神降ろしをしたら、施しの英雄が降りてきた。 作:黒い小説家
守矢神社に行っていたカルナと魔理沙が博霊神社に帰還したあとのこと。
夕日が沈みきる前に魔理沙は自分の家に帰り、カルナは霊夢のところに居座らせてもらった。
その夜は霊夢の作った手料理を頂き、風呂に入ったあと、特に何も無く、カルナと霊夢は別々の部屋で眠りについた。
そして翌日のこと。
朝日が昇る前にカルナは目を覚ますと、すぐに身体を起こして布団から出てきた。
そして寝床にしていた布団をキチンと畳み、カルナは外に出ると、太陽神スーリヤに対して祈りを捧げる。
これは生前カルナが行っていた日課のひとつ、父であり太陽神であるスーリヤに対して毎日祈りを捧げること。
しかし改めて考えてみれば、今のカルナはスーリヤと一体化して神格化しており、云わば自分で自分に祈りを捧げていることになる。
そんなことを本人は気付かずに、カルナは一時間ほど祈りを捧げたあと、そのまま部屋に戻り、今度は霊夢が起きてくるまで部屋の真ん中で瞑想を始める。
そして瞑想を始めてから一時間後、カルナのいる部屋に向かって来る大きな足音が聞こえてきた。
「ちょっとカルナッ!!」
何の前触れもなく、鬼のような形相を浮かべた霊夢がカルナのいる部屋に怒鳴り込んできた。
それに対してカルナは動揺するどころか寧ろ落ち着いており、平然とした表情を浮かべている。
「血相を変えてどうした霊夢?」
「どうしたじゃないわよ! これを見なさい!」
霊夢に突き出されたのは文字が沢山書かれた紙の束、それも文章の中には大きく『文々。新聞』と書かれていた。
「ほう、これが射命丸が言っていた新聞なのか」
記事をよく見てみると、そこには昨日カルナが焼け野原と化させた場所が写真で載せられていた。
炎で緑生い茂る森林は跡形もなく消え、残っているのは焦げ炭となった樹木と荒れ果てた地表だけだった。
新聞を読んだ霊夢の話だと、神奈子が言っていた通り、火の手が回る前に天狗達が森林を焼き尽くす炎を鎮火したらしく、幸いにも犠牲者はいなかったようだ。
「あんた随分と派手に暴れたようね、いったい誰を相手にしたらこんな風になるのよ?」
「チルノと言う妖精と決闘したのだ。」
「あの馬鹿妖精、神相手になに喧嘩吹っ掛けてるのよ?」
元々馬鹿な奴だったが、まさか神に喧嘩を売るほど馬鹿だったとは流石の霊夢も思っていなかったのだろう。
カルナの話を聞くと、流石の霊夢も頭を抱えて思わず呆れ果てた表情を浮かべてしまう。
「良いかしらカルナ、誰かを殺めたり幻想郷を破壊するような事があれば、私は神のあんたでも退治しないといけないことなるの、だからもう二度としないでちょうだい」
「あぁ、承知している。魔理沙との約束でもあるからな。」
例え自分の身に危険が訪れようとも、オレは二人との約束を必ず守る。それがオレの信念であり、オレを受け入れてくれた二人に対しての恩義でもある。
嘘偽りの無いカルナの清々しい言葉と態度に、思わず霊夢も言葉を失ってしまったのだろう。呆れて果てた表情を浮かべ、口から溜め息が漏れてしまう。
「それにしてもカルナ、この一件で貴方は有名人よ、悪い意味でだけど。」
「それで構わん。 皆がそう思ってるなら、俺はそれで良い。」
「あんたは良くても、私からしてみれば大問題なの。少しは周りのことを考えてみなさいよ」
霊夢に指摘されてショックを受けたのか、カルナは落ち込んだような表情を浮かべ、しょんぼりとなってしまう。
カルナが霊夢に説教を食らっている最中、一体何の前触れなのか、突然吹いた暴風と共に射命丸が博麗神社へとやってきた。
「どうも皆さんおはようございます。 新聞は見て頂けましたか?」
「朝っぱらから来るなんて珍しいわね射命丸。新聞ならこの通り今見てるわよ、カルナを叱りつけながらだけど」
「あややや、早朝から神様に説教とは流石は博霊の巫女、相変わらず恐れを知りませんね。」
「ところで用件は何なの? 少なくとも私やカルナの様子をただ見に来た訳じゃないんでしょ?」
「そうなんですよ、実はカルナさん宛の手紙をお渡しに来たんですよね」
そう言って射命丸はポケットの中から紅い封筒を取り出すと、「どうぞ~」と笑顔を浮かべながらカルナに差し出した。
それに対してカルナは紅い封筒を受けとると、すぐさま封を切って中身に入っていた手紙を見た。
しかし、母国の字ではなく異国の字だからか、カルナは手紙の文字がまったく読めなかったので、やむを得ず射命丸に手紙の内容を見せて問い掛けた。
「この紙には何と書いてあるんだ?」
「ふむふむ、これは紅魔館への招待状のようなものですね」
「コウマカンだと?」
確か守矢神社に向かう際に見た、霧が立ち込む湖の近くに立っていた紅い館のことか。
魔理沙から少し聞いた話だと、あの紅い館には沢山の強者がいると言っていたな。
「はい、どこかで紅い大きな館を見ませんでしたか? それが紅魔館なのですが」
「あぁ見た」
「その館の主がカルナさんと是非お会いしたいと書いてありますね」
「そうか、ならばその主の期待に答えるために、オレは今すぐ紅い館に行かなければならないな」
そう言うとカルナはその場から立ち上がり、紅魔館へ向かう準備をすぐに整える。
「行っても構わないな霊夢?」
「別に止めるつもりはないわよ、ただし大きな問題を起こさないことね」
「承知した。霊夢に迷惑を掛けないよう行動することを約束しよう」
そう霊夢に告げたあとカルナは部屋を出て行く。
そしてカルナは境内へ足を運んだあと、背中から炎を翼のように広げつつ足裏からジェットの如く炎を噴射させて空を飛んだ。
紅魔館へと向かうカルナ、果たしてこの先に待ち受けているものは立ち塞がる困難か、それとも出会いや喜びに満ちた幸福か。