君だけの『ヒーロー』   作:縦ロール兵装

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今回の話は、急な設定変更のしわ寄せでできた話です。
もう二度と思い付きで書いてはいけないと思いました(小並感)
無理あるかな……いやでもランチラッシュの料理が無料で食べられるよ! だけだと……なんていうか、普通過ぎて雄英感ないなって

後書きで話の説明をするの、自分の説明能力がないと暴露しててダサいと気付いたのでやめます。

お気に入り1000件突破ありがとうございます! マジか! マジだ!


血の繋がりを感じる……

「やあ! 初めまして、だね。僕が校長の根津だよ!」

 

「は、はぁ……初めまして」

 

 椅子の上に立ち挨拶している巨大ネズミ……雄英高校校長の根津校長先生を、お母さんと2人して眺める。

 出久くんと文書の家に行った日、家に雄英高校から電話が掛かってきた。

 内容はボクの入試結果について。

 お母さんは何故か知っていたけど、ボクはどうやら特待生になるらしい。

 その説明に、教師と校長が来るとのこと。

 そして本日現れたのはネズミ(校長)

 予想しようのない光景に、一種の逃避を兼ねて教師の方に話しかける。

 

「拡細(かくさい)さん。雄英って……というか、学校の校長って、人間以外でもなれるんですね」

 

「まぁ七不思議だね、でも皆納得してるよ。この人になら雄英を任せられるって」

 

 校長先生の横で座っている、眼鏡をクイッとしそうな男の人が微笑んだ。

 伝聞拡細(でんぶんかくさい)さん。文書のお兄さんでプロヒーロー、雄英高校のサポート科の教師をしている人だ。

 この人が僕らの家庭の事情を鑑みて、お母さんを説得するまでこの訪問を先延ばしにしてくれたのだ。

 もしこの人が動いてくれなかったら、普通にお母さんに雄英入学を蹴られていたかもしれない。

 

「そんな、七不思議に数えられる僕が今日やってきたのは他でもない、遠藤初来さん。君の特待生扱いについてなんだ」

 

「特待生……」

 

 お母さんの呟きがかすかに聞こえた。

 『特待生』、正式名称は特別待遇学生または特別待遇生徒。

 成績優秀者に対して学校側が何らかの優遇措置を取る制度。

 でも疑問なんだけど、ボクって成績優秀者なの? 違うよね。主に筆記。

 首を傾げていると拡細さんが資料を出してきた。実技試験の総合得点表だった。

 それを見ると、実技試験でボクの次に点数が高いのは77点だ。1位だとは思ってたけれど、思ったよりも2位と開きがあるな。

 

「まぁ簡単に言うとだ、『実技試験中、その受験生がいることでその受験会場が他受験会場よりも難易度が上がっていると判断された場合の、その受験会場の受験生に対する救済措置』が特待生制度なんだ」

 

「難しい。拡細さん簡単に説明お願いします」

 

「君頑張りすぎ、他の受験生の実力計れないだろ」

 

 なるほど分かった。でも普通全力でやるでしょ?

 そんなボクの表情を見た拡細さんは苦笑する。

 

「君は間違ってないよ。けど他の受験生に対して正確な評価をしなきゃいけないのも事実だ」

 

「その通り! どちらも間違っていないなら、どちらも評価すればいいのさ!」

 

「つまり、特待生という別枠を用意して一般入試枠を空けたのか」

 

「そういうことさ。理解して貰えたみたいだね」

 

 ここまでは理解できた。特待生の成り立ちとボクの置かれている状況の説明だ。

 そして次は特待の部分だ。

 

「簡潔に言おう。君に対する優遇として我が校は『学費の免除』と『学業時間外における、書類申請による学内施設の無償貸し出し及び教員による指導』を提案する」

 

「……は?」

 

 思わず口が開く。

 見れば今まで黙っていたお母さんも口を開けている。

 

「待って待って待って、ちょっと優遇しすぎじゃないですか?!」

 

「そ、そうですよ! 試験結果はよかったかもしれませんが、はっきり言ってこの子変ですよ?!」

 

 誰が変だ。

 それでも、ちょっとばかり過剰すぎやしないかと思うのは当然だ。

 学費の免除は、まぁあるかもしれない。普通の学校でもあり得る話だ。

 けど2つ目はやばい。要するに書類さえ出せば放課後に学内施設を無償で自由に使えて、しかもそこにプロヒーロー(雄英高校は教師全員がプロヒーローなのでそうなる)が指導に来てくれるということだ。

 

「まぁ、落ち着いて……というのも無理な相談か」

 

 でも、と拡細さんは続ける。

 

「勿論いい話ばかりではないよ。1つ目の優遇に関しては特に制約はないけれど、2つ目の優遇を受ける場合、君には義務が課せられることになる」

 

「……まぁ、当然ですね」

 

 プロヒーローの時間を貰うんだ、そこは当然何か条件がつけられるに決まってる。

 

「遠藤初来さん、君は我が校の校訓を知っているかい?」

 

「は、はい……さらに向こうへ、Plus Ultra(プルスウルトラ)……ですよね」

 

 余りにも有名なその言葉を口にすると、校長先生が頷いた。

 

「そう! それならばもうわかるね? 君に対する義務は当然更なる困難。具体的に言おうか。『定期試験の難易度変更』と『体育祭での上位入賞』さ!」

 

 ……普通に、納得できる話だった。そりゃまぁプロのヒーローとっ捕まえて指導受けておきながら他の生徒と同じ試験受けるとかありえないでしょ。

 校長先生が身を引き、代わりに拡細さんが身を乗り出してきた。

 

「初来ちゃん、君には2つ目の優遇を受けないという選択肢もある。言っておくけど雄英の教育プログラムは常軌を逸しているよ? 去年なんて1クラス丸々除籍処分を受けたくらいだ」

 

「なんですかその魔窟は……」

 

 想定していたよりやばい環境に、思わず頬が引き攣る。

 もしボクが2つ目の優遇を受ければ、ただでさえ頭おかしい難易度の学生生活が限界突破する訳だ。

 でも。

 

「受けます」

 

「ばっ、あんたもうちょっとよく考えて発言しなさい! 相当やばい学校よ雄英!」

 

 校長先生の前で相当やばい事を言うお母さんに、大丈夫と答える。

 何故ならボクは知っているんだ。

 春からオールマイトが教師になる事を。

 つまり、オールマイトの予定さえ空いていれば指導して貰えるんだよ? あの平和の象徴に。

 そして、うまくいけば実力を見込まれてサイドキックに抜擢される可能性もある。

 

「夢の為に、ここは引けないんだ!」

 

 

 

 

 

「困難な道を敢えて行く。なかなかのドМ具合だね初来ちゃん」

 

「夢を掴むための敢えて、です。貴方の妹と同じにしないでください」

 

 お母さんと校長先生が話を詰めている間に、ボクはリビングのソファに座って拡細さんと雑談をしていた。

 文書曰く『主人公顔』な拡細さんは、眼鏡を外すと何故かボクの頭を撫でてきた。なんで?

 

「妹と仲良くしてくれてるみたいで嬉しいよ、僕らの『ヒーロー』」

 

「なんかむず痒いのでそれやめて貰えません?」

 

 どう考えても過大評価だ。一緒に遊んで抱きしめて慰めただけでヒーローになれるもんか!

 嫌がるボクの顔を見て笑うと、拡細さんは顔を近づけてきた。

 

「ふへ、なんっ」

 

「初来ちゃん、個性のことで僕に何か隠してるでしょ」

 

 のけぞるボクの顔を、普段の翠とは違う、緋色の瞳が映す。

 やば、個性使われてる!

 観察されている感覚に背筋が震えるのを無理やり抑え、笑顔を作る。

 

「なんのことかな?」

 

「僕の個性相手に無駄な事をしちゃって。試験の時、急に出力上がったでしょ。2回も」

 

 あかん、完全にバレてる。

 引き攣った頬に汗が一筋流れる。

 個性『拡視細察』

 拡細さんの名前が入ったこの個性は、簡単に言うと『拡大し観察する』個性。

 人間は視界に入った情報を全て認識している訳ではない。要る情報と要らない情報を脳が選別するのだ。

 拡細さんの個性は、その脳の取捨選択によって弾かれた『人間が本来手にすることのない視覚情報』を受け取り、拡細さんの望む情報を脳に送るのだ。

 簡潔に言おう。

 個性であれなんであれ拡細さんの興味を引いたものは、視覚的に丸裸にされるのだ。

 嘘なんて以ての外。おそらく今ボクが言い訳を考えているのもバレてるし、もしかしたら黙っているのが文書の指示によるものだということすらも知られているかもしれない。

 拡細さんから逃れるには目を潰すか興味を失って貰うかしかない。

 

「いや、ですね。プルスウルトラ的な?」

 

「まぁ、なんとなくわかってたけどね」

 

「……な、何が」

 

「君の個性、自称してるのとは違うでしょ?」

 

「ーーーー」

 

 もう、これはどうしようもないわ。

 わかってたって言うくらいだ、もう既に言い逃れなんて出来ないほどに理解されているのだろう。

 諦めて味方に引き入れるのが得策だろうなぁ。って考えてるのもバレてるんだろうなぁ。

 

「拡細さん、あのですね……」

 

「あ、いいよ別に言わなくても」

 

 ……えっ?

 急に展開が変わって頭が追い付かない。

 間抜けな顔をしていたんだろう。ボクの顔を見て拡細さんは苦笑した。

 

「あんまり迂闊なことはするなよって言いたかっただけさ。僕がわかったんだ、他の誰かが偶然知ってしまう可能性もある」

 

「僕が、て」

 

 主人公にしたら物語が成り立たなくなるくらいの推理力を見せた貴方以上の人間が居てたまるか。

 でも、拡細さんの言葉を胸に刻む。

 そうだ、ボクの個性創造は、決してバレてはいけない個性なんだ。

 だから、迂闊な行動を控えて行使の際は細心の注意を払って。

 

 

 

 そしてバレたらきちんと記憶操作しよう。

 

 

 

「おっとあっちはもう終わったみたいだね」

 

 ボクの殺気を感じ取ったのか、元の瞳の色に戻った拡細さんは早口でそう言って立ち上がる。

 チッ……まぁ、記憶操作なんてできないので冗談ではあったのだが。

 背中を向けた拡細さんから視線を外し、こちらを見ている校長先生とお母さんに視線を向ける。

 

 

 

「あ、言い忘れていたけど。君のヒーローコスチュームは僕が作成担当することになったからね」

 

「……は?」

 

 えっ、マジで?

 ヒーローコスチュームを着た人間にしか欲情できないこの人に、ボクのコスチュームを作ってもらうの?

 

「『しか』ではないよ。より興奮するってだけさ」

 

 緋の瞳でボクを見てドヤ顔をする拡細さん。

 

「チェンジで」

 

「もう作っちゃったんだよね、滾った」

 

「あぁぁ……」

 

 どんな変態服を着せられるのか。

 そんな恐怖に震えながら、ボクは帰る2人を見送ることになった。

 

 

 

 

 

ーー個性『個性創造』発動

 

ーー個性『光線操作』創造

 

 自室でベッドに腰掛けながら、個性を創造する。

 風を操り、目の前に風の渦を作り出し、そこに今創った光線操作を挟み込む。

 

ーー『個性連結』発動

 

 鑑定の個性が告げると同時に、風の渦が色付きその規模を増す。

 緑に、赤に、青に、紫に。

 次々と色を変え、反動がきつくなってきたところで風の渦を解く。

 

「やっぱこれ、ちゃんと技能として成り立ってるよね……」

 

 頭痛と吐き気に項垂れながら、思い返すのは実技試験のこと。

 出久くんを救けようとした時と、ポイントを取れていない出久くんの為に仮想敵を探知し運搬した時。

 どちらも、個性を混ぜ合わせた瞬間に威力と精度が跳ね上がった。

 適応個性に創造した個性を混ぜて強化する。恐らく、これが個性創造の本当の使い方だ。

 実技試験から今日までいろいろと試してわかったのは、3つ。

 1つ目は、創造した個性は、適応個性と混ぜることで『適応個性に性質を付与する形で』しっかりと発現させることができるということ。

 2つ目は、適応個性同士は混ぜ合わせることができるが、適応していない個性同士を混ぜ合わせることはできないということ。

 3つ目は、『個性連結』させると、威力、範囲、精度が跳ね上がるということ。因みに反動も跳ね上がる。

 

「使い勝手は、良くなった。反動に目を瞑ればだけど」

 

 ズキズキと痛む頭と、まるでシュールストレミングを胃の中にぶちこまれたような強烈な吐き気が気分を滅入らせる。

 少しの『個性連結』でこれだ、3つ以上混ぜたらどうなるかなんて怖くて試す気にもなれん。

 後ろに倒れ込み、目を閉じる。

 思い出すのはさっきの拡細さんの言葉。

 迂闊な行動は控えろという言葉の意味をよく考えて、個性創造という個性の恐ろしさを。そしてどれだけ僕が能天気だったかを理解した。

 個性は普通1人1つだ。複合個性などもあるが、複合された状態で1つの個性になっているから同じ話だろう。

 対してボクは、制限があるとはいえいくらでも個性を創り出せる。

 それは、他の人から見たら、神の所業と捉えられてもおかしくはないだろう。

 そして、神として祭り上げられてしまったら。

 

 オールマイトのサイドキックになんて、なれなくなる。

 

「ボクは、馬鹿か……」

 

 自分の行動がサイドキックになるという夢に影響を及ぼすかもしれないなんて、1度も考えたことがなかった。

 そうだ、咄嗟にでも『個性連結』を使ってしまえば、夢を絶たれることになる可能性は十分にあるんだ。

 流石に今までの行動でボクの個性が自称と違うと気付けるのは拡細さんくらいだろう。

 それでも、例えば火を起こす個性を『個性連結』させてしまったら、誰だっておかしいと気付く。

 ボクの主力武器は風だ。使い勝手もいいし威力も高い。大体なんでもやれてしまう。

 それを主軸に、鑑定で相手の弱点を暴き、身体操作で体を強化して接近戦を挑む。

 おそらくこれがボクの戦闘スタイルとして最適。

 

「『個性連結』は、風に混ぜても違和感がない物にしないといけないな……」

 

 身体を起こし、ふと思いつき鑑定を発動させる。

 元々視界に表示されていた枠の中に、開きかけの傘のような表示が現れる。

 ボクの視界に今映っているのは自分の部屋だ。

 当然私物が置いてあるし、生活用品類もそこそこ整頓された状態である。

 それら全てに傘表示が出ていた。

 器用なことに、近くにあるものに対する傘表示は大きくなり、逆に遠くのものに対する傘表示は小さくなる。

 それらが、無駄にボクの空間把握能力を刺激してくる。

 

「奥行きが邪魔だなぁ……」

 

 表示の邪魔さ加減もそうだけど、発動する度に対象の傘表示に意識を向けて鑑定を行うというのも凄まじく面倒だ。

 第二の主力個性の、地味に使いづらい、痒いところに手が届かない性質に少し辟易してしまう。

 だから、思わず呟いてしまうのも仕方なかったんだ。

 

「あぁ、もうちょい直感的な操作性能だったらよかったのに」

 

 そうして、身体が変質する。

 

ーー『個性操作』発動

 

ーー個性『鑑定』に対し干渉開始

 

 唐突に湧き上がる凄まじい不快感と嫌悪感が思考を乱す。

 床に膝をつき口を押えるボクの脳に、情報が叩き込まれる。

 

ーー個性干渉終了

 

ーー適応個性『鑑定』が適応個性『情報操作』へと変化

 

(知ら、ない……ボクは、『個性操作』なんて個性創ってない……っ!)

 

 今まで思いつきもしなかった個性が自分の中に存在していた恐怖と、個性の反動で、ボクはただ蹲って震えることしかできなかった。




「『次回予告』に……ボクが居る!」

「唐突に現れた正体不明の遠藤さんの個性、その正体を理解する間もなく次なる刺客が現れる! 刺客!?」

「ねぇ出久くん、爆豪くんって君の幼馴染なの? その割には敵意全開なんだけど……」

「うん、ちょっと仲が悪くて……でも、かっちゃんは凄いヤツなんだよ。僕が憧れる人の1人なんだ」

「へぇ、じゃあ半殺しで済ませてあげるね」

「遠藤さん!?」

「次回『実技試験総合1位vsヒーロー科試験総合1位』」

「遠藤さんが心の籠った笑顔を見せるよ!」

「さらに向こうへ!」

「「Plus Ultra!」」

後書きの次回予告についてです。思いついたら今回みたいな感じでやろうかと思ってます

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