もう1人のイレギュラーは反逆の覇王   作:伊達 翼

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第四十八話『ハルツィナ大迷宮・序』

 大樹への道が開ける周期の日の早朝。フェアベルゲンの大門の前でハジメ達と勇者パーティー、そしてハウリア族は忍が来るのを待っていた。

 

「……………………」

 

 ハジメは特に何も言わずに忍のことを待っていたが…

 

「紅神の奴。遅いな…」

 

「もしかして、何かあったとか?」

 

 光輝達勇者パーティーは何かあったんじゃないかと少しソワソワしていた。確かに何かあったことには変わりないが、光輝達が心配するようなことは何一つない。何より、ここはフェアベルゲンだ。忍の身体能力を考えれば、脅威になることの方が少ない、というよりもほぼ皆無だろう。

 

「ボス。如何致しますか?」

 

 そこにカムがハジメに話し掛ける。

 

「あいつは俺並みの化け物だぞ? 必ず来る」

 

 ハジメはそれだけ言うと大門に背を預けて腕を組んだまま意識を町の方へと向ける。

 

 すると…

 

「ッ!」

 

 その気配にハッとしたハジメがドンナーを抜いて"町の方"へと向ける。

 

「……ハジメ?」

 

「ど、どうしたんですか? 急に…?」

 

「そっちは町の方じゃが…まさか、敵でも?」

 

「ハジメ君?」

 

 ハジメの行動に驚いたユエ達がハジメに尋ねるが…

 

「っ!? なんですか? この重圧は…?」

 

 ハジメに次いで気付いたのはシアとハウリア族で、町の方から確かな重圧を感じ取っていた故に警戒態勢を取る。

 

「こんな重圧を持つ者が町の中に? だが…」

 

 そして、シアとハウリア族に倣ってその場にいた全員が警戒していると、町の方から"7人分"の人影が見えてきた。

 

「………どういう訳か知らんが、そうか…お前かよ」

 

 重圧の正体を理解したハジメはドンナーを人影の先頭に向けたまま、その先頭の人物に話し掛けた。

 

「あぁ、待たせたな。"ハジメ"」

 

 そう言ってきたのは…濃密な気配を纏った忍だった。その後ろには巫女達も控えている。

 

「……何があった?」

 

「なに、ちょっと"本気になった"だけだ」

 

「"本気"? まるで今まで本気じゃなかったような言い方だな?」

 

「そこは悪いと思ってる。が、これからは違う。俺は本気であいつの元に帰りたいからな。ただ、それだけだ」

 

 今の忍の言葉にハジメの眼もスッと細くなり、殺気も漂い始める。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 しばし、ハジメと忍が睨み合っていると…

 

「……いいだろう。この際、今までのことは見て見ぬふりをしてやる。だが、もし今後本気でないと知ったら…わかるよな?」

 

「あぁ、わかってるさ。二度とお前のことを親友だなんて言わないし、お前の前から消えてもいい。俺は俺で大迷宮を攻略するさ」

 

 ハジメと忍の一触即発めいた言葉の応酬に、周囲の皆も驚いていた。

 

「随分と変わったな」

 

「お前ほどじゃない」

 

 ハジメがドンナーをホルスターにしまい、出発を促す。

 

「行くぞ。その覚悟が本物か、大迷宮で試してやる」

 

「あぁ、そうしてくれ」

 

「巫女連中は?」

 

「ここまでだな。ここからは俺1人だ」

 

「わかった」

 

 そうして一行は巫女達の見送りで大樹の下へと向かうのだった。

 

………

……

 

 大樹への道中。当然の如く樹海の魔物が奇襲してきたが、それらは全て光輝達が大迷宮挑戦へのウォーミングアップとして対処していた。その中には香織の姿もあり、ノイントの体の掌握のために自主訓練をしていたのだ。

 

 そして、一行が大樹に辿り着くと、枯れていてもその偉容に光輝達は目を見開いて驚いていた。

 

「カム。お前達は離れておけ。こっから先は何が起こるか予想出来ないからな」

 

「はっ! 了解です、ボス。ご武運を」

 

 ハウリア族に指示を出してからハジメは宝物庫から攻略の証を取り出し、石碑の裏側に移動する。それを見てハジメの元に集まる忍、ユエ、シア、ティオ、香織、光輝、雫、龍太郎、鈴の挑戦者達と、律儀にも敬礼してから距離を取るハウリア族。

 

 それを確認してからハジメはオルクスの紋章に対応した指輪を窪みに嵌め込む。そうすることで石碑が淡い光に包まれ、以前のような文面が現れる。

 

『四つの証』

『再生の力』

『紡がれた絆の道標』

『全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう』

 

「前と同じだな。使う証は……そうだな、『神山』以外のでいいか」

 

 そう呟くと、ハジメは対応した紋章の窪みに『ライセンの指話』、『グリューエンのペンダント』、『メルジーネのコイン』を嵌め込んでいき、一つ嵌め込む度に石碑の輝きが増していく。そして、四つ目を嵌め込むと同時にその輝きが解き放たれたようにして地面を這って大樹へと向かい、大樹そのものを盛大に輝かせて不思議な文様を浮かび上がらせる。

 

「これで下準備は完了、ってか?」

 

「……なら、ここで再生魔法?」

 

 忍の呟きにユエが大樹へと近づくと、大樹に浮かび上がった七角形の紋様の中心に手を触れさせながら再生魔法を行使した。

 

パァアアアアア!!!

 

 直後、今までの比ではない輝きが大樹を包み込み、ユエの手が触れた場所からまるで波紋のように何度も光の波が大樹の天辺に向かって走り出す。

 

 燦然と輝く大樹は、まるで根から水を汲み取るように光を隅々まで行き渡らせて大樹本来の瑞々しさを取り戻していく。その様はまさに幻想的な光景だった。

 

  そうして枯れた状態から復活を遂げた大樹の目の前の幹が裂けるようにして左右に分かれると、そこには数十人は優に入れそうな洞窟が現れる。それを確認すると、ハジメ達は顔を見合わせて頷き合い、その樹の洞窟へと迷いなく入っていく。

 

 が、洞窟に入ったものの、これといった変化はすぐにはなかった。

 

「行き止まり、なのか?」

 

 光輝が訝しげに首を傾げると、全員が洞窟に入ったところで逆再生でもするかのように幹が閉じ始めた。

 

「っ?! 入り口が!?」

 

「落ち着け、天之河」

 

 完全に閉じ切った幹。それと同時に洞窟内の地面に魔法陣が浮かび上がって輝きだす。

 

「うおっ!? なんだ!?」

 

「なになに!?」

 

「騒ぐな! 転移系の魔法陣だ! 転移先で呆けるなよ!!」

 

 ハジメの注意を発すると同時に転移が発動し、ハジメ達の視界が暗転する。

 

………

……

 

「っ……ここは…?」

 

 再び光を取り戻したハジメ達の視界に映ったのは、樹々の生い茂る樹海の中だった。大樹の中に樹海…なんとも不思議な感覚だ。

 

「みんな、無事か?」

 

 光輝が軽く頭を振りながら周囲の状況を確認して仲間の安否を確認する。それぞれが返事をする中…

 

「……………………」

 

 何故か不機嫌そうなハジメに光輝が声を掛ける。

 

「? 南雲、ここが本当に大迷宮なんだよな? どっちに向かえばいいんだ?」

 

 ハジメ達がいるのは、周囲全てが樹々に囲まれたサークル状の空き地であり、ぱっと見は何処にどう向かえばいいのかわからなかった。だからこそ、光輝は大迷宮攻略経験者であるハジメに尋ねたのだ。

 

「……とりあえず、探すしかないか」

 

 不機嫌さを隠そうともせず、ハジメはそう呟くと近くの樹の幹に追跡のマーキングを行使する。それを見て目印を残しながらの探索なのだと理解した光輝が率先して歩き出す。それについていくように皆も歩き出す中…

 

「「……………………」」

 

 ハジメと忍が底冷えするかのような鋭い視線のまま、その場を動こうとはしなかった。

 

「? ハジメさんにシノブさん? どうかし……」

 

 その様子に気付いたシアが振り返ると同時に…

 

シュバッ!!

ブンッ!!

 

 二種類の風切り音が響いたかと思えば、一瞬でユエがワイヤーに巻きつかれた挙句、両端の球体が空中で固定されて拘束した。それと共に忍がティオと龍太郎を組み伏せ、逆手に持った銀狼と黒狼の刃を首へと寸止めで押し付ける。

 

「南雲!? 紅神!? 一体、何のつもりだ!?」

 

 突然の乱心とも言える行動に光輝が怒声を上げ、残った面子も緊張した面持ちになる。

 

「……少し黙ってろ」

 

 ハジメはそんな光輝達を尻目に拘束したユエの元へと歩いていき、ドンナーを抜いてユエの額に銃口をゴリッと押し付けた。

 

「ハジメ! どうしっ」

 

ドパンッ!!

 

 ユエが信じられないといった表情で喋ろうとするが、ハジメが有無を言わさずユエの肩を発砲する。しかし、不思議なことに血飛沫が上がることも、流血することも、そして何より"傷口が塞がる"様子がなかった。

 

「っ!」

 

 その光景に違和感を覚えたシアが今にも飛び出しそうだった香織と雫を手で制する。

 

「シノブ!? お主、正気か!?」

 

「おいおい! 紅神! どういうつもりだ!!?」

 

 忍が取り抑えてる2人も慌てた様子で喚き、光輝が先に忍を羽交い絞めにしようとした時だった。

 

「黙れ、"偽物共"。許可なく喋るな。紛いモノの分際でユエの声を真似てんじゃねぇよ」

 

 ハジメから発せられる体感的な温度を低くさせるような錯覚さえ覚えるほどの殺意の暴流がその場を支配する。

 

「お前は何だ? 本物のユエは何処にいる?」

 

「……………………」

 

 ハジメの問いにユエの姿をしたモノは、ストンと表情が抜け落ちたようになって答えなかった。いや、そもそも答えることが出来るかどうか…。

 

「まぁいい。そんな都合のいい機能はないか。なら、死ね」

 

ドパンッ!!

 

 ドンナーが火を噴くと共に偽ユエの頭部が吹っ飛び、赤錆色のスライムのようなモノが飛び散り、一拍置いてから偽ユエの体がドロリと溶けて地面にシミを作った。

 

「忍。そっちもいいぞ」

 

「あぁ」

 

 ハジメの合図を聞き、"シュランッ!"と二刀を偽ティオと偽龍太郎の首に走らせると、偽ユエと同じようにドロリと赤錆色のスライムとなって地面のシミになる。仲間内からしたらなかなかにショッキングな光景ではあるが…。

 

「チッ、流石は大迷宮だ。初っ端からやってくれるじゃねぇか…」

 

 ハジメがドンナーをホルスターに戻しながら悪態を吐く横で、忍も銀狼と黒狼を一振りしてから鞘へと収める。

 

「ハジメさん。ユエさんとティオさんは…?」

 

「おそらくは転移の際に別の場所に飛ばされたんだろうな。僅かにだが、神代魔法を取得する時の記憶を探られる感覚があった。あの擬態能力を持つ赤錆色のスライムにでも記憶を植え付けて仲間に成りすまして、隙を見て背後からって感じか?」

 

「だろうな。しっかし、それにしても悪趣味な…いや、悪辣と言うべきか?」

 

 恋人をダシにされたハジメが不機嫌そうに表情を歪める中、雫と鈴が感心したように問う。

 

「なるほどね。それにしてもよくわかったわね」

 

「うんうん。鈴には見分けがつかなかったよ。2人はどうやって気付いたの?」

 

 その問いに対するハジメと忍の回答は…

 

「どうって言われてもな……見た瞬間、わかったとしか言いようがない。目の前のこいつは、"俺のユエじゃない"、ってな」

 

「俺は覇王の影響で嗅覚が異常発達したからな。さしもの偽物や大迷宮も"匂い"までは真似出来なかったんだろ」

 

『……………………』

 

 とても参考にはならなかった。特に前者に関しては、どんな惚気だよ、と言いたくはあったが…。

 

 その後、シアの何気ない一言をあっさり返したハジメにシアと香織がジト目を向けたのだが、当の本人たるハジメはどこ吹く風だった。

 

………

……

 

 ユエ、ティオ、龍太郎を欠いた一行の前に昆虫型魔物の軍団が現れ、その対処を全員で行っていた。そのバリエーションはスズメバチのような幼児サイズの蜂型魔物の群れ、2メートルはありそうなカマキリ型の魔物、3メートルはあるアリ型の魔物の群れとなっている。

 

 ハジメ、忍、シア、香織は問題なく立ち回っていたが、光輝、雫、鈴のパーティーは蜂型魔物の群れに苦戦を強いられていた。そんな中、光輝の隙を突いて魔物が殺到し、あわや光輝に死の兆しが見え隠れしたのだが、ハジメのフォローで九死に一生を得ていた。そして、物量で押し切られると光輝が思った直後、ハジメと忍の銃撃の嵐で蜂型魔物は殲滅されていた。

 

 魔物殲滅後…

 

「ちっ…喰っても意味無さそうだな」

 

「だな。流石に固有魔法は手に入りそうにない」

 

 魔物の残骸を見ながら会話するハジメと忍に…

 

「え? く、喰う? 南雲君に紅神君、これを食べる気だったの?」

 

 今の発言にギョッとしたようなドン引きした様子で雫が2人に尋ねる。

 

「あれ? 言ってなかったっけ?」

 

「……言ってないなら言ってないで別にいいんだが、まぁ今更か。自分と同等以上の魔物を喰うと、相手の固有魔法を手に入れることがあるんだよ。奈落の底じゃ、喰うもんなんて魔物くらいしかなかったしな。あぁ、お前等は真似すんなよ。まず間違いなく死ぬから」

 

「いやぁ、俺も最初聞いた時は耳を疑ったがな。まぁ、俺は親父からサバイバル技術を叩き込まれてたから別にそこまで抵抗感はなかったけどな。でもま、あの時の苦痛は凄まじかった」

 

 当時のことを思い返しながらハジメと忍は説明していた。

 

「改めて聞くと、本当に壮絶ね…」

 

 雫が何とも言えぬ微妙な表情でハジメと忍を見た。

 

 

 

 その後、昆虫型の魔物軍団を殲滅してから30分ほど樹海を探索していた一行だが、そこに猿型の魔物が襲来した。だが、それがある種の悲劇の始まりだった。ここでも光輝達は苦戦を強いられたが、ハジメや忍にとっては瞬殺対象だったので、ユエと早く合流したかったハジメは猿型魔物の瞬殺を繰り返していた。が、多少知恵が回ることが災いし、猿型魔物はあろうことか、ユエに擬態してあられもない姿の状態で虐待するという最悪の選択をしてしまった。その選択がハジメの逆鱗に触れ、周囲500メートル四方を焼け野原へと変貌させたのだ。その際、光輝の眼を潰していたり、忍にも同じことをしようとしたが、忍は直感的にそちらを見ないように努めていたので何が起きたのかはハジメの怒声で察していたりする。

 

「オラぁ!! 森ごと果てろや、ドカス共がぁぁ!!」

 

 重火器を両手に持ってぶっ放す姿は、どこかハリウッド映画を彷彿とさせるような、させないような…

 

「いやぁ、ハジメの逆鱗に触れるとは、愚かな真似を…」

 

 などと和んだ風に呟く忍だったが…

 

「紅神君も少しは止めようとしなさいよ!」

 

 雫から小言を言われる。その間にもシアと香織が2人掛かりでハジメを宥めに入っていた。そうしてやっとこさハジメも冷静になって落ち着いたようだった。さらに目潰しを食らった光輝も回復させる。

 

「ハジメも落ち着いたようだし、そろそろ……おや?」

 

 ハジメが落ち着いたのを見て忍が何か言い掛けると、鼻をスンスンとさせる。すると、焼け野原となったこの場に一匹のゴブリンがやってきた。

 

「グギャ!」

 

 だが、そのゴブリンは襲い掛かってくることもせず、むしろ自分の声にハッとしたように身動きを止めてハジメを見つめる。

 

「……………………」

 

 そのゴブリンをハジメもまた見つめ返していた。

 

「ハジメ?」

 

 その行動に違和感を覚えつつ忍もまた何もせずにいると、光輝がゴブリンに肉薄し、聖剣を掲げてゴブリンに斬りかかっていた。

 

 だが…

 

「何しようとしてくれてんだ、このボケ勇者がぁぁ!!」

 

「んなっぐべら!?」

 

 なんとハジメが光輝の横合いからローリングソバットを決めて光輝を吹き飛ばす。

 

「ちょっ!? 南雲君!? 今のは何!? いくらなんでも無茶苦茶よ! 光輝はただ魔物を倒そうとしただけじゃない?!」

 

「そうだよ! っていうか、光輝君、大丈夫かな? 捜しに行った方がいい気が…」

 

 ハジメの奇行に雫と鈴が文句を言いに駆け寄る。シアや香織も困惑気味だ。忍も首を傾げている。吹き飛ばされた光輝も戻ってきて怒りをぶつけるが…。

 

「魔物じゃない」

 

 ハジメはそう言うとゴブリンの前に跪いて視線を合わせると…

 

「……ユエ、だよな?」

 

「グギャ!」

 

『……………………はい?』

 

 ハジメの驚愕の一言にポカンとする残りのメンバー。

 

「あのハジメさん? まさかと思いますけど、ユエさん、なんですか? その、私には魔物に見えるんですけど…」

 

「わ、私も魔物に見えるんだけど……本当にユエなの?」

 

「こっちの匂いは魔物っぽいんだが…ハジメが言うなら間違いはずだ。しかし、肉体が変質してるのか?」

 

 ハジメパーティーの面子はハジメが『ユエ』だというゴブリンを注意深く観察している。その間にも魔物の言葉を発するユエゴブと自然に会話を繰り広げるハジメ。その様子にはさしもの忍も驚いていた。その後、色々とハジメにツッコミを入れた一行だったが、とりあえずハジメの受け答えに死んだ魚のような目になったとか…。とりあえず、香織に再生魔法を行使してもらうも、ユエゴブは元には戻らなかった。そのため、ユエゴブには念話石を持たせて意思疎通を図ることおなる。そして、一行は残るティオと龍太郎を捜すべく探索に戻るのだった。

 

 

 

 その30分後、一行は一匹のゴブリンが他のゴブリンに虐められている現場に出くわした。が、その虐められているゴブリンの表情は……何故か、恍惚としていた。

 

『あれはティオ(さん)だな(ですね)(だね)』

 

 ハジメパーティーの一同が声を揃えていた。さらに言うなら、まるで汚物を見るような目を向けていたりする。それには流石の光輝達もなんて言っていいのか困っていた。結局、他のゴブリン達に気付かれ、光線を余儀なくされた一行はティオゴブとも合流を果たした。

 

 さらにその後、オーガ同士が死闘を繰り広げている場面にも出くわし、その内の1体がやたら洗練された武術…要は空手の動きをしていたのでそれが龍太郎だと発覚して助け出したりもした。

 

 あと、ティオゴブと龍オーガにも念話石を渡して意思疎通が出来るようにもした。これで無事全員集合した一行は探索を続けた。

 

………

……

 

 そして、一行は周囲の樹々とは明らかにサイズの違う巨木の鎮座した場所へと辿り着いた。のだが、その巨木は直径10メートル、高さ30メートルのトレントもどきだった。そして、トレントもどきはまるで門番かの如くその場で暴れ始めたのだ。ここまで特にいい結果を残せてない光輝達がトレントもどきに戦いを挑み、香織も回復役として支援している。ちなみにハジメ達は後ろで観戦している。

 

 そんな中、光輝が勇者の切り札である最上級の攻撃魔法『神威』を発動させてトレントもどきを倒そうとしたが、必殺技がトレントもどきに届くことはなく、逆襲されることとなった。

 

 その様子を見ていたハジメ達は…

 

「ここまでかな?」

 

「もう少し頑張ってもらいたかったがな」

 

 忍とハジメがそのように呟いていると…

 

『ご主人様よ。戦闘での成果は二の次でいいと思うのじゃが…』

 

 ティオゴブが念話石を用いてそのように進言してきた。

 

「うん? どういうことだ? 大迷宮のコンセプトか?」

 

『うむ。おそらくじゃが、ハルツィナは妾達の"絆"を試しておるのじゃろう』

 

「絆?」

 

『ほれ、入り口にもあったじゃろう? あれは大迷宮攻略のヒントにもなっていた訳じゃな。仲間の偽物を見抜くこと、変わり果てた仲間を受け入れること、まさに"紡がれた絆"が試されておるようにも思えんかの?』

 

「なるほどな」

 

「てことは俺達がアレを倒しても問題はないってことか」

 

「だな。この後に来るだろう試練を天之河達がクリアさえすればいいってことか」

 

『あくまでも推測じゃがの』

 

 そんな風にして聞くと色々と納得できるし、改めてティオ本来の魅力もわかるのだが…

 

『……………………』

 

 ハジメとティオゴブ以外の忍、ユエゴブ、シアの視線がハジメに集まる。その眼は一様に『ハジメ(さん)が原因』と物語っていた。

 

「はぁ…」

 

 その視線に気づきつつもハジメは溜息を吐くだけだった。

 

「じゃ、俺が燃やしてくるかね」

 

 そんな中、忍が一歩踏み出し、焔帝の力を解放しようとする。

 

「っと、その前に…(谷口さん、ちょいと熱いかもだが、結界を全力で維持してろよ? 焼死したくないだろ?)」

 

「え?」

 

 忍が念話で結界を維持してた鈴に警告を発していた。その念話に素で驚く鈴だが、物凄く嫌な予感を覚えて結界に力を注ぐ。

 

「じゃあ、行きますか」

 

 紅蓮の焔を両手に宿した忍が一足飛びでトレントもどきの頭上へと跳び上がると…

 

「その身を焦がれて焼死しろ。四神奥義! 『霊覇緋天朱雀(れいはひてんすざく)』!!」

 

『キュオオオオオオ!!!』

 

 両手をトレントもどきに突き出すと共に、その両手から火の鳥の如き炎の塊が現れ、トレントもどきを焼き尽くす。たとえ、トレントもどきが固有結界で増殖しようが…

 

「『バレッテーゼ・フレア・ヘルフレイム』!」

 

 生えた先から爆炎の焔で焼き尽くす。その光景はまさに灼熱地獄の如し。しばらくしてトレントもどきが沈黙したのを見計らい…

 

「『バレッテーゼ・フレア・サイレント』」

 

 指を鳴らして爆風を巻き起こして漏れ火などを鎮火する。

 

「別に放置しててもいいだろうに…」

 

「ま、一応、自然は大切にってな」

 

 忍に近付きながらハジメがそう言うと、忍はそう返していた。

 

「てか、なんだよ。『四神奥義』って…」

 

「なんとなくインスピレーションが湧いてな。カッコいいだろ?」

 

「アホか…」

 

 などと話しているハジメと忍を横目に蒸し風呂と化した結界内から光輝達が出てきた。その後、トレントもどきの巨木が再生を果たしたが、根本の幹が開いて洞窟を形作る。

 

「中ボス兼扉だったか」

 

 ハジメがそんなことを言いながら洞窟内に入り、全員が入ったところで入り口の時と同じようなことが起こる。つまり、転移だ。

 

 そして、転移魔法陣が輝き、莫大な光が一行の眼を潰し、意識を暗転させるのだった。

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