予測不可能者  遠山キンジ   作:caose

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 アリアとキンジ。
 二人の因縁はここに決定されようとしていた。


決着を・・・。

キンジ達が隠し通路を下ってある部屋に辿り着いた。

 そこは・・・・。

 「教会だ・・・」

 キンジはそう言ってその部屋を見渡していた。

 潜水艦の内部にはこのような聖堂があったのだ。

 大理石の床には見渡す限りラテン語で彫り込まれており、壁際や側廊には

白磁器の壺と花が供えられていた。

 「カトリック教会でもここまでのは見たことがない。」

 防人はそう言って周りを見渡していた。

 「これはカトリック・ネオゴシック様式で流石の『プロテキシオン』も

改修したくなかったようですよ。」

 「イギリスじゃあプロテスタントらしいけど私達はこう言う感じが

良いのよねえ。」

 レスティアとレティシアは全員にそう説明していた。

 その中でも一際輝いているのが・・・とある場所であった。

 「あのステンドグラス、凄いですねえ。」

 一夏はそう言ってそこに行こうとすると・・・手前で止まった。

 「?どうした」

 「敵です!!」

 『!!』

 一夏の言葉を聞いて全員が武器を取り一夏は『黒式・焔天』を即座に展開した。

 「へえ・・・私が身構えてたの気づいてたのね。」

 そう言う声が聞こえ、横からその人間が現れた。

 「この声・・・」

 「まさか・・・ね。」

 キンジとレティシアはそう言いながら武器を構え、攻撃態勢を整えていた。

 

 

 

 

 

 ピンク色の髪

 

 

 

 

 

 鬼の角のような髪留め

 

 

 

 

 小さな体

 

 

 

 

 その手に握られているのは二丁の・・・ガバメント

 それを持つ人間はキンジが知っている中でただ一人。

 

 

 

 

 「ようやく来たのね!キンジ!!」

 

 小さく、自分の言う事を聞かせようとし、協調性すら持たない武偵。

 

 

 

 「アリア・・・」

 

 

 

 神崎・H・アリアであった。

 

 

 

 

 

 「何でここにいるのか知らないけど大体わかるわ。」

 そう言ってアリアはキンジに向けてこう言った。

 「『イ・ウー』を滅ぼす気ね?」

 そう言ったアリアを見てキンジはこう答えた。

 「ああそうだ、俺はここを徹底的に潰しに来た。」

 そう言うとアリアは苦々しい顔でこう言った。

 「そうはさせないわ。」

 「何・・・?」

 キンジはアリアの言葉を聞いて何故だと思った。

 ここは自身の母親を冤罪に陥れた人間の本拠地でもあるにも関わらずにと

思っているとアリアはこう言っていた。

 「あたしは卓越した推理力を誇るホームズ家の中でたった一人だけその能力を持っていなかった。」

 「『欠陥品』、『出来損ない』、『貴族の恥さらし』、

『役割のない只の人』って呼ばれて・・・馬鹿にされて・・・ママ以外の

皆から無視されて・・・私は・・・私は・・・私はいないモノ扱いされていたのよ!!子供の時からずっとずっとずーーーーっと・・・・一人だった。」

 「あたしにとって曾お爺様の存在は心の支えだったわ。」

 「彼は名探偵であると同時に武偵の始祖でもあるのよ。だからあたしは

曾お爺様の半分でも名誉を得ようと・・・認めてもらおうと思って

武偵になった。」

 「そして・・・イギリスで実力を付けて・・・日本に渡って・・・

あんたと会った。」

 「最初からアンタハ凄い奴だったわ。入学時には現役武偵を倒して

Sランクになって多くの人間から支持を集めたわ。」

 「アンタはあたしですら手も足も出なかった理子を退け、デュランダル姉妹を

仲間にして、ブラドを倒して・・・アンタは全てを手に入れていた!!」

 アリアは突然大声を出しながらこう続けた。

 「アンタは私と違って曾お爺様のような推理力を持ってて、色んな奴から信頼を勝ち取り、アサルトの連中ですらアンタを尊敬して、強くて、完璧で何しても

うまくいったわ!!・・・けど、・・・私は違ったわ。」

 「理子の手も足も出ずに負けて、頭に一生消えない傷が出来て、デュランダルの片割れですら後れを取って、ブラドに手を出す事すら出来なかったこの惨めな

気持ちをアンタは理解できるの!??」

 「日本であたしはアンタを見ながらどれだけ悔しくて!辛くて!!あんたの

お零れ貰いながらママの裁判の証拠を集めていたかアンタには分かるの!!??」

 「アンタの周りには必ず仲間がいたけどあたしにはそんな人たちいなくて

悲しかったあたしの気持ちが分かるの!!??」

 「アンタはあたしにとって『こうなりたい』と願っていたあたし

その物だったのよーーーー!!!」

 「アリア・・・。」

 キンジはアリアの独白を聞いてこう思っていた。

 「羨望・・・か。」

 キンジはそう確信した。

 キンジの身の回りにある全てが、実力が、アリアにとって最も欲しかった

ものだからだ。

 すると肩で息をしていたアリアが息を整えてこう言った。

 「其れも今日迄よ。あたしにとって曾お爺様は神様なのよ、その曾お爺様が何て言ってくれたか分かる?」

 「・・・『後継者』って。」

 「其れってつまり!」

 「恐らくな。」

 一夏と防人がアリアの言葉を聞いて確信した。

 シャーロックホームズはアリアを『イ・ウー』の後継者にさせるつもり

なのだと。

 「そうよ!曾お爺様は私を認めて下さった!!ここにある『イ・ウー』を

譲り受けて下さるって、そうすればママを釈放させるだけの証拠が手に入って

ママを自由にさせれるわ!!そしてママと一緒にここで楽しく暮らせれるのよ!」

 アハハハッハとアリアは笑いながら回っていた。

 今のアリアは有頂天だ。

 シャーロックホームズから認めてもらい、証拠も集まって母親を

釈放させることが出来ると・・・思いこんでしまっていたのだ。

 正にピエロを見ているかのような光景であった。

 その先に何があるのかを知らずに踊っているかのようであった。

 するとキンジはアリアに向けてこう言った。

 「アリア、お前は大馬鹿野郎だな。」

 「ハア?」

 アリアはキンジの言葉を聞いて目を鋭くしたがキンジはアリアに向けて

こう続けた。

 「お前だけじゃない、シャーロックホームズも大馬鹿野郎だよ。」

 「アンタ曾お爺様の侮辱を!!」

 「ああ、もっと言ってやるさ。あいつは長生きしすぎてボケて犯罪者にまで

堕ちて行った武偵の恥さらしだ!!」

 「アンタいい加減に!!」

 「お前は只玩具を貰って喜んでいる只の我儘な餓鬼だ、神崎・H・アリア!!」

 「・・・れ」

 「武偵の恥さらしをこのまま放置させるわけにはいかねえ!!」

 「・・・まれ」

 「憧れに認めて貰うのは嬉しいと思うのは同意するがそれは・・・

自分の力だけじゃなくて多くの人間の支えがあって初めて成り立つんだ!!」

 「・・・黙れ」

 「手前には武偵としての本当の意味をまるっきり理解してない!!」

 「黙れ!!」

 「そんなバカな娘を育てた母親も結構の大馬鹿の売女」

 「黙れ!!!!!!!」

 ドきゅーーーーん!!

 キンジが言い終える前にアリアが大声を上げて天井目掛けて銃撃した。

 そしてアリアはキンジを見てこう言った。

 「そう、私だけじゃなく曾お爺様も・・・ママも侮辱するなら・・・

アンタを許さない!!」

 そう言ってアリアはキンジに向けて銃口を向けるとキンジはこう返した。

 「ハア!!自分一人だけで何も出来やしねえおちびさんが一丁前に銃を

構えてんじゃねえ!!!」

 そう言ってキンジは自身の銃と脇差を構えた。

 するとアリアはキンジに向けてこう言った。

 「初めて会った時以来ね、アンタに銃を向けるの。」

 そう言うアリアに対してキンジはこう返した。

 「ハ、違ェよ!今の手前は武偵から犯罪者になり下がった屑!そして俺はそんなお前をぶっ飛ばす武偵!!何もかもが変わったこの状況があの入学式と

同じだなんて思いあがるなこのクソガキが!!!」

 「もう許さないわ!!風穴開けてやるわ!!」

 「その台詞はそっくりそのまま爆弾付きで返すぜ!!」

 そう言いながらお互いトリガーに指を添え・・・・。

 「キンジーーーー!!!」

 「アリアーーーー!!!」

 お互いの慟哭と同時に銃声が鳴った。

 ・・・これがお互いの運命を決定づけるとはまだ誰も知らなかった。




 どちらが勝つかで未来が・・・・決まる。

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