投稿が遅れたのは俺のせいだ!もう…嫌なんだ自分が…!俺を…殺してくれ…、もう…消えたい…。
と言うわけで投稿です。
『ほう?脳無の他にコレをご指名とはね』
「いいから早く出してくれ先生。あのクソ野郎共を殺さないと気が済まないんだ…!」
死柄木弔は荒れていた。それもその筈 己に従わないヒーロー殺しと言う社会貢献に狂う殺人者に傷付けられたと言うのに、今度は黒いスライム状のヒーロー未満によってレンガブロックをぶつけられたのだから。しかも自身と黒霧の顔面を的確にだ。これで3回目、つまり3回もアイツ等に舐められ馬鹿にされたのと同義だ。
不快の意を示すようにガリガリと首筋を掻き毟る。通信越しから伝わるその不機嫌さに男はニィと笑う。
『良いよ弔。君が望むままにしようじゃないか』
そう言うと男は死柄木に伝える。
『君専用のセンチネルを一体貸し与えよう。なぁに、ハイエンド用の試作品みたいなモノだからね どう扱おうが君の勝手だ。…あぁ、だけどちゃんと使った後は回収してくれ。次の機会に備えて再利用しておきたいからね』
直後、何もない空間に現れる黒い粘液。そこから無造作にカプセルが放り出される。死柄木弔が先生と慕う者による個性によって排出されたそのカプセルを手にすると、
───
「ご主人様だよ、お前のな」
───
「そうだ
───
「ああ、お前の仕事はぶち壊す事だ。何もかも…な」
その言葉に呼応するかのように脈打つ白濁色の粘液生物。カプセルによって閉じ込められているがその凶暴性を傍に立つ黒霧は感じ取った。
その一方で男は上機嫌な様子を見せていた。
感謝しよう、
「さて、次は何をしようかなぁ…?」
マスクをした男の前に並べられたのは四つのカプセル。
その中には先程のモノと同じように端から緑、紫、黄、赤と言った粘液状の何かが蠢いていた。
▼ ▼ ▼
「シンビオート」
『なんだ、アイツ。どうしてだ?』
「シンビオート!」
『うるさい!分かってる!だけど何でだ!どうして、オレがもう1人居るッ!?』
「…なぁ、生き別れの兄弟か何かか?」
「そんな後付け設定なんて存在しませんよ…しないよね?」
イグニッションの言葉に思わず言葉を濁す。
MARVEL系に限らず、アメコミ作品…特に
スパイダーマンのクローンサーガなんかは特に…あ、これ以上はよそう。ハイ!この話題やめ。
『…ああ、そう言う事か!そうか!そう言う事かァ!』
『何がだ!勝手に納得するな!オレに黙って勝手に理解するな!』
何という理不尽の塊だろうか。コレが僕の中に居ると考えると凄い複雑な気持ちになるんだけど。
『ムシャクシャする!貴様が目の前に居る事がムシャクシャして堪らない!』
『"俺"はお前から生まれた!産み落とされたァ!分かるか!俺はお前の何かをなァ!』
『まさか……!嘘だ、お前は……!』
『俺がお前の仔だ』
『
…えぇ、奇跡的にもEP5の名シーンが再現されたシュールな絵面に僕は思わず呆れてしまう。何なのだこれは…いったいどうすれば良いのだ?
生き別れた親子の再会を祝した言葉でも贈れば良いのだろうか?
「認知しろよシンビオート」
『黙れ!オレは絶対に認知もしないし療育費も出さない!』
「うわクズ」
自分の個性ながら本当に良い反面教師だと思う。将来的にはこんな大人には絶対にならないよう気を付けよう(確信)
僕がそう思ってると隣に立つ赤糸虫さんが口を開く。
「でもさ…それって来正君にも同じ事言えるんじゃない?」
「え?」
「あー…そうかも。仮に来正君の個性から生まれた子供なら実質、来正君の子供と言えるよね?」
「…は?えっ……え?」
いや、ちょっと待って?いや…待て待て待て待て待て待て!?
「うん、とりあえずさ。パパとパパの名前言える?」
『「やめろォォォオ!!」』
赤糸虫さん‼︎それ言うのやめて!なんかこう、シンビオートと僕の間から産まれたオメガバース的な存在になっちゃうから!
「なぁどう思う?」
「それ聞くか?♂同士じゃ無理だろ」
「うわ想像しちゃった」
「逆に興奮して来ない?」
「そもそもシンビオートって性別あるのか?」
「つまりシンビオートが女の子と言う可能性がワンチャン…⁉︎」
「興奮してきた」
「は?男だからいいんでしょうが」
「あー!あー!あーーっ!聞きたくない聞きたくないーーッ!」
大人の階段登ると性癖幅が広がるとは聞いた事あるけど、シャチョーサイドキックズ達は本人の前での猥談はやめてください!
と言うか学生の前でいかがわしい話を繰り広げるの、ヒーローのやる事じゃないでしょうが!
…え?辞世の句で性癖を声に出すのもヒーローのやる事じゃない?うっせぇ、シンビオート嗾けるぞ(真顔)
『随分と楽しそうだな。全く、お前等を見ていると…!』
声がしたその直後。白いシンビオートは両手を
「全員回避しろォォッ!」
『っ‼︎』
ギャングオルカの一声によってその場に居た全員は飛び退いた直後、グシャア‼︎と地面を割る音が響く。コイツが何かは分からない…けど、やる事は1つ!
「シンビオート、ブッ潰せ!」
『惨たらしくも加えておけ』
こちらもシンビオートの出力全開に行く。周囲の炎もある程度鎮火してくれたお陰で弱体化する事もない。
コスチュームすらを呑み込むように大型サイズの身体へ変貌を遂げると両手を斧に変形。そのまま相手の背中に向かって振り下ろす。
『死ね!』
黒い戦斧が直撃する…と思った瞬間。相手はゴキャリと音を立てながら上体を無理矢理こちらに向けメイスを打ち付けて来た⁉︎
『死ぬのはお前の方だFarther』
拮抗するかに思えた斧と鈍器の打ち付け合い。それを制したのは相手側の白いシンビオートだった。そのままこちらの頭を掴むと、地面に叩き付けて来る。
ぐっ、コイツ…⁉︎ 僕等以上のパワーか!
『オイ、ヤバいぞキョウセイ。コイツ強い!』
「同じ姿なのに…いや、中身の性能差か⁉︎」
実のところ、シンビオートの特性として取り憑いた者の影響を受けパワーが増減する。仮にコイツがシンビオート(本物)と同じ特性を有してるなら、脳無の怪力の影響を受けている事になる。
何が言いたいかと言うと白い方が強いって事ね‼︎
『このまま握りつぶしてやる…!』
「させると思ったか!」
その瞬間、後方からギャングオルカが突進を仕掛けて来た。音波攻撃で無力化と言う手もあったのだろうが、そうした場合は位置的に僕等も巻き込まれてしまうのだろう。そう考えたのかシャチョーは接近戦を…えーと、ライオット?に突撃を起こった…が。
「!?」
『邪魔だ、失せろ』
体当たりを仕掛けた筈のギャングオルカ。だがライオットは空いた方の片手のみでシャチョーの攻撃を防いだ。それに飽き足らず背中から生やした触手でシャチョーの首を絞め始める。
「ぐッ…⁉︎」
『お前達もだ』
白いシンビオートがそう言うとメキメキと頭に力が籠るのが分かる。不味い…!このままじゃ頭の…骨が割れて……!
THWIP!
『ぐっ、なんだ⁉︎』
「勝手に人の首から上を潰そうとするのやめてくれる?代わりにポテト潰した方が有意義だと思うねッ!」
白いシンビオートの頭に糸を飛ばした赤糸虫さんはそう言いながら糸を引っ張る。ナイスだ赤糸虫さん!
「シンビオート、ギロチン!」
『いい事を教えてやる。
両腕をブレードに変形させ、頭を掴んでいた腕を斬り落とす。頭に付いた腕を取り払い、脳無…いやシンビオート?あぁ紛らわしい。シンビオートモドキから距離を置く。
「
『了解っ!』
イグニッションやシルバー達を筆頭にサイドキックのヒーロー達が己が個性を脳無シンビオートに向かって放つ。
命中するかと思われたが、シンビオートモドキは脅威の跳躍力で僕等の前から頭上にある鉄塔の頂へと移動、攻撃を回避した。
『煩わせやがって…!』
切断された腕を再生させながらこちらを睨む様は正直言って不気味だった。いつも見慣れている筈の顔が2つもあると言う事態に今も尚、頭が追い付いていない。
「本当に何なんだアレは…!」
「
「いや知りませんって、仮にあんな2Pカラーのシンビオートが居たなら、喧嘩騒動に挟まれたストレスで敵化してると思いますよ?」
「えっ」
「えっ?」
『えっ』
え?…あの、皆さん?何でそんな驚いたような表情を?僕だってストレス溜まりますからね? そんなサイコ一歩手前のモンスターじゃないですからね⁉︎シンビオートと言う個性を除けば僕はオタク属性持ちの一般男子学生ですからね!
「…一般の男子学生?」
「え、なに緑谷君。僕に何か落ち度でも?」
「あ、いや何でも…って、上!」
そう言われて上を見上げると白いシンビオートが鉄塔の一部をへし折っていた。そのまま支えの一部を無くした建造物はこちらに向かって…倒れて来てる⁉︎
「sp//dr起動!」
シルバーの音声認識と共に重厚なボディを持つ多脚戦車が起動。ガシャン!と音を立てながらも鉄塔の支えとなる事で倒壊は免れた。するとシルバーがこちらに向かって声を上げる。
「ヴェノム !仮にヤツがお前と同じならば倒す方法も熟知してる筈だ!弱点は無いのか⁉︎」
「アッハイ、ありますあります!火と音です!…と言っても音に関しては高音域のヤツに限られますけど」
「火と音…。ならばイグニッションと私が攻撃を軸に行えば───」
「そう言うがシャチョーよぉ。アイツにそんな隙があるとは思えないぜ⁉︎」
建物を足場に縦横無尽に移動を行う白いシンビオート…あ、いやそう言えば最初の方でライオットって名乗っていたっけ?
イグニッションの言う通り1箇所に留まらず、ヒットアンドアウェイの戦法を行ってくる相手に炎と音波攻撃を当てるのは至難だ。遮蔽物を使って炎や音を防ぐ手も使って来るのは容易に想像出来る。
至近距離から狙えば確実にダメージを与えられるだろうけど、ハッキリ言ってあのライオットのパワーはオールマイトにも引けを取らないと言っても過言ではない。
と言うか完全に僕らの上位互換じゃん、理不尽じゃん、クソやんけ、那珂ちゃんのファンやめます。
『落ち着け』
「シンビオート!」
『何を喚いてる?やる事はいつもと変わらない。寧ろオレの事を知ってるなら尚更簡単だ』
「簡単…」
そう言われて僕は思考を切り替える。そうだ、シンビオートをよく知ってるのは僕自身だ。それならばライオットに対してやれる事や対策は容易に思い付く。
「策は練られたか?」
「はい…と言いたいですけど。シャチョー達がいる事を前提とした作戦なので簡単には行きそうにないですけど」
「…成る程。それならば話は早い」
「と言いますと?」
「お前が我々を上手く扱え」
「⁉︎」
エッ、それってつまり僕がシャチョーや事務所の先輩方に指示を投げ掛けるってコト!? ワ、ア…アッ(プレッシャーによるストレス)
「シルバーマルテース、ヴェノムのサポートを行え。Vスパイダー並びにデク(緑谷出久)は他のサイドキック達と共に周辺被害の低下に専念!…さて、見せてもらうぞ
ヒュー、ヒュー…ッ(過呼吸) やめてくださいシャチョー。それって俗に言うパワハラに属するアレです。学生に過度なプレッシャーを掛けるのはやめてください本当にマジで、あっヤバい涙が溢れて来た。
「ワ…ァ…ッ」
「泣いちゃった…で、でも来正君なら大丈夫だよ!」
「赤糸虫さん…」
「大丈夫だよ来正君!これまで君はその知力で壁を乗り越えて来たじゃないか!」
「緑谷君…!」
「ボク達、来正君の狡猾さを信じてるから!」
「そうだよ!(便乗) その海千山千は君の武器じゃないか!今こそその力を発揮する時だよ!」
ごめん2人共。心なしかもっと涙が溢れて来たんだけど。何でだろう?こう…讃えられてるのに釈然としないと言うか、どう考えても良い方面の賞賛に聴こえない。なんで?
▼ ▼ ▼
日が沈み、より一層の闇に染まる路地裏。敵の出現、火災と言ったアクシデントに見舞わられる街の一角。誰もが目を向ける事のないその場所に3人の男が居た。
「ハァ…この程度か」
「〜〜ッ‼︎」
【ヒーロー殺し】ステインと、その標的となってしまったヒーロー2名。否、ヒーロー1名とヒーロー候補1人が正確なのだろう。その場に倒れ伏した少年『飯田天哉』は痛みと怒りが入り混じった鬼の如き形相を浮かべ、ステインを睨み付ける。
「お、おおおおおおおっ!」
「む」
腕に突き刺さった刃を無理矢理引き抜くと飯田は雄叫びと共に回し蹴りをステインに向かって放つ。
「ぬるい」
「がっ⁉︎」
「愚直過ぎる蹴りだ」
だがその蹴りは難なく躱され、逆にカウンターの蹴りを喰らってしまう。加えてステインのブーツに装着された棘によってダメージは増大。床に鮮血を撒く結果となる。
「弱いな。お前も
「黙れ悪党…ッ!兄さんは弱くなんか…」
「
「弱くなんかないッ!兄さんは本物のヒーローだッ!僕に夢を抱かせてくれた立派なヒーローだったんだッ!」
ヒーロー殺しステインの手により飯田天晴、インゲニウムは脊髄損傷と診断され下半身麻痺による影響でヒーロー活動の復帰は困難となってしまった。
多くの人々を助け導いて来た飯田にとって兄こそ正しく憧れのヒーローそのもの。自分の働きが数多の人々の為になると信じる彼の姿に飯田は敬意を、羨望を向けていた。
そんなインゲニウムを、兄を。目の前の男は贋物と称した。己の家族の仇である敵を前に地に這いつくばりながらも彼は叫ぶ。
「殺してやる!」
「あいつをまず
ステインの指差す方向。そこにはヒーロー殺しの手により傷を負ったヒーローが倒れていた。
飯田がステインを見つけた際に襲われていたヒーロー。幸い彼が割り込んだ事により絶命は防がれたが、その場からマトモに動く事が出来ない様子と分かる。
皮肉な事に敵であり兄の仇であるヒーロー殺しの言葉は正しかった。飯田の心を抉るようにステインは吐き捨てる。
「目先の憎しみに捉われ私欲を満たそうなど…ヒーローから最も遠い行為だ…ハァ……だから死ぬんだ」
そう言いながらステインが刃に付着した血を舐めた直後。飯田の身体の自由が効かなくなる。まるで全身の筋肉がコンクリートで固められたように動かなくなってしまった。
恐らくヒーロー殺しの個性であると推測される力により敵の前で無防備な状態となってしまう。
「動かな…ッ!」
「じゃあな。正しき社会への供物」
「黙れ…ッ!何を言ったってお前は俺の兄を傷付けた犯罪者だッ!」
怒り、悔やみが入り混じった慟哭が響く。死が迫る最中に自分に出来るのは目の前の男に向けて罵声を浴びせるだけだ。
血が滴るヒーロー殺しの凶刃は無情にも少年に向かって振り下ろされ───
「違う」
「…うん?」
「そうじゃないだろう…!最期の言葉は…ハァ…!」
「いや何が?」
何故か寸前で止まる刃。不可解な行動に困惑しているとスイテンが口を開く。
「先程、お前は何と言った?」
「は?」
「何を言ったか問い掛けている…!」
「は、はぁ…えーと、"殺してやる"?」
「違う、その後」
「えっと…"いや何が?"」
「そのすぐ前だ」
「……お前は俺の兄を傷付けた犯罪者だ?」
そう呟くとステインは目を大きく開き、飯田に詰め寄る。
「なんだその台詞はッ!ヒーローであるならば辞世の句くらいヒーローらしくあるべきだろう‼︎」
「えっ、あ、いやそうなのか?…いや、そうかもしれない…⁉︎」
思いもよらぬ言葉に飯田はそう返してしまった。敵であるヒーロー殺しは根が真面目である飯田にアッハイとしか答えさせないまでのプレッシャーを放っていた。まるでそれはヒーローについて語らせた緑谷(三次元オタク)と来正(二次元オタク)と同等。あるいはそれ以上のモノだろう、端的に言って恐ろしい。
「もう一度だ…言え」
「お、お前を許さない…?」
「駄目だ星1つ。もっとドラマティックにやれ」
「わ、我が生涯に一変の悔い無ーーーーしッ!?」
「まだ恥じらいが残ってる。星2つ」
「くっ…(何なんだコレは⁉︎)」
裏路地で行われるヒーローの台詞審査に困惑の意を見せる飯田。委員長を務めている彼でもこの事態が可笑しいのは流石に理解出来た。なんなのだこれは(真顔)
「気を…付けろ…っ!」
「あ、貴方は…!一体何を…⁉︎」
ヒーロー殺しにより傷を負ったヒーローであるネィティブは飯田に向かって忠告を行う。
「ハァ…ハァ…!そいつは謎の拘りを持っている…!満足の行く返答をしない限り永遠と捨て台詞を吐かされる事になるんだ…その結果がこの有様…さ……ゴフッ」
「なんと惨たらしい…ッ!」
肉体・精神共に徹底的に傷付けられたヒーローの姿を見た飯田は戦慄する。これがステインがヒーロー殺しと称されたる所以。その証拠に眼前のネィティブが白く燃え尽きている。
恐らくステインに徹底的に駄目出しされまくった者だ、面構えが違う。本当に何なのだこれは(真顔)
「さて──続きだ贋物。貴様の遺言を口にしろ…ハァ…殺すのはそれからだ…」
刃毀れの起こした刃が飯田の首筋に当てられる。頸動脈を狙ったステインの意思は贋物と断定したヒーローの殺害。例えそれが僅か15歳の少年であったとしても信念は揺らぐ事は無いだろう。
飯田の胸に宿るは仇を打てなかった後悔。そしてヒーローを目指す友との約束を守れなかった事への無念。
兄と同じ末路──否、刻々と近づく死に覚悟した彼はステインに向かって告げる。
「殺すなら殺せッ!!僕は地獄に行ったとしてもお前を忘れる事はッッ!」
「言いたい事はそれだけか…ハア゛ッッ⁉︎」
「!?」
その瞬間、ステインが何か黒いモノに轢かれた。面を喰らう飯田だったが自分の横を2つの人影が通り過ぎて行く。
『やば、何か踏んだ』
「シンビオート⁉︎」
「思い切り顔面踏みつけちゃったね…」
「そ、その…ごめんなさい!」
「その声…来正君に緑谷君達かッ⁉︎」
声を上げた直後、それに反応した先頭の黒い小型恐竜が声を上げた飯田に向かってバックして来る。そのまま黒い恐竜に続いて他の2人が倒れ伏す彼の顔を覗く。
「あれ…?飯田君に似ているね?」
『もしかすると飯田かもしれないな』
「あ、眼鏡落ちてる」
「うん、間違いない。飯田君だな」
『確認ヨシ!』
「ちょっと待ってくれ。一体何で僕と断定したんだ?」
その言葉に対して緑谷達は無言を貫く。眼鏡を掛けてなかったので誰だか分からなかったと答えてしまえば気不味い雰囲気になる事は明白だ。眼鏡の所為で友情が崩壊するなど笑い事ではない。
「そっ、そんな事より。ここの皆、怪我をしている!」
「飯田君だけじゃない!ヒーローのネィティブまで⁉︎この創傷…多分、敵はかなりのやり手だ…!」
飯田とネィティブに駆け寄る緑谷と赤糸虫。それに対してシンビオートがもう一方の倒れている者に向けて口を開く。
『ああ、それにこっちもだ…酷いな。顔に一撃、しかも鼻が削がれている。やった相手は誰だか分からないが相当なやり手と見た』
「責任の放棄は良くないと思うんだシンビオート…と言うか待って?何でこの人、身体の至る所に刃物仕込んでるの⁉︎ えぇ…怖…」
「い、いや来正君。そいつは───」
銃刀法違反をバリバリに破ってる事に恐れ慄く来正。そんな全身に凶器を隠し持った相手がヒーロー殺しだと飯田が伝えようとしたその時。後方から轟音が響く。
CLAAAAAAASH!!
「なんだッ⁉︎」
「しまった、今作戦中だった!全員行け行け逃げろ!GO GO GO!」
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
轟音が響く方向より白濁色の怪物が現れる。雄叫びを上げながら狭い路地を無理矢理通るシンビオートに似た不定形の何かは身体を変形させ、来正達迫って来る。
「な、なんだアレは「それは後で説明するから!」うおッ⁉︎」
緑谷が傷だらけの飯田を、赤糸虫が負傷したネイティブをそれぞれ背負うとそのまま走り出す。
「ま、待ってくれ!僕はあいつをッ!」
「何を言ってるかは知らないけどごめん!今は逃げる事を優先しよう!」
「だが……!」
『動けてない癖して大事を口にするな。黙ってろ!』
「…ッ!」
シンビオートの言葉を受け、激しい悔恨が飯田を襲う。ヒーロー殺しが目の前に居たと言うのに体の自由が効かない。
これがヒーローの姿か?何と言う不甲斐無い姿だろうか。
兄からヒーローの道を奪った者に何も出来ず逆に友人に助けられてしまった。そして何よりも、あのヒーロー殺しからヒーローのあるべき姿を諭されてしまう始末。
激情に駆られる飯田がステインが倒れている箇所に視線を向けたその時である。
ゴシャッ(轢かれる音)
「あっ」
飯田は見た。ヒーロー殺しが白濁色のシンビオート(に酷似したモノ)により轢かれ、偶然にもゴミ収集ボックスに向かって跳ね飛ばされたのだ。
ベチャ
「……」
直後、路地に響く生々しい音。
よりによって今日は生ゴミの日だったらしい。親族の教育の賜物か、そもそも根が真面目だからこそなのか。兄の仇であるのにも関わらず、ゴミ山にブチ込まれたステインに対して心中で合掌を行うのであった。
「あっ、ヤバっ!!銃刀法違反オーバーの人忘れてた!」
『放っておけ、そもそも最初から居なかったと認識しておけば問題ない』
「それ別方面の問題が発生するヤツ!」
「あぁ、轢かれたアイツに関しては問題無い。放っておこう」
「「「え゛っ⁉︎」」」
緑谷達は思った『飯田君って、こんなドライな性格だったか…?』と。
知らない内にゴミ箱にぶち込まれるステイン。全国のヒーロー殺しファンの皆様に謝罪を。
皆様お久しぶりです。多忙の合間を縫って投稿を行いました。
ですが投稿日数が空いた影響か前回の話と比べて、文章の稚劣さが増えた気がします。
何とかコツを取り戻す為にもなるべく早く投稿が出来たらいいなと思います。