もう1人のイレギュラーは反逆の覇王   作:伊達 翼

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第二十四話『思わぬ再会』

広大な平原のど真ん中に北へ向けて真っ直ぐ伸びる街道。

街道とは言え、そこは何の整備もされていない、人や馬車の踏みしめたことで自然と雑草が禿げて道となったものである。

 

そこをひた走る二つの影がある。

シュタルフとアステリアだ。

搭乗者はもちろん、ハジメ達だ。

いつものようにシュタルフはハジメが、アステリアは忍が運転し、ハジメの前にユエと後ろにシア、忍の後ろにセレナが乗っている。

ライセン大峡谷のように魔力分解作用がないため、十全に発揮されるその速度は実に時速80キロは出ていそうだった。

 

天候は快晴。で暖かな日差しが降り注ぎ、ユエと忍の魔法で風圧を調整しているから絶好のツーリング日和とも言えなくない。

 

「このペースなら後1日で到着するだろうな」

 

「だな」

 

ハジメの左隣を走る忍が頷く。

 

ウィル一行が引き受けた調査依頼の範囲である北の山脈地帯に一番近い町まで残り1日という距離まで来ていた。

このまま休憩を挟まず、一気に進み続ければおそらくは日が沈む頃には目的地に到着すると考えていた。

なので、一晩その町で宿を取って休息して、明朝から捜索を始めようと予定を立てていた。

こんなにも急ぐ理由は、時間が経てば経つほど、ウィル一行の生存率が低くなるからだ。

 

「……積極的?」

 

「まぁ、生きてるに越したことはないからな。その方が感じる恩はデカい。これから先、国やら教会やらとの面倒事は嫌ってくらい待ってそうだからな。盾は多い方がいい。いちいちまともに相手なんてしたくねぇし」

 

「ハッハッハッ、親友らしいねぇ」

 

「……なるほど」

 

ハジメの答えに忍は笑い、ユエは納得したように頷く。

ちなみにシアは夢心地、セレナも忍にしがみつきながらうたた寝をしている。

 

「それに聞いたんだが、これから行く町は湖畔の町で水源が豊かなんだと。そのせいか、町の近郊は大陸一の稲作地帯なんだそうだ」

 

「やっふぅ~! それだけでも少しテンションが上がるぜ!」

 

「……稲作?」

 

忍は変な雄叫びを上げ、ユエは首を傾げる。

 

「おう。つまり、米だ、米。俺達の故郷…日本の主食だ。こっちに来てから一度も食ってないからな。同じものかどうかはわからないが、早く言って食ってみたい」

 

「だな! やっぱ、日本人たる者、米を食わにゃ!」

 

何やら珍しく賑やかな2人を見てユエもつられて笑みを浮かべる。

 

「……ん、私も食べたい。町の名前は?」

 

「湖畔の町『ウル』だ」

 

………

……

 

そうして一行は予定通り、日が沈む頃に湖畔の町『ウル』に到着していた。

宝物庫にシュタルフとアステリアを格納し、まずは町長の元へと向かい、イルワからの紹介状を渡して事情を説明した。

明朝捜索に出る旨を話した後、ハジメ達は宿『水妖精の宿』へと足を向けていた。

 

「ハッハッハッ、それにしても楽しみだな、親友」

 

「あぁ、この世界に来てから一番の楽しみかもな」

 

「そこまでなの?」

 

2人の妙な浮かれっぷりにセレナが首を傾げる。

扉を開けて受付を済ますと、そのまま一階のレストランへと向かう。

 

「そういうもんなの。日本人たる者、やっぱ米を食わにゃね!」

 

「お前。それ、さっきも言ってたろ?」

 

「ハッハッハッ、親友だって内心思ってることだろ?」

 

「まぁ、否定はしねぇけどな」

 

「むむむ、ユエさん、ユエさん! なんだかハジメさんがシノブさんと良い雰囲気に!」

 

「なってねぇよ、バカヤローが」

 

「こういうのは意気投合というのさ」

 

「忍、浮かれ過ぎなんじゃない?」

 

「……ハジメも、なんか楽しそう」

 

そんな会話をしながらカーテンが引かれている一角を通り過ぎようとした時…

 

シャァァァ!!

 

突然、カーテンが思いっきり開け放たれ、驚いた一行は立ち止まってしまう。

 

「南雲君! 紅神君!」

 

カーテンの向こうから聞こえてきたのは…ハジメと忍の"苗字"を呼ぶ女性。

 

「おや?」

 

「あぁ?」

 

2人揃ってその女性を見ると…

 

「「先生?」」

 

声を揃えてそのように呟いていた。

 

そう、その女性とは『畑山 愛子』。

社会科教師であり、稀少な天職『作農師』を持つ転移組の保護者役である。

よくよく見ると、席にはハジメのクラスメイトの生徒数人と、騎士風の男達も数名いた。

 

「南雲君、それに紅神君も……生きて、いたんですね? 本当に生きて…」

 

目の端に涙を浮かべる愛子に対し…

 

「いえ、人違いです。では…」

 

「へ?」

 

ハジメが即座に否定して踵を返す。

その様子を見てやれやれと肩を竦める忍は少し静観していた。

 

「ちょっと待ってください! 南雲君ですよね? 先生のことを"先生"と呼びましたよね? どうして、人違いだなんて…」

 

「あ~、そりゃあれだ。聞き間違いだ。そう…方言で"ちっこい"って意味の"センセェ"と間違えたんだよ、うん」

 

「それはそれで物凄く失礼ですよ!? ていうか、そんな方言ありません! なんで誤魔化すんですか? 紅神君も何か言ってください!」

 

ハジメがはぐらかすので愛子の標的が忍に移行した。

 

「ハッハッハッ、親友。今のはないだろ。流石に見逃されないと思うぜ?」

 

「その笑い方はやっぱり紅神君ですね! それに親友ってことは南雲君じゃないですか!」

 

そんな愛子の言葉にハジメはガリガリと頭を掻いていた。

笑い方で認識された忍的には微妙な心境だったが…。

 

すると…

 

「……ハジメが困ってるから、少し落ち着いて」

 

ユエが愛子にそう言って間に入る。

 

「うっ…」

 

確かに冷静さを欠いていたと思い、僅かに怯む。

 

「……すみません、取り乱しました。改めて…南雲君と紅神君ですよね?」

 

そして、少し深呼吸してから改めてハジメと忍に視線を向けて問い直す愛子に…。

 

「……あぁ、久し振りだな。先生」

 

「ハッハッハッ、実際いつ振りよ? 愛ちゃん先生もお変わりないようで」

 

ハジメも忍もそのように返していた。

 

「やっぱり、やっぱり南雲君と紅神君なんですね……生きて、いたんですね……」

 

再び涙を目の端に溜める愛子に、ハジメは肩を竦め、忍は後頭部に両手を回す。

 

「まぁな。色々あったが、なんとか生き残ってるよ」

 

「右に同じく。親友と一緒に行動してたしな」

 

「よかった……本当によかったです」

 

それ以上の言葉が出てこない様子の愛子を一瞥すると、ハジメは近くのテーブルに歩み寄るとそのまま座席に座り、忍もやれやれといった具合にハジメの向かい側に座る。

ユエとシア、セレナもそれぞれハジメの両隣と、忍の右隣に座る。

シアとセレナが微妙に困惑していたが…。

 

「え~と…ハジメさん。いいんですか? お知り合いなんですよね? 多分ですけど……元の世界の……」

 

「忍も、その…いいの?」

 

「別に関係ないだろ。流石に現れた時は驚いたが、ま、それだけだ。元々、晩飯食いに来たんだし、さっさと注文しよう。マジで楽しみだったんだよ。知ってるか? ここのカレー……じゃ、わからないか。ニルシッシルっていうスパイシーな飯があるんだってよ。想像した通りの味なら嬉しいんだが…」

 

「だなぁ。他にも米関係の料理とかあんのかな? 有名なニルシッシルだけ頼むのももったいないし……親友、俺は別のやつ頼むわ。だから、一口やるから一口くれ、な?」

 

「ちっ、いいだろう。それで手を打ってやる」

 

「へっ、流石は親友。話がわかるな」

 

「……むぅ、そういうことなら私がハジメにあげる」

 

「あ、ユエさん、ズルいです! 私も別の料理を頼みますからハジメさんと交換しますぅ!」

 

「だ、だったら、私がニルシッシルを頼んで忍と交換するから、ね?」

 

という何とも微妙に甘ったるいような気もしないでもない会話を繰り広げていると…

 

ペシッ!

 

まるで何事もなかったかのように注文しようとするハジメ達に愛子がテーブルに歩み寄ると、優しくテーブルを叩いた。

『先生、怒ってます!』と言いたげな表情でハジメと忍を交互に見る。

 

「南雲君も紅神君も、まだ話は終わってませんよ? なに、物凄くナチュラルに注文をしようとしてるんですか?」

 

「あ、やっぱダメ?」

 

忍が愛子に向けてそう言うと…

 

「当たり前です! だいたい、こちらの女性達はどちら様ですか?」

 

そんな愛子の言葉に、後ろにいた生徒達や騎士風の男達も『うんうん』と頷いていた。

『面倒な…』と思いつつも、ハジメは愛子が持ち前の行動力を発揮して食い下がるだろうと想像したのか、仕方なく愛子に視線を戻す。

忍は椅子の背もたれに体を少し預けて視線を宙に彷徨わせた。

 

「依頼のせいで1日以上、ノンストップでここまで来たんだ。腹減ってんだから、飯くらいじっくり食わせてくれ」

 

「だねぇ~。飯時くらいゆっくりしたいよ」

 

「で、こいつらは………」

 

そう言ってハジメが視線をユエ達に向けると、ユエとシアが立ち上がり…

 

「……ユエ」

 

「シアです」

 

「……ハジメの女」

 

「ハジメさんの女ですぅ!」

 

それはもう、堂々とした名乗りをした。

 

「えぇ~…この流れやだぁ…」

 

セレナが唯一ついていけなさそうにしていると…

 

「こっちはセレナで……ふむ、今更ながら俺の女と言っていいのだろうか?」

 

「悩むくらいなら言わないで!///」

 

そう真剣に悩む忍にセレナは頬を染めて叫ぶ。

 

「お、女?」

 

その言葉に5人を順番に見ていく愛子。

その後ろで生徒達が驚愕の表情をする。

 

「おい。ユエはともかく、シアは違うだろ?」

 

「そんなっ! 酷いですよ、ハジメさん! 私のファーストキスを奪っておいて!」

 

「いや、いつまで引っ張るんだよ。あれはきゅ…『南雲君?』………なんだよ、先生?」

 

「おっと、これは雷様が落ちるかな?」

 

などと他人事のように呟いていると…

 

「女の子のファーストキスを奪った挙句、ふ、二股だなんて! すぐに帰ってこなかったのは、遊び歩いていたからなんですか! 紅神君も何も言わなかったんですか!? もしもそうなら…許しません! えぇ、先生は絶対に許しませんよ!! お説教です! そこに直りなさい、南雲君! 紅神君!」

 

「(なんか、俺にも飛び火してね?)」

 

「(知るかよ…)」

 

愛子がきゃんきゃん吠えている時に、念話で会話するハジメと忍だった。

 

 

 

愛子が散々吠えた後、宿のVIPルームへと案内されたハジメ達と愛子達。

そこで食事を取るハジメ達に対し、矢継ぎ早に質問の豪雨を浴びせる愛子達。

 

Q、橋から落ちた後、どうしたのか?

A、超頑張った(ハジメ)。親友となんとか合流した(忍)。

 

Q、何故2人して髪が白くなっているのか?

A、超頑張った結果(ハジメ)。色々あったんだよ(忍)。

 

Q、ハジメの眼はどうしたのか?

A、超超頑張った結果(ハジメ)。あんなことがあればなぁ(忍)。

 

Q、何故、すぐに戻らなかったのか?

A、戻る理由がない(ハジメ)。ま、戻ったところで互いの目的が違うんじゃね(忍)。

 

という具合の質問に対する投げやりな答えに…

 

「南雲君、真面目に答えなさい! 紅神君ももうちょっと詳しく教えなさい!」

 

愛子が頬を膨らませて怒る。

そんな迫力のない愛子の怒りにハジメ達は食事の感想を言い合っていた。

 

すると…

 

「おい、お前達! 愛子が質問しているのだぞ? 真面目に答えろ!!」

 

愛子専属護衛隊隊長『デビッド・ザーラー』がテーブルに拳を叩き付けると、そのように怒声を発してハジメ達を睨む。

 

「こっちは食事中だぞ? 行儀良くしろよ」

 

「騎士って行儀も知らないの? よくそれで護衛とか務まるよね」

 

ハジメと忍の投げやりな返答に顔を真っ赤にするデビッドはその矛先をシアとセレナに向ける。

 

「ふん、行儀だと? その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣人風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前達の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳やら尻尾を斬り落としたらどうだ? そうすれば少しは人間らしく…『黙れよ、おっさん』…ッ!?」

 

最後まで言い終わる前に忍の覇気がデビッドを襲い、息が詰まるのを感じる。

 

「礼儀だと? 口で負かされそうになったからって人の連れにケチつけようってか? テメェ、ホントに騎士かよ? 騎士の名が聞いて呆れるな。あぁ? どうなんだよ、"エセ騎士"様よ?」

 

ハジメの威圧のように忍もデビッドにピンポイントで覇気を叩き付けているが、口調に怒気が含まれていることからVIPルームにいるハジメ達以外の人間は戦々恐々としていた。

しかも忍は挑発するように"エセ騎士"という言葉を強調していた。

 

「き、貴様…!!」

 

キッと忍を睨むデビッドだが、忍の覇気を受けて得体の知れない力に怯えているようにも見えた。

 

ちなみにデビッドの言葉を受けたシアとセレナはすっかり委縮してしまっている。

そんな2人の手を握ったユエがデビッドに絶対零度の視線を向ける。

 

「……なんだ、その眼は? 無礼だぞ! 神の使徒でもないのに、神殿騎士に逆らうのか!?」

 

忍から逃れる様にユエの視線に気づいたデビッドが噛みつくが…

 

「……小さい男」

 

「はっ! 逃げたか、腰抜けが…」

 

ユエと忍から嘲りの声が同時に響く。

 

ただでさえデビッドは神殿騎士にして重要人物の護衛を任される隊長を務めているのだ。

そこには自然と肥大化したプライドがあり、怒りで冷静さを失っていることも加わり、今の嘲りだ。

護衛隊の皆は愛子を慕っている。

それはデビッドも例外ではなく、その慕っている愛子の前で男としての器を嗤われ、完全にキレる。

 

「……いくら神の使徒だろうと、異教徒とつるむのであれば同罪! そこの獣風情と共に地獄に送ってやる…!!!」

 

そう言うと、デビッドは腰に帯剣していた剣に手をかけ、鞘から引き抜こうとする。

その様子に生徒達はオロオロし、愛子と他の騎士達が止めようとした時…。

 

ドパンッ!!

 

乾いた破裂音が『水妖精の宿』全体に響き渡ると同時に、今にも飛び出しそうだったデビッドの頭部が弾かれたように後方へ吹き飛び、凄まじい音を立てて壁に後頭部を激突させる。

そのせいで白目を剥き、ズルズルと崩れ落ち、手にしていた剣が放り出されて床に転がる。

 

その光景に誰もが硬直し、デビッドを見たままだった。

そこへ宿のオーナー『フォス・セルオ』が何事かとカーテンを開けて飛び込んできた。

が、その光景にフォスもまた硬直してしまう。

 

代わりにフォスが入ってきたことから愛子達が我を取り戻し、視線をデビッドから破裂音の発信源に向けられる。

 

そこにはドンナーを構えたハジメがいた。

一応、銃撃はしたが、非致死性のゴム弾であるので、デビッドは単純に気絶しただけだろう。

 

詳細はわからないものの、ハジメが攻撃したのを察知したのか、残りの騎士が剣に手をかけて殺気を放ちながら立ち上がろうとすると、それ以上の凄絶な殺気がハジメと忍から同時に騎士達に向けられる。

 

『ッ!?!?』

 

その二重の殺気に立ち上がることすら許されない騎士達と、殺気を向けられているわけではないのに顔を青ざめさせてガクガクと震える愛子と生徒達。

 

ハジメはわざとゴトッとという音を立たせてドンナーをテーブルに置くと…

 

「俺達はアンタらに興味がない。関わりたいとも、関わってほしいとも思ってない。いちいち、今までのこととか、これからのことを報告するつもりはない。ここは仕事に来ただけで、終わればまた旅に出る。そこでお別れだ。あとは互いに不干渉でいこう。アンタらがどこで何をしようと勝手だが、俺達の邪魔だけはしないでくれ。今みたいに、敵意を持たれちまうと……つい、殺っちまうかもしれない」

 

「親友は本気だぜ? まぁ、かくいう俺も既に一線は越えてる。だからさ…出来ればそっとしておいてくれ。俺達には俺達の目的があるんだ」

 

遠慮のないハジメと優しさを含めた忍の言葉に誰も何も言えなかった。

 

「な、南雲…」

 

ただ、生徒の1人『園部 優花』だけはハジメに何かを言いたそうだったが…。

 

「(ありゃ? あの娘って確か…)」

 

そんな優花のハジメに向ける視線に忍は記憶を漁る。

 

「(というか、意外なとこで親友へのフラグが建ってる?)」

 

結局、思い出せなかったが、忍はハジメが知らず知らずのうちに優花へのフラグを建てていることへの驚きが強かったようだ。

 

「おい、シアに狼女。これが"外"での普通なんだ。気にしてたらキリがないぞ?」

 

「はぃ、そうですよね……わかってはいるんですけど……やっぱり、人間の方には、この耳は気持ち悪いんでしょうか?」

 

「わかってるわよ……今までが特殊だっただけ。これが普通なのよね…」

 

ブルックが比較的友好的、フューレンでは値踏みされてただけだったので、デビッドの暴言が近いのだと思い知ってシアもセレナも落ち込んでいた。

 

「……シアのうさ耳は可愛い」

 

「ユエさん、そうでしょうか?」

 

ユエの慰めにも自信なさげなシアに…

 

「あのなぁ、こいつらは教会やら国の上層に洗脳じみた教育をされてるから忌避感が半端ないだけだ。兎人族は愛玩奴隷としての需要が高いんだろう? なら、一般的には気持ち悪いなんて思われてねぇんだよ」

 

ハジメがフォローを入れる。

 

「セレナの耳も尻尾も俺は好きだぞ?」

 

セレナへのフォローは忍が担当しているが、ハジメに比べると結構直球だった。

 

「うぐっ…相変わらず、人の気も知らないで…///」

 

忍の直球に頬を赤くするセレナを横目に…

 

「そう、でしょうか? あ、あの、ちなみにハジメさんは……どう思いますか? 私のうさ耳」

 

シアも出来れば忍のように直球気味に言われたいが、そこはハジメである。

 

「……別に、どうも……」

 

と素っ気なく答えていた。

ところが…

 

「……ハジメのお気に入り。シアが寝てる時にいつもモフモフしてる」

 

「ユエ!? それは言わない約束だろう!?」

 

「相変わらず親友は不器用だな~」

 

「は、ハジメさん…私のうさ耳、お好きだったんですね。えへへ…」

 

ユエの裏切りでハジメの密かな楽しみが暴露され、それを暖かい目で見るユエと忍、嬉しそうにうさ耳を動かすシア、呆れた表情をするセレナといつもの調子を取り戻していた。

 

その光景を見て…

 

「あれ? 不思議だな。さっきまで南雲と紅神のことマジで怖かったのに…今は殺意しか湧いてこねぇ」

 

「お前もか。つか、あの3人、めっちゃ可愛いんですけど……ドストライクなんですけど……なのに、目の前でイチャつかれるとか、拷問なんですけど」

 

「……南雲の言う通り、何をしていたかなんてどうでもいい。だが、異世界の女の子と仲良くなる術だけは……聞き出したい!」

 

上から男子生徒の『相川 昇』、『仁村 明人』、『玉井 淳史』が変なやる気を出し、それを横で見てた女子生徒3人が物凄く冷たい目を男子達に向ける。

 

「(わかる。凄くわかるよ。君らの気持ち…)」

 

忍は理解を示していたが、口には出さなかった。

奈落の底で味わったあの拷問の日々を思い出したのかもしれない。

 

そんな中、護衛騎士の副隊長『チェイス・ドミノ』がデビッドの治療を他の騎士に任せるとハジメに話し掛ける。

 

「南雲君と紅神君でいいでしょうか? 先程は隊長が失礼しました。何分、我々は愛子さんの護衛を務めておりますから、愛子さんに関することになると、少々神経が過敏になってしまうのです。どうか、お許し願いたい」

 

チェイスの謝罪にハジメと忍は適当に手をひらひらと振って答えた。

 

「……そのアーティファクト、でしょうか? 寡聞にして存じないのですが、相当強力な代物とお見受けします。弓より早く強力にも関わらず、魔法のように詠唱も陣も必要ない。いったい、何処で手に入れたのでしょう?」

 

若干そのおざなりな返答に思うところはあったものの、それを我慢して微笑んでいるように見せて、眼は全く笑っていないチェイスが尋ねる。

 

ハジメと忍が互いに一瞬だけ目配せしてからハジメが改めてチェイスを見て何かを言おうとした時…

 

「そ、そうだよ、南雲! それ銃だろ!? なんで、そんなもん持ってんだよ!?」

 

淳史が興奮した様子でハジメに問うた。

 

「"じゅう"? 玉井は、アレが何か知っているのですか?」

 

「え? あ、あぁ。そりゃあ、知ってるよ。俺達の世界の武器だからな」

 

その淳史の答えにチェイスの眼が光る。

 

「ほぅ。つまり、この世界に元々あったアーティファクトではないと。とすると、異世界人によって作製されたモノ……製作者は当然…」

 

「俺だな」

 

あっさりと銃の製作者は自分だと公言するハジメ。

 

「あっさりと認めるのですね。南雲君、その武器が持つ意味を理解していますか? それは…」

 

「この世界の戦争事情を一変させる、だろ? 量産が出来ればな。大方、言いたいことはやはり戻って来いとか、せめて製作方法を教えろとか、そんな感じだろ? 当然、全部却下だ。諦めな」

 

取り付く島もないハジメの言葉に、チェイスは食い下がる。

 

「ですが、それを量産出来れば、レベルの低い兵達も高い攻撃力を得ることが出来ます。そうすれば、来たる戦争でも多くの者を生かし、勝率も大幅に上がることでしょう。あなたが協力することで、お友達や先生の助けにもなるのですよ? ならば……」

 

「なんと言われようと、協力するつもりはない。奪おうというなら敵とみなす。その時は……戦争前に滅ぶ覚悟をしろ」

 

ハジメの静かな言葉に全身を悪寒に襲われつつも、チェイスは諦めきれないのか標的を忍に移す。

 

「紅神君はいかがですかな? 親友なのでしょう? 彼に協力するように説得を…」

 

「こんな言葉を知ってるかい? "過ぎたる技術は毒にもなりうる"って…」

 

「どういう意味ですかな?」

 

「要するに、その世界に住む人間にとって過ぎた技術は、確かに生活を豊かにする薬になると同時に使い方を一歩間違えれば、世界を滅ぼす毒にもなるってことさ。仮に銃で戦争が終わったら? その銃を用いて今度は人同士の争いだ。戦争に勝っても、次の争いで被害が広がる。そうして、何も知らない子供に銃を持たせて暗殺とかな? 目先の益よりも、今後起こるだろう火種になるくらいなら、最初から教えない方がいい。俺は親友だからこそ説得はしない。親友がそのことを一番理解してると信じてるからな」

 

「……………………」

 

忍の具体的な内容の言葉にチェイスが押し黙る。

 

「な、南雲君も紅神君も過激なことを言わないでください。もっと穏便に……南雲君も紅神君も、本当に戻ってこないつもりなんですか?」

 

その間に割って入るように愛子が口を挟む。

 

「あぁ、戻るつもりはない。明朝、仕事に出て依頼を果たしたら、そのままここを出る」

 

「悪いね、愛ちゃん先生。親友も俺もまだ道半ばなんだよ」

 

そう答えると、2人は同時に席を立った。

見ればハジメ達は全員食事を終えていたのだ。

愛子達に背を向けてVIPルームから出て行こうとするハジメ達の背中に…

 

「どうして……」

 

愛子の悲痛な問いが投げかけられたが、それに答えることなくハジメ達は二階へと上がっていった。

 

残された愛子達の間には、何とも微妙な空気が流れたのだった。

 

死んだと思っていたハジメと忍の生存。

その衝撃もあるだろう。

しかし、忍はともかく、ハジメの豹変っぷりに誰もが何と言っていいのかわからなかった。

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