もう1人のイレギュラーは反逆の覇王   作:伊達 翼

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第十六話『冒険者ギルド』

樹海の境界でカム達ハウリア族に見送られ、ハジメ、ユエ、シア、忍、セレナはシュタルフとアステリアに乗って草原を横に並んで駆けていた。

ちなみにシュタルフには前からユエ、ハジメ、シアの3人、アステリアには忍の後ろに未知の乗り物におっかなびっくり状態のセレナがそれぞれ搭乗している。

 

「それで、ハジメさん。次の目的地って何処なんですか?」

 

ハジメの肩越しにシアが尋ねる。

 

「あ? 言ってなかったか?」

 

「聞いてませんよ!」

 

「……私は知ってる」

 

「あ~、そういや、シアさんやセレナには言ってなかったっけ?」

 

「……聞いてないわよ」

 

この中で次の目的地を聞いてないのは新参のシアとセレナだけということが発覚する。

 

「うぅ…私やセレナさんだってもう仲間なんですから、そういうことは教えてくださいよ! コミュニケーションは大事ですよ!」

 

そんな抗議を受け…

 

「悪かったって。次の目的地はライセン大峡谷だ」

 

ハジメが次の目的地を答える。

 

「「ライセン大峡谷?」」

 

大迷宮の攻略を目指す旅と聞いていたので、今現在確認されている大迷宮…『オルクス大迷宮』は既に攻略済みで、ハルツィナ樹海の大迷宮も条件を満たさないと入れないのは確認されており、残るは『グリューエン大砂漠の大火山』と『シュネー雪原の氷雪洞窟』となる。

確実を期すのであれば、どちらかだと思っていたシアとセレナは首を傾げた。

 

「一応、ライセンにも大迷宮がある可能性があるからな。シュネー雪原はもろ魔人族の領域で面倒なことになるのは目に見えてる」

 

「とりあえず、大火山を目指すのが最良かとも思うんだが、西大陸に行くなら東西に伸びるライセンを通るついでに大迷宮を探す、って感じなんだよ。途中で見つければ儲けものってな」

 

ハジメの説明に忍も加わり、そのようなことを言う。

 

「つ、ついでにライセン大峡谷を渡るのですか…」

 

「アンタ達、頭おかしいんじゃないの?」

 

シアは引き攣った笑みを浮かべ、セレナは率直な感想を漏らす。

 

「まぁ、そっちの狼女はともかく…お前は自分の力をもっと自覚しろ。今のお前なら谷底の魔物もその辺の魔物も変わらねぇよ。ライセンは、放出された魔力を分解するんだぞ? 身体強化に特化してるお前や忍なら何の影響も受けずに動けるんだ。むしろ、独壇場だろうが…」

 

「……師として情けない」

 

「うぅ~、面目ないですぅ~」

 

シアの方はなんとなく溶け込んでるようにも思えるが…

 

「……………………」

 

ハッキリ戦力外通告をされたセレナは微妙な表情をしていた。

 

「まぁ、気にすんなって。元々、わかってたことだろ?」

 

「それはそうだけど…」

 

「ま、なるようになるさ」

 

「……………………」

 

忍は忍でセレナのフォローをしていた。

 

「で、では、ライセン大峡谷に行くとして、今日は野営ですか? それともこのまま近場の村か町に行きますか?」

 

「出来れば食料とか調味料関係を揃えたいし、今後のためにも素材を換金しておきたいからな。前に見た地図通りなら、この方角に町があったはず…」

 

「久々の料理だぁ~! そして、久方振りのお布団だぁ~!」

 

ハジメの言葉につられて忍が歓喜の声を上げる。

 

「? 料理はともかく、何故お布団?」

 

シアのもっともな疑問にセレナも首を傾げていると…

 

「俺はこの数ヵ月、どこぞのバカップルのせいでソファで寝続けてきたからな! けっ!」

 

結局、オルクス最下層の住処で忍はベッドで寝れなかったようだった。

原因は…まぁ、隣を走ってる親友とその前に座っている吸血鬼のせいなんだが…。

 

「「……………………」」

 

原因の2人は忍から視線を逸らす。

 

「しかも所構わずイチャイチャイチャイチャ……あれを拷問と言わずなんて言うかね!」

 

そして、最下層での生活を思い出したせいか愚痴を零し始めた。

 

「「わぁ…」」

 

どうも忍も相当溜まってたのかもしれない様子だった。

 

「と、ともかく…町に行くなら一安心です~」

 

シアが無理矢理話題を逸らす。

 

「そ、そうなの?」

 

それに乗るセレナ。

 

「だって、ハジメさんもシノブさんも魔物の肉を食べて満足しちゃうのでは、と心配だったのですが…シノブさんの反応を見る限り杞憂だったのかと。ユエさんはハジメさんの血を吸うので満足しちゃいそうだったし、そうなると私とセレナさんの食料をどう調達するか…」

 

「あぁ、それは…確かに大変ね。というか、魔物の肉を食べてたのね…」

 

「ですよね! だから町に寄ってもらえるのは大変助かります」

 

そのような会話をしていると…

 

「おい、こら。誰が好き好んで魔物の肉喰って満足するか!」

 

「流石にそれはないわ。あれは非常事態故の緊急措置であって断じて好んで食べてる訳ではない」

 

視線を逸らしてたハジメと愚痴ってた忍が途端に息の合った言葉を発する。

 

「だって実際食べてましたし…」

 

「お前の俺達の認識はどうなってやがる?」

 

「えっと…プレデターという名の新種の魔物?」

 

「OK、その喧嘩買うわ。お前は車体に括りつけて町まで引きずってやる!」

 

「ちょ、やめぇ、ていうかどっから出したんですか、その首輪!? ホントにやめてぇ~」

 

器用に走行中のバイクの上でじゃれるハジメとシア。

 

「……………………」

 

微妙に可哀想なものを見る目で忍を見てたセレナはその光景に押し黙る。

 

「親友。首輪余ってたら一個寄こせ」

 

「っ!?」

 

"まさか、気付かれた?!"と思ってギョッとするセレナを尻目にハジメが投げてきた首輪を受け取る忍は…

 

「なぁ、セレナ」

 

わざとアステリアの速度を落としてからハジメ達との距離を取ると、なんとも優しげな表情でセレナを見る。

 

「な、なによ?」

 

忍にしがみついてるから首輪を着けられる心配はないだろうと考えたセレナだったが…

 

「親友は不器用だからな。多分、珍しい亜人のシアさんを気遣ってあんな首輪を付けたんだと思う。自分の奴隷とでも言っておけば、無用ないざこざから回避出来るだろうってな」

 

それを聞いてセレナはさらに驚く。

 

「あの男にそんな気遣いが?」

 

「本人は否定するだろうがな。単に面倒事に巻き込まれないための方便かもしれんが…俺は違うと思ってる。伊達に親友を名乗っちゃいないからな」

 

「……………………」

 

「樹海の外での亜人差別はきっと俺達の想像よりも酷いはずだ。だからこそ先手を打っておこうって腹積もりなんだろ。身内的には仲間だが、対外的には奴隷、のように見せる必要があるんだ。ま、俺の勝手な憶測だけどな。だからさ…セレナも嫌かもしれないが、我慢してくれるか?」

 

「まぁ、そういうことなら…別に…」

 

「あんがとな。しっかし、無骨なデザインだな…ま、その方がらしく見えるのか…」

 

そんな会話をしながら、忍がセレナに首輪を着ける。

少し離されてきたのでちょっとだけ速度を上げてハジメ達に追従する。

 

「うぅ…なんでこんな首輪を…って、あぁ!? シノブさんまでセレナさんに何してるんですか?!」

 

追いついてきた忍とセレナの方を見てシアが騒ぐ。

 

………

……

 

そうして草原を走ること数時間、日が暮れてきた頃に前方に町が見えてきた。

ようやく、人のいる町に辿り着いたことにハジメ、忍、ユエからワクワクしたような雰囲気が出始める。

 

周囲を堀と柵で囲まれた小規模の町。

街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋があった。

 

5人は町側からギリギリ見えない位置でシュタルフとアステリアから降りると、2台を宝物庫に格納して徒歩に切り替えて町へと向かう。

その間もシアはハジメに黒を基調にした首輪(目立たないように小さな水晶付き)を外してくれ、と頼み込んでいた。

その様子を半笑いで見ている忍の隣にはさっきの話もあって抗議しないセレナがいた。

 

そうして門の近くまで行くと、門の脇の小屋から一人の冒険者風の男がやってくる。

どうやら小屋は門番の詰所だったらしい。

 

「止まってくれ。ステータスプレートの提示を。それと、町に来た目的は?」

 

そんな規定通りの質問に…

 

「食料の補給がメインだ。旅の途中でね」

 

ステータスプレートを取り出しながら答えるハジメに…

 

「あっ…」

 

忍は今思い出したように声を上げる。

 

「? どうかしたのか?」

 

門番がハジメのステータスプレートを受け取りながら忍を見ると…

 

「あ、いえ…なんでもないです」

 

そう言いながら忍もステータスプレートを門番に渡す。

 

「(おい、親友! 隠蔽すんの忘れてた!!)」

 

「(あ、やっべ…俺もだ)」

 

即座に念話会議を行う。

 

「(どうするよ?)」

 

「(仕方ねぇ…壊れたとでも言っとくか…)」

 

「(それで押し通せるか?)」

 

「(押し通すしかねぇだろ…)」

 

念話会議終了。

 

「……………………」

 

その間にも門番の男は自分の目を疑っていた様子だった。

 

「ちょっと前に魔物に襲われてな。その時に壊れたんだよ」

 

「こ、壊れた? だが、二つも同時というのは…」

 

「いやね、重そうな魔物だったんで、その時に踏まれたのが原因かなって。いやはや、まさか2人共落としてた挙句、魔物に踏まれるとか…」

 

「そうなんだよ。こいつが邪魔するから…」

 

「あ、ひっで。あそこは俺が前に出た方が効率よかったろ?」

 

即席の喧嘩劇を見せた後…

 

「まぁ、こいつへの文句は後にするとして……だいたい、壊れてなきゃそんな表示おかしいだろ? まるで俺達が化け物みたいじゃないか」

 

「そうそう。酷いと思わない?」

 

そう言って今度は息の合った言葉でいけしゃあしゃあと自分達は普通だと言い張る。

その光景に後ろに控えてた3人の少女達は呆れた表情をしていた。

 

「はは、確かに酷いな。表示がバグるなんて聞いたこともないが、なに例外なんて初めてがあるもんさ。それが君らだっただけだろう。で、そっちの3人は…………………」

 

そう言って門番がユエ達の方を見て固まる。

3人共、かなりの美少女なので見惚れるのは仕方ないことだろう。

 

「「んっ、んっ」」

 

ハジメと忍の咳払いで現実に引き戻された門番が2人の方に向き直る。

 

「さっき言った魔物の襲撃のせいでな。こっちの子は失くしちまったんだ。こっちの兎人族と狼人族は………わかるだろ?」

 

その一言で納得したのか、門番はハジメと忍にステータスプレートを返す。

 

「それにしても綺麗所を手に入れたもんだな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか? アンタらって…もしかして金持ち?」

 

その問いにハジメは肩を竦め、忍は笑うだけで答えなかった。

 

「まぁいい。通っていいぞ」

 

「あぁ、どうも。おっと、そうだ。素材の換金ってどこに行けばいいんだ?」

 

「あん? それなら中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがあるから、そこだな。もし店に持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」

 

「あぁ、そいつは親切だな。ありがとよ」

 

「ばいび~」

 

門番から情報を得て、ハジメ達は門を潜って町の中へと入る。

ちなみにこの町の名は『ブルック』というらしい。

 

久方振りの町に気分が良くなるハジメと忍。

三百年振りの町に目をキラキラさせるユエとこれが人間族の町かと興味を示すセレナ。

ただ1人、涙目のシアを除いて…。

 

「ふぅ…どうしたんだよ? せっかく町なのに、そんな上から超重量の岩盤を落とされて必死に支えるゴリラ型の魔物みたいな顔して」

 

「誰がゴリラですか!? ていうか、どんな倒し方してるんですか!? ハジメさんなら一撃でしょうに! なんか想像するだけで可哀想になってきたじゃないですか!」

 

「……脇とかツンツンしてやったら涙目になってた」

 

「まさかの追い打ち!? 酷過ぎる!」

 

「あぁ、あいつか。実験にしては酷な倒し方だったよな」

 

「実験!? ていうか、傍観してないで止めてあげてくださいよ! ってそうじゃないですぅ!」

 

ハジメ、ユエ、忍の思い出話はともかくとして…

 

「これです! この首輪! これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですか! ハジメさん、わかってて着けましたね!? うぅ、酷いですよ~。私達、仲間じゃなかったんですか~?」

 

シアは首輪のせいで奴隷扱いされたことにご立腹だった。

 

「ね、セレナさんもそう思いますよね!?」

 

「えっと…」

 

忍から既に首輪の意図を聞いているセレナはなんといったらいいのかわからなかった。

そんなシアを見兼ねてハジメが説明する。

 

「あのなぁ。奴隷でもない亜人族、それも愛玩用として人気の高い兎人族が普通に町を歩けるわけないだろう? ましてお前は白髪の兎人族で物珍しい上に、容姿もスタイルも抜群。断言するが、誰かの奴隷だと示してなかったら、町に入って10分もしない内に目を付けられてる。後は、絶え間ない人攫いの嵐だろうよ。面倒………って、なにクネクネしてんだよ?」

 

ハジメの説明を聞いてく内に怒りから羞恥に変わったのか、体をクネクネし始めるシア。

ユエの冷たい視線も何のそのだ。

 

「も、もう、ハジメさんったら、こんな公衆の面前でいきなり何を言い出すんですか。そんな、容姿もスタイルも性格まで抜群だなんて。もう、恥ずかしいで…「えいっ」…ぶべらっ!?」

 

ユエの右ストレートがシアの頬に華麗に決まる。

 

「……調子に乗っちゃダメ」

 

「……ずびばぜん、ユエざん…」

 

ユエの冷たい声に、ぶるりと体を震わせるシア。

 

「まぁ、アレだ。人間族のテリトリーでは、むしろ奴隷という身分がお前達を守ってくれるんだよ。それ無しじゃ、トラブルホイホイだからな」

 

そんな風に締め括ったハジメを見ながら…

 

「な? 言った通りだったろ?」

 

「え、えぇ…」

 

ニヤニヤと笑っている忍がセレナに話し掛け、それにセレナが頷いていた。

 

「テメェはテメェで何笑ってやがる?」

 

「いやいや、何でもないぜ?」

 

「嘘吐け。テメェの笑い方は絶対になんかある」

 

「ハッハッハッ、気のせいだって」

 

ハジメの追及をのらりくらりと躱す忍だった。

 

それからハジメはニヤニヤする忍を無視して首輪の機能をシアとセレナに説明する。

2人の首輪には念話石と特定石というものが仕込まれており、魔力を通すことで起動するのだが、シアはともかくとしてセレナは魔力を持っていないため、宿を取ってから改良することになった。

ちなみに首輪は特定量の魔力を流せばちゃんと外れるようになっている。

 

そうしてハジメ達は素材を換金するために、メインストリートを歩いて一本の大剣が描かれた看板を掲げる冒険者ギルドへと向かう。

その間に忘れないうちにステータスプレートの隠蔽機能を起動させておき、宝物庫から魔物の素材(ハルツィナ樹海のみ)をバッグに詰め替えていたりする。

 

そして、冒険者ギルドへと足を踏み入れた一行は他の冒険者から好奇の目で見られた。

最初は見慣れない5人組ということで、ささやかな注意を引いたに過ぎなかったが、彼等の視線がユエ、シア、セレナに向くと、途端に瞳の奥の好奇心が増した。

 

密かにテンプレ(ちょっかいを掛けてくる奴等が現れる)を期待していたハジメだったが、意外にも彼らは理性的で観察するに留めているようだった。

まぁ、それはともかくとして邪魔が入らないなら、とカウンターに向かう。

 

カウンターには、大変魅力的な……笑顔を浮かべた恰幅のいいオバチャンがいた。

それに軽い絶望を覚えたものの、ハジメは平静を装っている。

それでもユエとシアから若干冷たい視線を受けているが…。

ちなみに忍は特に気にした様子もなかった。

 

「両手に花を持ってるのに、まだ足りなかったのかい? 残念だったね。美人な受付じゃなくて。そっちの兄さんを見習ったらどうだい?」

 

が、しかし、オバチャンはハジメの内心を察したように言う。

 

「なんのことかわからないんだが…」

 

「あはははは、女の勘を舐めちゃいけないよ? 男の単純な中身なんて簡単にわかっちまうんだからね。あんまり余所見ばっかして愛想尽かされないようにね?」

 

「ハッハッハッ、親友は幻想を抱き過ぎるきらいがあるからねぇ~」

 

「…………肝に銘じておこう」

 

苦虫を噛み潰したような表情で答えるハジメに…

 

「あらやだ。年取るとつい説教臭くなっちゃってねぇ。初対面なのにゴメンね?」

 

「いやいや、気にしないでくれよ」

 

ハジメに代わて忍が対応する。

 

「さて、じゃあ改めて。冒険者ギルド、ブルック支部へようこそ。ご用件は何かしら?」

 

「あぁ、素材の買取をお願いしたい」

 

「はいよ。そっちの兄さんは?」

 

「俺も買取希望だが、親友と共有資産にしたいんでね。纏めて頼むよ」

 

「はいよ。じゃあ、ステータスプレートを出しとくれ」

 

「ん? 買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」

 

ハジメの疑問にオバチャンは「おや?」という表情をする。

 

「あんたら冒険者じゃないのかい? 確かに買取にステータスプレートは不要だけどね。冒険者と確認出来れば1割増で売れるんだよ」

 

「へぇ~」

 

「そうだったのか」

 

ハジメと忍は初耳な情報に目を丸くする。

 

「他にも、ギルドと提携している宿や店は1~2割程度は割引してくれるし、移動馬車を利用する時も高ランクなら無料で使えたりするね。で、どうする? 登録しておくかい? 登録は1人1000ルタ必要だよ」

 

ちなみにルタとはこの世界トータスの北大陸共通の通貨だ。

ザガルタ鉱石という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜることで異なる色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われている。

色と価値は青が1、赤が5、黄が10、紫が50、緑が100、白が500、黒が1000、銀が5000、金が10000という具合になっている。

 

「う~ん、そうか。なら、せっかくだし登録しておくか」

 

「だな」

 

「そういう訳なんだが、生憎と手持ちがなくてな。買取金額から差っ引くってことにしてくれないか? もちろん、最初の買取額はそのままでいい」

 

「可愛い子達を連れてるのに文無しなんて何してるんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させるんじゃないよ?」

 

「面目ねぇ…」

 

オバチャンのかっこよさを目の当たりにしながらハジメと忍はステータスプレートを差し出す。

ユエ、シア、セレナの分も登録するかどうか聞かれたが、そこは断った。

セレナはともかく、ユエとシアのステータスや技能欄を公開してしまうからだ。

それは流石に避けるべきだとハジメも忍も考えていたので、そこは問題なかった。

 

問題は忍のステータスプレートだ。

天職欄のところで何か言われるんじゃないか、と忍は少し戦々恐々だった。

なんせ天職『反逆者』である。

別に本人にそんな気はないのだが、それが天職である以上、避けては通れぬ道なのだ。

 

しかし、それは杞憂に終わった。

オバチャンは特に何を言う訳でもなく、ステータスプレートを返してくれた。

返してもらったステータスプレートの天職欄の横に職業欄が追加され、そこに『冒険者』と表記されていて、そのさらに横には青色の点が付いている。

この色の点は冒険者ランクを示しており、これはルタの価値を示す色と同じとなっている。

要するに駆け出しの冒険者は『青ならまだ1ルタ程度の価値しかねぇんだよ』的な意味合いを持つ。

ちなみに戦闘系天職を持たない者で上がれる限界は黒だったりする。

 

「男なら頑張って黒を目指すんだよ? お嬢さん達にカッコ悪いとこ見せないようにね」

 

「あぁ、そうするよ。それで、買取はここでいいのか?」

 

「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

ハジメはカウンターの受け取り用の入れ物にバッグから素材を取り出して入れていく。

 

「こ、これは…!?」

 

その素材の数々を見て驚くオバチャン。

 

「また、とんでもないものを持ってきたね。これは…………樹海の魔物だね?」

 

「あぁ、そうだ」

 

流石のハジメも奈落の魔物の素材を出すわけがない。

そんなことしたら騒動の元だからだ。

 

ただ、ほんのちょっとだけ…ハジメは奈落の素材を出して受付嬢が驚愕し、ギルド長登場からの高ランク認定、受付嬢の眼がハートに…というテンプレを実現してみたい…などとは考えていない。

ユエとシアの冷ややかな視線を受け、身体がブルリと震えても考えていないと主張したかった。

 

「アンタも懲りないねぇ…」

 

「いやはや、まったくだ…」

 

オバチャンの呆れた視線と、親友の呆れた反応を前に…

 

「なんのことかわからない」

 

ハジメは現実から目を逸らす。

 

「樹海の素材は良質なものが多いからね。売ってもらえるなら助かるよ」

 

オバチャンは軽く肩を竦めながら話題を変えた。

 

「やっぱ、珍しいの?」

 

それに便乗して忍もオバチャンに尋ねる。

 

「そりゃね。樹海の中じゃ、人間族は感覚を狂わされるし、一度迷えば二度と出てこれないからハイリスク。好き好んで入る人はいないねぇ。亜人の奴隷持ちなら金稼ぎに入ることもあるけど、売るなら中央で売るさ。幾分か高く売れるし、名も上がりやすいからね」

 

そう言ってオバチャンはチラッとシアとセレナを見る。

そして、全ての素材の査定が終わって提示された金額は……529000ルタだった。

 

「これでいいのかい? 中央ならもう少し高くなるだろうけどね」

 

「いや、この額で構わない」

 

「あぁ、今はこれで十分でしょ」

 

ハジメが代表して57枚のルタ通貨を受け取る。

 

「そういや、門番の人に聞いたんだけど、この町の簡易な地図を貰えるって…」

 

ハジメが通貨を仕舞ってる間に忍がオバチャンに尋ねる。

 

「あぁ、ちょっと待っといで。ほら、これだよ。お勧めの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

受け取った地図を見て忍が固まる。

 

「どした?」

 

通貨を仕舞い終わったハジメが地図を覗き込むと…

 

「これは……おいおい、いいのかよ? こんな立派な地図を無料で。十分金を取れるレベルだと思うんだが…」

 

なかなかに精巧で、有用情報も簡潔ながらしっかりと押さえている記載されたご立派な地図だった。

 

「構わないよ。あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、これくらい落書きみたいなもんさね」

 

オバチャンの優秀さに脱帽するハジメと忍。

 

「そ、そうか。まぁ、助かるよ」

 

「何から何までお世話になりました」

 

「いいってことさ。それより、金はあるんだから少しはいいとこに泊まりなよ? 治安が悪いわけじゃないけど、その3人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね」

 

「そうするよ」

 

「じゃあね、受付のお姉さん」

 

それを最後にハジメと忍はギルドの入り口まで歩いていく。

ユエ達もオバチャンにお辞儀すると、2人を追っていく。

 

一行がギルドの外を出た後…

 

「ふむ、色んな意味で面白そうな連中だね…」

 

オバチャンのちょっと楽しげな独り言がカウンターに木霊する。

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