先程来た道を戻り、弦巻が扉の前で止まる。
どうやらここのようだ。
物置部屋の時の弦巻はいつもより少し変に感じたが、気の所為だったのだろうか?
今はすっかりスーパースマイル人の如く通常状態だ。
コレが通常状態とかヤバいな。
…………そういや、弦巻が怒ったらどうなるんだ?
…………いや、辞めとこう。
たった今、脳内で黒服の人たちに殺されたのは何かの間違いだ。
こころ「………八幡?どうかしたの?」
八幡「い、いやなんでもないぞ?
ちょっと頭の中で串刺しにされただけだから気にすんな。」
弦巻を怒らせてはいけないと言うことだけわかった。
てか、そもそもコイツ怒るって感情あるか心配なレベル。
こころ「………八幡って時々何を言ってるかわからないわ!」
八幡「………うっせ。お互い様だっつーの。」
多分お前にだけは言われたくない。
こころ「ほら!!早く開けてちょーだい!」
八幡「へいへい。わかりましたよ。」
一体何があるってんだ…………
ガチャ
「「「パンっ!!」」」
八幡「ヒッ!?」
「「八幡(はち君)(比企谷君)おかえりー!!」」
こころ「やったわ!!どう??はちまんっ!
驚いたでしょ!?」
はぐみ「こころん、やっぱり天才だよー!はぐみ、もう1回クラッカー鳴らしたい!」
薫「ふふっ。今日という日は凄く儚いね。」
花音「そう……だね。
でも…………本当に、良かった。」
美咲「そうですね………
でも、昨日の時点で良くこんな用意を……」
八幡「………………」
花音「え、えーっと…………比企谷君大丈夫??」
八幡「………………」
美咲「あー…………完全に固まってますね。笑
ヒッ!とか言ってましたし(笑)」
八幡「……………はっ!?」
ここ……は……?
あれ………なんで俺は生きてるんだ?
確か………銃声が聴こえて………それで、、、
八幡「…………………なるほどな。」
花音「あ、あははは…………
ご、ごめんね?そこまで脅かすつもりはなくて………」
おっとー。
松原さんが申し訳なさそうに謝っているぞ。
謝らないでください。俺が思考停止したのがいけないんです……
いや、でもさ?
至近距離でクラッカーされたらそりゃこうなりますよ。
耳からやられました、はい。
八幡「い、いや大丈夫です。少し驚いただけです。
それで………コレは?」
辺りを見渡すと、食べ物やらケーキ等とテーブルの上に置いてある。
え、なに?パーティー会場??
こころ「今日は改めてバンドの結成のお祝いだわ!!
みんな盛り上がって行くわよーー!!」
はぐみ、薫「「おーー!」」
花音「お、おーー……!」
美咲「花音さん……無理にしなくてもいいんですよ。」
八幡「…………マジか。」
凄い豪華な食べ物が沢山………
ご、ごくり。
はぐみ「それにしてもこころんは流石だね!!
昨日から準備してて良かったね!」
美咲「…………確かに。
いや、でもこころは楽観的だからあんまり深くは考えてないと思うけど………」
八幡「…………何の話だ?」
花音「あ、えっとね?
昨日比企谷君が帰った後に、こころちゃんがね?」
美咲「今から早速パーティーの準備をするわよ〜って急に……
いきなり何?ってなりましたよ。」
薫「こころはいつも突然だからね。
それもお嬢様らしくて、こころらしいよ。」
はぐみ「こころんは、はち君がバンドするってわかってたの?」
こころ「………いいえ、少し違うわ!
八幡は元々バンドのメンバーだったでしょ?」
八幡「………え?」
こころ「八幡はずっと、「俺はやらねぇ」って言っていたけど、
あたしはずっとバンドメンバーだと思っていたわ!
だって花音に出会った時も、薫にはぐみ、美咲とミッシェルの時だって一緒にいたわ!
八幡はもう既にあたし達の仲間よ!!」
…………コイツはこういう事を平然と、、、
八幡「…………松原さんの時はまだバンドの話はなかったぞ。」
少し恥ずかしかったので会話を濁す。
まぁ、あの後からバンドの話が始まったんだけどな………
こころ「そうね!あの時は3人だったけど楽しかったわ!」
花音「ふふっ。比企谷君は、カスタネットだったよね。」
八幡「そう………でしたね。」
今でも思い出せる。バラバラな演奏。
弦巻がオリジナルの歌を歌うから、俺と松原さんが大変だったな。
こころ「でもあの時にバンドを組みたいって思ったのよ?
あたしの歌に色々な音色が乗るの。
周りの人達も集まってくれて、とても楽しかったの!
それに、とーっても笑顔が溢れてたわ!!」
こころ「あたし達が出会ったのはきっと偶然なんかじゃないわ。
ここにいるみんなが出会えたのはきっと意味があると思うの!」
偶然じゃない…………か。
こころ「だから八幡がどんなに悩もうとも帰ってくる事を、信じてたわ!」
薫「……ふふっ。だから『お帰り』なんだね。」
こころ「えぇ!そうよ!
帰ってきたら『お帰り』って言うのは当然でしょ?
また、改めて言うわ!はちまんっ!!おかえりー!!!」
八幡「バッ………恥ずかしいからやめろっての。」
コイツは本当に…………
はぐみ「はち君おかえりー!!」
薫「八幡、おかえり。」
花音「比企谷君、おかえりなさい。」
美咲「比企谷くんおかえり。」
いや……『コイツら』だったな。
おかえりと言われたら答えてやるのが世の情け。
………そういや、おかえりなんて家族以外に言われた事ないから変な感じだ。
まぁ、普段こんな事言う機会もないもんな。
だけど今は…………しっかりと伝えよう。
八幡「………………たでーま。
それと………………」
5人「???」
八幡「………いや、やっぱりなんでもねぇわ。」
………………サンキューな。
×××
こころ「それじゃあ、せーのっ!」
「「「かんぱーい!」」」
はぐみ「わっ、何コレ!すっごく美味しいよ!!」
花音「はわわ………み、見たことの無い料理ばっかり……」
美咲「うっわ………めちゃくちゃ美味しい。」
薫「確かにコレは………凄い料理だね。」
八幡「なんだ………コレ……」
とりあえず1口……………へ、へぇ。
ま、まぁ、確かに美味いけど?
食べた瞬間に口に広がる肉汁っつーの?
でも、ちょっと広がりすぎて口説いかな。
食べ過ぎには注意だな、うん。
……………ふぅ。
小町が作った料理には勝てないかな、うん。
黒服「食後にはデザートも用意してあるのでお声かけください。」
はぐみ「で、デザートもあるの!?ど、どうしよう!!
お腹いっぱい食べたいけど、それだとデザートが………」
花音「ほ、本当に美味しいから悩んじゃうね……」
八幡「あ、あのー………ちょっといいですか?」ボソッ
黒服「はい、なんでございましょう?」
八幡「いや、その、この料理余ったら持って帰ってもいいですかね?
妹とお母さんにも食べて欲しいな、と。」
コレを持って帰れたら小町たちも喜ぶだろうな。
今回の件も無関係者とは言えないし、世話にもなったからな。
黒服「もちろんです。直ぐにお持ち帰り用の用意をします。」
八幡「………え?いや、この残ってるのでいいんですけど?」
タッパとか、入れ物をくれればそれに入れて持って帰るんですけど……
黒服「いえいえ、ご安心ください。出来立てを運べるように、帰る時にお持ちしますよ。」
マジですか、そうですか。
……………ご安心しちゃっていいんですかね?
花音「比企谷君は優しいね。家族の人にも食べさせたいなんて」
後ろから声を掛けられる。
………見られてたんかい。
恥ずかしいからバレたくなかったんだけど………
八幡「いや、そんなことないっすよ。
家でも俺が食べたいと思っただけっす。」
本当に食べちゃいそうで怖い。
花音「…………ふふっ。そっか。」
わー、凄い笑顔で見てくる。
私はわかってるよ。みたいな顔……
花音「………そう言えば妹がいるって言ってたよね?
妹さんはお幾つなの?」
………ほう。
小町に興味を持ちましたね?
いいでしょう。俺が知ってる情報なら全て教えて差し上げますよ。
美咲「あ、それはあたしも気になったかな。
同じ妹がいる身として」
奥沢も乱入。
いつから聞いてたんだよ……
八幡「まぁ、いいですけど……
妹は小町って言うんですけど、中学1年生ですね」
花音「……中学生なんだね。」
美咲「意外と近い?ですね。
うちはまだ全然小さいので。
妹さんとは仲良いの?」
八幡「ばっかお前。良いに決まってんだろうが。
もうとにかく可愛いんだ。目に入れても痛くないレベル。」
美咲「うわっ…………比企谷くん………シスコン?」
声が低いぞ。
素で引くな、おい。
八幡「ばっ、ちげーよ。ただ妹が好きなだけだ」
花音「そ……それ、シスコンの意味そのまま………」
あ、あれ?じゃあ、俺ってシスコン?
こころ「何の話をしてるのっ?
目に入れても痛くないって、コンタクトレンズの話かしら?」
八幡「誰がコンタクトレンズだ」
なぞなぞじゃねーんだよ。
今は、小町が可愛いって話だろうが。
美咲「あ、そうだ。
急に話が変わるけどコレからどうする?」
はぐみ「コレから?」
美咲「そ、バンドの事。
メンバーが集まったんだから色々決めてく事あるんじゃないの?
曲作りとかさ」
こころ「そうよっ!ライブをしましょう!」
美咲「だーかーらー!
そのために曲を作ったり、演奏合わせたりするんでしょ!」
薫「あぁ、もうすぐ私たちのステージが始まろうとしているんだね」
八幡「確かに………な。俺もキーボードの練習しなきゃだな。」
大変だな。………そういやキーボードどうしよう?
お金はあんまりないけど、安すぎるもの買ってもなぁ……
CiRCLEでバイト終わりとかに無料で貸してくれないだろうか………
月島さんに相談してみよ。
美咲「あ、そう言えば比企谷くんは、バンドやることになったけどバイトとかどうするの?
まだバイト続けてるんでしょ?」
八幡「あー、それはだな。
無理矢理両立することに決めた。
勉強もバイトもキーボードも全部やる。」
花音「………えっ!?」
はぐみ「はーくん、凄い根性だね!!」
八幡「小町や母さんにも言われてな。
『全部やればいいじゃん』ってな。
最初は無茶苦茶言うなよ。って思ったけど、その通りだった。
俺が頑張れば全部出来るって事にな。」
美咲「え、えー。
それっていいの……?だ、だって……」
みんな不安そうな顔してるな。
まぁ、そりゃそうだ。させたのは紛れもなく俺だ。
八幡「大丈夫だっての………
そんなに心配すんな。キツイ時は言うし、体調もしっかり管理する。
でも、お前達には迷惑を………かける、ことになる…かも知れん。」
こころ「迷惑だなんて思わないわ!
だから、たーっくさんあたし達に頼るのよっ!」
薫「そうだよ、八幡。困った時はお互い様さ。」
花音「こ、こんなあたしじゃ………た、頼りにならないと………思いますけど……た、頼ってね?」
八幡「…………ありがとう………ございます。」
こころ「あ、そう言えば八幡にプレゼントしたい物があるわ!
コッチに来て!!」
俺の手を掴み、部屋を出て廊下を走る。
八幡「ちょま、お、おい!」
家の中で走るなって、大体はその場をグルグル走り回ったりする子どもに言うセリフだと思うけど、この家では違うな。
もう規模が違う。何メートルそう出来んの?この廊下。
こころ「ここよ!」
八幡「ココって………
楽器が沢山……あるんだけど……」
マジかよ。ここの家に無いものはない気がする。
仮にあったとしても買えるだろうし……
はぐみ「追いついたー!急に走るからビックリしたよ!!」
美咲「本当にこの家広すぎ……」
こころ「コレはね?あたし達の楽器よ!
そしてコレが…………はいっ!八幡のキーボードよ!」
八幡「………え、あ、え?」
弦巻がキーボードにかかっていた布を剥がす。
………え、俺の?
花音「む、無理もないよね……
あたし達もこの前、楽器貰ったから……」
もう本当に流石としか言えない……
いや、めちゃくちゃ有難いんだけど、いいのだろうか?
美咲「………あれ?キーボードでいいの?
ピアノとキーボードってなんか微妙に違うんじゃないの?」
八幡「あー、まぁな。
家にあったのは電子ピアノだったから、ピアノの方がやりやすいんだが、ブランク長すぎてどっちやってもあんまり大差ないと思うぞ。」
こころ「もし、ピアノが良かったら変えるわよ?
ピアノもうちにあるから安心して欲しいわっ!」
八幡「いや、コレで大丈夫です。
ありがとうございます。」
この家では余裕でグランドピアノとか渡されそうで怖い!
もうコイツなんでもありだ。
こころ「それじゃあ、今日から本格的にバンドの練習するわよ!」
はぐみ「わー!!はぐみ、ワクワクが止まらないよ!」
八幡「練習も大事だが曲はどうするんだ?
決まってた方が練習しやすいんだけど………」
曲担当は、俺と奥沢になりそうな予感。
………消極的にそうなるわ、コレ。
こころ「はい!はーい!
あたし、曲を作ってきたの!!」
弦巻が手を挙げながら主張する。
…………え、マジですか?
美咲「…………え、マジですか?」
お、おぉ。
そりゃそういう感想になるのもしゃーない。
でも、全く同じ反応とは…………
こころ「コレよ!コレにあたしの声が入ってるみたいなのっ!」
花音「コレは…………ボイスレコーダー……?」
本当だ、初めて見た。
ボイスレコーダーなんて一般の人が…………一般じゃねーや。
一般からは遠くかけ離れた存在だったわ。
ん?……………あたしの声が入ってる?
作曲なのに……………声?
美咲「それじゃあ、流しますよ」
奥沢がボイスレコーダーを再生する。
5人「「…………………」」
そして数分のボイスレコーダーを聴き終えた俺たち。
薫「こ、コレは…………!」
はぐみ「うん……………!」
薫、はぐみ「「すっごくいい!!」」
八幡、美咲、花音「「「鼻歌!!?」」」
そう…………
作曲と聞いていたのに思いっきり鼻歌だった。
いや、鼻歌は別にいいし、全然構わないぞ?
でも…………鼻歌から進んでないのか。
いや、まぁ……………何となくこうなるとは思ってた。
こころ「どうかしら?パッと思いついたけど中々いいでしょう?
歌詞も描いてきたから早速作りましょ!!」
八幡「……………歌詞か。
み、見せて貰ってもいいか?」
嫌な予感が凄いする。
頼む。外れててくれ。
こころ「もちろんよ!……はいっ!コレよ!!」
5人「「……………」」
薫「こ、コレも…………!」
はぐみ「う、うん…………!」
薫、はぐみ「「すっごくいい!!!」」
八幡、美咲、花音「「「歌詞じゃない!!!」」」
嫌な予感当たってるぅー。
こういうの当てないで宝くじ当てて!
八幡「お、おい………
コレは歌詞じゃなくて……………弦巻の気持ち?感想?」
美咲「ときめきたくさん。みんなで始める。」
花音「ス、スマイルキラキラ。リ、リズムはピカピカ」
八幡「みんなで手を繋いで輪っかになる!世界はニコニコで1つ。」
こころ「どう?とーっても笑顔になれそうでしょ?」
ホントだわ。すげーや。笑顔になれたわ。
主に苦笑いだけど…………
八幡「…………と、とりあえず作曲は俺がやります。」
美咲「あ、うん。
あたしも手伝うけどほとんど比企谷くん頼りかも………」
申し訳なさそうに言うが、鼻歌までは出来てるんだ。
そこまで苦ではない、と思われる。
それより問題なのは………………
八幡「歌詞………どうするか。」
美咲「どうしましょう………ね。」
八幡「この弦巻語を解読しなきゃいけないんだろ?」
美咲「………うん。コレは凄く………」
八幡、美咲「「大変だ。」」