ーーー正義の味方を目指した男を。
ーーーその夢を引き継いだ男を。
ーーー己の王の征道を走った男を。
ーーー月の表と裏で戦った少年と少女を。
ーーー運命に抗う魔法少女達を。
ーーーただ一人の妹のために理想を捨てた男を。
その核にあったのは……一人の英霊への誓いだった。
Side藤丸立花
「なに……これ……」
近くの街で情報収集をしながらリヨンの街に辿り着いた私達を迎えたのはジークフリートではなく、瓦礫の山と無数の徘徊する死体達だった。
「……これは、リビングデッドと言うやつだね。死体を操るとは悪趣味だな」
全身の震えが止まらない私を支えながら、大樹さんはその惨状を見ている。大樹さんは向こうのアーチャーの話をしたあと、それから一向にそのことに関しては口を開こうとしなかった。私達もそれなりの事情があると聞かなかったけど、気になる気持ちはある。
「ロマニ、一応聞くが生体反応は?」
『……残念ながら』
この状況で人が生きているわけがないのはわかっていた。だけど、それでも辛い……。
『だが、サーヴァントの反応がある。二つだ、一つはジークフリートだとすると残りはーーー』
「ーーーわかってるさ。いるんだろう、出てたまえッ! 竜の魔女の手先、バーサーク・サーヴァントッ!!」
大樹さんが瓦礫の一角に叫ぶと、そこから顔半分を仮面のようなもので隠した、巨大な金爪を装備した紳士風の男性が現れた。
「この街をこのようにしたのは貴方ですか?」
「然様。人は私をーーー
「なるほど、オペラ座の怪人のモデルになった反英雄か」
ジャンヌさんが旗を、大樹さんが銃を強く握りしめながら話しかける。二人とも目には怒りの色が見えた。
「ここは僕が受けもとう。君たちは早く竜殺しを探しに行き給え」
大樹さんは、銃口をファントム・ジ・オペラに向けながら、冷静な口調でそう伝える。だけど、その声は無理矢理作っているように聞こえた。
「危険です、相手はバーサーク・サーヴァント。全員で確実に倒すほうがーーー」
「安心したまえ、あの程度の相手に負けるほど僕は弱くはないさ。
それに、少しだけ八つ当たりもかねてるからね」
出会ってからたった数日だけど、大樹さんは今まで見たことのないような目つきでファントムを睨んでいた。それはおそらく、この街の残虐な殺戮によるものだけではなく、行き場のない怒りから来たものだろうというものは皆がなんとなくわかっていた。
大樹さんは左手で懐から鷹のようなマークが書かれた時計のような機械を取り出して上部分についているスイッチを押す。
《サーチホーク! サガシタカッ!タカッ〜!》
すると、それが手のひらで変形し小型の鷹のようなメカに変形して空を飛び上がった。
「それについていけば、ジークフリートのところまで案内してくれるはずだ。」
「わかったわ! 皆さん、行きましょう!!」
「えっ? ちょっと、マリーさん!?」
マリーさんがジャンヌさんと私はの手をとって、メカが飛び立った方向に走り出す。大樹さんのサーヴァントであるマルタさんだけはその場に残ろうとしてたけど、
「君も行ってくれ。君しか竜殺しの容姿を知らないんだからね」
「了解しました、マスター」
大樹さんが負けるなんて思わないけど……。
「大樹さんっ!」
気づいたら私は大樹さんに激励を送っていた。
「勝ってね!!」
「……ああ、任せておきたまえ」
自信満々の表情でそう返してくれた大樹さんを見て安心した私は振り返らずにメカを追った。
Side海東大樹
……勝ってね、か。やれやれ、たった数日で随分信頼されたものだ。
ディエンドライバーでリビングデッドを威嚇射撃をしながら、カードを装填し銃口を向ける。
「変身!」
『KAMEN RIDE DIEND!!』
リビングデッドをライドプレートで吹き飛ばしながら、僕はディエンドに変身した。
しかし、ゾンビ共は直ぐに立ち上がり僕に向かってくる。
「流石は死体。ふっ飛ばしただけじゃ倒れてくれないか……!」
僕が死体の相手をしている間にファントムの周りに死骸で組み上げられた巨大なオルガンが現れる。見ただけでわかるアレは間違いなく、宝具。
「唄え、唄え、我が天使……『
ファントムの真名解放により発動した宝具が耳障りな音楽となって僕の耳に響く。アマデウスと同じタイプの宝具か、長く聞いていると危ないなこれは……!
リビングデッド共の攻撃を交わしながら、ディエンドライバーのポンプを引き、カードホルダーからライダーカードを取り出す。
「音には音で勝負させてもらおう」
僕はライドリーダーにカードを装填する。
『KAMEN RIDE IBUKI!』
「ハッ!」
放たれた弾丸が三つの影となり、それが重なると青い鬼、魔化魍から人を守る仮面ライダー響鬼の世界のライダーの一人仮面ライダー威吹鬼を召喚した。
威吹鬼は腰のバックルに装着された音撃鳴・鳴風を、専用の銃、音撃管・烈風に装着しトランペットのように持って吹き鳴らす。
「音撃射・疾風一閃!」
清めの音でファントムの音を相殺しさらに、邪なる存在であるリビングデッドまで悶苦しむ。
「私の歌が……!」
驚愕し、唖然とするファントムを他所に僕はディエンドのファイナルアタックライドのカードを装填し銃口を定める。
『FINAL ATTACK RIDE ーーー』
「悪いけど、あまり時間をかけてやるつもりはないんだ」
『ーーーDI・DI・DI・DIEND!!』
引き金を引くとカードのトンネルをくぐりそのまま真っ直ぐに放たれたディメンションシュートが宝具ごとファントムに直撃した。
「嗚呼……クリスティーヌ……」
光となってファントムが消滅していくと僕の手元にあったブランクウォッチにアサシンの紋章が刻まれた。
「この力は僕の性には合わないが、後で立花の助けになるかもしれないし。持っておくか……。」
タイムジャッカーの力を持つ僕にはその力をウォッチに封じることができる。しかし、2019年からのアナザーライダーと同じように歴史から存在が消えることはない。但し、消滅のタイミングでないとこのウォッチは生まれない。
だが、僕はこれらのウォッチを二つしか持っていない。一つはあの彼女との約束と誓いのウォッチ。もう一つは彼女を倒すはずだった英雄との戦いの末にブランクウォッチをパクられたあと半ば無理矢理に押し付けられた。
『悪いが君の力を受け取るわけには行かない。踵を撃ち抜かれた君相手に勝っても意味がない。少し前の僕ならともかく、今の僕は本気の君に勝たなければ力を受け取る気にはなれない』
『そいつは俺も同じさ。だから、お前さんにこの力を預けておく、必ず再戦するために縁を結んでおく必要があるからな。だから、受け取っておけ』
あれから自ら英霊相手にライドウォッチを使うのを封じた。それは英雄という宝を貶す行為だとあの戦いを通して理解した。変わりに宝具とか色々と頂いたけども。
だが、ロマンに聞いた話だとカルデアにはフェイトという召喚システムがあるらしい。このウォッチがあればほぼ100%特定召喚できるだろう。
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