが、単に店で使うだけだ。実際に使った感想だが、これは売れる。暖炉が無くても暖炉と同等かそれ以上に部屋を暖めることが出来る。これなら、村の年寄り達が無理に薪割りなどをしなくても良いから事故とかも減って良いかもしれない。ただし、唯一の難点が、温暖石1個の値段が2000ゴールドとやや割高なことだ。
……だが、俺の杞憂は必要なかった。アホみたいにバカ売れして、在庫が余るどころか売り切れた上に追加発注することになった。
j月x日
本格的に外が寒くなって来た。まぁ、温暖石のおかげで店内はポカポカだけどな。
そんなある日、店にいつぞやのユーリアの側近の1人の人間と同じ姿の奴がやって来た。
そいつが言うには、ユーリアの伴侶がどうので揉め事が起きているらしい。
どうやらここらへんは人間も魔物もそう変わらないらしい。まぁ、人間と違って魔物は魔王とか権力のある奴と一緒になってもそいつやそいつの一族が権力者になれるわけではないらしいが、そう言うのと一緒になるだけで箔がつくんだとか……本当、知れば知るほど人間みたいだ。
で、だ。
なぜか知らんが、ユーリアに求婚しているらしい奴と戦うことになった。なんでだ。完全に意味がわからん。