予測不可能者  遠山キンジ   作:caose

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 最早後戻りはできないのか?


戻れない。

キィインーー

 ジャンクションのHPCの部屋にて剣戟の音が聞こえる。

 片方は足にまで届くほどの金髪を結わえた女性が槍を振り、突いていた。

 ガキィイン!!

 もう片方は黒髪の青年が脇差片手にその攻撃を凌いでいた。

 キンジと30代目ジャンヌダルクが戦いあっていた。

 「はあ!!」

 「くう!」

 30代目ジャンヌダルクの攻撃にキンジは防ぎながら戦っていた。

 「如何したのですか遠山キンジ!?それが貴方の全力ですか!!」

 30代目ジャンヌダルクは弾かれた槍を振り下ろしてそう言った。

 「俺はお前とは戦いたくない!!」

 キンジはそれを避けながらそう言うと30代目ジャンヌダルクはこう返した。

 「ふざけないでください!私達は敵同士!!ここでどちらかが倒れる以外に終わりはないのです!!」

 30代目ジャンヌダルクはそう言いながら槍を振り回し、キンジを遠ざけた。

 「さあ立ちなさい遠山キンジ!何時までも避けきれると思ったら大間違い

ですよ!!」

 30代目ジャンヌダルクはキンジに向かって大声でそう言った。

 「・・・カナメ!」

 キンジは振り絞るかのようにそう言うと・・・頬に何かが伝っていくのが分かった。

 それを拭うとそれは・・・温かい水であった。

 何でと思いキンジは30代目ジャンヌダルクを見て・・・ある確信を持った。

 そしてキンジは脇差を・・・捨てた。

 「何してるんです!?それで勝てると思ってるんですか!??」

 30代目ジャンヌダルクはキンジの行動を見てそう言うがキンジはそれを

聞くことなく・・・歩き始めた。

 「来、来ないでください!」

 30代目ジャンヌダルクはキンジにそう言いながら少しだが・・・下がって行った。

 「姉さん?」

 それを見たレティシアが加勢に出ようとした瞬間、30代目ジャンヌダルクが

こう言った。

 「来ては行けませんレティシア!これは私の戦いです!!」

 「・・・姉さん」

 レティシアはそれを聞いて足を止めるがキンジは尚も30代目ジャンヌダルク目掛けて歩き続けた。

 「来ないで・・・・コナイデーーーー!!!」

 30代目ジャンヌダルクはそう言いながら槍をキンジ目掛けて突くとキンジは・・・

それを楽に躱した。

 「!!」

 30代目ジャンヌダルクはあまりの事にへ?と思っているとキンジは

30代目ジャンヌダルクを見てこう言った。

 「お前がどこの誰だろうが関係ないし、俺もお前がどんな奴だったなんて

分からねえけど一つだけ言えることがある!!」

 そしてキンジは30代目ジャンヌダルクの目と鼻の先にまで近づいてこう言った。

 「・・・何で泣いてんだよお前。」

 「・・・へ?」

 30代目ジャンヌダルクはそれを聞いて手甲越しに自分を見ると・・・泣いている自分がそこに映っていた。

 「・・・何で・・・どうして・・・私何で・・・泣いて」

 30代目ジャンヌダルクは何でと思っている中目を拭おうとすると・・・

キンジが30代目ジャンヌダルクの顔を両手で固定してこう言った。

 「本当はお前だってこんなことしたくなかったんだろ!本当はこう思ってんじゃ

ねえのか!?」

 「『タスケテ』って」

 「!!!」

 キンジの言葉に30代目ジャンヌダルクは目を開くとキンジはこう続けた。

 「俺はお前のそんな泣き顔見たくねえ!」

 笑っている彼女の顔。

 「俺はいつも通りのお前でいて欲しい!!」

 家にいるときに見せてくれる幾つもの表情。

 「俺は!!!・・・心の底からお前を守りたいんだよ。」

 キンジは振り搾るようにそう言った。

 「私は・・・ワタシハ」

 30代目ジャンヌダルクはキンジの言葉を聞いて心が揺らぎ始めた。

 自分は幾つもの罪を背負った悪女。

 全てを断ち切ってここから去ろうと決意したのに・・・

 「(戻りたい・・・私だって出来る事なら・・・でも!)」

 30代目ジャンヌダルクはキンジを突き飛ばすと剣を引き抜いた。

 「貴方が見ているのは『カナメ』の私!今いるのは・・・30代目ジャンヌダルク!

私達は敵同士になり、そして・・・もう戻れない。」

 30代目ジャンヌダルクは泣きながらこう続けた。

 「もう戻れないんです!過去は変えられない!!そして私は貴方を倒す!!

そして私は・・・ワタシハーーーー!!!」

 そういいながら30代目ジャンヌダルクは剣をキンジに向こうとするとキンジは

それを・・・真っ向から受けた。

 グサッ。

 「・・・え・・・」

 30代目ジャンヌダルクはその行動に何故と思った。

 槍の時のように何故よけなかったのかと思っていると・・・

キンジは30代目ジャンヌダルクの頭を撫でながらこう言った。

 「確かに・・・過去は・・・変えられないけど・・・未来なら・・・未だ・・・

間に合うだろう?」

 「俺さ・・・兄さんが・・・死んだ・・・時・・・お前が・・・・

いてくれたから・・・強がれ・・・・たんだぜ。」

 「カナメ・・・いや・・・ジャンヌ・・・帰ろうぜ・・・・俺達の・・・い・・・え・・・・に・・・。」

 キンジはそう言いながら・・・30代目ジャンヌダルクに倒れ込んだ。

 そして彼女は・・・剣から伝ってくるキンジの血の温かさが来たと同時に・・・

30代目ジャンヌダルクは・・・。

 「イヤ・・・・イヤ・・・・」

 彼女は・・・

 「イヤアアアアアアアアア!!キンジサアアアアアン!!!」

 ・・・『カナメ』に戻った。




 人は失って・・・初めて自分を見つける。

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