俺は、影が薄い。
もう、影が薄いというレベルじゃないぐらい、影が薄い。もはやステルスと言っても過言ではない。
けど、そんな俺の事を、見ている人がいたんだ。

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短編です。元は、とあるチャットグループで唐突に思い付いたネタで、シンシアおばs…お姉さんがヒロイン?となっております。
簡単に言えば、ステルス×アンチステルスで、恋愛物っぽいやつが作れるんじゃね?ということでスキル:アンチステルスを持っているシンシア様をヒロインにしてしまおう!と言うわけで書きました。こういうジャンルの話は書いた事がないので、これで合ってるのか分かりませんが、読んでいただけたらなと思います。
そんな事より連載中の方を早く更新してくれよ!とは言うな。
残酷な描写は念のため。
では、どうぞ。


アンチステルス

俺は影が薄い。

そう言うと、「なんだ、ただ目立たないだけか」「なら、目立つような事でもすればいいんじゃねーの?」などと思うかもしれない。しかし、俺の影の薄さは、そんなレベルでは無いのだ。

俺の真横を通っても、挨拶どころかこちらに気付いた様子すらない。そんなことは当たり前で、以前、真正面から話しかけたのに、驚かれたことすらあった。恐らく、ここにいる人間でも、俺のことを知ってる奴はほとんどいないだろう。

俺は、その特性を活かして、暗殺者をやっている。陛下に仇なす存在を、人知れず狩っているのだ。とはいえ、俺のやっている事など、敵どころか、味方にすらその事を知る者はいない。そう思っていたのだが…

 

 

ーある日の夜、俺はいつも通り廊下を歩いていた。暗殺者という職業上、俺は基本的に夜に活動していることが多い。ーもっとも、この身体に、睡眠などというものは必要ないのだがー廊下を歩く人々は、誰も俺の存在に気付いていない。いっそこのど真ん中で寝転がってやろうかと座った時、声がした。

「このような所で、何を座っているのですか、おまえは」

「し、シンシア様!?」

長い金髪に、青い瞳。ぱっと見、美しい女性に見えるこの人物こそ、悠久の時を生きるテクノアイズの主にして、我らが教皇陛下の叔母、シンシア様である。ー当の本人は、何世紀も生きる上層部の化け物に比べればずっと若いと言っているが…

彼女は、昼間は羊水タンクの中でデータネットワークに接続し、テクノアイズの機械製造を指揮しているらしい。その代わり、夜になると、こうして外に出てくるのだ。

 

そして、どういうわけか彼女には俺のステルス性能が効かない。彼女の周りを飛び回っている球状の物体は、分析強化ユニットらしいのだが、センサーにすら認識されないことがある俺が、その程度のもので発見されるとは思えない。それに、分析強化ということは、実際に分析しているのは彼女なんじゃないか?なら、なおさら俺が見つかる理由が分からない。影の薄さには自信がある。しかし、彼女が俺を見逃したことは無いと言っていい。現に今回も、こうして今まさに誰も気付かないのをいいことに廊下に寝転がろうとしたところを発見されてしまった。

 

「い、いえ、その、靴の紐がほどけてしまっていてですね…」

「その靴、見た限りでは紐など無いように見えるのですが?」

「あっ!い、いえ!その…!」

「まあいいです。おまえが妙な事をするのは、今回に限ったことではないですし」

そうなのだ。

俺はこの驚異的なステルス性能を持っているおかげで、多少変なことをしても気付かれない。ここに初めて来た頃は、この影の薄さを嫌に思っていたのだが、今では、逆にどこまでなら気付かれないのかと、色々と試しているのだ。ーそして、その全てをシンシア様に発見され、呆れられている…

 

「おまえが何をしようと、別に構いませんが、ほどほどにしておいた方が良いですよ」

シンシア様は、「では、作業があるので、これで」と言い残し、自室へと戻ってしまった。

 

 

ー別の日の夜。

俺は、数ヶ月前に見つけたとある部屋で、本を読んでいた。

この部屋は俺の自室では無いのだが、俺のお気に入りだ。週に一度は誰も使用していないこの部屋に来て、読書をして過ごす。この時間が、俺の何よりの安らぎだった。

「やはりここにいたのですね」

ガチャリ、と扉が開く音がして、地面まで届きそうなほど長い金髪が俺の目の前に現れる。俺に話しかけてくる人間など、言うまでもなくシンシア様のみだ。

「どうしてここにいると分かったんですか?」

「ふふっ、わたくしのリアルタイム演算を舐めないでください。おまえの動きなど、すぐに予測出来ます」

そう言って、彼女は自分が持って来たらしい本を読み始める。何故わざわざここに来たのか、彼女の思惑が分からない。

 

「なぜ、ここに来たんですか?」

「ここは静かですからね。わたくしも、作業の合間に息抜きをと思ってこちらに来たまでです」

わざわざ俺のいるタイミングで来た理由が全く分からないが、聞いても答えてはくれないだろうと思い、俺も読書に戻る。すると、シンシア様がこちらに話しかけてきた。

 

「なぜおまえはいつもここに来て本を読むのですか?」

「ここは、俺のお気に入りなんですよ」

「お気に入りというと?」

「この部屋、普通に過ごしてたら気付かないような所にあるじゃないですか。なんか、俺に似てるなって思って」

「似ている、とは?」

「俺も、この部屋のように、存在しているのに、気付かれない。けど、気付かれないまま放置されるのは、可哀想でしょう?ですから俺は、たまにここに来て、使ってあげてるんですよ」

「おまえの存在なんて、すぐに気付けるでしょう?」

「それはシンシア様だけですって。普通の人は、俺の事なんて、目の前にいても気付きませんよ…」

「おまえほど変な人間も、少ないと思うのですがね…少なくともわたくしにとって、おまえを見つける事など、造作もありませんよ」

「この教廷内じゃ、俺以上の変人なんて、いくらでもいると思うんですがね…」

そう呟いた後、会話は完全に無くなり、二人はそれぞれ、このゆったりとした空間で、読書に耽るのだった。

 

 

「任務…ですか…」

「そうだ。この凡人はとある国の重鎮なのだが、どうやら余の教廷の技術を盗み、新たな兵器を作ろうとしているらしい。どうやって技術を手に入れたかは知らんが、恐らく以前チュゼールに送った例の機体が、横流しされていたのだろう。もっともその程度で、教廷の技術を盗めるとは思えんがな。念のためだ。そなたには、その凡人を暗殺してもらいたい」

「分かりました。陛下」

とある日、俺は陛下に呼ばれて、任務を受けていた。ある人物の暗殺。いつもと同じ仕事だ。俺は陛下の話に二つ返事で頷き、すぐさま任務を開始した。

 

真っ赤な飛行機が空を飛ぶ。これは、俺専用に、特殊なステルス装置を搭載したブラッディバードだ。これに乗れば、敵に気付かれる事なく敵地に行ける。

目的地に着いたのは、出発してから2日後だった。俺は近くの林にブラッディバードを隠し、ターゲットの住む屋敷に堂々と潜入した。

空いている窓から侵入し、廊下を歩くが、歩いてくる人は、侵入者が堂々と横をすれ違うのに、全く気付かない。俺の影の薄さは筋金入りだが、任務の時は、更に機械によるステルス装置も起動している。ただでさえ他人に気付かれない俺が、ステルス装置を使用した以上、俺を認識する事は不可能と言っていい。

「これは、今回の任務も簡単だな」

この時は、そう思っていた。

 

このまま、拍子抜けするほど何もなく、俺はターゲットの元へと辿り着いた。後はこのまま、ヤツの息の根を止めるだけ…

「やあ、よく来たね。侵入者くん」

「なっ…!?」

気付かれていた!?あり得ない、俺のステルスは完璧だ。現に、今まですれ違ってきた奴らは、俺の事になど全く気付いていなかった。それに、暗殺のことなんて、分かるはずもない。自分が狙われていることすら分かってないはずだ。

 

「いやぁ、見かけない教廷の機体が飛んでたからね。何をするつもりなのかと思ったら、どうもこちらに来るらしくて、待たせてもらったよ」

ブラッディバードに乗っていた時から気付かれていたのか!?いったいどういうことなんだ…?

「何故、俺のことが分かった?」

「侵入者への対策は、キッチリしてるからね。窓の外を見てごらん」

言われた通りに、窓を見ると、そこには、一機の飛行機が浮遊していた。

「これは…グレイシーガル!?そんな!これはヴァルハラの機体のはず、何故この国に…」

「ああ、これを手に入れるのにはかなり苦労したよ。闇市を探し回り、かなりの額を支払った。僕は、この機体が大好きでね。屋敷には、合計三機のグレイシーガルが飛んでいる」

 

グレイシーガル:ヴァルハラ同盟の戦術偵察機。三組の無人ドローンと、非常に優れた対ステルス性能を誇る機体だ。俺が最も苦手とする機体でもある。どれほど優れたステルス性能を持っていたとしても、この機体の前では裸同然となる。それは俺ですら例外ではない。俺の侵入がバレていたとしても、何もおかしくはない。この機体があるため、俺は、絶対にヴァルハラ同盟の国には行かないと陛下にも言っている。だからこそ、このような所でグレイシーガルが出てくるとは思わなかった。

このままではまずい。ターゲットは目の前にいるが、その前に、グレイシーガルの無人ドローンが、俺を狙い撃つだろう。こちらは隠密特化。教廷騎士のような戦闘力は持ち合わせていない。

 

「なんのつもりかは知らないけど、わざわざ教廷の人間がこんなところに来るとは思えない。悪いけど、ここで死んでもらうよ」

状況は絶望的だ。既にこちらの姿が捕らえられている以上、もはやステルスなど意味はない。おまけにここは敵地。支援などあるはずもない。

だが、やるしかない。ここで引いたとしても、三機のグレイシーガルが俺をどこまでも追跡する。ならば、相討ち覚悟で、ヤツの息の根を止めるべきだ。

俺は、ワザと大仰な仕草をしながら、目の前のターゲットに言い放った。

「これも機械神の決めた定め…我らが教皇陛下のために、その命頂戴する!」

 

 

ー意識はあるー

ーけど、もう動く事は出来ないー

あの後、俺は、どうにかヤツを仕留め、なんとか逃げ延びていた。

しかし、その身体はもうボロボロだ。両脚は、膝から下が無くなり、歩くことも出来ない。腕も似たようなものだ。身体中のあちこちが損傷し、だが、意識だけはハッキリしている。これは機械の身体だ。腕が取れようが足が切り落とされようが、修理してしまえば問題ない。しかし、辺りに修理してくれるような人間がいないのは、明白だった。

 

乗っていたブラッディバードは、グレイシーガル達との戦闘で大破してしまった。S級機体三機を相手にして、A級の機体でよくもまあ頑張ったものだ。墜落した先は、森のど真ん中。ブラッディバードが爆発こそしなかったからいいものの、こんな場所では、見つける事は出来ない。

「いや…そもそも、俺がいない事にすら、教廷の人達は気付いてないだろうな…」

廊下を歩いていても、誰一人として気付かないほどだ。陛下ですら、俺が戻ってこない事に気付きもしないだろう。

「このまま一人で朽ち果てるのか…まぁ、悪くはないかな…」

俺がいなくても、教廷の人達は何も変わらないだろう。元から認識されていない人間がいなくなったとして、一体何が変わろうか。

(そういえば、シンシア様は、少し気にするかもしれないな…)

そう思いながら、俺は、このまま静かに朽ちるのを待つのであった。

 

ーあれから、何日が経っただろうー

食事すらも必要がないこの機械の身体で、俺は、なんとなくぼんやりとしながら過ごしていた。このまま朽ちるのを待つだけといっても、何もする事がない。退屈だった。

せめて暇つぶしになるものでもあればな…そう思っていた時、ふと、音が聞こえた。

 

ジャジャジャジャジャジャジャン

 

木々がなぎ倒されていく。何かが近づいてくる。

(あの、独特な射撃音…まさか…!)

「まったく、こんな所にいたのですか」

そこには、刺々しい見た目をした、黒い機体あった。

(タイラント…!しかも、ただのタイラントじゃなくて、これは…!)

本来、タイラントのボディカラーは、黒と赤である。しかし、このタイラントのカラーは、()()()。それは、テクノアイズの主人が、不眠不休で改造を施した特別機ータイラントⅡーつまり、その主はー

 

「中々帰ってこないので、こちらから迎えに来てしまいましたよ。早く陛下に報告をしてください」

「し、シンシア様!?何故ここに…!?」

シンシア様は、「はぁ…ボロボロじゃないですか、今修理しますから待っててください」と言いながら、俺の身体を直していく。俺は、もう一度質問した。

「シンシア様…どうしてここに来たんですか…?」

「おまえが帰ってこないから、迎えに来たと言ったじゃないですか。それより、ジッとしててください。破損してる箇所を直すので」

「…何で…俺がいないことが分かったんですか…?」

「例の部屋です。あの、おまえが本を読んでいる…」

そう言うと、シンシア様が話し始めた。

 

「おや…?おかしいですね…わたくしの予測だと、ここにいると思ったのですが…」

1週間ほど前、あの部屋に行ったわたくしは、おまえがいないのを見て、陛下に尋ねました。すると、

「ああ…そやつなら、2日前に任務へと出かけたぞ。そろそろ目的地に着いている頃だと思うが…」

なるほど、任務ですか…それならいないのも頷けます。まあ、帰ってきたらあの部屋にいるでしょう。

しかし、その後、おまえは5日経っても現れませんでした。おまえなら、任務などすぐに終わらせ、3日前には帰って来ててもおかしくは無い…帰ってきてこの部屋に来ないのも不自然です。であるなら、考えられる可能性は2つ。任務が終わってないか、なんらかのトラブルで帰還出来なくなったかです。しかし、先程言った通りおまえが任務を5日かけても終わらせれられてないというのは不自然です。ですから、わたくしはなんらかのトラブルがあったと考えました。

 

「そして、わたくしはおまえを探しに来たわけです」

「け、けど、何でそれでトラブルにあったと…?もしかしたら部屋に来てないだけとは…」

「おまえは、1週間に一度はあの部屋にいますからね。1週間以上経ってるのに、現れないということは、トラブルがあったと考えるのが普通でしょう?」

「!? シンシア様…その事を知って…?」

「それに、おまえは妙な行動をするときがありますからね。近ごろそれを見ないなと思っていたのですよ」

俺は驚いていた。誰も俺のことなんて分からないと思っていたのに、シンシア様にはそれを知られていたのだ。

しかし、分からない事がある。

 

「シンシア様、何故俺なんかを助けに来たんですか…?」

「敬虔なる機械神の信徒を、大司祭たるわたくしが助けるのは当然のことでしょう?」

シンシア様は、さも同然といった様子でそう答える。その言葉に、俺は心を打たれた。

(シンシア様は…こんな俺でも、きちんと見てくれる…!)

しかしそれでも、どうしても分からない事がある。こんな森のど真ん中で、しかも影の薄さなら右に出るものはいないこの俺を、どうやって見つけたというのか。

その事を聞くと、シンシア様は、少し得意げにこう言った。

「ふふ…言ったでしょう?わたくしにとって、おまえを見つける事など、造作もありませんよ。と」

俺は、この時のシンシア様の顔を、一生忘れる事はないだろう。

「さて、修理が終わりました。帰りましょう」

 

 

ーその後ー

俺は、あの件以来、シンシア様の顔をまともに見れなくなってしまった。あの顔を見るたびに、俺の顔が熱くなり、思考回路がまともに動かなくなる。…機械の身体にも、こういうものはあるのだろうか…

俺は、シンシア様に出会うと、何も言えなくなり、すぐにその場を去ってしまう。そのせいで、あの件以降、シンシア様とまともに話していない。

 

今日は、週に一度の、あの部屋で本を読む日だ。俺の、一番の安らぎの時。

ー扉を開けると、そこにはシンシア様がいた。

「シンシア様!?どうしてここに…?」

「ふふ…おまえがこの部屋に来るのは、今日だと予測していました。最近のおまえは、わたくしを見るたびに逃げてばかりですからね。ここで待ち伏せていたわけです」

待ち伏せ?なんで?どうやって?完成に予想外のタイミングでシンシア様に話しかけられた俺は、頭の中が完全にパニックになってしまった。

「シンシア様…一体どういう…」

「先日の件は大変でしたね。ですが安心してください。もし今後あのようなことになっても、わたくしがおまえを見つけてあげますから」

「ど、どうして、シンシア様が…?」

まだ頭が混乱している俺は、どうにかそれを聞く。すると、シンシア様は、またもや得意げな顔をして、こう答えた。

 

「おまえを見つける事が出来るのは、わたくしだけですからね」

 

と。




ニエロネイルガンの射撃音って、擬音にするのむずくね?
前書きでも言ったけど、これで良いんですかね…?よく分からない…
色々とツッコミどころがある気もするけどスルーしてください。こういうのに細かい事を言うのは野暮です。
グレイシーガルの下りが結構無茶苦茶な気がするけどそこは気にするな。大して重要でもないし。
グレイシーガルのアンチステルスはゲーム内でも強力です。ヤツに会った時はご注意を。
では、またどこかでお会いしましょう。

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