Fate/Diend Order   作:クロウド、

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vsバーサーク・ライダー

「バーサーク・ライダー……!」

「ーーー何者ですか、貴方は?」

「何者……? そうね、私は何者なのかしら?

 聖女たらんと己を戒めていたのに、こちらの世界では壊れた聖女の使いっぱしりなんて。」

「壊れた聖女……。」

 

 あの竜の魔女のことか……。

 

「ええ、彼女のせいで理性が消し飛んで、凶暴化してるのよ。今も割と衝動を抑えるのに必死だし。困ったものね、全く。

 だから、貴方達の期待はありがたいけど、味方になることはできないわ。気を張ってなきゃ、貴方達を後ろから攻撃するサーヴァントを味方にできるわけ無いでしょう?」

「ではどうして、出てきたのです?」

「……監視が役割だったけど。最後に残った理性が、貴方達を試すべきだと囁いている。

 貴方達の前に立ちはだかるのは"竜の魔女"。

 ()()()()()に騎乗する、災厄の結晶。

 私ごときを乗り越えられなければ、彼女が打ち倒せるはずがない。

 倒しなさい。躊躇なく、この胸に刃を突き立てなさい!」

 

 狂気に侵されていても英雄としてのあり方を忘れないのか。

 

「我が真名はマルタ! 狂気に侵されし我がクラス"バーサーク・ライダー"……!!」

『マルタ……? 聖女マルタか!?』

「立花。気をつけ給え、彼女が竜の魔女に呼ばれた所以。それは、彼女がーーー」

「行くわよ、大甲竜タラスク!!」

『グオオオオオオオッ!!!』

 

 彼女の背後に巨大な甲羅を持つ竜が召喚された。

 

「"ドラゴン・ライダー"だからだ。」

 

 聖女マルタ。新約聖書にも登場する、聖女。かの救世主とも関わりがあり、彼女の最も有名な逸話が祈りによって、悪竜を説伏したというもの。

 

 その竜の名はタラスク。リヴァイアサンの子にして数多の勇者を屠った怪物。

 

「来るぞっ!」

 

 タラスクが腕を振るう瞬間マシュが前に出て、攻撃を防ぐがその衝撃は彼女の近くの大地を抉る。

 

「ぐぅ!」

「予備動作なしでこの威力か。だけど、力自慢ならこっちにもいる……!」

 

『KAMENRIDE………KIVA!』

 

 僕はコウモリをモチーフとした、全身の拘束具の鎖が特徴的なライダー、仮面ライダーキバを呼び出す。

 

「さらにこれだ」

 

『FORM RIDE……KIVA DOGGA!』

 

 カードを発動すると、キバの身体を鎖が多いそれが弾け飛ぶと紫色の重厚な鎧が纏われていた。そして、その手には巨大なハンマー、ドッガハンマーが握られていた。

 

『ガアァァァァァァ!!』

「ふん!」

 

 タラスクの腕の攻撃をキバはハンマーの持ち手で受け止める。そして、それをかちあげハンマーで打ち返した。

 

『グガアァァァァ!!!』

 

 パワー勝負ではドッガフォームはタラスクより上だろう。しかし、速さでは本来のキバの特徴である素早さを失ってしまう。

 

 ならば、

 

「ジャンヌ!」

「っ!」

 

 キバの背後に回り込んだタラスクの攻撃をジャンヌが弾き飛ばす。そして、それによってすきができたところにキバが攻撃を叩き込む。

 

 守りに適した彼女とパワー重視のキバ故のコンビネーションだ。それにしても、僕がそれを伝える前に気付くとは、さすが、聖女として戦場に立ち続けただけのことはある……!

 

 僕は、彼女本人を……!

 

『ATTACK RIDE BARRIER!』

 

 直感で危機を察知し、バリアーを放って防御する。瞬間、バリアーに光による衝撃が与えられる。

 

「あっぶね!」

「やるわね、私の祈りを避けるなんて」

 

 なるほど、ジャンヌが防御に適した祈りなら、彼女の祈りは敵を倒すことに適した祈りっわけか。

 

「だったら、祈りをする暇もなく間髪入れずに銃弾を打ち込めばいいだけの話だ」

「その間、私が何もしていないと思う?」

「思ってないさ」

 

「「………………。」」

 

 弾丸を放つのと彼女が駆け出すのはほぼ同時だった。

 

 放たれる銃弾とそれを杖で撃ち落とす、マルタ。流石にあの杖は盗めそうにない。僕に彼女ほどの祈りは持ち合わせていないからな。

 

「なんて考えてる暇はないな……!」

 

 流石というか、新しいカードを装填する暇もない猛攻だ。だが、杖を掲げる暇もない彼女も状況は同じ。となれば、決定打を与えるためにーーー。

 

「ーーーいいでしょう。絶望に抗う正しき人々、ならば私は貴方達の敵として試練を与えるのが役目……!」

 

 この魔力の高まりは、来るか……!

 

「全員、備えろ! 宝具だ!」

 

 彼女の杖がただの祈りなど比べ物にならない輝きを放つ。それに呼応して、タラスクが空に舞い上がり全身から光を放ち、まるで太陽のように輝く。

 

「ーーー愛を知らない哀しき竜。

 ーーーここに。星のように!

 ーーー『愛を知らない哀しき竜よ(タラスク)』!」

 

 彼女の手が下に降ろされるとともにタラスクが僕達に向けて流星のように地上へと降り注ぐ。

 

 まずいな、あれは下手な隕石より威力がある……!

 

「令呪をもって、命じる!『マシュ、宝具を開放して!』」

「ーーー宝具。展開します……! 『仮想宝具疑似登録/人理の礎(ロード・カルデアス)』」

 

 立花が令呪を使用し、マシュに宝具を開放させる。マシュの盾の後ろにいる僕達は無事だが、その範囲の外は文字通りクレーターになりつつあった。

 

「マシュの宝具が押し負けてる。このままじゃ長くは持たない。」

「そんなっ……!」

「ジャンヌ……君は宝具を使えるか?」

「……私の宝具のことを知っているのですか?」

「この状況じゃ、それを使う以外に他はないだろう。それで、使えるのかい?」

「不可能です。弱体化に加え、魔力が圧倒的に足りていません」

 

 やはりか。どうする、時間を止めようにもあれ程の魔力の塊を停止させるのはおそろしい、消費を強いられる。だが、今はこれしかない。あとの戦いに響くだろうが今は彼女達を生かすのが先決。

 

「だったら、冬木でやったように私とジャンヌが仮契約すれば……!」

 

 タラスクの時を止めようと手をかざそうとすると、立花がとんでもない提案をしてきた。

 

「何言ってるんだ! 君の魔力じゃないにしても負担は君に行くんだぞ、二人分の宝具の開放なんて自殺行為だぞ!!」

『海東君の言うとおりだ、無茶にもほどがある!

 他になにか手があるはずだ!』

「ううん、ここではこれが最善だと思うから……。

 それに、後輩(マシュ)が頑張ってるのに先輩(わたし)が頑張らないわけにはいかないでしょ?」

 

「『…………っ!』」

 

 立花の決意の込められた目に気圧され、僕とロマンは何も言えなくなった。この眼を僕はよく知っている、僕が旅をしてきたときに出会ったマスター達の眼だ。

 

『君ってやつは……! わかったよ!

 バックアップは任せろ! 何があっても意味消失は防いで見せる』

「なら、僕が勝負を決めよう。あとのことは構わず、全力でぶつけるんだ」

「ありがとう、大樹さん、ドクター」

 

 令呪をジャンヌに向けて仮契約を結ぼうとする、二人の隣でカードを装填し、キバへと銃口を向ける。

 

『FINALFORM RIDE KI・KI・KI・KIVA!』

 

「痛みは一瞬だ」

 

 キバの背中を撃ち抜くと、彼の身体は変形し巨大な弓『キバアロー』へと変形する。さらに、新たなカードを装填する。

 

「変わった……!」

 

『FINALATTACK RIDE KI・KI・KI・KIVA!』

 

 宙に留まっていたキバアローを握り、グリップを引く。

 

「こっちの準備は出来た。そっちは……!?」

「仮契約は既に終わりました!」

「よし、頼んだぞジャンヌ!」

「はい!」

 

 彼女の旗が神々しい輝きを放つ。

 

「我が旗よ! 我が同胞を守り給え!

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』ーーー!!」

 

 ーーー彼女の旗の光が、タラスクを押し返した。

 

『海東君、今だ、決めてくれっ!』

「彼女達が命がけで作ったチャンス、無駄にはしないさ……!」

 

『キバって、いくぜぇ!』

 

 グリップを離すと同時に先端のヘルズゲートが開放され、魔皇力で生成された紅の矢がタラスクとマルタ目がけて、閃光の如く放たれた。

 

 矢がタラスクに直撃するのと同時に、暁の閃光が夜を照らした。

 

「……………。」

「全く、無茶をするお嬢さんだ」

 

 魔力の負荷が祟ったのか気を失った立花を支え、マリーに預ける。

 

「勝った、のでしょうか?」

『いや、微弱ではあるが彼女の反応が残っている。

 だが、これは……』

 

 光が晴れるとそこには、地に倒れた聖女マルタと彼女と同じく、いや、それ以上にボロボロになったタラスクが彼女の脇に控えていた。

 

「あれ程の魔力を込めた攻撃で無事とは、ね」

「いいや、最後の最後でタラスクが彼女を庇ったんだ」

「タラスク、ごめん。

 私に付き合わせて……本当にごめんね」

『グオォォォ……』

 

 タラスクはまるで気にするなと言いたげに光の粒子となって消失した。

 

「マルタ。貴方はーーー」

「手を抜いた? んなわけ無いでしょ、バカ。

 これでいい、これでいいのよ。

 全く、聖女に虐殺させるんじゃねぇっての」

 

 最後だからか、マルタは聖女らしい喋り方ではなく、少し荒っぽい喋り方となっている。なるほど、これが聖女になる前の彼女か。

 

「……いい、最後に一つだけ教えてあげる。

 "竜の魔女"が操る竜に、貴方達は絶対に勝てない。

 あの竜種を超える方法はただ一つ。

 リヨンに行きなさい。かつてリヨンと呼ばれた都市に。竜を倒すのは、聖女ではない。姫でもない。

 竜を倒すのは、古来から"竜殺し(ドラゴンスレイヤー)"と相場が決まっているわ」

 

"竜殺し"。僕がその二つ名で真っ先に思いつくのはあの戦いに参加していたセイバー、彼に命を与えた英雄。もし、彼女の言う竜殺しが彼ならもしかしたら、本当に……。

 

 話すことが終えたのか彼女は目を閉じ、終わりの時を待つ。

 

「さぁ、早くトドメを刺しなさい。このまま放っておくと、今度こそ貴方達を倒すわよ」

「ああ、そうさせてもらうよ。

 ーーー痛みは一瞬だ」

「ええ、そうしてちょうだい。

 ……次は、もうちょっと真っ当に召喚されたいものね」

 

 僕は右手に握りしめた歪な形の短刀を彼女の胸めがけて振り下ろした。


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