今から数分前。
「・・・・思いだした。」
カナメは虚ろな表情で目覚めた。
然し次の瞬間彼女は・・・
「アアア・・・私は・・・ワタシハ・・・ナンてことを。」
泣き出したのだ。
うつ伏せになり両手は顔を隠すように泣いていた。
自分の本当の名前。
自分の与えられた名前。
自分の片割れとの記憶。
そして・・・自分の罪を。
記憶を思い出したと同時に嘗ての自分が見て見ぬ振りをしていた記憶も蘇って
しまったのだ。
そして次に思いだしたのは・・・。
「・・・キンジさん。」
キンジに関わる記憶であった。
仕事で何日か家を空けるときは飛鳥達が代わる代わる勉強や遊び相手になって
くれたり買い物をしていたこと。
仕事が無い時は休みになれば色んな所に連れて行ってくれたこと。
あの家で過ごした楽しい記憶が次々と浮かんできた。
然しそれも終わりなのだとカナメは思ってしまった。
「もう・・・戻れない・・・こんな罪人を・・・キンジさんは・・・出来ない!」
カナメは途切れ途切れとはいえ、もう戻れないと思ってしまったのだ。
そしてカナメは目の前にある服を見た。
それは嘗て自分が嘗て使っていた服。
それを取った瞬間カナメは手を強く握りしめてこう言った。
「もう戻れないのでしたら・・・自分の手で。」
そう言ってカナメは服を脱ぎ捨ててそれを着た。
もう・・・後戻りできないと覚悟を決めるかのように。
「何でここにいるんだ!!カナメ!!」
キンジはカナメを見てそう言った。
初めてであった服を着て。
「(あの服は確か家に置いて・・・ここまで計算尽くって事か!!)」
キンジは銀髪の女性に目を向けてそう思っていると彼女の顔は・・・
「ああああ、やっぱりそれでこそ姉さんよ。」
恍惚の表情を浮かべていた。
銀髪の女性はそう言いながらカナメに近寄っていくとカナメは銀髪の女性の頭を
撫でながらこう言った。
「よく頑張りましたね、レティシア。・・・今まで傍にいられなくて御免なさい。」
「ううん、良いの。姉さんが生きてるって分かってたから・・・今いてくれるだけで良いの!」
そう言いながら女性、レティシアがカナメを抱きしめ乍らそう言うとカナメは
キンジを見てこう言った。
「キン・・・遠山キンジさん、貴方にも感謝を。あの時傷ついた私を介抱し、
名を与えてくれたことに心からお礼を。」
カナメはキンジを見て何かを言いかけた後に社会儀礼としての言葉を出した。
「・・・何・・・言ってんだよ・・・俺達にそんな他人・・・行儀・・・」
キンジは言葉を詰まらせながらそう言うとこう続けた。
「なあ・・・どうしたんだよ・・・何でこんな・・・・」
「何か言ってくれよ!!カナメ!!!」
キンジは大声を上げ、振り絞るかのようにそう言うとカナメは一呼吸おいて
こう言った。
「私の名前は『カナメ』ではありません。」
「・・・へ」
「私の名前は・・・『30代目 ジャンヌダルク』。オルレアンの聖女
『ジャンヌダルク』の子孫です。」
焼かれし記憶、それ遠きし昔の笑顔の貴方。