☆月◻︎日
大変なことになりました……
私は勇者として、仲間達と共に魔王を倒す旅に出たのです。
旅は順調でした。順調すぎるくらいに、
そして、旅を続けていた私達は立ち寄った村の村長に魔物に連れ攫われた村の娘達を助けて欲しいと頼まれ、村から幾らか離れた森の中にある洞窟のダンジョンに向かいました。
無事、ダンジョンの娘達を助け出すことには成功しました……が、その後面倒なことになりました。
倒した魔物が死ぬ間際に発動させた魔法のせいで、仲間達と離れ離れになってしまったのです。
幸い、飛ばされた場所には凶悪な魔物も存在せず、幾らか路銀もありましたし、近くに村もありました。そこで準備を整えて、仲間と合流しようと村の道具屋に向かいました。
……まさか、このような場所で魔王に出会おうとは……!
ここであったが百年目。魔王に戦いを挑みました。が、私も魔王もたった一人の男の方に敗北してしまいました。それも道具屋の店主だなんて……
◼︎月♻︎日
師以外の方に初めての敗北を喫して数日が経ちました。
私はその方の店で働くことになりました。魔王と共にと言うオマケがつきますが、
……あんな金額、手持ちだけでは無理です!
あ、道具屋の店主の方はエリユ様と言うそうです。
◼︎月℃日
ダメです。とことん、魔王とは相性が悪いようです。
ああもう! こうやって、ペンを走らせるだけでも腹立たしいっ!
[文字がびっしりと書き詰められていて真っ黒]
……ふぅ。落ち着きました。
離れ離れになっていた仲間達がこの村にやって来ました。皆、無事で良かったです。
そして、魔王の姿を見た仲間達が魔王に戦いを挑みました。が、私と同じようにエリユ様に倒されてしまいました。そして、叩きのめした仲間達を私もお世話になっている村の宿屋に放り込んでしまいました。
そして、エリユ様は早々に店仕舞いをして、とても素晴らしい笑顔で「ちょっと、勇者様の仲間達とお話ししてくる」と言って、宿屋に向かいました。
この日、宿屋に戻ると仲間達はやけに疲れ切った姿で、「なんだよあいつは……」「本当に一介の道具屋店主なのですか?」「……化物」と口々に言っていた。
エリユ様自身は「俺はただの一般人」と仰っていますが、まずただの一般人などと言うことはないでしょう。エリユ様程の実力者が無名である事が不思議でなりません。
◼︎月➰日
魔王との喧嘩は絶えませんが、お仕事自体には慣れました。
この村の方々はとても優しいです。魔王でさえ受け入れてしまう程に、
仲間達もこの村に大分慣れました。
戦士のジルは老人も多いこの村の貴重な若い男手として、畑仕事などを。賢者のフィーネは賢者と言うだけあって豊富な知識で村の子供達に勉学を、魔法使いのルカは、エリユ様の店で素材を買っては薬を作って、それを売っています。
エリユ様から聞きましたが、魔王は人間と魔物の争いを止めたいのだそうです。そして、エリユ様は魔物相手にも商売をしたいそうで……なんと言うか、大物ですねエリユ様。
ただ、やっぱり争いを止めたいと言う魔王を信じ切ることは出来ません。
◼︎月†日
今日はお休みです。
仲間達があれこれとエリユ様に言っていたそうで、少し申し訳ないです。
今日は村に魔王が居ません。
そして、エリユ様とちゃんとした勝負をすることにしました。
やっぱりエリユ様は強かったです。もちろん、魔法などの威力は私の方が上です。自意識過剰かもしれませんが、王国でも指折りの魔法使いであるルカにお墨付きをもらっていますからね。でも、魔法を除いた剣術などで言えば、エリユ様の方が上でした。
薄々、負けるとは思っていましたけれど、負けるのはやっぱり悔しい。年甲斐もなく泣いてしまいました。
ルカがエリユ様に薬を渡していましたが、あれはなんなんでしょうか?
◼︎月∴日
今日は大雨です。それはもう尋常じゃないくらいに、
それと、勝負をして以来、なんと言うかエリユ様のことが気になると言うか、私を見ていて欲しい。これは一体、どう言うことなのでしょうか?
この大雨の中、薬を買いにお客さんが来ました。女の方で随分とエリユ様と親しげです。なんと言うか、気に入りません。誰なんでしょう?
エリユ様が言うには、この方はこの村の村長の孫娘で、名はユゥナ様。エリユ様の幼馴染なんだそうです。
ユゥナ様は私や魔王のことをエリユ様に問い詰めて、薬を買って帰って行きました。
◼︎月☑︎日
今日も魔王は居ません。何をしているのやら……と、そんなことは放って置いて、今日は物凄いお客さんが来ました。王国の姫様と王子様です。
やっぱり、姫様は可愛いです!
……ちょっとはしゃぎすぎてエリユ様にあきれられてしまいました。その上、私よりもフィーネの方が店員として使えると……ショックです。
◼︎月◆日
久しぶりに魔王が来ました。魔王の事などどうでも良いのです。
なんと、エリユ様がおつかいを任せてくださいました!
村の鉱石の採掘場にツルハシなどを納品するだけのものですが、おつかいを任せてもらえると言う事は信頼されていると言うことです。
ジルはどうやら今日は採掘場で働いているようで、年配の方を筆頭にした鉱夫に混じっていました。
私達も随分とこの村に慣れたものです。たまに自分が勇者だと言うことを忘れてしまいそうになります。
エリユ様の道具屋の本来の店舗の修復が進んでいません。え? 材木を採りに行く森に魔物が住み着いて、材木を採りに行けない? お任せくださいエリユ様。
今日は久しぶりに勇者らしく魔物と戦いました。