「ここ最近ですが武偵に対するパッシングが根強いですね。」
「そりゃそうでしょ。豪華客船沈没なんてへましたせいでクルージング会社は
大損ですからね。そもそも武偵なんてヤクザまがいな連中」
突如音が消えた。
それもそのはず先程のはテレビの声であったのだ。
キンジはそのテレビを消すとある物を見た。
それは・・・白い布に包まれた兄「遠山 金一」の遺骨である。
否・・・骨などない。
何せ海から遺体すら浮かんでこなかったからだ。
遠山 金一は乗客を全員逃がすために脱出できなかったらしいが訴訟を恐れた
クルージング会社はこう声明を出した。
「今回の事件は未然に防げなかった武偵『遠山 金一』の職務怠慢から起こった
事件である。」
何という無茶苦茶な声明であるが武偵を否定していた議員やマスメディア、金一によって助けられた一部の乗客によって金一のことを『無能な武偵』、『税金取り』等とネットや週刊誌で大々的に報じられていた。
キンジはそのショックで部屋に引きこもっていた。
外には未だメディアが待機しており外出すら出来ないのだ。
そんなキンジの自室の前でコンコンとノックする音が聞こえた。
「キンジさん。ご飯・・・置いてますから食べて下さいね。」
ここ最近でやっと日常会話が喋れるくらいになったカナメはキンジの事が心配で
ここにいるのだ。
扉の前を見ると昨日作っておいたご飯も手つかずの状態であったのを見て悲しい
表情になった後カナメはキンジにこう言った。
「キンジさん。ここから出てくるの、待ってますから。」
そしてそろそろと去って行った。
それでもキンジは答えなかった。
心が・・・凍り付いてしまったからだ。
そして武偵校では・・・。
「何が『無能な武偵』だーー!!ふざけやがって!!」
武偵校にある生徒会室にて焔が持っていた週刊誌を破り捨て投げてそう言った。
ここにはキンジを心配するメンバーが集まっていたのだ。(白雪は諸事情でいない)
「手前らには出来るのかって話だろ!!」
「そう怒るな、焔よ。儂も腸煮えくり返ってすぐさま殴り飛ばしたいわい。」
焔にそう言いながらも夜桜は掌を握りつぶさんとするようにそう静かに怒っていた。
「ネットでも金一さんに対しての暴言が結構あって順次出てる。」
紫はPCを操作してそう言った。
「そもそもこれって間違いにも程があるっす!キンジのお兄さんは皆を守るために残ったのにこれは酷過ぎっス!!」
華毘は今回の報道に怒り心頭で見ていた。
「それよりも遠山君・・・大丈夫かな?」
その中で飛鳥はキンジを心配していた。
「今はカナメさんがいらっしゃいますが彼女によるとここ最近食事をまともに摂ってないようです。」
雪泉はキンジの近況を伝えた後全員暗い表情になった。
「何とかしなけりゃあなあ・・・。」
焔がそう言うも全員何も作戦がないのだ。
どうするかと考えている中コンコンと扉をたたく音が聞こえた。
「あ、どうぞ。」
雪泉がそう言って扉が開くとそこにいたのは・・・。
「何やらキンジ君関連で考えているのなら。」
「手が無いわけではない。」
「じっちゃん!!」
「おじい様!」
彼らこそキンジを助けるキーパーソンになる存在。
「服部 半蔵」
「光 黒影」がそこに立っていた。
そして作戦が発動する。