君だけの『ヒーロー』   作:縦ロール兵装

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ストックが尽きましたぁ!
よって更新頻度が周1から月1くらいになります。


遠藤初来の日常ーナンパ編ー

 おっぱいソムリエの文書によると、元々Eカップだったボクの胸は、この度Fカップになったそうだ。

 道理でブラがきつい筈だ。というか、どこまで成長する気だボクの体。身長も既に180を越えたぞ。

 

「心配しなくていいらしいですよ、センスゼロの初来に代わって文書がかわいい下着を買ってあげるそうです」

 

「前みたいに大事な部分を隠してないブラとか持ってきたら、文書の下着を荒縄にするから」

 

「望むところです」

 

 望んじゃうのかぁ……。

 被虐願望のある文書を連れて、ボクは下着とあとついでに服とか生活用品を買いにアウトレットに来ていた。

 雄英高校からほど近いアウトレット。店舗数も商品の幅も中々らしく、纏まった買い物をするなら恐らく利用することになる。

 今回はその下見も兼ねているのだ。

 文書はボクのファッションセンスを酷いと認識しているらしく、服や下着を買う必要があるときには必ずついてくる。というか一人で買いに行くなと厳命された。

 流石に二人で出かける時に『顎髭』Tシャツ(赤色ベースで柄が延び放題の顎髭で、胸の辺りに顎髭!と書いてある)は不味かったか。

 いやウケ狙いだったんだけど、「全裸の方がまだマシです!」と怒鳴られたのは堪えた。

 おまけに家に帰った時にお母さんと霧裂(きりさき)姉さんにマジかお前という顔をされたので更にダメージを受けた。

 ちゃうねん、体を張ってボケただけやねん。

 そんな(他者視点で)激ダサセンスなボクの本日の服は白のパーカーに青のベストとジーパン。メンズファッションじゃねーか!

 水騎(みずき)の上目遣いと「お姉ちゃんお願い(ハート)」のコンボで押し切られたけど、最近何故かボクに男装をさせようとする妹の将来が不安で仕方がない。

 

(……ん?)

 

 視界の端で黄色が近寄ってきたのが見えた。

 恐らくはナンパだ。割りとよくあるので慣れた。

 

「ねーねー、君たち今暇?」

 

「間に合ってます」

 

 横から掛けられた声に文書が一瞬でキレる。ボクと二人でいるのを邪魔されたくないらしく、知り合いに声を掛けられてもキレるのだ。ちなみに文書は牛乳が嫌いだ。

 

「だっさ、上鳴(かみなり)お前一瞬でお断りされてるじゃねーか!」

 

「うっせー! いやでもほんと、ちょっと話を聞くだけでも」

 

「ホモ以外に興味ありません、ホモになってから出直してください」

 

「「ホモ……」」

 

 言葉を失い立ち尽くす、金髪の男の子と下駄を履いた雲みたいな異形型の個性の子。

 塩対応すぎると逆ギレされても困るのでフォローに回る。

 

「おつちけ文書。君たちもごめんね、この子レズなんだ」

 

「は、はぁ……」

 

 困惑しまくりな二人。そりゃそうだ、いきなりホモになれと言われて対応できるのはホモだけだ。

 

「ふ、文書ちゃん……っていうんだ、可愛い名前」

 

「誰が名前で呼んでいいって言ったですか?」

 

 (怒)。

 多分、文書はチャラチャラした人が嫌いなのだろう。金髪君……上鳴君だっけ? が名前を呼んだ瞬間に目付きがヤバくなった。

 ちなみにヤバいの語源は、江戸時代に矢場と呼ばれていた射的場があって、裏で違法な商売をやっていたそうだ。

 そこはお役所から目をつけられていて、摘発する時に居合わせると命の危険もあり得るのだ。

 だからこそ、江戸時代の人達は矢場を指して矢場い(やばい)と言って距離を置いたのだ。

 えっと、何の話をしてたっけ?

 そうそう、文書の目付きが矢場いって話だ。

 

(まー、二人で出掛けるの久し振りだからなぁ)

 

 ここははっきり断ってしまうか。逆ギレとかしなさそうな子達だし。

 

「えーっと、上鳴君だっけ? ごめん僕達今から」

 

「えー、俺の名前覚えてくれたの? スゲー嬉しい!」

 

 下着を買いに行くから付き合えない、と言おうとしたが、上鳴君に遮られた。

 一瞬言葉を止めたボクに、雲下駄君が言葉を投げ掛けてきた。

 

「君達運いいよ! 未来の有名ヒーローの本名知れたんだから」

 

「おま、角消(つのけし)それ言うなよ! 自慢してるみたいでハズいじゃん!」

 

「未来の有名ヒーロー?」

 

 思わず釣られてしまったボクに、文書が呆れた視線を向けてくるのを感じる。

 有名ヒーローというと、個性が強いとか? まさか雄英のヒーロー科合格とかはないだろうけど。

 

「こいつ、こんな見た目で雄英ヒーロー科合格なんだよ!」

 

「「嘘つけ」」

 

「ひどくない?!」

 

 ボクと文書の声が重なって、上鳴君が抗議の声をあげる。普通に会話してるけど、これナンパ成功されてるじゃん。

 とにかく、確認してみる。

 

「えー、上鳴君、マジで?」

 

「マジだって! 学力は今証明できないけど」

 

 言葉が途切れ、上鳴君の身体の周囲で閃光が瞬く、同時に空気が爆ぜる音も。これは……放電?

 

「ほら、これが俺の個性『帯電』。電気を操ったりとかは無理だけど、クソ強ぇよ!」

 

「おぉ……」

 

 いや、おぉとしか言い様がない。

 確かに強個性だけど、ボク……はともかく文書がねぇ。

 でも確かに、この個性なら試験突破できそう。

 ということは。

 

「つまり、上鳴君は4月からボク達とクラスメイトになるかもしれない訳だ」

 

「……へ?」

 

 ポカンとする上鳴君に、ウインクする。

 

「ボクと文書も雄英ヒーロー科合格だよ」

 

「文書は違いますよ?」

 

 ……えっ?

 

「どゆこと……?」

 

 ボクに聞いてくる上鳴君だけど、待ってちょっと待って。

 

「ヒーロー科の試験落ちたの?!」

 

「……あの、文書は最初から経営科受験ですよ?」

 

「ヒーローにならないの?!」

 

「というか、日程違う時点で気付いて下さいよ……」

 

 マジで初耳過ぎる。

 きょとんとした顔もかわいいけど、衝撃が強すぎてどうしたらいいのかわからない。

 

「馬鹿みたいな強個性で頭もいいのに、なんでヒーローにならないんだよ……」

 

 思わずこぼれてしまった言葉。それを聞いて文書は呆れたように溜め息を吐いた。

 

「ヒーローになる気がない人間にそんな事を言っても仕方ないじゃないですか」

 

 ……それもそうか。

 普通に納得したので上鳴君に向き直る。

 

「というわけで、クラスメイトになるかもしれないのはボクだけだね。ボクの名前は遠藤初来、よろしく」

 

「あ、えっと、よろしく……納得すんの早くない?」

 

 ? 変な事言うね上鳴君。もう試験終わってるし、今更過ぎだったよ。

 とりあえず自己紹介は終わったし……うん、買い物に行こうか。

 

「それじゃあ上鳴君、4月にまた会おう」

 

「うんまたね、じゃなくて流れ! 今完全に親睦を深める流れだったっしょ?!」

 

 必死過ぎワロタ。

 まあ言いたい事もわかるが、ボクは今日文書と買い物をするためにアウトレットに来ているのだ。それをほったらかしにしてさっき知り合った人と親睦会とか、流石にどうよ。

 

「ごめんね、でも先約があるからさ。また今度」

 

「あー、わかった! 期待して待ってる! LiNn(リーン)だけ交換しよーよ」

 

「おっけ」

 

 サクッと連絡先を交換して、二人と別れる。普通にナンパ成功されてんじゃん! 連絡先交換済みだし! まぁ、同じ学校だしいいか。

 

 

 

「えぇ……これ、本当に着るの……?」

 

 試着室で、文書が持ってきたブラを手に固まるボク。

 紫のレースの、決めるぜ! みたいな下着なんですが。

 

「もーいーかい? 覗いていいそうですか?」

 

「待って待って待って! 今着けるからちょっと待て!」

 

 慌てて、手早くブラを着ける。

 いいよと告げると、シャッとカーテンが引かれ……文書がその場に膝をついた。なんで?!

 

「まロい……」

 

 思わずといった様子で文書が溢した言葉はまるで意味が分からなかった。麻呂……?

 

「これ程丸くてエロいならば、祀らなければ罰が当たるらしいです」

 

「文書……」

 

 バカなことを言う文書から胸を腕で隠し、身体を横に向ける。が、文書の視線は動かなかった。

 

「あぁ、尻神様がお尻をお振りになられたそうです。ありがたや」

 

「文書っ!」

 

 このっ、ボクがお尻大きい事気にしてるの知ってる癖に……っ!

 カーテンを乱暴に閉め、ぱぱっと服を着て試着室を出る。

 

「文書ぁ……!」

 

「み"っ」

 

 にへらと笑う文書の頬っぺたを両手で摘まむ。あっ柔らかい。

 

「よくも人が気にしてる事を言ってくれたね!」

 

「ち、千切れふ……」

 

 全力で摘まんだら比喩ではなく千切れてしまうので、勿論力加減はしてある。

 ある程度頬っぺたの柔らかさを堪能した後手を離し、会計を済ませる。

 少し赤くなった頬を両手でムニムニしている文書が若干涙目になりながらも、口を開いた。

 

「次は何を買うらしいですか? 鍋とか嵩張るものは後にしたいそうですが」

 

「んー、そうだな……」

 

 服や雑貨、色々買うものはあるけれども。

 

 

 

「ーーまずは、荒縄かな?」

 

 

 

 

 

「結構買ったね」

 

 文書の家の前、夕日に照らされた複数の買い物袋を見下ろす。

 準備が終わるまでは、今日買った物は文書に預かってもらう。服と下着は除いて。

 

「……初来」

 

「ん?」

 

 文書の声に顔を向けると、文書はどこか不安な表情でこちらを見ていた。

 

「文書も、ついていきましょうか?」

 

「大丈夫だよ」

 

 ボクも不安だ。けれど、これはボクが越えるべき壁だ。

 だから、文書の頭をそっと撫でる。

 

「久々の親子喧嘩、腕が鳴るってもんだよ」

 

 夕日が沈んでゆく。空に星が見え始めた。

 ボクが雄英に通うために必要な、最後の試練が始まる。

 

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