神降ろしをしたら、施しの英雄が降りてきた。   作:黒い小説家

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氷の妖精と大妖精

 突然だが、カルナ達の目の前にあった広大な森林が焼け野原になってしまった。

 

 幸い、周りを見渡しても人里のような集落は見当たらず、近くに紅い洋館が建っていたが無事のようだ。

 

 燃え盛る森林は数キロ以上にも広がり、それに爆心地であろう場所には地面や岩石が融解して溶岩のようなものが発生していた。

 

 魔理沙を始め、その場にいた妖精二匹はあまりの破壊力に唖然とした表情を浮かべ、地獄絵図と化した森林を前に声も出せずにいた。

 

 このとき、この世の地獄を映し出すような光景を目の前にしても、カルナは平然としており表情を崩すことは一切なかった。

 それも無理はない。地形が変わる程の小競り合いなど生前では日常茶飯事の出来事だったからだ。

 

 何故、こんな災害のような出来事が起きてしまったのか、その原因は少し前に時間が遡る。

 

 

 

 

《~数十分前~》

 

 

 

 

 

 射命丸に取材をされてから数十分過ぎた頃、カルナ達は霧が立ち込める湖の近くまでやってきた。

 

 湖の近くには妖気が漂う不気味で大きな紅い洋館があり、その洋館の中から複数の強い気配を感じる。

 

 遠くからでもはっきりわかるほどの強者の気配をカルナは見過ごすことはなく、迷うことなく魔理沙にあの紅い洋館に関して訪ねてみることにした。

 

「あの紅い洋館はなんだ? 中から強い気配を感じるが、多くの強者でも揃っているのか?」

 

「あれは紅魔館だ。言われてみれば、あの館の住人達はみんな強者だな。今度一緒に行ってみるか?」

 

「時間に余裕があれば同行させてもらう。それより今は目的を果たすことが優先だ」

 

 二人が湖の上を渡っていると、突然カルナの背後に向かって冷気を纏う無数の槍状の物が飛んできた。

 

 背後を狙ったのは、恐らく不意討ちのつもりだろう。しかし、カルナは自分に向かって飛んでくる槍状の物体には既に気付いており、ある程度の距離に近づいてくるまで待っていた。

 

 槍状の物体が射程圏内に入った瞬間、カルナは後ろを振り向くと同時に、手持ちである金色の槍を扱って、自分に向かって飛んできた槍状の物体を全て薙ぎ払った。

 

……ガシャーンッ!!

 

 薙ぎ払われた槍状の物体は原型を留めることなく、音と共に細かい破片となって砕け散る。まるでガラスのような美しい散り様だった。

 

 それと同時に、近くにいた魔理沙もカルナに降りかかった攻撃にようやく気付くことになった。

 

「なんだ、なんだ!?」

 

「これは氷の槍か?」

 

 カルナを襲った槍状の正体、それは今の季節では存在する筈のない、先が鋭く尖った無数の氷柱だった。

 

 もしも氷柱で狙われたのがオレではなく、並みの人間が狙われていたら間違いなく致命傷を負い、下手すれば死んでいただろう。

 

「隠れていないで、その姿を現したらどうだ?」

 

 氷の槍を薙ぎ払ってからしばらくすると、カルナ達の前に一人の少女が堂々とした態度で姿を現した。

 

 髪は水色で、ふわふわのウェーヴがかかったセミショートヘアーに青い瞳。背中には氷の結晶に似た大きな羽を六枚持ち、頭の後ろに青い大きなリボンを付けている。 服装は白のシャツの上から青いワンピースを着用し、首元には赤いリボンが巻かれている。

 

 どうやらこの少女がオレに氷の槍を放ったそうだな、幼き身でありながら勇敢な心の持ち主だ。

 

「どうだ思い知ったか、あたいの縄張りに入ってくるからこうなるのよ」

 

「冷気を纏いし者よ、この氷の槍はお前が仕掛けたものか?」

 

「そうよ、もしかしてあたいの氷槍に恐れ入ったのかしら?」

 

「確かに常人ならば簡単に命を奪うことできるだろう。鋭く尖った氷を飛び道具にするとは実に見事だ」

 

 遠距離から狙える上に殺傷能力も十分ある、灼熱の場でなければ実践でも使える見事な攻撃法だ。

 

 思い知らせるつもりが、カルナに自分の攻撃を称賛されて気に食わなかったのだろう。氷の少女は怒ったような表情でカルナに理不尽なほど当たり散らした。

 

「なによ! あたいの攻撃を防いだぐらいで、ちょっとは驚いた顔しなさいよ、それともあんたバカなの」

 

「お前がそう思うのならば、それで構わない。それと用がないのならばオレ達は先を急ぎたい、立ち去っても構わぬか?」

 

 理不尽に罵られても決して怒ることはなく、紳士的な態度で接してくるカルナ、しかしその態度が少女にとって逆効果なってしまうとは。

 

「ムキー、あんたの態度超ムカつくー!! こうなったらあたいの真の恐ろしさを知らしめてやらないといけないわね、覚悟しな……」

 

「……チルノちゃーん」

 

 このチルノとはこのおてんば少女の名前なのか、遠くから違う少女のような声が聞こえてくると同時に、こちらに急いでやってきた。

 

「もうチルノちゃん、知らない人を攻撃するのはダメだよ」

 

 チルノと言う名の少女の前に、今度は礼儀正しそうな少女が現れた。

 

 髪の色は緑、左側頭部をサイドテールにまとめて黄色いリボンをつけている、服は白のシャツに青いワンピースを着用しており首からは黄色いネクタイを付けて、背中には虫とも鳥ともつかない縁のついた一対の羽が生えている。

 

 おてんば過ぎるチルノとは違って、現れたこの少女には礼儀と常識が多少あるらしい。

 

「だって大ちゃん、こいつはあたいの縄張りに入ったんだよ、それに色々と超ムカつくし」

 

「だからって危害を加えるのは良くないよ」

 

 大ちゃんと呼ばれる少女にチルノが説教を食らっているのを見計らい、魔理沙がコソコソとカルナに話し掛けてきた。

 

「大丈夫かカルナ? 怪我とかないよな?」

 

「問題ない、それより魔理沙よ、あの者達は一体何だ?」

 

「あれは氷の妖精チルノと大妖精、見た通りイタズラ好きな妖精だよ。」

 

 オレはともかく、イタズラであの氷の槍を人間に飛ばしたら一溜まりもないと思うのだが。まぁ、それに関してはどうでも良いとしよう。

 

 取り敢えず今はここから脱出して目的地を目指すことを優先しようと魔理沙は考えていた。

 

「長居は無用だ、さっさと行こうぜ」

 

「承知した。」

 

 チルノにバレないうちに早く退散しようとする魔理沙とカルナ、しかし世の中そんなにうまくはいかなかった。

 

 この場から去ろうとするカルナにふと気づいたチルノは、逃がさないと言わんばかりに大声で呼び止めようとする。

 

「そこの白い頭、ちょっと待ちなさい!!」

 

「オレに何か用か?」

 

「あたいと勝負しなさい、どちらがさいきょーか白黒はっきりつけてやる」

 

 この妖精はオレの力量を計れないうえに、自分の力量を理解していないのか? しかし、それこそがこの妖精が勇猛果敢である理由なのだろう。

 

 それに、例え相手の実力が自分よりも遥かに劣っていようとも、オレがやるべき事は一つ。

 

「良いだろう、相手になろう。」

 

「おい待てよカルナ、こんな奴を相手にする事はないだろ」

 

「何故止める? 幼き少女の身でありながら勇敢に決闘を申込んでいるのだぞ。ならばオレはその期待に応えなければならない」

 

 魔理沙を押し退けてチルノの前に立ちはだかるカルナ、その姿は自分と同等の強敵を相手にするような姿勢と心構えだった。

 

「我が名はカルナ、太陽神スーリヤの子。我が槍を恐れぬのなら掛かってこい」

 

「あたいはチルノ、さいきょーの妖精」

 

「良い名だ。では勇敢なるお前に敬意を表して、オレはこの一撃を捧げるとしよう」

 

「……えっ?」

 

 そう言うとカルナは突然神々しい炎をその身に纏い、さらには炎で形成された一本の槍を片手に握り締め、闘志の気迫を出した。

 

 どうやらカルナは初っぱなから勝負を決めに来たようだ。最強と名乗るチルノに最高の敬意を表すために。

 

「勇敢な妖精チルノよ、我が炎を喰らうが良い」

 

 カルナは容赦も躊躇いもなく、炎で形作った槍をチルノに目掛けて放り投げた。

 

「……えっ!? ちょっとちょっと!! なんなのよ、それはぁー!!?」

 

 このとき、チルノは慌てながらも槍を避けることが出来たので無事だったが、炎の槍はチルノの背後にあった森林へ飛んでいく。

 

 そして、その直後には爆音と共に広大な森林が焼き払われ、爆心地に関しては地面や岩石が融解して溶岩が出来るほどの危険地帯になっていた。

 

 そして今の地獄絵図に至る。

 

 ちなみに本人達は知らないが、今のカルナの攻撃は最弱の部類に入ってる。

 

 どんな相手でも挑まれれば応えるとはいえ、この世界を破壊してしまっては元も子もないからな。

 

 恐怖のあまりに腰を抜かしたり気を失いはしなかったものの、氷の妖精なだけあって熱に弱いのか、さっきの爆風の熱をまともに食らったことでチルノの身体は限界を迎えており、動くどころか声も出すことすら叶わなかった。

 

「今の一撃を見事避けたな、だが次は外さん」

 

「「ちょっと待ったー!!!!」」

 

 色んな危機を感じたのだろう。これ以上カルナを闘わせてはいけないと言わんばかりに、魔理沙と大妖精は必死にカルナを止めようとする。

 

 このとき魔理沙は思った。カルナの力はデタラメ過ぎる。この先どんな事があってもカルナを闘わせては絶対にいけないと。

 

 もし小競り合いでもされたら、それは幻想郷の危機に繋がることを意味する。それほどカルナの力に脅威と恐怖を感じていた。

 

「頼むカルナ、頼むからもう止めてくれ! これ以上はやばいから、闘ったらいけないぜ」

 

「チルノちゃんは私が説得するので、どうかもう争いは止めてください。」

 

 必死な表情で決闘を止めてくる二人を前に、カルナは身に纏っていた神々しい炎を消し去ると、闘志も完全に消え去った。どうやら闘うことを止めてくれるそうだ。

 

「わかった、では決闘は止めるとしよう。」

 

 そのカルナの言葉を聞いて魔理沙と大妖精はホッと胸を撫で下ろした。

 

 そして決闘が終わったと分かると、大妖精はほとんど力尽きていたチルノを背負った。

 この行動を見れば、大妖精が友人をどれだけ大切に思っていることがよくわかる。

 

「大妖精と言ったか、オレ達は先に向かっても良いのだな?」

 

「はい、どうぞ行ってください」

 

「すまんな魔理沙、先を急ごう。」

 

「まったくだぜ、厄介事はもう沢山だ。」

 

 その言葉とは裏腹に、魔理沙は少し楽しそうな表情を浮かべていた。この短き旅も満更ではなさそうだな。

 

 大妖精に見送られながら霧の湖をあとにして、二人は目的地へ向かって再び移動を始めた。




今回のカルナさんはちょっと大人げないところがありましたが、どんな相手でも挑まれれば対等に応えるそうなのであんな風になってしまいました。
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