『グリューエン大火山』
アンカジ公国より北方に約100キロ進んだ先に存在する直径5キロに標高3000メートル程の巨石で、普通の成層火山と違って溶岩円頂丘という平べったい見た目をしており、山と言われているが、どちらかと言えば巨大な丘と言った方がしっくりくる形状をしていた。
七大迷宮の一つとして認識されている『グリューエン大火山』だが、『オルクス大迷宮』のような新人訓練や冒険者の出入りが少ない。理由は色々あれど一番の問題点があった。
「こりゃ、また…」
「うん。流石に俺もアステリアで特攻する気にはならんかな」
ブリーゼの中でハジメと忍が眼前の問題を見て…
「「(あと、天空の城もビックリだよな)」」
そんな感想を抱いていた。
そう、その問題点とはグリューエン大火山をすっぽりと覆うが如く巨大な渦巻く砂嵐に包まれているのだ。しかも砂嵐の中には魔物も生息しているので、魔物側からしたら奇襲のし放題である。それ故に冒険者達もこの砂嵐を突破するにはそれ相応以上の実力が求められているのだ。
「徒歩でなくてよかったですねぇ~」
「さしもの妾もこの砂嵐は勘弁じゃの…」
「……ん」
いくら規格外な強さを誇るこのパーティーでもこんな巨大砂嵐を徒歩では行きたくないらしい。まぁ、当然と言えば当然と言えるが…。
「よし、じゃあ行くぞ」
ハジメの掛け声と共にブリーゼが加速し、砂嵐の中へと突っ込んでいく。事前情報からブリーゼの走行なら5分くらいで突破可能だろうと予測は立てていた。
その途中、サンドワームが複数追跡してきたが、ユエとティオの環境を利用した風刃で乗り切ったり、ブリーゼ後部に搭載された手榴弾で粉砕しながら進んでいった。
「…………なぁ、親友。この車、一体いくつギミックを隠してるんだ?」
シアと共にお荷物状態な忍が興味本位で運転中のハジメに尋ねる。
「そうだな。最終的には変形して人型汎用兵器…巨大ゴーレムになる」
「「「………………………」」」
「そりゃたまらんね。実際にあれば、だが…」
ハジメの答えに女性陣は沈黙し、忍はなんとなく察したのでそのように返していた。
「まぁ、流石にそりゃ冗談だがな。憧れるのは間違いない」
「親友ならいつか絶対にやらかすに違いないと俺は思うね」
「「「(コクコク)」」」
ハジメの言葉に忍がそう呟けば、女性陣も頷いていた。
そうして、砂嵐を無事突破した一行の目の前には巨大な岩山が現れる。
『グリューエン大火山』の入口は山頂にあるということで、一行はブリーゼで出来る限りその岩山を登り、ブリーゼでの走行が難しくなってきたところで下車して徒歩で山頂へと向かうことにした。
「うぅ~…あ、暑い、です~」
「………ん…」
「確かにな。こりゃタイムリミット云々関係なく、さっさと攻略するに限る」
「流石にオルクスとかには熱耐性のスキルはなかったなぁ…」
「ふむ? 妾的にはわりと適温なのじゃが……そうか、熱さに身悶えることもないのか。少し残念じゃ」
ハジメ達が火山の熱に参っている中、ティオだけは平然としていた。流石は腐っても龍種、この環境を適温という辺り、頑丈さが窺える。発言は変態だが…。
「ま、暑いのは仕方ないとして、とっとと攻略しようや」
「そうだな…」
忍の気を取り直した言葉で、一行は山頂へと進む。しかし、そこは規格外パーティー。一時間もしない内に山頂に辿り着き、迷宮への道である階段を発見する。
「よし、やるか!」
「ん!」
「はいです!」
「うむ!」
「応!」
グリューエン大火山、攻略開始。
………
……
…
『グリューエン大火山』の内部構造は先に攻略したオルクスやライセンと異なり、かなりとんでも空間となっていた。具体的に言うと、マグマが文字通り宙を川のように流れており、当然ながら地面にもマグマが流れているので攻略者は地面と宙、2種類のマグマに気を付けないとならない。さらに言えば、壁のいたるところからマグマが噴出するという天然のブービートラップがあるので、普通なら慎重に進まなければならない。
しかし、ハジメには『熱源感知』というスキルをオルクスで入手しており、マグマの噴出を事前に察知することが出来た。ちなみに忍は運悪く習得はしていないので、ハジメに任せっきりになっている。
そして、この大迷宮最大の特徴…茹だるような暑さである。あらゆる場所にマグマが流れているので、当然と言えば当然なのだが、その暑さは攻略者の集中力を乱し、いらぬミスを引き起こしそうになる。ハジメ達に関して言えば、現状はまだミスしていないが…。
そうこうしている内にハジメ達は静因石が発掘された後であろう広間に辿り着き、そこで小粒程度の静因石を宝物庫に回収していた。そして、攻略組一行はグリューエン大火山での冒険者が降った最高階層…つまり、7階層から先へと進むのだった。
8階層に辿り着いた瞬間…
ゴオオオオ!!!
強烈な熱風がハジメ達を襲い、その後から追撃でもするかのように巨大な火炎の渦が襲い掛かってきた。
「っ!」
忍が咄嗟に前に出ると、左手を突き出して円状の闇を展開して火炎の渦を闇で呑み込む。そうすることで火炎の渦を放ってきた襲撃者の正体がわかる。
『ギュォオオ!!』
雄牛である。しかもマグマの上に立っていたり、マグマを纏っていたりと…どう見ても普通の雄牛ではない。
「なぁ、親友。こういう時、俺はマタドールになるべきなのか?」
「んなことしてる場合じゃねぇだろ!」
今にも突進してきそうな雄牛に対し、忍が左手を引っ込めて今度は右手を突き出して再び闇を展開すると、そこから"複製"した火炎の渦を雄牛に向かって放っていた。
ドゴオォォッ!!
忍の魔力を含めた火炎の渦は雄牛を壁まで吹き飛ばしていたが、大したダメージは与えられていないようだった。
「やっぱ、火属性だとこんなもんか…」
「マグマ纏ってる時点である程度わかってたことだけどな」
そんな会話をしている合間にも雄牛は態勢を整えて突進してくる。それを見てハジメがドンナーを抜こうとすると…
「ハジメさん! ここは私に任せてください!」
シアが何やら気合を入れていた。ハジメが魔眼石でシアの得物であるドリュッケンを見ると、その意図を察してドンナーを抜くのをやめて任せることにした。
「殺ってやるですぅ!」
任されたことを確認すると、シアが軽くステップを踏んでから突進してくる雄牛に向かって飛び掛かる。体を縦に一回転させて遠心力を乗せたドリュッケンを雄牛の頭部目掛けて思いっきり振り下ろす。いつもならこれだけでも十分なのだが、ハジメが新たにドリュッケンに組み込んだ機能がここで発揮される。ドリュッケンが直撃した直後、直撃した部分を中心に淡青色の魔力の波紋が広がると共に凄まじい衝撃が発生して雄牛の頭部を爆砕していた。そして、シアはドリュッケンを支点に再び一回転すると、頭部を失った雄牛を飛び越えて綺麗に着地する。ちなみに雄牛の死体は突進した勢いのまま地面に崩れ落ちていく。
「お、おふ…は、ハジメさん。やった本人である私でも引くぐらいには凄い威力ですよ、この新機能…」
「あぁ、みたいだな。"衝撃変換"…どんなもんかと思ったが、これはなかなか使い道がありそうじゃねぇの」
「また物騒な発想が出来てそうだな。まぁ、俺も人のことは言えねぇかもだが…」
この"衝撃変換"というのは先のオルクス大迷宮で魔人族との戦闘の際、光輝を追い詰め、ハジメのパイルバンカーで無残にもミンチにされた馬頭が持っていた固有魔法で、能力は文字通り魔力を衝撃に変換するというものだ。その馬頭の肉をハジメは杭を回収する際にこっそりと入手し、忍と一緒に食べたのだ。並みの魔物ではもうステータスも上がらないし、能力も得られないハジメと忍だが、チート級の光輝の限界突破でも倒せなかった魔物の肉ならば、或いは、ということで実食した結果、ステータスはちょい上がり、馬頭の固有魔法を2人揃って習得することが出来た訳である。その衝撃変換をハジメは生成魔法で鉱石に付与し、ドリュッケンを改造したのだ。
「……ハジメ」
「ん? あぁ、そうだな…考察はこのくらいにして先を急がないとか」
ユエの言葉にハジメは雄牛の観察をやめて先を進むことにした。
それから階層が下がる度に魔物のバリエーションも増えていき、刻一刻と暑さも増していった。
「あ゛、あづいですぅ~…」
「……シア、暑いと思うから暑い。流れてるのはマグマじゃなくてただの水…ほら、涼しくなった。ふふ」
「これはマズいのぉ。ご主人様よ。ユエが壊れかけておるのじゃ。目も虚ろじゃし」
この暑さに唯一対応しているティオはともかく、冷房系アーティファクトを事前に用意して身に付けているハジメ達でもダウン寸前状態になっていた。焼け石に水とはよく言ったもんだと、痛感しているハジメは休憩が必要と判断し、次の広間でマグマから比較的離れている壁に錬成で横穴を開け、そこにユエ達も招き入れる。それからマグマの熱気が直接入り込まないように最小限まで穴を閉じてから、小さな部屋全体に"鉱物分離"と"圧縮錬成"を行って表面だけを硬い金属でコーティングしてマグマの噴出やマグマに潜む魔物からの奇襲を防止する。
「ユエ。氷塊を出してくれ。少し休憩しよう」
「賛成~。でなきゃその内ミスしそうで怖い」
「……ん、了解」
虚ろな目でユエが氷系魔法で氷塊を部屋の中心に出し、ティオが気を利かせて風系魔法で冷気を部屋全体に行き渡らせる。
「うっはぁ~~、生き返りますぅ~~」
「……んみゅ~~」
熱気から解放された涼しさに女の子座りで崩れ落ちたユエとシアを見ながらハジメが宝物庫から人数分のタオルを取り出して配っていた。
「ユエ、シア。ダレるのもいいが、汗くらいは拭いとけ。冷えすぎると、今度は逆に動けなくなるからな」
「……ん~」
「はいですぅ~」
ハジメに渡されたタオルをノロノロと広げながらユエとシアが汗を拭おうとする中、ティオがハジメと忍に話しかける。
「ご主人様もシノブも、まだ余裕そうじゃな?」
「お前ほどじゃない。だが、この暑さは流石にヤバい。もっと良い冷房系アーティファクトを揃えるんだったな」
「いやいや、そう見えてるだけで実際はキッツいのなんの。こりゃ最下層まで行くまでにちと時間が掛かりそうだよな」
「化け物コンビでも参る程ということか。おそらくは、それがこの大迷宮のコンセプトなのじゃろう」
暑さに強くても汗を掻かないという訳ではないので、ティオも渡されたタオルで汗を拭いながらそんなことを言うと、ハジメと忍がティオの最後の方の言葉に首を傾げる。
「「コンセプト?」」
「うむ。皆から色々と話を聞いて思ったのじゃが、大迷宮は試練なのじゃろう? 神に挑むための……なら、それぞれに何らかのコンセプトでもあるのかと思っての。例えば、『オルクス大迷宮』は数多の魔物とバリエーション豊かな戦闘を経て経験を積むこと。次に『ライセン大迷宮』、魔法という強力な力を封じられた上でのあらゆる攻撃への対応力を磨くこと。そして、この『グリューエン大火山』は…暑さによる集中力の阻害と、その状況下での奇襲への対応を磨くため。まぁ、オルクスもライセンも話で聞いただけじゃから何とも言えんが、少なくともこのグリューエン大火山はそのように感じての」
「なるほどな。攻略することに変わりないから気にしたこともなかったが、言われてみればそうかもな。試練自体が解放者達からの"教え"になってるってことか」
「ほへぇ~、そこまで意味深なもんだったんだな。大迷宮って…」
ティオの考察にハジメも忍も妙に納得してしまった。ドMの変態というレッテルが無ければ、知識深く思慮深い肉感的で匂い立つ色気がある理知的な黒髪美女なのに、とハジメは物凄く残念なものを見るような眼差しをティオに向ける。
そんなハジメの視線を知ってか知らずか、ティオの掻いた汗が胸の谷間に吸い込まれていき、何となく顔を逸らすハジメ。だが、逸らした先では今度はユエとシアが際どい姿をしていたので、ハジメの視線はユエに吸い込まれていく。ちなみに忍は忍で部屋に入ってから女性陣を見ないようにずっと壁の方を見てたので、特に気にした様子はなかったが…。
「(やれやれ。ラブコメってんなぁ~)」
気配やら匂いやら騒がしい声やらでハジメ達の行動を把握してしまったので忍は肩を竦めていたりする。
「(ん~…ここの覇王ってどんなもんなのかねぇ)」
背後で行われているラブコメ(?)を無視し、忍はここの覇王に興味を抱いていた。
………
……
…
それから一行はちょっとしたアクシデントによって、グリューエン大火山の50階層くらいの位置にいた。何故、"くらい"と曖昧な表現なのかというと、現在ハジメ達は宙を流れる大河の如きマグマの上を小舟のようなものでどんぶらこっこと流されているからだ。
「これがこの迷宮の恐ろしさか…」
「まぁ、親友にしては確かに珍しく迂闊だったな」
何故、このような事態になってしまったのか。それは先程言ったアクシデントに起因する。
そのアクシデントとは、マグマの動きが不自然なことに気付いたハジメ達はその不自然な部分に静因石があることにも感付く。そこでハジメは"鉱物分離"のスキルを使い、静因石だけを取り出すことにしたのだ。が、これがいけなかった。静因石で抑制していたマグマが静因石を取り除かれたことでダムが決壊するかの如く壁から噴き出し、ハジメ達を囲んでしまったのだ。ユエの結界でなんとか全滅はしなかったが、このままではいかんと即席で小舟(金剛で付与強化している)を作り、その上に全員が避難してマグマに流されることになったのだ。ちなみにシアの咄嗟の判断で重力魔法の付与効果で小舟の重さを軽減したのでマグマに沈むことはなかった。
それがこの事態に繋がり、今現在の正確な階層が不明であるのだ。
そうこうしている合間にも川下りならぬマグマ下りでどんどん下層へと下っていく一行は途中で遭遇する魔物を殲滅し、マグマの滝から転覆しないように落ちたりしていき、遂に終着点へと辿り着くこととなる。
そこはライセン大迷宮の最終試練の部屋よりも、かなり広大な空間だった。ライセンとの違いは球体状ではなく、自然をそのまま活かしたような歪な空間であり、正確な広さは把握できなかったが、それでも直径3キロメートル以上はありそうな空間だった。地面のほとんどはマグマで満たされ、所々に岩石が飛び出していたり、周囲の壁も大きくせり出していたり、逆に削られている場所もある。そして、空中にはこの迷宮の名物なのか、マグマの川が流れており、そのほとんどが下のマグマの海へと消えていっている。
「~♪ こりゃまるで地獄の釜だぜ」
口笛一つ吹いて忍がこの場を言い表すだろう表現の言葉を呟く。
そんな中、マグマの海の中央に小さな島が見える。その島はマグマの海面から10メートルはせり出している岩石の島で、その上をマグマのドームが覆っており、まるで小型の太陽を思わせるものであった。
「……あそこが住処?」
「階層の深さ的にもそう考えるのが妥当だが…」
「もしもそうならガーディアンがいるしなぁ~」
「ショートカットしたみたいですし…もう通り過ぎたとかないですかね?」
「それは…どうじゃろうな?」
などという会話をしながらも一切の油断した様子もない一行。
と、次の瞬間、宙を流れるマグマからマグマの塊が弾丸の如く撃ち出された。
「任せよ!」
ティオが魔法を発動し、炎塊でもってマグマを迎撃していた。この攻撃が戦闘開始の狼煙となったようで、マグマの海やマグマの川から今のマグマの塊と同規模のものがマシンガンの如く撃ち出された。
「散開しろ!」
ハジメの声に小舟を捨てて全員がそれぞれ別の足場へと散開し、マグマの弾丸を迎撃していく。そんな中、ハジメがユエに迫るマグマを迎撃し、僅かな隙が出来たことでユエが魔法を発動させる。
「『絶禍』」
重力魔法の星がマグマを吸い込み、その超重力で押し潰していく。これによって出来た隙を見逃さず、ハジメが中央の島を調べようと"空力"で跳ぶ。
が、しかし…
『ゴァアアアア!!』
「っ!?」
完全な不意打ちでマグマの海から蛇のような魔物が現れてハジメを急襲する。その急襲をハジメはとんでもない反射神経で避け、蛇の頭を銃撃したのだが…
「なにっ?!」
なんとこの蛇、マグマだけで体が構成されており、核である魔石を潰さないと倒せないと判明した。その蛇の追撃を躱してハジメが再度島へと向かおうとするも、さらに複数の蛇がマグマから現れてハジメを奇襲する。その奇襲を本能的な勘で避け、後退したハジメの元にユエ達も合流する。
「さてはて、こいつらがガーディアンか。親友の見立ては?」
「おそらくは、バチュラム系の魔物と一緒だ。どっかに核…魔石があって、それで動いてんだろ。流石に俺の魔眼石でもマグマが邪魔で特定できないが…それを壊せば、倒せるだろ」
そんな会話をしてる合間にもマグマから現れる蛇は20体にまで増えていた。それを見ながらもハジメの見解に頷き合うと同時に20体もの蛇も襲い掛かってきた。
「では、先陣を切らせてもらおうかの!」
そう言ってティオが両手を突き出し、黒き魔力砲撃…竜人族の『ブレス』を放っていた。これにより、一気に8体もの蛇を消滅させていた。その空いた包囲の穴から飛び出すハジメ達だが、さっきのティオの攻撃で減ったはずの蛇の数は20体に戻っていた。
「どういうことだ? 倒すことがクリア条件じゃないのか?」
ハジメが頭を捻っていると…
「ハジメさん! なんだか岩壁が光ってますよ!?」
「なんだと?」
シアが中央の島の岩壁の変化に気付き、それを見たハジメが"遠見"のスキルで確認したところ、オレンジ色に輝くのは何らかの鉱石で、それが規則正しく並んでいるのだ。そして、輝いている鉱石の数は8個。ティオが倒した数と一致する。そして、鉱石の数は推測で100個だと予想する。
「つまり、あれか。この状況で、蛇を100体も倒さないとクリアしたことにはなんねぇのか」
「なるほどな。てことは、あと92体か」
ハジメが推測を口にし、忍が残り数を計算していると…
「残念じゃが、あと91体じゃよ!」
なんだかんだ言いつつティオが追加で蛇をもう1体倒したらしい。
「ご主人様よ! 妾が一番多く倒したら
「いや、そんn…」
「なっ!? ティオさんだけズルいです! そんなの私も当然、参戦しますよ! ハジメさん、私も勝ったら一晩ですぅ!!」
「だから、おま…」
「……なら、私も2人っきりで一日デート」
「……………………」
ティオから始まり、シア、ユエとそれぞれ勝手な要望を言うと、女性陣が蛇を殲滅するが如く撃退していき始めた。当の景品にされたハジメは置いてけぼりを食らいつつも…
「ハッハッハッ、モテる男は辛いね、親友」
「……ま、楽しそうだからいいけどな」
「あとで、白崎さんにもフォローしとけよ」
「……善処しよう」
そんなこと言い合い、男2人も蛇撃破に動き出す。
そうして大迷宮のコンセプトをガン無視して攻略を進める一行は蛇達を殲滅していき、最後の1体にハジメがトドメを刺そうとドンナーの引き金を引いた。
だが、その時だった。
ズドォオオオオオオ!!!
ハジメの頭上より、極光が降り注ぎ、ハジメと最後の蛇を呑み込んでいた。