もう1人のイレギュラーは反逆の覇王   作:伊達 翼

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第七話『最下層の死闘』

拠点に戻ってきたハジメ達は…

 

「で、その子、結局どちらさん?」

 

忍が少女のことをハジメに尋ねていた。

 

「こいつは『ユエ』。名前は俺がつけてやった」

 

「つけてやった? 記憶喪失かなんかか?」

 

「いや、記憶はあるらしい。元の名前が嫌だって言うからつけてほしいと頼まれた」

 

「へぇ~」

 

忍がそんな受け答えをしていると、ハジメが忍の耳元に顔を近付け…

 

「ぼそっ(ちなみに三百年は生きてるロリババアだ)」

 

「ぼそっ(マジで?)」

 

「ぼそっ(なんか先祖返りの吸血鬼で王族だったらしい)」

 

「ぼそっ(なんつうか…盛りすぎてね?)」

 

2人がぼそぼそ話をしてる間、微妙にジト目になった少女『ユエ』が…

 

「……ハジメ、何か失礼なこと言ってない?」

 

鋭い指摘をする。

 

「いや、別に?」

 

「(多分、誤魔化せてねぇな…)」

 

ハジメはシレッと言うが、忍は内心で誤魔化せてなさそうだなと考えていた。

 

「……そっちは誰?」

 

ユエが忍を見て尋ねる。

 

「俺か? 俺は忍。紅神 忍だ。ハジメの親友さ」

 

「……親友…」

 

ユエが忍を見ていると…

 

「自称だがな」

 

「そいつはないぜ、親友」

 

ハジメの言葉にがっくりする忍だった。

 

そうしてハジメと忍は食事と作業をしつつユエにここがどの辺りで、地上に戻る方法を尋ねたのだが…

 

帰ってきた答えは"わからない"だった。

ただ、この迷宮はかつて神代の時代に神にへと挑んだ神の眷属…『反逆者』の一人が創ったと伝えられており、最下層には反逆者の隠れ家があり、地上に戻れる何かがあるのではないか、と推察した。

 

天職が反逆者である忍はその反逆者に興味を抱いた。

 

「……それで、2人はどうしてここに…?」

 

今度はユエが質問してきてそれにハジメが答えていた。

忍はそんなハジメの様子に適当な相槌と補足情報を付け足すくらいにしておいた。

 

それを聞いたユエは…

 

「……ぐすっ…シノブはともかく、ハジメはつらい……私もつらい」

 

「あ~、うん。わかってたけど…俺の扱いなんてそんなもんなのな」

 

ユエの微妙に失礼な態度に忍は少しいじけていた。

 

「まぁ、今更クラスメイトのことなんてどうでもいい。俺は俺のやり方で帰る方法を見つけて帰るだけだ。そのためにも生き残る術を磨く」

 

ハジメの帰る発言にユエが少し悲しそうな表情になる。

 

「……帰るの?」

 

「ん? まぁ、色々と変わっちまったが……俺は故郷に、家に帰りたい…」

 

「ハジメ…」

 

「……そう」

 

ハジメのそんな純粋な想いに忍は同じ気持ちを抱き、ユエは顔を伏せてしまった。

 

「……私には…もう帰る場所、ない…」

 

ポツリと呟いたユエの言葉に…

 

「だったら…一緒に来るか?」

 

「……え?」

 

その言葉に忍は"お?"と言いたげな表情でハジメを見た。

 

「いや、俺の故郷にな。人外になっちまった身では窮屈なことこの上ないが…まぁ、なんとかするさ。あくまでもユエが望むなら、ってのもあるが…」

 

「……いいの?」

 

「あぁ」

 

そんなハジメの言葉に嬉しそうにパッと笑顔になるユエ。

そのユエの表情に見惚れるハジメを見てニヤニヤと笑いながら忍がハジメの耳元で…

 

「ぼそっ(惚れたな? ハジメさん、君ちょろインだったの?)」

 

そんなことを囁いていた。

 

ブチッ!

 

忍の言動が気に入らなかったのか、ハジメが作業の手を止めてドンナーを忍に向けて…

 

ドパンッ!!

 

容赦なく発砲。

しかし、忍も心得たものでそんなのは予測済みとばかりに縮地で退避していた。

 

「…………………なぁ、親友」

 

問答無用で本気のレールガンを撃ってきたハジメに忍は冷たい目を向ける。

 

「なんだ、親友」

 

ハジメもハジメでさっきの言葉にイラっとしてるのか殺意全開で忍を睨んでる。

 

「今、俺を本気で撃ったろ?」

 

「それがどうした?」

 

「事実を言われて癇癪を起こすとは…器の小ささが知れるぞ?」

 

「うるせぇよ。そっちはただの出歯亀だろうが…!」

 

「親友の姿があまりにあんまりだったから忠告しただけでなんたる言い草か」

 

「それこそ余計なお世話だ」

 

そんな2人の様子を見ていたユエから一言…

 

「……仲良し?」

 

どこをどう見たらそう思うのだろうか…?

 

………

……

 

そこから先はユエも加えた三人で階層を攻略していった。

 

前衛に忍、中衛にハジメ、後衛にユエを配した布陣だ。

 

ユエはハジメや忍と同じく魔力操作持ち(但し、先祖返りの影響で習得したもの)で全属性対応の魔法の使い手だ。

そんな魔法チートな後衛を配しながら前衛の忍が奈落の底で培った独自の近接戦闘で敵を抑え、中衛のハジメが銃や錬成で生み出した兵器もどき群で援護するという戦法が増えていった。

 

途中ユエがハジメに対抗して魔法で瞬殺なんて場面もあってハジメが少し自信を喪失しそうになりかけることにもなったが…概ね、そんな布陣で攻略していった。

 

まぁ、途中…"ハジメさん、人質のユエさんに向けて問答無用の発砲。結果、ユエさんの頭皮が少し削れちゃった"事件などもあった。

当然、忍は目を丸くし、人質にされたユエと犯人のエセアルラウネも呆然としたが…。

 

その時の親友の心情は…

 

「いや、あの娘、親友のヒロインポジションでしょ? そんな娘の頭皮削るとか…鬼畜の所業だな………うん、俺はこんな鬼畜になりたくない」

 

と心の声をだだ洩れにして語ったとか…。

 

それを聞いたハジメは心外だと言わんばかりの態度で、やられたユエもハジメの血を吸って肌を潤してたとか…。

 

そんなこんなありつつもハジメ、忍、ユエは遂に九十九階層まで辿り着き、次の百階層への攻略にそれぞれ準備をしていた。

ハジメは磨き続けた錬成の技術を用いて消耗品や装備の最終チェックを行い、そんな作業をユエは隣に寄り添って見つめていた。

忍はそんなハジメとユエの微妙に甘ったるい雰囲気を察して周辺の警戒と自己鍛錬に打ち込んでいるのだが…。

 

「いや、マジで2人の世界ってああいうのを言うんだろうな…」

 

と忍がボヤくのも仕方ないくらい、ハジメとユエの距離は縮まっていたのだ。

 

ちなみに忍の現在のステータスは…

 

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レベル:76

天職:反逆者

筋力:2550 [+最大5850]

体力:2600 [+最大5900]

耐性:2450 [+最大5750]

敏捷:3000 [+最大6300]

魔力:1650

魔耐:1650

技能:七星覇王[+覇気]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+身体強化][+部分強化][+集中強化][+変換効率上昇Ⅱ]・胃酸強化・風爪[+五爪][+飛爪]・天歩[+空力][+縮地][+爆縮地][+重縮地][+残像][+豪脚]・纏雷[+出力増大]・夜目・遠見・気配察知[+心眼]・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛[+部分強化][+集中強化]・念話・言語理解

 

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こんな感じだ。

前衛を務めるだけあって魔力で身体機能を強化する技能を入手してからはそれを研磨していた。

それに付随して歩法や近接格闘で有効な技能も派生していき、気配察知も派生して相手の弱点を瞬時に見極めれるようになる。

また、攻撃力を高めるために纏雷や金剛を打撃の瞬間に発動してきたためは派生にも目覚めている。

他にも元々高かった敏捷…つまり、速度を重視した戦い方を体得していたり、風爪が妙に派生していたりとハジメが錬成を駆使した技巧・武装チート化しているのに対して、忍は派生チート化してる印象がある。

あと、ハジメは威圧という技能を習得しているが、忍は既に覇気というものを得ていたためか威圧は習得しなかった。

 

ついでに言うなら魔物を喰ってステータスは上がっても技能が増えるようなことが起こりにくくなっていた。

但し、ステータス上昇は"初めて"喰らう魔物に限り上昇し、技能の方も階層の主級で、尚且つ会得することもある程度といった具合なのだ。

 

つまり、ハジメも忍もステータスはこれまで喰ってきた魔物で劇的に上がったが、技能に関してはこれ以上喰っても得られない可能性の方が強くなっている。

だが、2人はこれだけ技能が得られれば問題ないとし、忍に関してはどんどん派生技能を開発しようと息巻いてるくらいだ。

ハジメもハジメで今ある技能を最大限に活かせる方法を模索するつもりのようだ。

 

忍が自己鍛錬していると…

 

「(おい、忍。そろそろ百階層に行くぞ)」

 

ハジメからの念話が届いた。

 

「(わかった。すぐに戻る)」

 

忍もそう念話で答えるだ、ゆったりとした足取りでハジメとユエの元へと戻る。

 

「……シノブ、遅い」

 

ユエがそんなことを忍に言うと…

 

「おいおい、ユエさんや。俺は空気を読んで君達に2人きりの時間を提供しただけなんだが?」

 

そんなことを平然と言う。

 

「……ん。なら許す」

 

「そりゃどうも」

 

ユエは満足そうに言い、忍も仰々しく一礼する。

 

ここまでの一緒に来ただけに忍もユエがハジメを好いてることを承知してたので、出来るだけ2人だけの時間を作ってあげるように気遣っていたのだ。

 

「集まったのならさっさと行くぞ」

 

百階層への階段の前でハジメがそう言うといち早く降ってしまい、忍とユエも慌ててハジメについていくのだった。

 

百階層は無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。

ハジメ達が足を踏み入れると、柱が輝いて奥の方まで続いていく。

ハジメ達は警戒しながらも奥へと進んでいくと、そこには全長十メートルはありそうな巨大な扉があった。

扉は両開きの造りで、その表面には七角形の頂点に描かれた何らかの模様の彫刻が彫られていた。

 

そして、もう一つ…その頂点のすぐ上には何やら動物の絵も描かれていた。

一番上から時計回りに狼、鯱、飛竜、龍、虎、狐、鳥の絵が…。

但し、あくまでもそれらの絵はハジメと忍が絵に対して感じた印象である。

 

「「(何故、飛竜がいるのに東洋龍っぽいのがいるんだ?)」」

 

若干被ってる気がしないでもない絵の組み合わせに同じことを考えていた。

そもそも"何故、東洋龍っぽいんだ?"という疑問もあってハジメと忍は少し警戒を忘れて固まっていた。

 

「…………ここが終着点か?」

 

「…………そうだな。にしても、これはまた凄いな。もしかして…」

 

とりあえず、硬直から回復した忍とハジメは今更なことを言い合い…

 

「……反逆者の住処? あと、ハジメもシノブもどうかした?」

 

そんなユエの言葉に…

 

「「いや、気にしないでくれ」」

 

揃って同じことを答えていた。

 

「……?」

 

2人の妙なシンクロ率にユエは若干の嫉妬を覚えつつも首を傾げた。

 

「まぁ、ともかくとして…もしもそうなら最高じゃねぇか。ようやくゴールに辿り着いたってことだろ?」

 

「だな。いやはや、ここまで長かった…」

 

「……んっ!」

 

そうして全員が一歩を踏み出すと…

 

キィィンッ!!

 

扉の前で魔法陣が起動した。

それはかつてベヒモスを召喚したような魔法陣と似ていたが、その規模はざっと三倍はあった。

 

「ま、そう簡単にはいかないわな…」

 

「ベヒモスの時より大きい……こりゃラスボスか…?」

 

「……大丈夫…私とハジメなら負けない…」

 

「そうだな」

 

「お~い…俺を省かないでほしんだが…」

 

さりげなくハジメとユエからハブられた忍が若干の悲しみを背負っていると…

 

『『『『『『クルゥァァアアン!!』』』』』』

 

魔法陣から体長三十メートル、三つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物が不思議な音色の絶叫と共に現れる。

所謂、ヒュドラと呼ばれてそうな魔物だ。

 

「心眼!」

 

忍は即座に心眼を用いてヒュドラの弱点を探る。

忍の眼には"七つ"の光点が見えていた。

六つは言わずもがなそれぞれの頭だが、もう一つは胴体の方にあった。

 

「(親友。とりあえず、見た感じ頭を全部潰す必要がありそうだ。それと、なんか胴体の方にも反応があるから油断すんなよ?)」

 

「(わかった。ユエもいいな?)」

 

「(……ん。わかった)」

 

念話で情報を共有すると、全員が散開した。

ヒュドラが現れた瞬間、尋常でない殺気がハジメ達に叩き付けられたが故の反応だ。

 

『クルゥアン!』

 

六つの頭の一つ…赤い紋様が刻まれた頭が火炎放射を放つ。

 

「ちっ…!」

 

ドパンッ!!

 

その赤い頭をハジメがドンナーで撃ち抜く。

綺麗な血の花を咲かせたかと思ったが…

 

『クルゥアン!』

 

白い紋様が刻まれた頭が赤い頭をまるで逆再生させるかのように回復させていた。

 

「(これ、頭一つにつき、確実に一つは能力あるパターン?)」

 

「(らしいな…面倒な)」

 

忍とハジメはそんな念話を交わすと…

 

「じゃあ、速攻で回復手段を潰す!」

 

ヒュドラに向かって走っていた忍が身体強化と金剛、纏雷で四肢を強化し、縮地と空力で一気に白い頭に肉薄する。

 

しかし…

 

『クルゥアン!』

 

そこに黄色い頭がインターセプトして白い頭を守る。

 

「くそっ…防御系も完備かよ!」

 

その手応えから忍が叫ぶ。

但し、黄色い頭を粉砕したものの、すぐに白い頭が黄色い頭を回復させた。

 

「攻撃、回復、防御…マジで厄介過ぎるぞ! どうする、ハジメ!?」

 

忍がハジメに問い掛けるが…

 

「いやああああ!!」

 

「!? ユエ!」

 

ユエの悲鳴にハジメが駆け寄ろうとするが、それを邪魔しようと緑と赤の頭がハジメに炎弾と風刃を放とうとする。

 

「させるか!!」

 

そこに忍がインターセプトして赤頭を蹴って踏み台にして緑頭に拳を叩き込む。

そうすることで二つの頭の軌道が逸れて明後日の方向に炎弾と風刃が放たれる。

 

「忍!」

 

「こっちはいいから、そっちはユエさんを!」

 

「悪ぃ!」

 

そう言いながらハジメはチラッと黒い頭を見た。

 

「(バッドステータス系もあったか。くそっ!)」

 

そうこうしてる間に青い頭がユエに襲い掛かろうとするが、縮地を使ったハジメが間一髪ユエの救出に成功する。

 

「おい! ユエ、しっかりしろ!」

 

助けたユエの頬を軽くペチペチと叩いて意識を戻そうとし、神水を飲ませた。

虚ろだったユエの瞳が光を取り戻す。

 

「……ハジメ?」

 

「おう、ハジメさんだ。大丈夫か?」

 

「……よかった……また見捨てられたかと……」

 

そのユエの言葉に…

 

「やっぱ、バッドステータス系か。クソバランス良いじゃねぇか…」

 

ハジメは忍が足止めしてるヒュドラを睨む。

 

「……ハジメ………私…」

 

なんだか悲しそうな表情をしているユエに対し、ハジメはどんな言葉をかけようか迷った結果…

 

「………………」

 

頭をガリガリと掻いてユエに視線を合わせた。

 

「?」

 

その行動にユエも首を傾げていると…

 

チュッ…

 

「!?」

 

ハジメはユエに軽くキスしていた。

ほんの少し触れただけの本当に軽いキスだが…。

 

「あいつを殺して生き残る。そして、地上に出て故郷に帰るんだ。一緒にな」

 

そう言ってユエの手を引いて立ち上がらせるハジメは微妙にそっぽを向いていた。

 

「んっ!」

 

それが嬉しかったのか、ユエは笑みを浮かべて頷いていた。

 

「あの~…良い雰囲気のとこ申し訳ないが、そろそろ参戦してくんね? つか、イチャつくなら終わってからイチャついて……まぁ、それも個人的には凄く辛いんだが…」

 

必死にヒュドラの猛攻を凌いでいた忍から苦言が…。

 

「わかってるよ。シュラーゲンを使うからもう少し粘れ」

 

「あぁ、親友が大人の階段を登っていく」

 

「一緒に撃ち殺されてぇのか、テメェ?」

 

「~♪」

 

そんな会話だったが、最終的に忍は口笛を吹いて誤魔化す。

 

「……むぅ」

 

そのやり取りにユエが微妙な嫉妬を再度覚える。

 

「"緋槍"! "砲皇"! "凍雨"!」

 

攻撃直後の赤、緑、青の三つに炎の槍、真空刃の竜巻、針状の氷の雨が襲い掛かる。

ただ、ハジメが白を狙っていると悟った黄色は動かずにいた。

そして、再び黒がユエを狙おうとしたが…

 

「そう何度もやらせるかよ!!」

 

黒の頭上から踏み潰すかの如く忍が黒頭に踵落としを決めて粉砕する。

 

「おら、纏めて吹っ飛べ!!」

 

対物ライフル『シュラーゲン』を白に向けると、黄色がその射線上に入って防御態勢を取る。

しかし、この対物ライフルもドンナーと同じく纏雷を使うことでレールガン仕様になり、使ってる弾丸もタウル鉱石をサソリもどきの外殻であるシュタル鉱石でコーティングしたフルメタルジャケット仕様である。

 

つまり…

 

ドガンッ!!

 

まるで大砲でも撃ったかのような轟音と共に黄色と白の頭が同時に吹き飛んだ。

 

『『『…………………』』』

 

まさか、一度に半数の頭を屠られたことに残りの頭がハジメと忍を見ていると…

 

「"天灼"」

 

ユエが残りの三つを屠ろうと魔法を行使した。

三つの頭の周囲に六つの放電する雷球が姿を現し、稲妻の壁を作り出して空中に特大の雷球が現れる。

その雷球が弾けると共に壁で遮られた範囲内に極大の雷撃を撒き散らす。

 

ズガガガガガッ!!!

 

『『『グルァアアアアア!!?』』』

 

三つの頭が絶叫し、消し炭へとなるのに時間はそう掛からなかった。

 

ユエはその場にぺたりと座り込んでしまい、ハジメがユエの元へと走る。

忍も注意深く残った胴体を観察する。

 

そう、忍は最初の心眼で見ていた。

弱点は…"七つ"あるのを…。

 

「っ…ハジメ! 来るぞ!」

 

忍の叫びにハジメも縮地を使ってユエの元に辿り着く。

 

だが…

 

『クルゥァァアア!!』

 

最後に胴体から現れた銀色の頭は咆哮を一つすると予備動作なく、極光の光をハジメとユエに向かって放っていた。

 

「っ!?」

 

それに反応が遅れた忍がすぐに銀頭の横合いから殴り飛ばそうとするが…

 

「ハジメ!」

 

ユエの叫びが聞こえる。

 

「オラァ!!」

 

ドゴンッ!!

 

身体強化と金剛を併用した拳で極光を放っていた銀頭はその軌道を逸らし、極光は壁へと突き刺さる。

 

ドサリッ!

 

そんな誰かが倒れる音がして忍がそちらを向くと…

 

「ハジメ!?」

 

うつ伏せに倒れ、血が流れるハジメをユエが柱の陰に引っ張っていき、必死に介抱する姿が見えた。

ちなみに盾代わりにしたシュラーゲンは残骸と化していた。

たった一瞬でこれほどの威力なのだ。

連発されたら洒落にならないと判断した忍はハジメが復活するまで銀頭の注意をこちらに向けるべく行動を開始する。

 

「こっちだ、腐れ頭が!!」

 

忍が縮地と空力、残像を用いて銀頭を翻弄する。

 

「魔力放射+纏雷!」

 

まるで先程のユエが行った『天灼』を再現するかのように残像が雷の檻を作り出し、雷撃を銀頭に向けて放つ。

 

ピガガガガガガ!!!

 

『クルゥアン!!』

 

しかし、大したダメージにはなっていないようだ。

 

「くそったれが…!」

 

それを見て即座に金剛と纏雷を四肢に展開して口を開けさせないように上から、下からと連続した打撃を繰り返す。

 

すると…

 

ズドンッ!!

 

聞き慣れた銃声が聞こえてきた。

 

「っ!」

 

そこでハジメから念話が届く。

 

「(よぉ、忍。待たせたな。もう少しそのままそいつの口を塞いどけ)」

 

「(わかった。策はあるんだな?)」

 

「(ったりめぇだ!)」

 

忍はハジメを信じ、銀頭の口を封じ続けた。

 

「殺す!!」

 

そして、ハジメもさっきのお返しをするべく行動に移るが、その時ハジメの中で変化が起きた。

具体的にはハジメが取得した天歩が最終派生技能[+瞬光]に目覚めたのだ。

それは知覚機能を拡大し、天歩の各技能を格段に上昇させるというものだった。

 

それを活かし、ハジメは天井に銃弾を撃ち込んでいき、空力で天井近くまで跳んで何やら仕掛けを施す。

 

すると、天井が大爆発を起こして大量の瓦礫がヒュドラに落ちる。

それを見た忍も最後の一発を加えてから銀頭を踏み台にしてすぐさま退避する。

 

ガラガラガラガラ!!!

 

大量の瓦礫に押し潰されたヒュドラに縮地で近寄ると、ハジメは錬成を用いてヒュドラの身動きを封じる。

そうしながらハジメは忍に大量の手榴弾などを詰め込んだポーチを投げ渡す。

 

それを受け取り…

 

「おら、口開けろ!!」

 

銀頭の顎を蹴って強制的に口を開けさせると、そのポーチを口の中に放り込んだ。

 

「ユエ!!」

 

「ん! "蒼天"!」

 

忍が足止めしてる間に作戦会議でもしていたのだろう、ユエが極大の炎を作り出してそれを銀頭に向けて落としていた。

 

『グルァアアアアア!!?!?』

 

銀頭の断末魔が響き、銀頭は最後に融解しながら口に放り込まれた手榴弾などの爆発で消し炭と化した。

 

…………………

 

しばしの静寂が周囲を支配した。

 

忍は心眼を使ってヒュドラを完全に倒したと判断してハジメの方を向いてサムズアップした。

ハジメも後ろにぶっ倒れながら右腕を天に伸ばしてグッと親指を立てていた。

 

ただ…

 

「流石に…もう……無、理……」

 

ハジメはそう言って意識を手放してしまったが…。

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