もう1人のイレギュラーは反逆の覇王   作:伊達 翼

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第二十九話『フューレン、再び』

北の山脈地帯を背にブリーゼとアステリアが砂埃を舞い上げながら南へと街道を並走しながら疾走する。

目的地はフューレンだ。

 

ちなみにブリーゼの運転は当然ハジメで、隣にはユエがいて、そのさらに隣にはシアが座っている。

後部座席にはウィルの隣にセレナが座っている。

また、アステリアの方には忍の運転は変わらず、その後ろにシオンが乗っている。

ちなみにティオは…何故かブリーゼの荷台にいて、車体と荷台を繋ぐ窓から頭を車内に入れている。

 

「あのぉ~…本当にあのままでよかったのですか? 話すべきことがあったのでは? 特に愛子殿とは……」

 

そんな中、ウィルが気まずそうにハジメに声を掛ける。

 

「ん~? 別に、あれでいいんだよ。あれ以上、あそこにいても面倒なことにしかならないだろうしな。先生も今は俺がいない方が良い決断が出来るだろ」

 

「それは、そうかもしれませんが……」

 

「お前、ホントに人がいいというか何というか……他人のことで心配し過ぎだろ?」

 

そんな風に言うウィルに対してハジメは苦笑していた。

 

「ハッハッハッ、それがウィルの良いとこなんじゃないか? そうやって真摯に相手のことを気遣えるんだからよ」

 

と、そこへ忍も会話に参加する。

風の魔法で風圧などを調整しているので、普通に会話も可能なのだ。

 

「……いい人」

 

「いい人ですね~」

 

「いい人ね」

 

「いい奴じゃのぉ~」

 

「まぁ、いい人なのでは?」

 

そこにさらにユエ、シア、セレナ、ティオ、シオンと立て続けに"いい人"と褒められるウィルは嬉しさ半分微妙半分といった複雑な表情をする。

 

「あ、ありがとうございます……って私のことはいいのです。私は、きちんと理由を説明すべきだったのでは、と…そう言いたいのです」

 

「理由だと?」

 

「ほぉ?」

 

そんなウィルの言葉にハジメは眉をピクリと動かし、忍も感心したように耳を傾ける。

 

「えぇ。何故、愛子殿とわだかまりを残すかもしれないのに、清水という少年を殺したのか……その理由です」

 

「……言っただろ、敵だからって…」

 

「それは、彼を"助けない"理由になっていても、"殺す"理由にはなりませんよね? だって、彼はあの時、既に致命傷を負っていて、放っておいても数分の命だったのですから……わざわざ殺したのには理由があるのですよね?」

 

「……意外によく見てるんだな」

 

「ハッハッハッ、親友のそれに気付くとはやるじゃないの」

 

ハジメがどう答えたものかと考えている中、忍はただただ可笑しそうに笑っていた。

 

「……ハジメ、ツンデレ」

 

「………………」

 

『ツンデレ?』

 

ユエの言葉にハジメは黙秘を貫き、忍以外のメンツが首を傾げる。

 

「ツンデレとは、普段ツンケンしてるのに、時折見せるデレた時の言動のことを言うのさ」

 

「解説しなくていい」

 

忍の解説にハジメはゴム弾を発砲しようかと思っていると…

 

「……愛子へのお返し? それとも、ただの気遣い?」

 

「……もののついでだよ」

 

ユエに言われ、ハジメはそっぽを向いて運転に集中する。

 

その合間にユエによる説明が行われた。

簡単にわかりやすく言えば、愛子が幸利の死に責任を感じないように意識を逸らしたのだという。

 

そもそも幸利は魔人族に言葉にそそのかされていたものの、結局のところ自分の意志と欲望を優先して選択した結果が今回の"死"という形だったというだけだ。

さらに言えば、最終的に幸利に致命傷を与えたのは、逃げた魔人族である。

ハジメがトドメを刺さなくても時間が幸利を死へと誘っていただろう。

 

だが、それで愛子が納得するか?

と、問われれば答えはおそらくはノーだ。

最後の攻撃は明らかに愛子を狙ったものなのだから、それに"巻き込まれて幸利は死んだ"と勝手に解釈する可能性もあった。

そうした考えに至った時、ハジメは愛子の心が耐えられるだろうか?

と危惧した。

 

愛子とて、異世界召喚の被害者であり、不安も恐怖も感じているはずだ。

それでも今も頑張っているのは"先生"としての矜持を持っているからだろう。

そんな愛子を"先生"たらしめているのは"生徒"の存在があるから。

 

その矜持があるからこそ、逆に自分のせいで死なせてしまったという衝撃は大きく、下手をするとぽっきりとその心を折ってしまう可能性があった。

ハジメはこんなことで愛子に折られても困るという打算があったものの、それでも心配する気持ちも確かにあった。

 

それほどまでに愛子の説教がハジメに影響を与えたと言ってもいい。

例え、変心していても…その価値観が覆らなくても…先生には先生であってほしいのだと…。

ユエとシアの幸せのために説教してくれた恩師に義理を果たすべく、ハジメは幸利を"敵"として殺すことで強く印象付けることで、先生の心を守ろうとしたのだ。

 

そんなユエの説明を受けた一行の反応はというと…

 

「そういうことでしたか。ふふ、確かにツンデレですねぇ、ハジメさん」

 

「そういうことでしたか…」

 

「なるほどのぉ~、ご主人様は意外に可愛らしいところがあるのじゃな」

 

「意外よね」

 

「意外過ぎる」

 

「ハッハッハッ、流石は親友。アフターケアもバッチリだな!」

 

ハジメに向けられる一行の眼に生暖かさが宿る。

約一名、ケラケラと笑っているが…。

 

「……でも、愛子は気が付くと思う」

 

「………………」

 

無言でユエに視線を転じるハジメに、ユエは優しさを乗せた瞳を向ける。

 

「……愛子はハジメの先生。ハジメの心に残る言葉を贈れる人。なら、気が付かないはずがない」

 

「……ユエ」

 

「……大丈夫。愛子は強い人。ハジメが望まない結果には、きっとならない」

 

「………………」

 

その瞳を受け、ハジメも優しい表情になってユエを見つめる。

 

「はぁ~、また2人の世界を作ってます。いつになったら私もあんな雰囲気を作れるようになるのでしょう…」

 

「こ、これは何とも…口の中がなんだか甘く感じますね…」

 

「むぅ~、妾は罵ってもらう方が好みなのだが……ああいうのも悪くないのぉ」

 

「これを忍はずっと見てたのね」

 

「なんなのだ、一体…」

 

「ハッハッハッ、親友。運転中に2人の世界はやめとけって」

 

ハジメとユエのなんとも甘い雰囲気に当てられてブリーゼ車内のメンバーが居心地悪そうにしている。

特にシアは頬を膨らませて唇を尖らせている。

忍もその空気に当てられないように少しだけ距離を置く。

 

「それで、貴殿が覇王とはどういうことだ?」

 

ブリーゼとの距離が少し置いたところでシオンが忍に尋ねる。

 

「ん~、簡潔に言うと、俺の中には覇王の魂が宿っているんだ。7体全てのな。どういう経緯で俺の中に入ったかまでは知らないが…ともかく、大迷宮を創った解放者達7人と契約してた古の覇王達。俺はその能力を求めることにした。理由は…親友と同じく故郷に帰りたいからだ」

 

「故郷?」

 

「あぁ…実は俺と親友はアンタらの言うところの別世界の来訪者でな」

 

「なっ!?」

 

「この世界の神が召喚した神の使徒だなんて言われてるが、真実を知った以上…俺達は故郷へと帰る手段を探すことにしたのさ。ハッキリ言って誘拐されたも同然だしな。そこで神だのなんだのが立ち塞がるなら、俺達は噛み砕いて前に進む。そういう覚悟で旅をしてるんだ。ま、今回の場合は完全な寄り道だが…それでも収穫があったからな」

 

「…………………………」

 

忍の言葉にまじまじと忍の後頭部を見つめるシオン。

 

「既にオルクス大迷宮とライセン大迷宮は攻略し、俺達はそれぞれの神代魔法と、俺は覇王の能力を獲得した。次はグリューエン大火山だ。ま、その前にフューレンって商業都市にウィルを連れていかないと依頼達成にはならないからな」

 

そうしてシオンに色々と情報を開示していると…

 

ドパンッ!

 

ブリーゼから発砲音が聞こえてきた。

 

「なんだ?」

 

ふと気付けば少し距離が開いていた。

話に集中してて速度が落ちたのだろうか、と思って忍が再びブリーゼに並走するように速度を上げて追いつくと…

 

ドパンッ!

ドパンッ!

ドパンッ!

 

連射音が響くと同時に…

 

「あぁあん!」

「激しいのじゃ!」

「ご主人様ぁ~」

 

発砲音ごとにティオの妙に艶めかしい声が聞こえてきた。

 

「「……………………」」

 

シオンはどこか虚ろな瞳になっており、忍は何と声を掛けていいのか迷っていた。

そうこうしてる内にティオがブリーゼの中に侵入する。

 

「ハァハァ、全く……所構わずじゃな。しょうがないご主人様じゃ。じゃが、安心せよ。どのような愛でも妾は受け切ってみせる。だから……もっとしてもいいんじゃよ? もっと激しくしてもいいんじゃよ?」

 

「黙れ、変態。身を乗り出すな、こっちに寄るな。むしろ、今すぐそこのドアを開けて飛び降りろ」

 

「ッ!? ハァハァ……どこまでも妾を理解してくれるご主人様め。じゃが、断る。妾は、ご主人様について行くと決めたからの。竜人族としての役目も果たせそうじゃし、責任も取ってもらわねばならんし、別れる理由が皆無じゃ。ご主人様がなんと言おうと、ついて行くぞ。絶対に離れんからな」

 

ティオの変態発言に対し、冷たく対応するハジメだが、その一言でも感じるらしく表情が蕩けている。

しかし、断固とした主張を掲げている。

…………………とても台詞と表情が合っているとは言い難いが…。

 

「ふざけんな。何が責任だ。あれはただの殺し合いの延長だろ。殺されなかっただけマシだと思え。それに、竜人族の役目というなら勇者君がいるだろうが。あいつが召喚の中心なんだから、あいつのとこに行けよ」

 

「嫌じゃ。絶対に嫌じゃ。勇者とやらがどんな奴かは知らんが、ご主人様より無慈悲で容赦ないお仕置きをしてくれるとは思えん! それに見くびるでない! 既に妾は"ご主人様"と呼ぶ相手を決めておる。気分で主人を変える尻軽ではないわ!」

 

眼を"クワッ!"と見開いて拳を握りながら力説するティオだが…その根本にはハジメの情け容赦ないお仕置きが捨てられないという変態宣言である。

 

「あぁ、お嬢様にこんな性癖があったなんて…」

 

忍の後ろでシオンが泣いている。

 

「まぁ、その扉を開け放ったのは親友だからなぁ…」

 

その事実があるので、忍もハジメの弁護はしなかった。

 

「逃げても追いかけるからの? あちこちの町で、妾の初めてを奪った挙句、あんなことやこんなことをしてご主人様無しでは生きていけない体にされたと言いふらしながら、ご主人様の人相を伝え歩くからの?」

 

「お、お前なぁ~…」

 

「うわぁ、質が悪ぃ~」

 

ティオの脅迫まがいの言葉に心底嫌そうにティオを睨むハジメと、それを横で聞いて引き攣った表情になる忍。

 

「そう嫌そうな顔をするでない、ご主人様よ。妾は役に立つぞ。ご主人様達ほど規格外ではないが、あの戦いで証明は出来ているじゃろ? 何を目標としておるかわからんが、妾にもお供させておくれ。ご主人様、お願いじゃ」

 

「生理的に無理」

 

「っ!?!?! ハァハァ………んっ! んっ!」

 

破壊力抜群の一言に体を自分で抱き締めるようにして何かに堪えるような声を漏らす。

もはや、色々と手遅れだろう。

 

「……と言いたいところだが、何を言っても無駄なんだろ? 俺達の邪魔さえしなければもう好きにしろよ。俺には、もうお前をどうこうする気力自体が湧かない…」

 

が、ハジメの方が折れた。

 

「お? おぉ~、そうかそうか! うむ。では、これからよろしく頼むぞ、ご主人様、ユエ、シア、忍、セレナ。妾のことはティオでいいからの! ふふふ、楽しい旅になりそうじゃ。シオンも良いな?」

 

それを聞いてティオが嬉しそうに並走してる忍の後ろにいるシオンに声を掛けた。

 

「はぁ…………………はい、お嬢様」

 

虚ろな瞳で答えるシオンは遠くを見た。

 

「皆さま。お嬢様がご迷惑をかけると思いますが、何卒ご容赦ください。私も、覇王を見極めるために同行させていただきますので、よろしくお願い致します」

 

その後、気を取り直してティオとは逆にしっかりとした挨拶をするシオン。

そんなシオンの様子に、ユエはかつて憧れた竜人族の姿を垣間見たのか、少しだけイメージが回復するのを感じるような気がした。

まだ、幻想と消え去った訳ではない。

ティオが酷いだけで、シオンはきっと普通であると信じることにした。

 

こうして新たな旅の仲間を迎え、一行はフューレンへと向かう。

 

………

……

 

そうしてフューレンへと到着した一行はブリーゼとアステリアに乗ったまま門前の長蛇の列に並んだ。

ウルでの大立ち回りというか大暴れというか…余程の田舎でもない限り、一週間くらいで情報が出回ると予想したためにブリーゼなどのハジメ謹製のアーティファクトを隠すのをやめたのだ。

 

まぁ、待ってる間にシアの首輪をチョーカーに手直ししたり、前にいたチャラ男が絡んできてハジメがぶん投げたり、それに気づいた門番達に(こちらに非がないというように)説明したりしていた。

その後、ハジメ達のことをギルド支部長から通達されていたのか、順番をすっ飛ばしてフューレンの中へと入っていった。

 

そして、冒険者ギルドに向かい、中の応接室で待つこと5分。

 

バンッ!!

 

応接室のドアを文字通り蹴破って支部長のイルワ・チャングが入ってきた。

 

「ウィル! 無事かい!? 怪我はないかい!?」

 

以前の落ち着いた雰囲気などかなぐり捨てて、視界にウィルを捉えると挨拶もなく安否を確認するイルワは、かなり心配していたのだろうことがわかる。

 

「イルワさん。すみません……私が無理を言ったせいで、色々と迷惑を…」

 

「何を言うんだ。私の方こそ、危険な依頼を紹介してしまった。本当によく無事で……ウィルに何かあったらグレイルやサリアに会わせる顔がなくなるところだよ。2人も随分心配していた。早く顔を見せて安心させてあげるといい。君の無事は既に連絡してある。数日前からフューレンに来てるんだ」

 

「父上とママが……わかりました。すぐに会いに行きます」

 

「あぁ、そうしなさい。それと後で大事な話があるから、用事が済んだら来てくれ」

 

「? わかりました」

 

イルワの最後の言葉に首を傾げながらも、ウィルは両親の滞在先を聞くと、イルワとハジメ達に改めて礼を言ってからその場を後にした。

ウィルが出て行った後、イルワはハジメ達に頭を下げる。

 

「ありがとう。君達には本当に感謝の念しかない。まさか、本当にウィルを生きて連れ戻してくれるとは思わなかった」

 

「まぁ、生き残っていたのはウィルの運が良かっただけだろうさ」

 

「ふふ、そうかな? 確かに、それもあるだろうが……何万もの魔物の群れから守ってくれたのは事実だろう? 女神の剣様?」

 

にこやかに笑いながらハジメの演説時に言った二つ名を言うイルワに、ハジメは顔を引き攣らせる。

 

「ハッハッハッ、情報は既に入ってるってか?」

 

「ギルドの幹部専用だけどね。長距離連絡用のアーティファクトがあるんだ。私の部下が君達に付いていたんだよ。といっても、あのとんでもない移動用アーティファクトのせいで常に後手に回っていたようだけど……彼の泣き言なんて初めて聞いたよ。諜報では随一の腕を持っているんだけどね」

 

「なるほど」

 

イルワの苦笑いに忍が相槌を打つ。

 

「それにしても大変だったね。まさか、北の山脈地帯の異変が大惨事の予兆だったとは……二重の意味で君達に依頼して正解だったよ。数万の大軍を殲滅した力にも興味はあるが……聞かせてくれるかい? 一体、何があったのか」

 

「あぁ、構わねぇよ。だが、その前にユエとシアのステータスプレートを頼むよ。ティオは…」

 

「うむ、2人が貰うなら妾の分も頼めるかの?」

 

「……ということだ」

 

そんな風にハジメが要求すると…

 

「あ、俺にはステータスプレートを7つ用意してくれ」

 

忍が便乗するように要求した。

 

「な、7つも?」

 

「あぁ、ちょっと渡す相手が都合7人いるからな。セレナとシオンの分も含めて、な」

 

「ふむ…?」

 

「ま、その話も後で親友と一緒にするさ」

 

「………………いいだろう。ステータスプレート10枚だね」

 

「悪いね」

 

そうしてイルワは職員に真新しいステータスプレートを10枚持ってこさせ、その職員に退室を命じた。

 

その内、3枚はユエ、シア、ティオに渡され、残る7枚は忍が持っていき、セレナとシオンに渡した。

 

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セレナ 16歳 女

レベル:28

天職:覇狼の巫女

筋力:95

体力:100

耐性:75

敏捷:150

魔力:-

魔耐:-

技能:覇道巫女

 

-----

 

シオン 519歳 女

レベル:70

天職:皇龍の巫女

筋力:680 [+竜化状態4080]

体力:950 [+竜化状態5700]

耐性:900 [+竜化状態5400]

敏捷:750 [+竜化状態4500]

魔力:4290

魔耐:3940

技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮][+風纏]・支配巫女・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇][+雷属性]

 

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ユエ、ティオ、シオンは既に滅んだとされる種族固有のスキルを持ち、シアも種族の常識を完全に無視しており、いずれもステータスが特異なことになっている。

唯一セレナだけが一般的…かどうかはともかく、よくわからない技能を持っている以外は問題視されないだろう。

ただ、このパーティー内で言えば………多くは語るまい。

 

「いやはや……何かあるとは思っていましたが、これほどとは…」

 

そんなこと言っていつもの微笑みが引き攣ったイルワに対し、ハジメはお構いなしとばかりに事の顛末と情報を開示していく。

 

狂った神の遊戯、大迷宮の秘密、反逆者の本当の姿、神代魔法のこと、旅の目的、先のウルでの出来事など。

覇王に関しては忍が伝え、巫女の存在や覇王の能力についても簡単に説明した。

 

全てを聞き終わったイルワは、一気に10歳くらい歳を取ったような疲れた表情でソファに深く座り直した。

 

「……道理でキャサリン先生の目に留まるわけだ。ハジメ君とシノブ君が異世界人だということは予想していたが……実際は、遥か斜め上をいったね……」

 

「……それで、支部長さんよ。アンタはどうするんだ? 危険分子だと俺達を教会に突き出すか?」

 

その質問にイルワは佇まいを正すと、ハジメに非難じみた視線を送る。

 

「冗談がキツイよ。出来るわけないだろう? 君達を敵に回すようなこと、個人的にもギルド幹部としてもあり得ない選択肢だよ。それに、見くびらないでほしい。君達は私の恩人なんだ。そのことを私が忘れることは生涯ないよ」

 

「……そうか。そいつは悪かったな」

 

ハジメが肩を竦めながら謝罪する。

 

「私としては、約束通り可能な限り君達の後ろ盾になろうと思う。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思う。一応、後ろ盾になりやすいように、君達の冒険者ランクを"金"にしておく。普通、"金"を付けるには色々と面倒な手続きがあるんだが……事後承諾でも何とかなるよ。キャサリン先生と私の推薦、それに"女神の剣"という名声があるからね」

 

他にもフューレンにいる間はギルド直営の宿のVIPルームを使わせてもらったり、イルワの家紋入り手紙を用意してくれたりした。

何とも大盤振る舞いなイルワだが、今回のお礼の他にもハジメ達とは友好な関係を築いておきたいという、かなりぶっちゃけたことも言っていた。

 

イルワと別れた一行は早速フューレン中央区にあるギルド直営の宿のVIPルームで寛いでいた。

途中、ウィルが両親であるクデタ伯爵夫妻と共に訪ねてきたりもした。

筋の通った人物であるのか、しきりにお礼をしたいと言っていたが、ハジメも忍も辞退したので、何か困ったことがあったら力になると言い残して去っていった。

 

VIPルームは広いリビングの他に個室が四部屋付いていて、その全てに天蓋付きのベッドが備え付けられており、テラスからは観光区の方を一望出来るようになっている。

リビングの超大型ソファに寝転ぶハジメに膝枕するユエと、足元に座るシア。

忍はセレナを連れてテラスに出ている。

ティオとシオンは物珍しげにキョロキョロとしている。

 

「とりあえず、今日はもう休むか。明日は消費した食材とかの買い出しとかしないとな」

 

ハジメが明日の予定を口にすると…

 

「あのぉ~、ハジメさん。約束……」

 

シアから待ったがかかる。

 

「……そうだったな。観光区に連れて行くんだったか」

 

頑張ったシアにご褒美として一日付き合う約束をしていたハジメだった。

 

「それなら俺らが行っとくから、親友はゆっくりデートでも楽しめばいいさ」

 

「……ん、シノブの言う通り。買い物は私達で済ませておくから、シアを連れてってあげて?」

 

テラスから戻ってきた忍がそう言うと、ユエもシアの後押しをするように言う。

 

「……いいのか?」

 

そのハジメの確認に忍とユエが頷く。

ただ…

 

「ん……その代わり……」

 

「代わりに?」

 

優しげな表情から一瞬にして妖艶なものに変わると、舌なめずりをしてからハジメの耳元に口を近付けて…

 

「……今夜はたくさん愛して」

 

そう囁いていた。

 

「……ん」

 

ユエみたいな返事をするハジメを見て…

 

「ごちそうさまで…」

 

「慣れって怖いわ…」

 

「……気が付けば、ごく自然に2人の世界が始まる。ユエさん、パないです」

 

「ふむ、それでもめげないシアも相当だと思うがのぉ。まぁ、妾はご主人様に苛めてもらえれば満足じゃから問題ないが……シアは苦労するのぉ~」

 

「………………///」

 

残りのメンバーがいろいろ言っている。

シオンだけ頬を染めて顔を逸らしたが…。

 

こうして、その日の夜は更けていく。

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