ハジメと忍が合流して三日。
二手に分かれてこの階層の探索を行った結果…。
単独でもこの階層の魔物達を倒せる程の実力をつけた2人にとっては問題もなく、上層への道はなかったものの、下層への道は見つけていた。
「で、どうするよ?」
下層へと続く道を前に忍はハジメに尋ねる。
「行くしかないだろ。上に行けなきゃ下に降るまでだ」
「ま、お約束なら最下層になんかあるかもだしな」
「そういうことだ」
そう言って歩き出すハジメに忍もついていく。
ちなみにハジメは自作した道具箱やら爪熊の毛皮を背負っており、対する忍は荷物を持っていない。
前衛は忍、後衛をハジメが担当することにして先を進むことにしたからだ。
奈落の底、二階層。
そこは緑光石がないのか、暗闇が支配していた。
「くっそ、何も見えねぇ…」
「こりゃ慣れる以前の問題かもな」
「仕方ねぇな…」
声は聞こえるのですぐ近くにいるだろうと思いつつもハジメは道具箱から緑光石を使った即席ランタンを取り出して光源を作る。
「忍、これ頼むわ」
「あいよ」
ハジメからランタンを受け取り、忍が先導しようとした時、2人の視界に灰色が見えた。
「「?」」
そちらに忍がランタンを向けると、そこには…
『…………………』
巨大なトカゲっぽい魔物が目を閉じて壁に張り付いていた。
「「!?」」
咄嗟に2人揃って縮地で後退しようとした時…
カッ!!
トカゲが目を開き、黄金の眼を2人に向けたかと思うと、目映い光が襲う。
「ちっ…!」
「石化?!」
縮地で近くの岩陰に隠れた2人だが、ランタンの緑光石は石化して粉々になり、ランタンを持ってた忍の手とハジメの左腕先が石化し始めていた。
「忍!」
「すまん!」
予備の神水ボトルを忍に渡し、ハジメはボトルから神水を口にする。
すると石化が解除されていく。
「神水、パねぇな…」
その様子を見つつ残った手でボトルを受け取りながら忍も神水を飲むと、忍の石化も解除されていく。
「とりあえず…」
なんとなしにハジメが何かをトカゲの方に向かって放り投げると…
カッ!!!
さっきのトカゲの眼光よりも強烈な閃光が溢れる。
「閃光弾かよ!?」
「これも錬成の延長だよ」
驚く忍を尻目にそう言いながらハジメはドンナーをトカゲに向けて発砲する。
絶命したトカゲを2人で美味しく頂き、ステータスを上げる。
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レベル:23
天職:反逆者
筋力:600
体力:650
耐性:550
敏捷:800
魔力:600
魔耐:550
技能:七星覇王[+覇気]・魔力操作・胃酸強化・風爪・天歩[+空力][+縮地]・纏雷・夜目・気配察知・石化耐性・言語理解
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「なんで石化"耐性"なんだよ。そこは石化でいいじゃねぇか」
「ハッハッハッ。石化の邪眼ってやつかい?」
「うるせぇよ」
互いにオタク趣味を持ってるため、こういう話題でも普通に会話出来る辺り、ハジメも忍も少し楽しげ(?)だ。
そこでハジメが消耗品…主に弾丸を錬成してる間、忍は新たに入手した夜目や気配察知を用いて探索を行っていた。
ちなみに次の階層では…
「…………うそん」
ハジメからそんな声が漏れた。
タールみたいな泥沼での戦闘になったが、そこは火気厳禁だったので、忍に任せることになった。
「気配が探れねぇ…」
と言いつつも最後には突進するサメもどきの鼻っ面に纏雷による拳を叩き込み、怯んだところを風爪で腹を掻っ捌いて勝利を収めていた。
泥沼に沈んでない部位の肉を切り取り、ハジメと共に食べる。
得られた技能は『気配遮断』だった。
………
……
…
それから2人はさらに五十階層まで辿り着いていた。
「いやぁ…あの毒階層はマジで死ぬかと思った…」
「ったく…カエルと蛾を喰ってなけりゃ神水の無駄遣いだったろうが…」
「確かに…だいぶストックもなくなってきたんじゃね?」
「2人分だからな。そりゃ心許なくなってきてるが…」
「節約しないとなぁ…」
そんな会話をしながら五十階層で作った拠点で軽く組み手をしていた。
ちなみに忍のステータスだが…
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レベル:49
天職:反逆者
筋力:950
体力:1000
耐性:900
敏捷:1250
魔力:800
魔耐:800
技能:七星覇王[+覇気]・魔力操作・胃酸強化・風爪・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・纏雷・夜目・遠見・気配察知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・言語理解
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固有技能以外はハジメと一緒だが、ステータスはハジメよりも前衛を務めていたことや魔物の肉を喰ったこともあり大幅に強化されていた。
「いやはや…サバイバルしてた虫を喰うなんざ慣れてたが…久々なのが魔物とは、人生わからんもんだな…」
「そうかよ」
「でだ、親友。あの扉、どうすんだ? 如何にも何かありますみたいな雰囲気だが…」
「さながらパンドラの箱だよな。さて、中に希望は入ってるか?」
「開ける気なのな…」
ハジメの答えを聞き、忍は肩を竦めた。
組み手を終えた2人は問題の扉の前まで移動した。
「行くぞ」
「あぁ」
扉を錬成でこじ開けようとしたものの…
バチバチッ!!
「?!」
抵抗が激しかったらしく、ハジメが飛び退く。
それと同時に左右に控えていた石像の外殻が剥がれ、二体のサイクロプス風の魔物が出てきた。
「まんまガーディアンか」
「片方任せるぞ」
と言いつつ一体の眼を狙い撃って瞬殺するハジメ。
「おい!?」
その容赦のなさに忍も瞬殺されたガーディアンに同情を向けた。
「二体揃うのを待ってやるほどお人好しじゃない」
「そりゃそうかもだが…」
忍がそんなことを言ってるともう一体が忍に向かってその巨腕を振るう。
「ふっ…!」
縮地と空力を用いて魔物の眼の高さの空中に跳ぶと…
「豪脚!」
回し蹴りの要領で魔物の頭を蹴る。
その威力はハジメとの訓練でかなりの威力を持つに至る。
故に…
グチャ!!
肉を潰したような音と共に魔物の頭を吹っ飛ばしていた。
「お前も大概だろうに…」
その様子を見てハジメもそんなことを言う。
「ガーディアンを倒したら扉が開く、訳じゃないのか…」
「おそらくは…」
忍の言葉にハジメは魔物の体を掻っ捌き、魔石を取り出す。
その魔石を扉にあった窪みに填め込む。
すると、扉に魔力が迸り、魔法陣を起動させた。
「なるほど。魔物自体が鍵の役割を持ってたわけね」
「だろうな。俺は中を見てくるが…お前はどうする?」
「俺はこいつらを解体しとくさ。固有魔法はよくわからなかったが…ま、喰えばわかるだろ」
忍もだんだんハジメに毒されてる気がしないでもなかった。
「わかった。なら、警戒もしといてくれ」
「あいよ」
そうして扉の中に消えるハジメと、外で魔物の解体作業に入る忍だった。
が…
「すみません、間違えました」
すぐさまハジメが戻とうとしてきた。
「? どした、親友」
「いや、なんでも……『私、裏切られただけ…!』…………」
ハジメが"何でもない"と言いかけて扉の方から声が聞こえてきた。
「なんか聞こえてきたが?」
首を傾げる忍に…
「ちょっと待っててくれ」
ハジメが再び扉の中に入っていった。
「?」
とりあえず、気にすることもなく解体作業に戻る忍だった。
だが、しばらくして…
ドパンッ!!
扉の中から銃声が響いてきた。
「ハジメ!?」
外で気配を探っていたから中の魔物には気付かなったらしい。
忍が扉の中に入ってみた光景は…
「ちっ!」
何やら人を背負ってサソリもどきと対峙しているハジメの姿だった。
「人? どういう状況!?」
困惑する忍をチラ見し、ハジメは目の前のサソリもどきに集中する。
「はいはい。わかりましたよ。説明は後でな」
忍は初動から自らの最高速度に達しながら…
「纏雷+豪脚!!」
ハジメに注意を向けていたサソリもどきの横っ腹を纏雷の付与した足で蹴っていた。
「っ!? 硬っ!?」
忍が蹴ったことで少しだけ吹っ飛んだサソリもどきに焼夷手榴弾を投げるハジメ。
「ちょっ!?」
すぐさま縮地で回避した忍はハジメに抗議の眼差しを向ける。
ハジメはそんな抗議知らんとサソリもどきに目を向ける。
サソリもどきは炎に焼かれて苦しんでいるが、決定打には至っていないようだった。
「説明プリーズ、親友」
「悪いが、銃が効いてない」
端的にハジメが忍に説明した。
「こっちの最大火力がダメとか、硬過ぎだろ…どうすんだよ?」
「…………………」
忍の言葉にしばし逡巡するハジメだったが…
「……ハジメ、信じて」
「"ユエ"?」
「ん?」
知らない第三者の声に眉を顰める忍だったが、それがハジメの背負ってる人物から発せられたとわかると…
「親友。時間稼ぎは任せな!」
サソリもどきに忍が特攻を仕掛ける。
何かをするのだろうと思い、ハジメとその第三者のために時間を稼ぐことにしたらしい。
「かぷっ…」
「っ!?」
その人物はハジメの首筋に噛みつき、血を吸い始める。
少しして…
「……ごちそうさま」
吸血が終わったその第三者は忍が足止めしてるサソリもどきに向けて手を掲げる。
「"蒼天"」
その瞬間、六、七メートル級の青白い炎の球体が現れる。
「あっつ!?」
思わず叫んだ忍は縮地を用いて全速力で退避する。
『ギシャアアア!!?!?』
その火球の下敷きとなったサソリもどきはかなり苦しんだ声を上げる。
ドンナーで撃っても傷つかず、さっきの焼夷手榴弾でも融けなかったサソリもどきの外殻がドロリと融解していた。
「凄っ…」
忍が呆気に取られていると、ハジメが気配遮断を用いてサソリもどきの背後に移動してトドメを刺す。
ピクリとも動かなくなったサソリもどきを見て満足そうにうなずくハジメ。
「最近、親友がどんどん容赦なくなってきた気がする」
そんなハジメの容赦なさに忍が遠い目をしてると…
「おい、忍。さっさと剥ぎ取るの手伝え。喰わせねぇぞ」
「へいへい」
サソリもどきを解体しているハジメからお声がかかり、それに答えていると…
「で? いつから親友は紳士になったんだ?」
ちらっとハジメの背負っていた第三者を見てから冗談のようにハジメに問う。
「あぁ?」
「あんな
「何言ってんだ、お前は…」
そんな会話を繰り広げていた。
結局、量が多かったのもあってハジメの血を吸って回復した少女を含めた三人がかりでサソリもどきとサイクロプスの素材やら肉やらを持って拠点に移動したのだった。