もう1人のイレギュラーは反逆の覇王   作:伊達 翼

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第十一話『ハウリア族との合流』

「断る」

 

そんな端的な言葉を言い放ったハジメ。

 

…………………

 

一拍の静寂の後、ハジメはこれ以上話すことはないな、という感じでシュタルフに魔力を通し始める。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと!? 何故です!? 今の流れはどう考えても『なんて可哀想なんだ。安心しろ! 俺が何とかしてやる!』とか言って爽やかに微笑むとこですよ!? 流石の私もコロッといっちゃうとこですよ!? なに、いきなり美少女との出会いをフイにしてるんですか!?」

 

そんなシアの叫びを無視してハジメがシュタルフを動かそうとすると…

 

「あっ、ちょっと待ってください! 逃がしませんよぉ~!」

 

シアがハジメの足にしがみついて発進を妨害する。

 

「親友。参考までにどうして断るのか聞いてもいいかい?」

 

 

シアの必死っぷりを見て笑う忍がハジメに尋ねる。

 

「そんなんメリットがないからに決まってるだろ」

 

「ほぉ?」

 

「帝国から追われてるわ、実質樹海から追放されてるわ、こいつは厄介事のタネにしかならん。つまり、今のとこ俺にとってはデメリットしかない。仮に峡谷を抜けたとしても、"その後は?"ってことになる」

 

「まぁ、普通に考えるなら今度は北の山脈まで連れてってとか言われそうだな」

 

「うぐっ…」

 

痛いことを突かれたのかシアがどもる。

 

「俺らにも旅の目的がある。それを寄り道ついでに解決する程、暇でもないしな」

 

「そ、そんな……でも、守ってくれるって見えましたのに!」

 

ハジメはさっきから感じてた疑問を口にする。

 

「さっきから妙な言い回ししてるが、そりゃどういう意味だ? お前の固有魔法と関係あるのか?」

 

それに対してシアは…

 

「あ、はい。"未来視"と言いまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるのか? みたいな……あと、危険が迫っている時は勝手に見えたりもします。まぁ、見えた未来が絶対とは限りませんが…」

 

そこまで言ってシアはハッとする。

 

「そ、そうです! 私、役に立ちますよ!? "未来視"があれば危険もわかりますし! 少し前に見たんです! 貴方達が私達を助けてくれる姿が! 実際、貴方達とちゃんと出会って助けられました!」

 

その説明を聞き、顔を見合わせる3人。

そして、代表してハジメと忍がシアに尋ねる。

 

「そんな凄い固有魔法持っててなんでバレてんだよ。危険を察知出来るんならフェアベルゲンの連中からにもバレなかったんじゃねぇのか?」

 

「だね。どうしてその時に限って魔法が発動しなかったんだい?」

 

それを言われ、シアは壊れた機械みたいにギギギと顔を逸らしながら答える。

 

「えっと…じ、自分で使った後はしばらく使えなくて…」

 

「バレた時、既に使ってた後か…」

 

「ちなみに何に使ったんだい?」

 

「その…友人の恋路の行方が気になって…」

 

「ただの出歯亀じゃねぇか!」

 

「うぅ~…猛省しておりますぅ~」

 

「やっぱダメだわ。なにがダメって、こいつ自体がダメだ。この残念ウサギが!」

 

もう呆れて物も言えなくなったのか、問答無用で発進しようとした時…

 

「……ハジメ、連れて行こう」

 

「ユエ?」

 

まさかのユエからの援護である。

 

「!? 最初から貴女のこと良い人だって思ってました! ペッタンコなんて言ってごめんな、あふんっ!?」

 

最後まで言い終わる前にユエから痛烈なビンタを貰う一言余計なシアだった。

 

「……樹海の案内に丁度いい」

 

「あ~」

 

言われてハジメもそのことに気付く。

 

そもそも樹海は亜人族以外では必ず迷うと言われているため、兎人族の案内があれば心強い。

一応、樹海を迷わず進むための対策も練ってはいるが、若干乱暴なやり方なので確実とは言えない。

最悪、現地の亜人族を捕虜にして道を聞き出すというのも考えていたハジメは、そこで考えを改める。

せっかく自ら進んで案内してくれる亜人族がいるのだから、それはそれで正直有難い。

だが、シア達は色々厄介事を抱えているので、そこがネックだと考えが逡巡する。

 

「……大丈夫、私達ならどんな障害も捩じ伏せられる」

 

それは地上に舞い戻る時、魔法陣の前で言ったハジメの言葉だ。

 

この世界に対して遠慮はしないという意志の表れ…。

兎人族を協力を得れば断然、樹海の探索が楽になる。

それを帝国兵だの亜人族だのと揉める可能性があるから避けようなどとは、"舌の根の乾かぬ内"と自分で言ってるようなものだった。

もちろん、好き好んで厄介事に頭を突っ込む気はないが、ベストな道があるのにそこから目を逸らし、ましてや敵の存在を理由に逃げるなどあり得ない。

奈落の底で培った価値観…それは、己の道を阻む敵は"殺してでも"排除し、己の道を往くことだ。

 

「……あと、シノブもシノブで人が悪い」

 

「はて、何のことやら?」

 

そう言ってジト目で忍を見るユエだが、忍は知らんぷりである。

 

「……ハジメの行くべき道をわかってて傍観してた」

 

「そりゃあ、親友ですから。とは言え、口添えくらいはしようと思ったよ? その前にユエさんが今の親友の根幹を思い出させたようだけど」

 

そこまで言われちゃ仕方ない、とばかりに忍は言葉を漏らす。

 

「……ちなみどんなこと言うつもりだった?」

 

「ん~? こんなとこで逃げ腰になるなんて親友らしくないぞ、とかかな?」

 

「……むぅ~」

 

「ハッハッハッ。まぁ、ユエさんよりも付き合いが長いからな。昔の親友も嫌いじゃないが、今の親友も嫌いじゃないからさ」

 

伊達に親友と名乗っているわけではない、と言いたげな表情で忍はユエに言う。

 

「……昔のハジメ…」

 

「奈落に落ちる前の…温厚で心根の強い、優しい奴だった頃のことさ」

 

懐かしむように忍が呟いた後…

 

「(ちなみに一人称は"僕"だったぞ?)」

 

「(……!? 聞いてみたかった…)」

 

ユエにだけ伝わるように念話でそんな情報を流出させてユエがガックリさせたとか。

 

「おい、忍。勝手に人の過去を暴露してんじゃねぇよ」

 

「ハッハッハッ、気にしない気にしない。で、結局どうするよ?」

 

「決まってる。おい、残念ウサギ。喜べ、お前達を樹海の案内に雇わせてもらう。報酬はお前等の命だ」

 

助けてやる代わりに樹海を案内しろと言いたいのだろうが、言葉遣いが既にヤの人だ。

 

「あ、ありがとうございます! よがっだよぉ~、ほんどうによがっだよぉ~」

 

それを聞いてまたも泣き出すシア。

 

「あ、あの! では、改めてよろしくお願いします! えっと、皆さんのことは何と呼べば…」

 

そういや、まだ名乗ってなかったと思い当たり…

 

「俺はハジメ。南雲 ハジメだ」

 

「……ユエ」

 

「紅神 忍ってもんだ。ハジメと同じく忍の方が名前で、紅神がファミリーネームだ」

 

そんな風に名乗った一行。

 

「ハジメさんに、ユエちゃんに、シノブさんですね」

 

何度か反芻して名前を覚えたシアだったが…

 

「……さんを付けろ。残念ウサギ」

 

「ふぇ!?」

 

ユエが絶滅したはずの吸血鬼族で遥か年上だと簡単に説明するとシアが土下座する勢いで謝っていた。

ユエらしからぬ命令口調にハジメと忍は怪訝な表情を見せたが、ユエの視線の先を追ってそれを察したが口には出さなかった。

誰だって後が怖いもの…。

 

とにもかくにもシアを後ろに座らせ、ユエがハジメの前に座ることでやっと出発した。

ちなみに何故、ハジメの後ろかと言えば…単に忍が先行したからである。

シアの案内がなくてもシアで兎人族の匂いを覚えた忍が先行してハウリアの生き残りを保護しておくことにしたからだ。

ただでさえ急を要する案件なのですぐに動ける忍が先行することにしたのだ。

 

シアを乗せたハジメは道中でシアにハジメやユエ、忍の存在やら使ってる武器や乗り物がアーティファクトみたいなものだと簡潔に説明しながら進んでいた。

 

「えっと…つまり、お三方とも魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると…?」

 

「あぁ、そうなるな」

 

「……ん」

 

それを聞いてハジメの肩に顔を埋めたシアは、泣きべそをかいていた。

 

「……いきなりなんだよ? 騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり…情緒不安定なやつだな」

 

「……手遅れ?」

 

「手遅れってなんですか!? 手遅れって! 私は至って正常です! ただ……一人じゃなかったんだなって思ったら、なんだか嬉しくて…」

 

「「……………………」」

 

そんなシアの言葉に押し黙ってしまうハジメとユエ。

 

魔物と同じ性質や能力を有するということは、それだけこの世界では異端なことであり、孤独を感じられずにはいられないだろう。

 

そんな中、シアは…同じ先祖返りのユエと、ユエ達とは過程は異なるが魔力操作を習得したハジメと忍に出会った。

それがどれだけ幸運なことか…。

 

逆にユエは300年前…そういった同じ先祖返りをした"同胞"とは会えずにいたし、結局は家臣の裏切りでオルクス大迷宮に封印されてしまった。

 

そういう複雑な感情を持ったユエだったが、ハジメが頭をポンポンと撫でていた。

ハジメもまた日本という恵まれた環境にいたし、ユエの感じている孤独を真に理解は出来ないために言葉が見つからない。

それでも"今は"1人ではないということを示したかった。

 

すっかり変わってしまったハジメだが、身内にかける優しさはある。

それは苦楽を共にした親友の存在があったからか、それともユエという大切な存在を出会ったからなのか…。

ハジメが外道に堕ちなかったのは…ひとえに一緒に奈落に落ちて共に戦ってきた親友と、奈落の底で出会ったユエがいたからかもしれない。

だからこそハジメの人間性は保たれている。

その証拠にハジメはシアとの約束を守る気だ。

樹海を案内させたらハウリア族を狙う帝国兵への対処も考えている。

 

それがユエにも伝わったのか、ユエはハジメに体を預けていた。

まるで甘えるかのように…。

 

「あの~、私のこと忘れてませんか? ここは『大変だったね。もう1人じゃないよ。傍にいてあげるからね』とかそういうのを言う場面だと思いません? 私、コロッと堕ちちゃいますよ? チョロインですよ? なのに、せっかくのチャンスをスルーして、なに2人の世界を作ってるんですか! 寂しいです! 私も仲間も入れてくださいよ! 大体、シノブさんを先に行かせて迷子になってたらどうするんですか!? 私の案内もなしにどうやって…」

 

「「少し黙れ、残念ウサギ」」

 

「………はい……うぅ、ぐすっ……」

 

そんなハジメとユエの言葉に静かに涙するシアだった。

 

………

……

 

少しだけ時間を遡り、先行した忍はというと…

 

「(こっちか…)」

 

匂いを頼りに先行した忍は魔物の咆哮が聞こえるのを確認した。

 

「(いっちょ派手に行きますか!)」

 

前方に見える大岩向こう側で怒声や悲鳴が聞こえてきたのと複数の匂いを感じ取りながらウィリー走行で大岩へと車体を乗り上げる。

キュルキュルと音を上げながら大岩を登り、一気に加速して飛び出す。

 

「いやっほぉぉぉぉ!!」

 

そう高らかに叫んで空中に躍り出ると…

 

『ガアアァァァ!!』

 

目の前に体長三~五メートルはありそうな尻尾の先がモーニングスター状のワイバーン系の魔物がいた。

そのワイバーンもどきは六体いて空中で旋回していたのだ。

その内の一体がちょうど目の前にいた感じである。

忍の叫びに何事かと岩陰に隠れていた兎人族もひょっこり顔を出して空を見ていた。

 

「おらぁ!!」

 

そのまま車体を横に向けてワイバーンもどきの一体に体当たりをかます。

 

『ギャアアァァァ!!?』

 

体当たりを食らったワイバーンもどきが苦しそうな絶叫を上げる。

 

「こういうアクションを一度でいいからやってみたかった!」

 

テンション高めにそんなことを言いながらアドバンスド・フューラーRを抜くと、その弾丸を撃ち出す。

 

ドゴンッ!!

 

ハジメのドンナー・シュラークよりも威力が高いそれはまさに大砲並みの轟音を響かせ…

 

ドグシャッ!!

 

旋回していたワイバーンもどきの内、一体の頭部を木っ端微塵に吹き飛ばしていた。

 

このアドバンスド・フューラーは一度に二発の弾丸をほぼ同時に撃つ機構だ。

一条の軌跡に見えたとしても実際はその一条の軌跡の中に二発の弾丸が流れている。

そうすることで通常の射撃でも硬い甲殻を持つ魔物に対して有効な一手を取ることが出来る。

但し、これが纏雷による電磁加速付きとなるとまた話は変わってくる。

ハジメが証明してるようにレールガン仕様ならよほど硬い敵でもない限り一発で何とかなるし、その部位が吹っ飛ぶこともある。

故にレールガン仕様を使う場面は限られる。

そうしないと弾がもったいないというのもあるし…。

 

そうこうしている間に頭部を失ったワイバーンもどきはそのまま地面に墜落し、生々しい音を立てて動かなくなった。

アステリアの車体を戻しながらズザァッと地面に着地した忍は、さっき体当たりした一体に向かって追撃とばかりに引き金を引く。

 

ドゴンッ!

 

『ギギャアアアァァァ!?!?』

 

態勢を立て直してるところに胴体に数穴開けられて絶叫するワイバーンもどき。

 

「うるせぇっての」

 

アステリアから降りつつ、騒いでいるワイバーンもどきの頭に銀狼を投擲して黙らせる。

 

『ッ!?!?』

 

それが喉に当たる部位に突き刺さり、声が出なくなる。

 

「空力+神速」

 

ダダダダンッ!!!

 

何やら空気が破裂するような音と共に一瞬の間に落ちてくるワイバーンもどきから銀狼を回収すると、空高くに忍の姿が現れる。

右手にアドバンスド・フューラーR、左手に白銀に輝く刀を持って…。

 

「さて…次はどいつが墜ちるよ?」

 

そう言いながらワイバーンもどきを一瞥すると…

 

「ま、逃げようとしても墜とすがな」

 

とワイバーンもどきに死刑宣告を送っていた。

 

「まずひと~つ!」

 

瞬時にアドバンスド・フューラーRを旋回して様子を見てる内の一体に向けて発砲した。

 

「ふた~つ!」

 

空力で空を駆けるように走って一体の首を銀狼で斬る。

 

「み~っつ!」

 

そしたらば斬り落としたワイバーンもどきの体を蹴って突撃してきた一体の上に躍り出ると、即座に片翼を斬り落として背中に着地すると、そこから銃弾を二回ほど浴びせ…

 

「よ~っつ!」

 

仲間の仇とばかりに最後の一体が尻尾による攻撃を仕掛けてきたが、その尻尾の先を斬り落とし、その先っぽをサッカーボールよろしくリフティングした後…

 

「シュートッ!!」

 

その先っぽを思いっきり蹴って最後の一体の口の中にシュートを決めてから…

 

ドゴンッ!!

 

ダメ押しとばかりに銃弾を先っぽで塞がった口の中へと撃ち込む。

 

そうして結果的に全てのワイバーンもどきを空の上で倒し切った忍は墜落するワイバーンもどき達を尻目に空力でアステリアの元へと上手く着地する。

 

「ふぅ…いい仕事したぜ」

 

先に銀狼を鞘に収めてからアドバンスド・フューラーRの空薬莢を取り出し、リボルバーとマガジンの再装填をしてからホルスターに収め、掻いてない汗を拭う仕草をしながらそんなことを言い放つ。

一応、ハジメからいくつか予備の弾倉を貰い受けており、ロングコートの内側に収納していたりする。

ちなみに使い終わったマガジンの方は使い回すためにちゃんと回収している。

 

「は、ハイベリアが…こんなにあっさりと…」

 

それを見ていた兎人族の誰かがそんなことを漏らす。

 

すると…

 

「お~お~、これまた派手にやったな」

 

「……ん、流石化け物コンビの片割れ」

 

「うぇぇ!? は、ハイベリアが…こんなにたくさん…」

 

シュタルフで追いかけてきたハジメ達が到着したようだった。

ハジメはこの惨状を見て何故か感心したように頷き、ユエは呆れた様子で忍を見やり、シアはこの惨状に純粋に驚いていた。

 

『シア!?』

 

そこでハウリアの皆さんはシアに気付く。

 

「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~」

 

ハジメの後ろでピョンピョン跳ねるシアだったが…

 

「鬱陶しいから跳ねるな」

 

ドンナーをシアに向けるといつの間にか換装したゴム弾(非致死性弾)をシアの額に向かって発砲する。

 

「はきゅんっ!?」

 

その反動でシアはシュタルフから落ち、後頭部が地面に当たり…

 

「ぬぉ~、頭が、あ・た・ま・がぁ~」

 

悶絶したようにその場でのたうち回る。

しかし、そこは見事な耐久性を見せるシア。

すぐさま起き上がると…

 

「うぅ…ユエさんとの扱いの差が酷い…。私にだって優しくしてくれてもいいじゃないですか~」

 

しくしくと泣きべそをかく。

 

「……………………」

 

とりあえず、眼が鬱陶しいと言わんばかりのハジメだったが、これ以上泣かれても面倒だったので宝物庫から予備のコート(色は白)をシアの頭に出していた。

別にみすぼらしい服がさらにみすぼらしくなったのを気遣ってとかではない。

単に泣かれるのが鬱陶しいと思ったからだ。

 

「ふぇ?」

 

それがコートだとわかると、シアも泣き止んだ。

それどころかコートを頭から被ってもじもじとし始める。

 

「も、もう…ハジメさんったら素直じゃないですね~。ユエさんとお揃いだなんて……お、俺の女アピールですか? ダメですよぉ~。私、そんな軽い女じゃないですから、もっとこう、段階を踏んで~」

 

「(絶対に違うと思う)」

 

そんなシアを見ながら傍らで再びゴム弾をドンナーに装填するハジメを見て、アステリアを手で引っ張りながらハジメ達の元に向かう忍はそう思った。

 

「お疲れさん」

 

「おう。ここにいたハウリア族は助けておいたぜ?」

 

シアに再びゴム弾を発砲したハジメは忍を迎える。

 

「1人も脱落者はいないな?」

 

「あぁ、匂いも確かめたが、ここにいた全員は助けれたはずだ」

 

「そうか」

 

ハジメと忍がそんな会話をしてる間に…

 

「シア! 無事だったのか!」

 

「父様!」

 

濃紺色の短髪にうさ耳をは生やした初老の男性がシアに話し掛けていた。

その後ろには生き残ったハウリア族一同もいた。

しばしシアと話し合った後、初老の男性がハジメと忍に声を掛ける。

 

「えっと…ハジメ殿とシノブ殿、でしたか? 私はカム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、なんとお礼をして言えばいいのか。しかも、脱出まで助力してくださるとか……父として、族長として深く感謝致します」

 

初老の男性…カムが頭を下げると、後ろに控えていたハウリア族一同が共に頭を下げてきた。

 

「ハッハッハッ、別に大したことはしてないから頭を上げなって。な、親友」

 

そう言って忍がハジメの首に腕を回して笑う。

 

「まぁ、礼は受け取っておく。だが、樹海の案内と引き換えなんだ。そこは忘れるなよ? つか、随分とあっさり信用してきたな。亜人族は人間族に良い感情を持ってないと聞いてたんだが…」

 

「そういや、そうだな」

 

ハジメが忍の腕から抜け出しながら尋ね、忍も首を傾げる。

 

「シアが信頼する相手です。ならば我々も信頼しなくてどうします。我等は家族なのですから…」

 

その答えにハジメは感心半分呆れ半分といった風の表情だった。

さしもの忍も苦笑を浮かべている。

 

「えへへ、大丈夫ですよ、父様。ハジメさんはこう見えて約束を利用したり、希望を踏み躙るような外道じゃないです! ちゃんと私のことを守ってくれたりしましたし、シノブさんにも皆を助けるように先行するように言ってましたし」

 

「あはは、そうかそうか。つまり、ハジメ殿は照れ屋なんだな。それなら安心だ」

 

そんな会話をしたせいか、ハジメが再三のゴム弾を装填し始め、それを忍が肩をポンポンと叩きながら抑えようとしていた。

もちろん笑いを堪えながら…。

 

だが、ここで思わぬ追撃が…

 

「……ん、ハジメは(ベッドの上では)照れ屋」

 

「ユエ!?」

 

「親友もユエさんの前では形無しだねぇ~」

 

ユエの思わぬ言葉にゴム弾装填の手を止めるハジメだった。

 

「ともかく先に進もうぜ? こんなとこでグダグダしてたらまた魔物に見つかっちまう」

 

「そうですな。では、皆。ハジメ殿とシノブ殿の後ろについていくぞ」

 

忍の言葉にカムも同意し、仕方なくハジメと忍の先導で一行はライセン大峡谷の出口を目指すのだった。

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