「正義か・・・。」
キンジの問いに半蔵は繰り返しで答えた。
「爺さんは俺の家についてどれくらい知ってるんだ?」
「それとなりじゃな。君のご先祖がかの有名な『遠山 金四郎』で
ある事ぐらいなら。」
そう、キンジの先祖は皆も良く知っているあの桜吹雪で名を馳せた
『遠山 金四郎』であるのだ。
(諸説色々あるが中には女の刺青をしていたと言う説もある『必殺仕事人』情報)
「そう。俺の御先祖様は正義の味方だった。だから父さんや兄さんも代々から
人を守る事を目的に活動していたんだ。」
「でも・・・そうやったって意味はあったのかなって思っちまうんだ。」
キンジはそう言いながらも言葉を詰まらせつつ続きを言った。
「結局誰かを守ったって後ろ指さされ、罵詈雑言を吐かれ、死体に石を
投げつけられる。そして残された人間は肩身の狭い一生を送る。」
「なら俺達は何のために戦ってたんだ!傷つきながらも這って立ち上がって守っても何の意味も無い!!どうした良いんだよ・・・。」
キンジは自分の心の中にある本音を語った。
父は任務で殉職するも何も語られず、兄は多くの人を救っても感謝どころか
侮辱の言葉で兄を形成させられ御先祖が語っている正義の味方とは程遠い理想を
裏切られ現実と地獄を目の当たりにしたキンジに対してどう言おうかと考えていた。
キンジの覆われている闇を消し去るほどの光を当てる方法を考えている中隣で
聞いていた飛鳥がキンジに近づいて・・・こうした。
「遠山君。」
そのまま彼女はキンジを抱きしめた。
胸を顔に押し付けるように・・・。
「なっ!飛鳥!!」
キンジはその行動に驚き離れようとするも飛鳥は頑として離れなかった。
「遠山君・・・今は私達だけだからさ・・・もう楽にして良いんだよ?」
「・・・え?」
「私達仲間じゃない。仲間が大変な時には支え合って乗り越えようよ。
一人でさ・・・抱え込まないでよ・・・。」
キンジはその声を聞き、そして・・・これまで溜め込んでいた自分の悲しみが・・・溢れ出した。
「・・・俺・・・兄さん・・・憧れて・・・それ・・・なのに・・・何で・・・
ナンデ・・・。」
「もう我慢しなくていいんだよ遠山君。私達がいるから。」
「もう・・・泣いていいんだよ。」
そして飛鳥の言葉でキンジの心が・・・吐き出された。
「ウワアアアアアアアア!!アアアアアアアア!!兄さん!!ニイサン!!」
キンジは飛鳥を抱きしめ乍ら泣き続けた。
人の目も憚らず、子供のように泣き叫んだ。
そして飛鳥はキンジの頭を撫でながらこう言った。
「大丈夫だよ遠山君。私達が守るからさ。遠山君もみんなと一緒に守ろう。」
「アアアアアアアアア!!」
そしてキンジは自分を曝け出した。