ダンジョンで誓いを果たすのは間違っているだろうか   作:匿名

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一週間1~2話ペースのつもりだったのに、予想以上の反響があったためストックを流し始めてしまうガーバーガーバーの作者です( ˘ω˘)スヤァ


3話”帰還”

 

 

 

 その日の夕方、遠征から帰ってきたロキファミリア一同はバベルにて解散することになり、いつもの幹部のメンバーは会議があるとのことで先に纏まって帰ることとなった。

 途中でミノタウロスの大軍を上層へと逃がしてしまうという失態を犯してしまったが、全てのミノタウロスの始末はつけておいたので概ね問題はなかっただろう。

 

「たっく、折角の遠征だったってぇのにあの芋虫ども!」

 

「あーあー、私の大双刃(ウルガ)も壊されちゃったし最悪ー!」

 

「はぁあんた達にねぇ、文句ばっか言ってないであの芋虫をどうするか考えなさいよ」

 

「全くだ」

 

「あの芋虫がいるとなると当面はアイズの持っているデスペレートみたいな不壊属性武器を最低でも幹部分は用意することかな」

 

「だが、そうなると今回の遠征でかかった費用の赤字分と考えるとなかなか時間がかかりそうだな」

 

「そこはまぁ眷属(ファミリア)の皆の協力も必要かな?」

 

「団長!私一杯ダンジョン潜ってモンスターども狩ってきます!!」

 

「私もー!アイズ、今度また一緒に潜ろー!」

 

 自分の相棒が破壊されたことに口を尖らせうっぷんを吐き出しながらアイズをモンスター狩りに誘うアマゾネスの少女ティオナはいつまで経っても返事のこない友人の顔を見ながら不思議そうに尋ねる。

 

「アイズどうかしたの?」

 

「……え。ごめん、ちょっとぼうっとしてて」

 

「はぁ、全くアイズあれほど気を引き締めろといっただろ」

 

「リヴェリアごめん」

 

「まぁまぁ、もうすぐホームなんだしアイズだって遠征で疲れてるんだ許してあげよう」

 

「………………」

 

 フィンのフォローにアイズは何とも言えなくなる。不調の原因は決まっているからだ。

 

「あれーホーム前で何か騒いでるよ?」

 

「ああん、雑魚どもの言い争いなんて知るか」

 

「お、小僧が一人走ってきたぞ」

 

 あの夢を見るといつもこうだ。今回は遠征の帰りだったからよかったが行きに見なくてよかったあの――

 

「あ、アイズ危ない!」

 

 あの……。

 

 白髪の少年の夢。

 

 私にぶつかっていった兎はそのまま雑踏の中に消えていった。

 

「たっく危ねぇな!アイズ!てめぇもぼさっとしてんじゃねぇ!」

 

「アイズー大丈夫?」

 

 仲間たちの心配の声は聞こえない。

 ただアイズの意識にあるのは瞳に焼き付いたのあの白髪だけ。

 

「アイズ……?」

 

 さすがにそんなアイズの様子に違和感を覚えたのか一同の視線が合図に集まると同時にホームの前に笑い声が響いた。

 

「おい、見たかよ!あの兎ちゃんあまりの惨めさに逃げちまったよ!」

 

「おい、流石に今のは言いすぎなんじゃ……」

 

「おいおい、イヴァン良い子ちゃんぶんなって。お前だってあの紹介状ロキ様に持っていくつもりは無かっただろ?」

 

「それはだな」

 

 確かにあの怪しげな不確定の紹介状をロキに持っていくつもりは無かったため、少し言葉に詰まってしまう。

 

「一体ホームの前で何を騒いでいるんだいイヴァン?」

 

「団長!?もうお帰りになったんですか!」

 

「ちょっとイレギュラーが発生してね。それでイヴァン、そちらの人たちは?ファミリアの団員じゃないよね?」

 

 フィンは笑顔でイヴァンに帰還の旨を伝えると、その後ろにいる派閥の冒険者に目を細めた。

 

「おぉこれはロキファミリアの”勇者(ブレイバー)”、それに幹部の方々!なあに俺たちはアポロンファミリアの冒険者です。今はイヴァンと一緒に番犬の真似事をしていただけですよ」

 

「番犬……?」

 

「あぁ、団長。俺が話す」

 

 更に目を細めるフィンに、イヴァンはこれ以上盗賊風の男にしゃべらせまいと代わりに説明し始める。

 

 イヴァンのレベルは現在2、しかし先日ダンジョン内でアクシデントにあい今回の遠征にはサポーター代わりとしても不参加の待機組として地上へと残っていた。そしてフィンたちが遠征に行っている間に傷も癒え、ダンジョンに潜ろうとしたところ生憎いつものPTは遠征に行っており、仕方ないので今日は上層部をソロで回って明日他のPTに入れて貰おうと考えた訳だ。

 

 そうして一人でバベルに行くと驚くことに自分を臨時の助っ人として入れたいと申し出るPTが現れたのだ。それが今イヴァンの後ろにいるメンバーたちである。

 全員イヴァンよりレベルは一つ低かったが、連携のことなど考えればイヴァンの方が足手まといになる可能性がある。しかし彼らは戦士であるイヴァンはタンクとしてやってくれれば良いとのことだったので素直にそのPTに入れさせてもらうことになった。

 連携は何だかんだで上手く行き無事ダンジョン探索を終えることが出来た。

 そしてダンジョンから出てきて解散と言った流れになったところで盗賊風の男がロキファミリアのホームを見てみたいと言い出したのだ。有名ファミリアのホームだから気になるのか他のメンバーもみたいと言い出す。イヴァンは今日一日PTに入れてもらった手前もあり、外から眺めるだけを条件に彼らをここまで連れて来た。

 

 そんなタイミングでホームの前でうろつく挙動不審の少年がいると、新人の門番が話しているのを聞き、後は任せるように引き受けたのだが......。

 

「少年……それってさっき走っていった白髪の彼かい?」

 

「はい、何でもファミリアへの入団希望者だったらしく」

 

「入団希望者ね。それで、君はどんな対応を取ったんだい?」

 

「そ、それは――」

 

 イヴァンはフィンのその細められた眼光に口ごもり黙ってしまう。その反応だけで、イヴァンが恐らく少年を門前払いしいたのだろうと察しため息を吐くフィンとリヴェリア。イヴァンとしても実は勝手に新規加入を受け付けていないとデタラメを言って追い返してしまった手前とても気まずい思いをしている。

 

「イヴァン、ファミリアへの入団を決めるのは団長である僕と主神であるロキだ。君じゃないよ?」

 

「そうだ。それに断るにしろあんな脱兎のごとく逃げ出すまで追い詰めなくてもよかっただろう」

 

「も、申し訳ありません!」

 

 フィンとリヴェリアの叱責に顔を青くしたイヴァンは慌てて頭を下げる。

 

「まったく、頭を下げる相手が違うじゃろうて」

 

「最近はファミリアの箔を気にしすぎた者が多くて困る」

 

「これはあとで他のメンバーも含めてしっかりと話し合いを行わないとだな」

 

「おいおい、ちょっと待ってくだせぇよお三方」

 

 古参の三人からの説教に体を小さくするイヴァンに助けを出したのは以外にも先ほどからイヴァンの背後にいた少々顔立ちの整った盗賊風の男だった。

 

「えっと君は?」

 

「俺はカルドと申します」

 

「そうかカルド君、それで僕たちファミリアんの問題に他派閥の君が何か用かい?」

 

「いやなに、そんなイヴァンを責めてやらんでくださいよ。皆さんだってさっきのガキがやらかしたことを聞けば笑いで仕方ないって言いますよ?あははははっは、思い出しただけで笑いが止まんねぇ!」

 

「さっきの少年がしたことね?イヴァン、先ほどの少年の名前を知っているかい?」

 

「そ、それが名前すら聞かず」

 

「……これは一度団全体の意識改革が必要かな。それでその少年は何をしたんだい?」

 

「なにもかにも、あいつイヴァンが断ったら慌てて鞄の中から紹介状を取り出したんでぇ」

 

「紹介状?」

 

「これです!」

 

 イヴァンは慌てて先ほどの少年が落としていったものを拾い上げてフィンに差し出す。フィンはその封筒を眺め目を細める。

 

「神聖文字か。リヴェリア読めるか?」

 

「あぁ、ちょっと貸してくれ、ぶっ!」

 

 封筒の表紙に目を通したリヴェリアから吹き出すような笑いが漏れたことにロキファミリアの面々は度肝を抜かれたように目を見開く。

 リヴェリアが、吹き出しただと……!

 

「お、やっぱり吹き出しますよね?一体どんな支離滅裂なことが書かれていたんです?」

 

「やっぱり?」

 

「えぇ、その紹介状一体誰が書いたとあのガキ言ったと思います?」

 

 その質問にカルドの後ろにいるイヴァン以外のメンバーは笑いをこぼす。カルドはフィンの答えを聞く前に答えをばらす。

 

「お祖父ちゃん!お祖父ちゃんが書きましたよって!言ったんすよ!」

 

「「あはははっっはっははは」」

 

「お祖父ちゃん?」

 

 流石のその言葉にフィンも動揺を隠すことができない。

 

「そんで、いやまさか名のある神が趣味で子どもたちにお祖父ちゃんって呼ばせてるんじゃないかって、ププ思って、そのお祖父ちゃんの名前を聞いたらわからないって!だははははっはは!」

 

 その言葉には殆どの幹部が何とも言えない顔になる。紹介状の差出人の名前すら知らない少年の非常識さも少しあるからだ。とはいえ、仮にも紹介状だ。もしもこれで他のファミリア、ロキと交流のある神でもしたら、その間に入る亀裂をどうするつもりだったのか。古参の幹部は頭を押さえる。

 一方、心穏やかではないのがアイズだ。

 

(なんだか、嫌だな……)

 

 あの白髪の少年がバカにされていることがどうしてかアイズはたまらず嫌だった。

 

「そしたらあのガキ、兎みたいな赤い目をさらに真っ赤にさせて泣き出しそうになって逃げたんですよ!」

 

 赤い瞳。

 その言葉にアイズの目は見開かれる。

 あの人と同じ赤い目。

 

「全く情けないったらありゃしねぇ!あんな情けない野郎、天下のロキファミリアどころかどこのファミリアだって入れて貰えませんって!」

 

 やめて、これ以上彼と同じ雪のように白い髪と宝石のように輝く赤い瞳を持つ少年をバカにしないで!

 

「あっちゃーアイズ、あの冒険者調子に乗って喋りたい放題だね……アイズ?」

 

 それ以上彼をバカにするなら。

 

 いつの間にかアイズのなかで逃げ去った少年と記憶の中の少年を同一視され、アイズの英雄をバカにする目の前の男に怒りを覚え、腰のレイピアに手をかけようとした。

 

 その時だった。

 

 アイズの横を灰色の狼が通り抜けていった。

 

 

「ぐへっ!?な、なんだよ"凶狼"!」

 

 

 アイズの横を駆け、カルドの胸ぐらを片手でつかみ上げたのは体毛を纏い稲妻の刺青が入った狼人。ベート・ローガだった。

 

 

「雑魚が雑魚を嘲笑ってピーチクピーチクうるせんだよ!」

 

「ヒッ!」

 

「てめぇみたいに自分よりも弱い雑魚を見下してる雑魚を見てると虫唾が走んだよ!」

 

「それあんたが言うかー」

 

 空気を読まないアマゾネスの言葉はまさにこの場の全員の気持ちを代弁していた。

 

「勘違いするんじゃねぇ!俺はこいつみたいに雑魚を見下して優越に浸ったりなんかしない。ただ事実を言ってるだけだ!」

 

 ベートはそのままカルドを他の仲間のもとに投げ飛ばす。カルドの中は勢いよく投げ飛ばされてくるカルドに巻き込まれその場に倒れ込む。

 

「俺からしたらテメーもさっきの雑魚も変わらず雑魚なんだよ!わかったらさっさとここから消えやがれ!」

 

「お、お前ら行くぞ!」

 

 カルドは仲間に起こされると慌ててその場から逃げていく。その姿に少しだけアイズの溜飲が下がった。

 ベートは逃げていく冒険者を尻目に地面に唾を吐きつけると今度はイヴァンのもとに近づいた。鋭い視線で睨まれたイヴァンは体を強張らせる。

 

「お前もロキファミリアなら雑魚だとしてもしっかりしやがれ。あんな屑どもに成り下がんじゃねぇ」

 

「……はい!」

 

 イヴァンは背筋を伸ばして頭を下げる。ベートはつまらなさそうにイヴァンから離れていき、フィンも仕方なさげに目じりを下げる。

 

「確かに野良のPTに参加するのは禁止しないけど、もう少し相手を見極めた方がいいかもね」

 

「はい団長!今後は気を付けます!」

 

「それじゃ今からさっきの少年をさが――」

 

「おいフィン!余計なこと命令してんじゃねぇ!」

 

 探してきてくれ。

 そんなフィンの言葉はベートのイラついた声によって遮られた。

 

「ちょっとアンタ!団長の指示を遮るなんて!!」

 

「うるせーぞバカゾネス!おいフィン、その雑魚を見つけ出してきてどうするつもりだ?まさかファミリア(ここ)に入れるつもりじゃねーだろうな?」

 

「それは彼の人となりを見てからだね」

 

「なら答えは決まってる。不合格だ」

 

 その言葉にアイズはどうしてか酷く動揺する。

 

「どうして……?」

 

「ああん?アイズが他人に興味を持つなんて珍しいじゃねぇか。決まってんだろ!」

 

 ベートはホームの門を乱暴に蹴り開け言う。

 

「あんな雑魚共に馬鹿にされて何も言い返さず逃げるようなクズ、ファミリア(ここ)にはいらねえってことだよ!あんな野郎どもに立ち向かえないような雑魚がダンジョンで生き抜けるわけねえだろ!!」

 

 その言葉に誰も文句は言わない。確かにその言葉も正論であるのかもしれない。ただ少しだけ全員がベートを責めるような視線だけ向けた。そして最初に口を出したのはフィンだった。

 

「ベート、さっきも言ったけどそれを決めるのは団長である僕とロキだ。君じゃない」

 

「そーかよ、ならはっきりさせておくぜ。俺はたとえお前とロキの奴があの雑魚を入れるって言ってもぜってえ認めない。ボコボコにしてでも追い出すからな」

 

「なっ!?」

 

 その過激な発言に数名が驚きを示すがフィンは何も言わない。それを了承の意と言わんばかりにベートは先に館の中へと入っていく。

 

「何なのよあの駄犬!感じ悪いー!」

 

「ベートが感じ悪いのはいつものことでしょ。ほっときなさい」

 

「今日のあいつはずいぶんと荒れとるな」

 

「…………」

 

 ベートの態度に各々が反応を示しながら館の中へと入っていく。アイズもこのモヤモヤとした気持ちをいったん心に沈めて後に続く。

 

(そうだ、あの子が彼のはずがないんだから......)

 

 

 ホームに入っていくアイズたちを見送ったフィンは今もなお中庭で例の紹介状を眺めているリヴェリアに話しかけた。

 

「どうしたんだいリヴェリア。いつもの君なら真っ先にあの冒険者たちを叱責すると思ったんだけど」

 

「ん、あぁ少しこの紹介状に興味がわいてな」

 

「それはまた、リヴェリアが興味を持つなんて」

 

「少なくともロキに読ませるだけの価値はある。そしてその時の反応が見たいものだ」

 

「……読まないのかい?」

 

「我々に教えていい内容なら教えてくれるだろう。教えなかったら……生憎、虎の尾は踏みたくないものだ」

 

「君なら虎にも勝てそうだけどな」

 

「そういう意味ではない」

 

「はは、わかってるよ。まぁどこかほっつき歩いてるロキも僕らが帰ってきたことに気が付いて直ぐにでも駆けつけてくるだろう。そしたら渡せばいい」

 

「あぁ、そうしよう」

 

 そう言葉を交わしてフィン達もホームへと入って行こうとする。

 

 

 

 

 しかしそんな彼彼女たちを呼び止める声が響いた。

 

「大変です!ロキファミリアの皆さん!!」

 

 

 

 

 

 


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