もう1人のイレギュラーは反逆の覇王   作:伊達 翼

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第四十六話『帝国崩しと亜人解放』

 ヘルシャー帝国を象徴する帝城。それは帝都の中にありながら周囲を20メートル近くある深い水路と魔法的な防衛措置が施された堅固な城壁で囲まれており、水路の中には水生の魔物すら放たれている。さらに城壁の上にも見張りが巡回しており、入り口は巨大な跳ね橋で通じている正門のみとなっている。

 

 帝城に入れる者も限られており、基本的には魔法を併用した入城許可証を提示しなくてはならなく、跳ね橋の前にある巨大な門型の詰め所での検査も容赦ない。正規の手続きを踏んだとしても身体検査や荷物検査など徹底されている。もし、不埒な者がいようものなら、魔物の放たれた水路に突き落とされることもあるとかないとか…。

 

 それほど厳重な警備体制を敷いた帝城に乗り込むのは至難を極める。が、ハジメ達は光輝の勇者という肩書を利用し、堂々と正面からの侵入をしようとしていた。

 

 少しの混乱はあったものの、詰め所で待機してもらっていた一行の元へ、1人の大柄の帝国兵がやってきて部下にリリアーナの元へと案内させると言っていた。

 

 その際、その帝国兵『グリッド・ハーフ』がシアの存在に気付き、シアにかつてハウリア族を襲った帝国兵のことを思い出させる。グリッドこそがその時の隊長だったのだ。しかし、ハジメとユエの無言の激励でシアは当時の恐怖を克服し、毅然とした態度でグリッドに言い返す。そして、グリッドが邪魔だったハジメの言葉の切れ味もあって一行はリリアーナの元へと案内された。

 

 リリアーナの待つ部屋に案内された一行だったが、ハジメがリリアーナの質問に対してのらりくらりと適当なことを言いつつ、帝国との協議内容を聞いたり、シアとグリッドとの関係を話したりで時間を潰していると、遂に皇帝との謁見の時間がやってきた。

 

 皇帝が待つ応接室に案内された一行。そこには既に30人は座れるだろう縦長のテーブルの上座に頬杖をついて不敵な笑みを浮かべる男『ガハルド・D・ヘルシャー』が座っており、その背後には如何にも"出来る"とわかる研ぎ澄まされた雰囲気を纏った2人の男が控えていた。

 

「(なぁ、親友)」

 

「(あぁ、わかってる)」

 

 部屋に入った一行の内、ハジメと忍が念話で話し合う。気配と匂いで壁に2人、天井に4人、入ってきた扉が閉まると同時に2人、計8人の手練れが何らかの準備をしていると…。

 

「お前等が、南雲 ハジメと紅神 忍か?」

 

 一行が中に入るなり、ガハルドはハジメと忍に向けて鋭い視線を向けると共に異様なプレッシャーを叩き付けていた。

 

 流石は数十万もの荒くれ者共を力の理で支配する男の威圧。普通の相手なら、気押されてしまうか気絶してしまうだろう。同じ王族であるリリアーナは少し苦しそうに、光輝達勇者パーティーは思わず後退る。

 

 しかし、そんな強烈なプレッシャーの中、ハジメ、忍、ユエ、シア、ティオ、香織の6人は平然としていた。一番経験の浅い香織ですらガハルドのプレッシャーの中を平然としている。伊達に大迷宮を攻略した訳ではなく、さらには"悪食"なんて太古の化け物とも戦って生き残ったのだ。いくら皇帝の威圧だろうと、大迷宮攻略者にとってはそよ風にも等しいのだ。

 

 その様子を見て面白そうに口の端を吊り上げるガハルドに問われた2人が返事をする。

 

「えぇ、俺が南雲 ハジメですよ。お目に掛かれて光栄です、皇帝陛下」

 

「同じく紅神 忍です。陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう」

 

『!?』

 

 忍はともかく、ハジメの対応に光輝達が目を見開いて驚く。

 

「ククク…思ってもいないことを。そっちの紅神 忍はともかく、南雲 ハジメ。いつもは傍若無人とした態度らしいじゃねぇか。うん? 何処かの姫様が対応の違いに泣いちまうぞ?」

 

 ガハルドの言葉にハジメがチラッとリリアーナを見る。それに対してりりあはプイっとそっぽを向いてしまう。

 

「(ん~…フラグの匂いが…しなくもないか?)」

 

 その様子を横目で見てた忍が内心で少しニヤニヤしてた。

 

「どっちも似合わねぇ喋り方してねぇで、普段通りに話せよ。俺は素のお前達に興味があるんだからよ」

 

「……はぁ、そうかい。じゃ、普段通りで」

 

「ハッハッハッ、堅苦しいのは性に合わんからな」

 

「クク、それでいい」

 

 そうしながらも一行は席に着いていく。

 

 ガハルドがハジメと忍から視線を外すと、ハジメの傍に陣取るように座るユエ達を興味深げに見て、その中のシアを見て意味深げな視線を向ける。が、すぐに光輝達の方に視線を向けると、光輝を無視して雫をロックオンする。

 

「久しいな、雫。俺の妻になる決心はついたか?」

 

 帝都を歩いてた時、ちょろっと話題に挙がったが、雫は皇帝に気に入られて求婚されていたのだ。

 

「おい! 雫はもう断っただろう!」

 

 雫の返答よりも早く光輝が反応するが、ガハルドは鼻で笑うと光輝を無視した。光輝が額に青筋を立てるのを見て雫が澄まし顔で答える。

 

「前言を撤回する気は全くありません。陛下の申し出はお断りさせていただきます」

 

 というような会話があったものの、ガハルドは諦めた様子が微塵もなく、むしろますます気に入った様子だった。しかも何気に正論を言うので、雫としても対応に困っていた。

 

 ふと嫌そうにそっぽを向いた先で雫とハジメの眼が合う。

 

『流石は苦労人(笑)』

 

 目は口程に物を言う、とはよく言ったもので、ハジメの面白さを多分に含んだ色の視線を受け、イラッとした雫は手近にあった角砂糖を指で弾いていた。所謂、指弾だ。ハジメも使ったことはあるが、ハジメのそれとは比較にはならないものの、それでも結構な勢いで飛んだ角砂糖はハジメの澄ました顔面に飛来し…

 

パクッ!

 

「もごもご……ごっくん」

 

 その角砂糖はハジメが口でキャッチすると、これ見よがしに口を動かして角砂糖の甘さを堪能してから胃に収めた。それを見て雫は悔しそうな顔をしたのに対し、ハジメは澄まし顔のままだった。

 

「(完全にじゃれてるよな。この2人…)」

 

 忍が紅茶に口を付けながらもハジメと雫のじゃれ合いを内心呆れて見ていたのと同じく、ユエと香織もジト目で2人のやり取りを見ていた。

 

「ふんっ。面白くない状況だな。南雲 ハジメ。お前には色々と聞きたいことがあるが、これだけは聞かせろ」

 

「あぁ? なんだよ?」

 

「お前。俺の雫をもう抱いたのか?」

 

『ぶふぅーー!!?』

 

 真剣な表情でガハルドが唐突に言った言葉に紅茶を飲んでいた数名が紅茶を噴いた。

 

「陛下……最初に尋ねるのが、それですか…」

 

 思わずガハルドの背後にいた護衛の1人がそう呟いていた。

 

「ハッハッハッ、楽しい皇帝陛下じゃないの。なぁ、親友?」

 

「どこかだよ…」

 

 忍は笑っていたが、ハジメは心底面倒そうな顔をしていた。

 

「ちょっ、陛下! いきなり何をっ……!」

 

「雫。お前は黙ってろ。俺は南雲 ハジメに聞いてんだからよ」

 

 雫が何か言いたそうだったが、ガハルドはそれを無視してハジメを睨む。

 

「今のを見てどっからそんな発想に行き着くんだよ」

 

 そんなガハルドに対し、ハジメは呆れている。

 

「どうやら、雫はお前に心を許しているようだからな。態度からして"ない"とは思うが、念のためだ」

 

「はぁ、あるわけないだろ?」

 

「……ふむ。嘘はついてないな。なら、雫のことをどう思ってる?」

 

「八重樫のことを…?」

 

 ガハルドに言われ、ハジメは雫に視線を向ける。ハジメに見つめられた雫の表情は、なんか大変なことになってた。若干、雫の耳が赤くなり始めたような気がしないでもないが…。

 

 ちなみにガハルドの質問で周囲の目がハジメに釘付けになっている。ユエ達や光輝達の様々な意味が込められた視線が突き刺さっているとも言うが…。

 

 そして、少しの間考えて出したハジメの答えは…

 

「……オカンみたいな奴」

 

「ぷっ!」

 

 ハジメの答えに忍が思わず噴き出してしまい、笑いを堪えるので必死そうな感じだった。

 

「OK、その喧嘩買ったわ。表に出なさい、南雲君! あと、ついでに紅神君も!」

 

 さっきまでの微妙な雰囲気は何処へやら、据わった視線の雫が椅子から立ち上がりかけ、光輝と鈴が慌てて腕を押さえて止めに入る。

 

「……まさかの返答だったが…まぁいい。雫、うっかり惚れたりするなよ? お前は俺のモノなんだからな」

 

「だから、陛下のモノでもなければ、南雲君に惚れるとかありませんから! いい加減、この話題から離れてください!」

 

「わかったわかった。そうムキになるな。過剰な否定は肯定と取られるぞ?」

 

「ぬっぐぅ……!」

 

 ガハルドの正論に雫が不機嫌そうにドカッと椅子に座り直す。それを隣の鈴が宥めている。

 

「南雲 ハジメ。お前も雫に手を出すなよ?」

 

「興味の欠片もねぇから安心しろ。つか、ホントに無駄話しかしてねぇな。これ以上、無駄話するんなら退出したいんだが?」

 

「無駄話とは心外だな。新たな側室…もしくは皇后が誕生するかもしれない案件だぞ? 帝国の未来に関わるというのに……まぁいい。確かに話したかったのは、雫のことじゃない。わかってるだろ? お前達の異常性についてだ」

 

 雫を絡めることでハジメと忍の観察する時間を稼いでいたガハルドが雰囲気をガラリと変えて本題を切り出す。

 

「リリアーナ姫からある程度は聞いている。お前達が大迷宮攻略者であり、そこで得た力でアーティファクトを創り出せると。特に南雲 ハジメの技術力は凄まじく、魔人族の軍勢を一蹴し、二ヶ月は掛かる道程を僅か2日足らずで走破する。そんなアーティファクトを……真か?」

 

「あぁ」

 

「そして、そのアーティファクトを王国や帝国に供与する意思がないというのも?」

 

「あぁ」

 

「ふん、一個人がそれだけの力を独占か。そんなことが許されると思っているのか?」

 

「誰の許しがいるんだ? 許さなかったとして、一体アンタらに何が出来るんだ?」

 

 ハジメの簡潔な返しにガハルドの眼が細められ、プレッシャーが増していく。

 

「ハッハッハッ、流石は親友。ブレないねぇ~」

 

 今の返しにケラケラと笑っている忍にガハルドが視線を向けた。

 

「そういうお前はどうなんだ? 紅神 忍?」

 

「およ? 俺かい?」

 

「南雲 ハジメの影に隠れがちだが、お前だって攻略者だろう? つまり、南雲 ハジメと同等の力を得ているはずだ。それを俺達に貸す気はないのか?」

 

「無いね」

 

「お前も即答かよ。理由は?」

 

「俺の力は俺のもんさ。俺がどう使おうと俺の勝手じゃん? だって俺、覇王だし」

 

「覇王、か…」

 

「そ。あと、そんなことして親友と事を構えたくないってのもあるしな。親友とは刃を交えたくないのよ。親友とガチに戦うの面倒だし」

 

 忍の返答にガハルドが一瞬眉をピクリとさせるが、背後の護衛はそうともいかなかったようで殺気が滲み出ている。それと共に場の緊張感が高まっていくのが肌で感じる中…。

 

「「……………………」」

 

 ハジメが視線を天井や壁に向け、忍が指を鳴らそうと手をユラユラと動かしている。それらの意図を察したのか…。

 

「はっはっは、止めだ止めだ! バッチリ、バレてやがる。こいつらは正真正銘の化け物共だ。何かしようものなら、一瞬で返り討ち…いや、全滅されそうだな!」

 

 ガハルドは豪快に笑って覇気を収める。それに合わせて周囲の者達も剣呑な空気を収めていく。

 

「なんで、そんな楽しそうなんだよ?」

 

「おいおい、俺は"帝国"の頭だぞ? 強い奴らを見て、心が躍らなきゃ嘘ってもんだろ?」

 

「わぉ、戦狂一歩手前な感じの発言だぜ。まぁ、わからなくもないが…」

 

「ほぉ、覇王はわかってるじゃねぇか」

 

 それからガハルドの興味はハジメが侍らしてるユエ達に向き、シアを見てカム達のことを間接的に話す。だが、ハジメは『興味ない』の一点張りでガハルドの口撃をのらりくらりと躱していたが、ガハルドの方も何の収穫もなかったわけではなかったらしい。

 

 そして、一行は今夜のリリアーナの歓迎、"兼婚約披露"パーティーへの出席を求められた。初めて聞く情報にリリアーナへと光輝達が質問する中、リリアーナは同盟国との関係を強化するために必要だと言っていた。

 

 その後、一行はリリアーナと別れ、別部屋へと案内されていた。そこで忍は案内してくれたメイドさんを丁重な感じで追い返し、ハジメは何かの作業に没頭する。

 

 決戦の刻は…近付いてくる。

 

………

……

 

 そして、夜。帝城内の会場にてリリアーナ姫の歓迎、兼『バイアス・D・ヘルシャー』皇太子との婚約披露パーティーが催された。形式は立食式で純白のテーブルクロスを敷かれたテーブルの上には様々な料理やスイーツがあり、会場の装飾も豪華絢爛なものだった。

 

 このパーティーに参加しているのは全員、帝国のお偉方であり、煌びやかな衣装を着ていても武官と文官では立場が違うような印象である。実力主義国家であるから武官の方が文官よりも少し偉いのだろうか?

 

 そんな会場の中でも一際目を引くのが、ハジメ一行だ。ハジメと忍は既に決別しているとは言え、この世界の人から見たら彼等もまた"神の使徒"である。帝城に堂々と入る際に"勇者一行"の肩書を利用したので、仲間だと思われても不思議ではない。利用出来るモノはとことん利用するのが化け物コンビの流儀だ。

 

 そんなハジメの傍にはこのパーティーの主役よりも着飾ったユエ、シア、ティオ、香織がいるのだが…まぁ、着飾った原動力のことを考えれば、致し方ないとも思えなくもないが、やはり主役よりもかなり目立った存在になっている。ハジメに話し掛けているお偉方の大多数は彼女達目当ての方が多い。

 

「やれやれ。親友も大変だねぇ~」

 

 グラスを傾けながらハジメや光輝達とも距離を取って壁際に陣取る忍はハジメの様子を見て苦笑する。

 

「巫女ちゃん達を置いてきたのは正解だったかな。今回に限っては」

 

 そんなことを呟きながら忍は周囲の観察に徹していた。ちなみに忍は気配遮断を使っているので、滅多なことでは声をかけられないようにしている。

 

 そんな中、会場の入り口がにわかに騒がしくなり、このパーティー本来の主役の登場するようだ。しかし、どうにも周囲の反応がイマイチだ。それもそのはず。主役であるリリアーナのドレスが漆黒で、いかにも『義務としてここにいます』といった澄まし顔であり、婚約者であるはずのバイアスも苦虫を噛み潰したような表情だったからだ。とてもこれから夫婦になる2人とは思えなかった。それからガハルドからの軽い挨拶もあり、リリアーナとバイアスの挨拶回りとダンスの時間となる。

 

「(? これは、俺等の知らないとこで何かあったと見るべきか?)」

 

 そんなリリアーナの様子を見て忍はハジメの方を見るが、当のハジメはユエと一曲躍っている最中だった。そして、女性陣の方を見れば『二番手は誰だ!?』と言わんばかりの気迫で競り合っていた。

 

「(何してんだか…)」

 

 やれやれ、と言った具合に肩を竦める忍は曲が終わるのを見極めて壁際から移動し、ハジメに何があったのか聞こうとしたが、その前にリリアーナがハジメに近付き、ダンスの相手を頼んでいた。そのリリアーナとハジメが踊り始めたため、忍は仕方なく気配遮断をゆっくり解除しながら女性陣の方に向かった。

 

「親友って案外踊れたのな」

 

「……意外?」

 

「まぁ、どちらかと言えばインドア派な親友だしな」

 

 そして、ハジメとリリアーナのダンスが終わり、リリアーナの見せた満面の笑みに会場中の殆どの者が心撃たれていた。リリアーナは他の上役とも躍る関係上、途中でハジメと別れており、戻ってきたハジメを女性陣はジト目で出迎えた。

 

「ハッハッハッ、で? 結局、親友は何をしたんだ?」

 

「別に大したことじゃねぇよ」

 

 そう言うハジメは、壇上に上がって演説を始めたガハルドを見ていつでも動けるように準備していた。

 

『ボス。この戦場に導いてくださったこと、感謝いたします』

 

 そのような念話がハジメに届く中、ガハルドが声高らかに宣言する。

 

「この婚姻により人間族の結束はより強固なものとなった! 恐れるものなど何もない! 我等、人間族に栄光あれ!!」

 

『栄光あれ!!』

 

 そして、その瞬間…会場の光は消え、暗黒が支配した。

 

「な、なんだ!?」

「きゃあ、なに!?」

 

 一瞬にして視界を奪われた会場内の貴族達は混乱していた。一部、冷静な者が指示を出そうにもその前に各個撃破されていく。

 

「狼狽えるな! 貴様らはそれでも帝国の軍人か!!」

 

 ガハルドの一喝によって混乱が少しだけ鎮静したものの…

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

 

「っ!? ちぃっ! コソコソと鬱陶しい!!」

 

 視界を封じられているにも関わらず、風切り音だけで飛来してきた矢を捌くガハルドだが、会場の混乱もあって防戦一方となっている。ただ、会場で火球で光源を作った者は軒並み首を刈られてしまっていた。

 

 しかし、そこは皇帝とその側近。すぐさま陣形を作ってガハルドの背後を守りに入る。それで幾ばくかの余裕が出来たガハルドが、矢を叩き落とし詠唱に入った。いざ反撃、といったところで、ガハルド達の近くに金属の塊がコロコロと転がってきた。

 

「なんだ?」

 

 側近の1人が警戒しながらもその物体に近寄ろうとした時だ。

 

「よせっ! 近付くな!」

 

「っ!?」

 

 ガハルドが嫌な予感を覚えてその側近に警告し、側近も飛び退こうとしたが、一手遅かった。

 

カッ!!

キイイィィィン!!

 

「がぁあ!?」

「うぐぅ!?」

「何がぁ!?」

 

 金属の塊が爆ぜると共に目映い閃光と甲高い音の衝撃がガハルド達を襲い、一時的に視覚と聴覚を奪う。これを好機と見たハウリアが一気に攻勢をかけ、側近達の手足の腱を斬り裂き行動を封じていき、舌も切って詠唱を封じる。

 

 だが、ガハルドは違った。目も耳も封じられているにも関わらず、ハウリアの猛攻を凌ぎ、あまつさえ魔法も使って善戦していたのだ。その様子からハウリアも連携で皇帝を仕留めようと殺気を迸らせる。

 

「ククク、心地いい殺気を放つじゃねぇか! なぁ? ハウリアぁ!!」

 

 どうやらガハルドは相手がハウリアだとわかっているようだ。

 

 そして、ガハルドとハウリアの攻防が続く中、ガハルドの身に異変が起きる。麻痺毒が散布されてたのだが、ようやっと効き目が出てきたのだ。そして、その好機にガハルドは他の将校達のように手足の腱を斬られ、衣服に施された魔法陣なども破壊されえしまい、敗北を喫する。

 

 ヘルシャー帝国皇帝の敗北に、会場中の貴族達が言葉を失う。

 

 そして、ガハルドとカムによる交渉(?)が始まる。ガハルドの言動一つで会場内の誰かの首が物理的に飛ぶ。その中には息子であるバイアスもいた。さらには民を人質に取られたことで、強硬姿勢だったガハルドが遂には折れた。このことで帝国は亜人の奴隷制度の撤廃、ハルツィナ樹海への干渉しないことなどを制約させた。

 

 こうして新生ハウリア族の最初の戦いは終わった。だが、これは新生ハウリア族がこれから先、戦い続けるためのほんの序章でしかない。彼等の戦いは、これからが本番なのだ。

 

 ちなみにリリアーナだが、襲撃開始と共にハジメに回収されていたりする。

 

 

 

 とにもかくにも長い夜が明け、パーティーの翌日には帝室からの正式な発表がなされ、亜人奴隷の解放が行われていったのだった。当然ながら反発もあったが、ハジメの過剰演出もあって神による信託だとでっち上げて民衆を騙した。神の使徒たる光輝や、使徒の体を使ってる香織も協力して…。

 

 帝国での一件も無事(?)解決した一行は、故郷に帰れると喜び合う亜人達を見て…

 

「俺達も、いつか…」

 

「あぁ、そうだな…」

 

 化け物コンビは、いつか自分達も、と決意を新たにしていたりする。

 

 次はいよいよ6つ目の大迷宮攻略だ。果たして、そこには何が待ってるのやら…。

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