神降ろしをしたら、施しの英雄が降りてきた。   作:黒い小説家

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 そして投稿遅れてしまい申し訳ございません。


二柱の神と現人神

 霧の湖にてチルノとの決闘を終えて、カルナ達は順調に守矢神社へと向かっていた。

 

 徐々に強まり近づいてくる神の気配、恐らく守矢神社までそう遠くは無いだろう。

 

「守矢神社とやらは、もうすぐか魔理沙?」

 

「…………」

 

 しかし、カルナに話し掛けられても魔理沙は返事どころか頷きもしなかった。

 

 それも無理はない。カルナとチルノの決闘が終えてから、魔理沙はあることが気掛かりで浮かない顔をしていたのだから。

 

 その気掛かりな原因は、チルノとの決闘でカルナが放った規格外の一撃。恐ろしく広大な森林を焼け野原へと変えたあの破壊力、天狗達や妖怪の賢者が見逃す訳はないだろう。

 

 今回は森林が焼け野原になるだけで済んだが、天狗や妖怪が動くことになれば、今度は妖怪や人間の犠牲者が出るかもしれない。

 

「おい魔理沙、どうかしたか?」

 

「えっ!? いや、何でもないぜ」

 

 慌てた表情で何かを誤魔化しているような魔理沙の態度、少なくとも何かオレに隠し事をしていることは確かだろう。

 

「お前から何か迷いの気を感じるのだが、本当に何でも無いのか?」

 

 カルナに隠し事は通用しないと思ったのだろう。改めて恐れ入ったと言わんばかりに、魔理沙は感服したような表情を浮かべながら正直に答える。

 

「やれやれ、お見通しという訳か」

 

「オレに少しでも不満があるのなら気にせず言ってくれ、そうすれば多少は楽になるだろう」

 

「それじゃあよ、約束してくれカルナ、闘う事自体は別に構わない。ただ殺める事と幻想郷を破壊することだけは止めてくれないか?」

 

「承知した。それでお前の気が晴れるのならば約束をしよう」

 

 乞いや頼みであれば、大小関係なく尊重に受け入れよう。況してや霊夢の友人であり、この世界と生物を大切に思った上での乞いなら尚更だ。

 

「本当だな!? それじゃあ約束だぜ」

 

 魔理沙はまるで無邪気な子どものように嬉しそうな表情を浮かべていた。本当にこの世界を愛していることが良くわかる。

 

 そんな事を話している間に、山の頂上に建てられている神社が見えてきた。

 

「着いたぜカルナ、あれが守矢神社だ」

 

 

 

 

 

《~守矢神社~》

 

 

 

 

 

 本来ならこれを上るのだろう。山の頂上まで続いている長く高い石段を登りきった先には巨大な鳥居がある。

 

 境内は派手な宴会場に成りそうなほどに広く、水汲み場や箒置き場も完備されていた。

 

 御柱のような物体が建った神社は全体的に赤い屋根で、賽銭箱の前には手すりと階段がある。その両脇には緑に満ちた木々や草花が造形され、頂上に相応しい明るい造りとなっていた。

 

 そして境内の真ん中には竹箒を両手に持って慎ましく掃除をしていた一人の少女がいた。

 

 二人はその少女の付近へと舞い降りると、魔理沙が少女に向かって話し掛けた。

 

「よう早苗、遊びにきてやったぜ」

 

 それに対して、魔理沙に話し掛けられた少女もこちらに気付くと、こちらに歩いて近づいてくる。

 

 少女は胸の位置ほどまである緑のロングヘアーで、髪の左側を一房髪留めでまとめ、前に垂らしている。頭には蛙と白 蛇の髪飾りが付いてある。霊夢と同じような巫女装束を着ているが。色は少し異なり、巫女装束は霊夢の赤の部分を青にした感じだ。

 

「魔理沙さん、珍しいですね」

 

 しかし、早苗と言う少女の視界に飛び込んできたのは、黄金の鎧を身に纏い、この世の者とは思えない神々しい存在を放つカルナの姿だった。

 

「あの魔理沙さん、隣の神々しい殿方は誰ですか?」

 

「こいつはカルナ、霊夢の誤った神降ろしで呼ばれた神様だよ」

 

 するとカルナの事で何か知っていたのか、竹箒を投げ捨て、少女は好機の眼差しを向けながら、飛び付くようにカルナの側に接近してきた。

 

「カルナって、もしかして施しの英雄カルナさんですか!?」

 

「オレの事を知っているのか?」

 

「はい! インド叙事詩マハーバーラタに登場する不死身の英雄で、その聖人のような精神性から施しの英雄と呼ばれた人物、私大ファンなんですよ!!」

 

 これは驚いたな。まさかオレの生涯が画かれている叙事詩が存在していたとは思いもしなかった。

 

 それにしても人間の身でありながら神気を帯びているこの少女、霊夢と同じような身なりをしているが気配はまったくの別物。

 

 神気を持つ半神半人なら、オレを含めて複数存在した。しかし純粋な人間の身でありながら神気を持っている者なんて見たことも聞いたこともない。

 

「申し遅れました。私はこの守矢神社で巫女を生業としている東風谷早苗と言います」

 

「早苗か、ところで人であるお前から神の気配を感じるが、これは一体どうゆうことなんだ?」

 

「私は現人神と言う神で、簡単に言えば生きた人間が神格化した存在ですね。」

 

「そんな神が現世にはいるのか」

 

 大ファンのカルナに会えて嬉しそうに早苗が話している最中、魔理沙は恐る恐る早苗に話しかける。

 

「なぁ早苗、私達は聞きたい事があって、ここに来たんだ」

 

「そうなんですか? それなら立ち話もなんですから中でお話しをしましょう。私もカルナさんに聞きたいことが沢山あるので」

 

 この上なく嬉しそうな表情を浮かべている早苗に招かれる二人、知り合いだった魔理沙は戸惑いを隠せなかった。

 

 こうして二人は早苗に守矢神社の中を案内されることになった。

 

 

《~移動中~》

 

 

 二人は前を歩く早苗に導かれて内部へと入り、着いた先は民家の和室のような部屋だった。

 

 特別変わったところは無い、少し大きめの畳で、五人くらいは住めるほどの広さがある。早苗一人だけだと思ったが部屋の中央にあるちゃぶ台には、既に先客が腰掛けていた。

 

 そこにいたのは神気を帯びた大人の女性と幼い少女の二人だった。

 

「おや早苗、普通の魔法使いはともかく、その隣にいる優男の神はいったい誰だい?」

 

 早苗に話し掛けてきたのは変わった身なりをした大人の女性。

 

 紫の掛かった青髪にサイドが左右に広がった非常にボリュームのあるセミロング。

 冠のようにした注連縄を頭に付けており、右側には、赤い楓と銀杏の葉の飾りが付いている。

 瞳は茶色に近い赤眼。そして背中には複数の紙垂を取り付けた大きな注連縄を輪にしたものを装着している。

 上着は赤色の半袖。袖口は金属の留め具で留めており、赤い上着の下には白色のゆったりした長袖の服を着ている。

 小さな注連縄が首元、白い長袖、上着の袖、腰回り、足首など、とあちこちに巻かれている。

 スカートは、臙脂色のロングスカート。裾は赤色に分かれており、梅の花のような模様が描かれている。足は、裸足に草履。

 見た目は大人な女性だ。

 

 もう一人は金髪のショートボブ。青と白を基調とした壺装束と呼ばれる女性の外出時の格好に白のニーソックスをしており、市女笠に目玉が二つ付いた特殊な帽子を被っている。片方と比べたら随分とシンプルな格好だ。

 見た目は完全に幼い少女。

 

「我が名はカルナ、お二方を神とお見受けするが」

 

「へぇ~、私らが神だと見ただけわかるのかい。大した洞察眼を持っているようだね

 申し遅れたが、私の名前は八坂神奈子、この守矢神社の祭神」

 

「私は洩矢諏訪子、八百万の神だよ」

 

 大人の女性の方が八坂神奈子、幼い少女の方が洩矢諏訪子と言う神様らしい。それに、この神社には二柱の神と巫女であり現人神の早苗が祀られているようだ。

 

「ところでカルナと言ったね、私達はあんたの気配には少し覚えがあるんだよ。

 単刀直入に言うが、さっき霧の湖の近くにあった森林を焼け野原に変えたのはあんたの仕業だろう?」

 

「仰る通り、あれはオレがやったことだ。 必要とあれば如何なる罰でも何なりと受けよう」

 

「いや、その件だが、潔いお前の精神性に免じて多目に見てやろう。幸い犠牲者は出てなければ、森林の火災も今頃は天狗達が鎮火させているだろうし」

 

「有難い慈悲、この上無く感謝する。」

 

 このとき魔理沙も安心していた。森林を焼け野原と化させたカルナが重い罪で裁かれるのではないかと心配していたからだ。

 

「ところでカルナ、あんたの用件はいったい何だい? ただ神である私達に会いに来た訳ではないんだろう?」

 

「あぁ、オレが元居た場所、神々の世界に帰還する方法を知りたい」

 

 知っていると思ってカルナは聞いてみたが、それに対して神奈子からの返答はすぐには出ず、悩んだような表情を浮かべていた。

 

「神々の世界に帰還する方法ねぇ」

 

「存在は知ってるけど、帰る方法なんて聞いたことも考えた事もないよ」

 

「早苗、あんた何か知らないかい?」

 

「これはカルナさんご両親のお話ですので、参考にならないと思うのですが。

 カルナさんの母クンティーが若い頃、神を呼び出す真言(マントラ)の力を試しに使って、太陽神スーリヤを呼び出したことがあるんですよ。

 ですが、その真言(マントラ)の本当の力は神を呼び出し、その子を産む事でした。

 実際にスーリヤが現れると、クンティーは怖くなってスーリヤに戻るように願います。

 しかし、太陽神スーリヤは戻る前に真言(マントラ)を実現する義務を負っていました。クンティーは仕方なく、子が父と同じ黄金の鎧を身に着けるという条件で子を産むことを約束し、太陽神スーリヤの子カルナさんが誕生しました。」

 

 まさか、見知らぬ世界でオレの誕生した話が聞けるとは、世の中なにがあるのか本当にわからないものだな。

 

 自分の誕生した話を聞いて関心しているカルナに対し、隣で聞いていた魔理沙は何を思ったのか、顔を真っ赤にして動揺を隠しきれない状態になっていた。

 

「つっ、つまり霊夢とカルナは……、そっ、その、まさか?」

 

「これはあくまでも叙事詩での御話です。それに、聞いた話だと霊夢さんは誤った神降ろしの儀式でカルナさんを呼んだことですので、可能性は限り無く低いと思います」

 

「なっ、なんだよ。それを聞いて安心したぜ」

 

 そよ早苗の言葉を聞くと、ホッと胸を撫で下ろして安心する魔理沙、いったい何を考えていたのやら。

 

 しかし困ったなものだ。肝心な神の世界に帰る方法が見つからなかったとは、ただ色々な情報や話が聞けたので決して無駄ではなかったが。

 

「では改めて訪ねるが、神々の世界に帰還する方法を知ってそうな者はいないのか?」

 

「そうだねぇ、もしかしたらスキマ妖怪の八雲紫が知ってる可能性が高いかもしれないよ。」

 

「その者は何処にいる?」

 

「それは私等にもわからない。何せ神出鬼没の妖怪だからさ。ただ、あんたはあの騒ぎを起こしたから、近い内に会えるかもしれないかもね」

 

「ならば、その時が来るまで待つだけだ。 重要な情報を頂き感謝する。」

 

 そう言うとカルナは歩いて和室のような部屋から出ていこうとした。

 

 その最中、もっとカルナに居座って欲しかったのだろう。慌てたような表情を浮かべた早苗がカルナを必死に呼び止めようとする。

 

「ちょっと待ってくださいよカルナさん、もう帰っちゃうのですか? もう少しゆっくりしていってくださいよ」

 

「その純粋な心遣い感謝する。 しかし、オレは戻らなければいけない、オレに居場所をくれた者の所にな」

 

 振り返もしなければ、その場に留まることなく、カルナは前を歩み続ける。

 

「ちょっと待てよカルナ、私を置いていくな!」

 

 部屋から立ち去ったカルナを追い掛けて、魔理沙も部屋から出ていった。

 

 二人が部屋から出ていったその後、神奈子は肩の力を抜くと、疲れたような表情を浮かべながら、その場で思う存分リラックスした。

 

「あのカルナ、とんでもなく高潔な精神を持った神だったわね。話してるこっちが疲れたわ」

 

「ただあいつ物凄く強いよ、私達二人でも敵うかどうかわからない」

 

「そんなことわかってるわよ。それにしても残念だったね早苗、恋しい神と長く一緒にいれなくて」

 

「そんなとはないです神奈子様、また会えると思うので」

 

 これが最後ではなく、また会える日は訪れるだろう。そう早苗は思っていた。

 

 だが、その言葉とは裏腹に、そのとき浮かべていた早苗の表情は少し悲しそうだった。

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