気がついたら名も無きパイロットになってた   作:ボートマン

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第10話

「(救命ポッドか。乗っているのはラクスだよなぁ)」

 

現在格納庫ではマードックが救命ポッドのロックを解除している。

 

扉の前にはライフルを持つ数名の警備兵。

 

その後ろには救命ポッドをキラにマリュー、ナタルといった士官。

 

ほかにはキラの友人であるサイ達やフィルが集まっていた。

 

「開けますぜ」

 

マードックが操作して扉が開き、警備兵がライフルを構える。

 

そうして開いた扉から出てきたのはピンク色の球体だった。

 

「ハロ!ハロ!」

 

パタパタと耳と思わしき部分を動かす物体にフィルは見覚えがあった。

 

「(やっぱりガンダムと言ったらハロだよなあ)」

 

そして、次に出てきたのはロングスカートを着た美少女だった。

 

無重力空間であるからかスカートをひらひらとさせて出てきた少女は、フィルの予想通りの人物だった。

 

「ありがとう。ご苦労様です」

 

そう言って出てきた少女はキラの手を借りて着地する。

 

「あら、あらあら?」

 

キラの軍服を見た少女はこの艦がザフト軍でないことに気づいた。

 

「まあ!この船はザフトの船ではないのですね?」

 

その言葉にマリューや警備兵たちが唖然とし、ナタルが頭を抱える。

 

 

「さて、どうしよう?」

 

ポッドから出た少女(ラクス)はマリューとナタルとムウの三人が士官室で詳しい話を聞いている。

 

一方、フィルはプロトストライクのコックピットの中でこの先どうすべきか考えていた。

 

「優先すべきはフレイの父親が死ぬのを避けるべきかな?」

 

フレイの父親は先遣隊の旗艦に同乗していた。

 

しかし、先遣隊はクルーゼ率いるラクス捜索隊と遭遇してしまい戦闘に入った。

 

そこでフレイの父親が死んでしまった。

 

「でもそうすると大幅に原作から離れるな」

 

原作では父親を失ったフレイがコーディネイターへの憎しみが大きくなり、キラの恋心を利用して復讐の道具にしようとした。

 

「だけど、俺という存在自体がイレギュラーだよな」

 

本来ならフィル・レオルドというキャラは原作に存在しないうえ、プロトストライクとい機体も存在しない。

 

「はぁ~こうなったら覚悟するしかないか」

 

機体から降りたフィルは詳しい話を聞くために艦橋に向かうことにした。

 

そうして向かう途中で通路で佇むキラを見つけた。

 

「どうしたんだキラ君?」

 

「……別に」

 

明らかに何かに悩んでいる様子のキラにフィルは話を聞くことにした。

 

「何か悩んでるなら相談に乗るよ」

 

「でも……」

 

「こういうことは腹の中に溜め込むより吐き出すほうがいい」

 

フィルの言葉にキラは少しずつ話してくれた。

 

ユニウスセブンで自分が撃ったジンのこと。

 

そのジンは何か探しているようだった。

 

それがあのポッドの少女だったのではないのか。

 

そして、自分はそんなジンのパイロットを撃ったことを思い悩んでいること。

 

「そうか…今の俺が君に言えることは仕方なかったとしか言えない」

 

「でも、仕方なかったとしても僕は…人を…」

 

「だけどそうしなければ別の人間が死んでいた。その上敵は増援を要請してさらに多くの人間が死んでしまうことになっていた。だから思い悩む必要はない」

 

「………」

 

 

「それでも納得できなくてこれだけは覚えていてほしい。君がジンを撃ったお陰で俺たちは生きているということを」

 

「……はい」

 

フィルの言葉に少しだけ気が晴れたのかキラは小さいながらも返事をしてくれた。

 

「(しかし、戦争なんかと関係ない子供に理解しろと言ってもそう簡単にはできないよな)」

 

「あの…ありがとうございますフィルさん」

 

「何、気にしないでくれ。本当なら俺達軍人が頑張らないといけないのに、不甲斐ない俺達のせいで君たちを巻き込んでしまったんだ」

 

「それでもこうやって話を聞いてくれて嬉しかったです」

 

「まあ色々と悩んでいることがあったら相談に乗るから遠慮なくいってくれ。例えば…あのフレイって子のこととかね?」

 

「な、何言ってるんですか!?」

 

フィルの言葉にキラは慌てだした。

 

こういった所は年相応の姿なのだろう。

 

「嫌よ!」

 

そうして二人で歩いていると、食堂からフレイの大きな声が響いた。

 

「フレイ!」

 

対するミリアリアも怒鳴り返していた。

 

「嫌ったら嫌よ!なんで私が持って行かないといけないのよ!」

 

「どうしたんだ?」

 

一緒にいるカズイにどういうことか事情を聴いてみることにした。

 

「えっと、キラが拾ってきた女の子の食事をミリィがフレイに持っていってもらおうとしたら揉め始めたんです」

 

「そうか」

 

「私は嫌よ。コーディネイターの子に近づくなんて嫌よ」

 

フレイの言葉にキラが顔を俯かせる。

 

先ほど話を聞いて少なからず精神ケアできたのに、これではまた振出しに戻ってしまう。

 

「フレイ!」

 

「あ、もちろんキラは別よ。でもコーディネイターって反射神経がよかったり運動神経が凄かったりするでしょ、ねえ?」

 

そこでキラに同意を求めるも、キラは答えられるわけがなかった。

 

「フレイ君、一ついいですか?」

 

「何よ?」

 

「コーディネイターを何か野蛮な人間だと思っていますが、コーディネイターも私たちナチュラルと大して変わらないんですよ」

 

「で、でも」

 

「コーディネイターは確かに遺伝子を操作して身体能力などを向上しています。ですが、コーディネイターでも怪我をすることもあれば病気になることもある。それにコーディネイターだって誰かを好きになったり、友達と笑いあったりする私たちと変わらない人間なんだ」

 

我ながらこんな言葉を軽々と言って恥ずかしい気持ちだが、今はフレイのコーディネイターに対する認識を変えるために我慢する。

 

「だけどパパはコーディネイターは危険な存在だって」

 

「確かに一部のコーディネイターはナチュラルを敵視する者はいるでしょう。ですがナチュラルも同じようにコーディネイターを敵視しています。フレイ君、私はただ周りの言葉をただ鵜呑みするのではなく、互いに話し合って知ることが大切だと思うんです」

 

長々と話してしまったが、周りを見るとキラ達は意外そうにこちらを見ていた。

 

そこでフィルは食堂の入り口にいるラクスに気づいた。

 

「はぁ~なんで外に出てるんですか?」

 

フィルの声に皆入り口にいるラクスに気づき驚く。

 

「驚かせてしまって申し訳ございません。(わたくし)、喉が渇いてしまって」

 

喉が渇いてしまって水を貰いに来たのかもしれないが、先ほどの話の後のため妙な雰囲気になってしまった。

 

「(そういえばこの場面を忘れてた…)」

 

「それにお恥ずかしいですけど、お腹も空いてしまって。ここは食堂ですよね?何かもらえると嬉しいのですが」

 

「……一応お聞きしますが外出許可はとったのですか?」

 

「はい。(わたくし)、ちゃんと出かけてもいいですかーと三回ほどお聞きして大丈夫だと思いまして」

 

いくら人材不足といっても監視の一人もつけてないこの艦の状況にフィルは頭が痛くなった。

 

「それに皆さまとお話をしながら食事をしたくて」

 

「わかりました。食事には私が同席しましょう」

 

「まあ、それはありがとうございます」

 

「さて、キラ君。三人分運ぶから手伝ってくれないか?」

 

「え?三人分ですか?」

 

「そうだ。彼女と私と君の分だ」

 

「ぼ、僕もですか?」

 

驚くキラにフィルはそうだと頷く。

 

「食事は二人より三人のほうがいいだろ?」

 

そうして三人は部屋に戻る途中、フィルはキラに近づく。

 

「大丈夫か?」

 

先ほどのフレイの言葉はキラにとって精神的に辛かったはずだ。

 

「…はい、大丈夫です」

 

本当に大丈夫かわからないながらも返事をしてくれた。

 

「まあ、前も言ったが何か辛いことがあったら相談に乗るからな」

 

「ありがとうございます。それよりもフィルさんの言葉が嬉しかったです」

 

「そ、そうか…」

 

「はい、まだ若いのにしっかりとした考えを持っていて凄いって思いました」

 

褒めてくるキラにフィルは照れ臭かった。

 

「それよりキラ君。これからは彼女のことを気にかけてくれ」

 

「え?」

 

「何分、彼女はあまり出歩いてはいけないからな。俺も気に掛けるがキラ君も気にかけてほしい」

 

「わかりました」

 

「それにこんな可愛い女の子と話せるんだしな」

 

「な、何言ってるんですか!」

 

「どうかしましたか?」

 

慌てるキラにラクスが振り向いてきた。

 

「いえいえ、お気になさらずに」

 

その後は三人で食事しながら他愛のない話をして過ごすのであった。

 

そして、フィルはラクスをキラに任せて艦橋に向かった。

 

とりあえず今後の方針を聞こうと思った。

 

艦橋に入ると何やら盛り上がっている様子だった。

 

「どうしたんですか?」

 

「喜べフィル!今第8艦隊の先遣隊がこっちに向かってるんだ!」

 

ノイマンの言葉にフィルは嬉しそうにせず、この情報にやばいと思った。

 

「どうしたんだよ。そんな顔して?」

 

「いえ、少し嫌な予感がして」

 

「どういうこと?」

 

フィルの嫌な予感という言葉にマリューが尋ねる。

 

「ザフトのラクス・クラインの捜索隊と先遣隊が遭遇する可能性があります」

 

「待って!先遣隊と捜索隊が遭遇するって」

 

「皆さんもあの少女がどんな存在か知ってるはずです。その少女を捜索する部隊はユニウスセブン方面に向かってるはずです。恐らく戦艦一隻なんてものではないでしょう」

 

フィルの言葉にラクスが現最高評議会委員長の娘であることを思い出した。

 

「貴方はどうすべきと考えているの?」

 

「一番の最善手は先遣隊といち早く合流して宙域から離脱することです。ですが、もし先遣隊が戦闘状態になっていたら一つだけ状況をどうにかできる方法があります」

 

「それは何なの?」

 

「正直これは一か八かの賭けみたいなものです。最悪の状況になり次第移るのでその時は私の指示に従ってください」

 

「何を言ってる!なぜ今言わん!」

 

「これはあくまでも私の予想にすぎません。最終的な判断は艦長に委ねます」

 

そう言ってフィルはマリューを見る。

 

「わかりました。本艦はこれより全速力で先遣隊の合流します。もし、フィル少尉の言う通りの状況になっていた場合、フィル少尉の案に従いましょう」

 

「艦長!」

 

ナタルが納得できないと呼ぶも、マリューの意志は固かった。

 

「今は先遣隊と合流することが最優先よ。話はそのあとでするわ」

 

「……わかりました。しかし、この件はキッチリと報告させていただきます」

 

マリューの指示の下、アークエンジェルは最大船速で先遣隊との合流を目指すのであった。

 

 




次回作であるクロスアンジュの主人公の機体についてアンケートをとります。
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